「Plasm Networkを通じて、自由で公平で透明な世界の創造へ」- Stake Technologies CEO 渡辺創太 x CTO 山下琢巳

2020/05/28・

Shota

「Plasm Networkを通じて、自由で公平で透明な世界の創造へ」- Stake Technologies CEO 渡辺創太 x CTO 山下琢巳

ブロックチェーン同士の相互運用を行うPolkadot、そのエコシステム内において接続可能なチェーンである「Plasm」の開発を行うStake Technologies。

先日、同社がSubstrateを利用して開発されたレイヤー1ブロックチェーン「Plasm Network」が無事メインネットのローンチを完了させました。

また、Plasm Networkで発行されるPLMトークンは、通算3回のロックドロップによりPLMトークンを得ることができます。

第1回目の3月15日から4月13日に実施された1st LockDropでは全世界から16,783ETHが集まり、世界的にもPlasm Networkに対して非常に注目が集まっていることが伺えました。

今回、CRYPTO TIMESではStake TechnologiesのCEO 渡辺創太氏、CTO 山下琢巳氏にインタビューを実施しました。(※コロナ時期だったため、インタビューはZoomを用いて行っています)

インタビューでは、プロダクトの裏にある思想やメインネットローンチ後のビジョンなど、創設者である渡辺氏、CTOを務める山下琢巳氏に話を伺いました。

CRYPTO TIMESでは過去に、株式会社電通が運営するWEBメディアGRASSHOPPERと共同で、Stake Technologies渡辺氏へインタビューを実施していますのでこちらもあわせてお読みください。

自己紹介とPlasm Networkの紹介

左 : CTO 山下氏 右 : CEO 渡辺氏

 -本日はオンラインでのインタビューの機会をありがとうございます。Plasm networkのメインネットも先日無事ローンチということで、おめでとうございます。早速ですが、自己紹介とプロダクトの紹介をお願いします。

山下 : Stake Technologies CTOの山下琢巳です。Stake Technologiesに参画する以前は、経済産業省直轄のIPA法人が開催している未踏というプロジェクトでパブリックブロックチェーンを0から実装ていました。

渡辺 : Stake Technologies CEOの渡辺創太です。もともと大学在籍中にシリコンバレーのブロックチェーンスタートアップであるChronicledに就職し、帰国後Stake Technologiesを設立しました。弊社はPlasm Networkというパブリックブロックチェーンを開発するとともに、企業向けにブロックチェーンソリューションを提供しています。本日はこちらのPlasm Networkについてご紹介できればと思います。

Stake Technologiesが提供するPlasm Networkとは?

山下 : Plasm Networkはパブリックチェーンの大きな課題とされる処理性能とインターオペラビリティ(相互運用性)を解決する日本発のパブリックブロックチェーンです。レイヤー1ブロックチェーンを作っているチームはいくつかありますが大きな比較優位は我々がPolkadotエコシステムの中でグローバルを対象にしたパブリックブロックチェーンを作っているということでしょう。

Polkadotとは異なるブロックチェーン同士を相互に接続するソリューションです。Polkadotに接続することでPlasm Networkには嬉しい特徴が2つあります。

1つ目は、高いセキュリティを担保できる点です。PolkadotにParachainとして接続することで、Polkadot自体のセキュリティをPlasm Networkにインポートすることができます。Polkadotのセキュリティを借りることができれば、パブリックチェーンを提供する上では大きな強みとなります。

2つ目は、繋がっている異なるブロックチェーン同士が相互運用性を持つ点です。BTCとETHの交換を考えると、現状はほとんど集権的な取引所を経由する交換しかありません。これはEthereumとBitcoinが異なる基盤だからです。Polkadotの場合、繋がっているチェーン同士を跨ぐトランザクションであっても、集権的なポイントを必要とせずにオンチェーンで完結することができます。

これらの何が嬉しいかというと、“複数のブロックチェーンがそれぞれ役割を持って展開している”という世界観に合致する点です。

また、Plasm Network自体の特性として処理性能を大幅に上昇させるレイヤー2スケーリングソリューションが実装されていることやハードフォークが仕組み上ないことも大きな特徴です。

レイヤー1パブリックチェーンとしてレイヤー2ソリューションを持つ

渡辺Plasm Networkの特徴を上げると、Plasm Networkは処理性能の向上に特化したブロックチェーンです。

今でもブロックチェーン自体は、世界人口の数%しか利用されていないにもかかわらず、既にレイヤー1のネットワークというのはパンパンになっています。

Ethereum、Bitcoinにしても、今後もっと多くの人が使い、様々なアプリケーションが乗ることを想定すると確実に耐えられません。我々人間はブロックチェーンの使い方を大きく変えなければなりません。

将来的なパブリックチェーンの使われ方は、レイヤー1を”Trusted Layer(信頼担保レイヤー)”として、ある事象が起きた事実を記録し、それをレイヤー2で処理させて、一定期間ごとにレイヤー1に刻むというパターンが一般的になると思っています。

今回、我々が提供するPlasm Networkは、レイヤー2のソリューションを提供するレイヤー1 ブロックチェーンのような形で作っています。

Polkadotのエコシステムの中では、レイヤー2ソリューションとして現状マーケットシェアを大きく取れていると思っているので、ここでレイヤー2に対する注目、Polkadotに対する注目が日本国内からも集まるようになれば、日本からも十分に使っていただけるパブリックチェーンになることができると思っています。

かつ、そのうえで、Plasm NetworkはPLMというトークン発行も行っているので、将来的な日本の取引所への上場のような点も見据えていきたいです。

Plasm Networkに賭ける理由

Stake Technologiesの目標と思想

山下 : 現在のPlasm Networkには目標・思想があります。それは

  • 自由であること
  • フェア(公平)なシステムで成り立っていること
  • そのシステムはすべて透明なアルゴリズムで記述されていること

の3点であり、これらを非常に重視して設計されています。ここで特に重要なのは、アルゴリズムが透明であるという点になります。

EthereumのSolidityで記述されるスマートコントラクトもまさに誰もが検証できるという点で”アルゴリズムが透明”であり、スマートコントラクトで記述されているロジック通りでしか動かないことがEthereum上で保証されています。Plasm Networkも同様に、システムについてのロジックは完全に公開しています。

これらをまとめると、「自由で公平で透明な世界。インセンティブ設計によりできる限り悪意のある行動ができないようなプロトコル」を作ることであり、感覚としては国を作るような感覚が近いです。この点でPlasm Networkは新しい仕組みを導入したバーチャルな国家インフラとしてリリースしていくのが理想形であると考えています。

渡辺 : 日本国外では、アメリカ・中国・ベルリン然り、ブロックチェーンのハブとなっている国・都市にはレイヤー1のブロックチェーンが存在しています。

一方で、プロジェクトを開始した2018年末の時点では、日本でもレイヤー1のブロックチェーンはあるけれど、グローバルを視座に入れて本当に皆に使ってもらうとしているパブリックブロックチェーンはありませんでした。

ブロックチェーンは開発がグローバルに進むインフラ技術です。日本から世界で戦うことのできるレイヤー1ブロックチェーンを開発し、提供することが将来的に日本のプレゼンスを上げることにつながると思います。

なぜ今、Polkadotなのか?

渡辺 : ただ、開発をして提供するにしても、どの段階で勝負をかけるかということも大事です。2019年、昨年で独自チェーン作りますっていうのは時代遅れだし、やるのであれば14年、15年からやっていく必要がありました。

そういう意味で、小さいけれど今後確実に伸びるマーケットに乗る形の方が、将来的に自分たちのやりたいことを達成できるのでは、と思いPolkadotというブロックチェーンを選択しました。

PolkadotはEthereumの共同創業者兼CTOであったGavin Wood氏が0から作っているブロックチェーンなのですが、IoTなどユースケースに特化したブロックチェーンや秘匿化などの技術に特化したブロックチェーンといった異なるブロックチェーンを接続することができます。技術が成熟していくにつれて専業化・分業化が起こるだろうと予測しているのも今、Polkadotをやる大きな理由です。

関連記事 : Polkadot(ポルカドット)とSubstrate(サブストレート)の概要と仕組み、取り巻くエコシステムに関して

Plasm Networkのソリューション

– Plasm Networkはレイヤー1のパブリックチェーンでありながらも、レイヤー2のソリューションを備えているとのことでしたが、これはどういうことか、もう少し詳しくご説明いただけますか

レイヤー1とレイヤー2の技術的な解説

山下 : Plasm Network自体はレイヤー1のパブリックチェーンです。そして、先程も話した通り、Polkadotと接続される予定になっています。そのため、Plasm Netwrok自体はレイヤー2のチェーンではありません。これが前提としてあります。

ではなぜレイヤー2を備えているかというと、レイヤー2を構築するためには色々な作業が必要となってきます。レイヤー2を構築するためにはいくつかのパーツが必要なのですが、この一つがOVMと呼ばれるもの、もう一つがPlasmと呼ばれるものであり、これらを実装する必要があります

例えば、Ethereumベースでレイヤー2のソリューションを作りたいってなったとき、OVM・Plasmaと呼ばれるロジックをスマートコントラクトを使って実装します。

この役割は、「俗にいうレイヤー2と呼ばれる空間で、レイヤー2での処理をレイヤー1に正しく記録するため」の、レイヤー1のロジックが記述されます。

レイヤー2はレイヤー2で別のチェーンが動いているのですが、これはただのDBであったり、トランザクションをブロックに詰め込んで、マークルルートを保存する普通のDBだったりします。

PlasmaやOVMというのは、そういったレイヤー2のDBとレイヤー1のブロックチェーンをつなぎ合わせるためのプロトコルです。プロトコルであるため、当然規格を合わせなければいけません。

この規格が結構難しくて、EthereumだとSolidityで規格そのものをしっかりと作らなければならず、これが結構な労力を要するものになっています。

Plasm Networkにおけるレイヤー2の実装

山下 : Plasm Networkでは、このプロトコルをスマートコントラクトを使わずに、ブロックチェーンの原始的な機能として提供します。

例えば、Ethereum上で、レイヤー2のアプリを作りたいとき、まずレイヤー2側での独立した処理を記述し、次にEthereum側のコントラクトを開発するというフェーズがあります。

Plasm Networkの場合、レイヤー2は同じように開発しますが、その後レイヤー1の部分にPlasm Networkが提供しているエンドポイントが使われます。これにより、同じレイヤー2の処理でもガスコストが劇的に安価になります。

スマートコントラクトを利用したPlasmaの処理というのは、実は並のスマコンの量ではありません。その処理はとてつもない量で、その量のコードがPlasmaのアプリケーション一つ一つに対してアドホックに実装されています。

そのため、一つ一つのアプリケーションを作る難易度が非常に高くなります。その点、Plasm NetworkではDSL(Domain Specific Language)を使ってレイヤー2のロジックをプロトコルとして定義してあげます。

これをPlasmが読み取り可能な形式に直してデプロイしてあげると、プロトコルとして動作するようになります。これは、スマートコントラクトとは別のものとして動作するため、ガスコストを食わないのが特徴です。

渡辺 : 半ば補足になりますが、処理性能を上げるソリューションというのは、主に2タイプ存在します。

一つは、レイヤー1でできることを増やそうというもの。このパターンではブロックサイズの増加やシャーディングなどがソリューションとなります。

もう一つは、レイヤー1でできることを減らそうというもの。つまりレイヤー1でやることを減らして、ここをレイヤー2で代替しようというものになります。

Plasm Networkではこの2つ目の方法を取っています。このレイヤー2技術を使いゲーム・DEX・ブリッジなどが作られていきます

Polkadotのエコシステムについて

– 現状、Polkadotのエコシステムに接続するチェーン(Parachain)の中で、レイヤー2のソリューションを持っているのはPlasm Networkだけなのでしょうか?

渡辺 : 現状では、Polkadotに接続されるであろうチェーンとしてレイヤー2の実装があるのは我々のみになります。Polkadotの良いところは、チェーンがつながれば繋がるほどユースケースが増えていく点にあります。

例えば、秘匿化に特化したチェーン、スケーラビリティに特化したチェーン、ステーブルコインに特化したチェーンがそれぞれ存在する場合、超高速秘匿化ステーブルコイン決済なども可能となると言われています。

こうなってきた場合に、Plasm Networkは高い処理性能を有するのでユースケースを実現する基盤として機能することが見込まれます。

別の言い方をすると、組み合わせることで生まれた、新たなエコシステムにおけるユースケースをどの基盤で動かすか?という場合に、スケーラビリティを持つPlasm Networkが利用されていきます。

Plasmとして、アプリケーション基盤としての立ち位置の獲得方法

– メインネットのローンチが完了し、今後さらにアプリケーションがチェーン上に実装されてくると思います。現状、Ethereumでは、DeFi系のアプリケーション、TronやEOSなどではギャンブル系のユースケースが存在しています。Plasmはメインネットのローンチ直後で、パブリックチェーンとしては、後発というポジションです。その中で、今後アプリケーションを増やしていく戦略等はありますか?

山下 : Plasm Networkには、DApps Rewardという報酬付与の新たな仕組みを導入しています。

今までのDAppsの開発におけるマネタイズというのは、取引手数料の中から%をとるとか、そういった思想が一般的でした。これらのケースだと、取引時の時価総額自体 がそんなに大きくないパターンだとマネタイズが難しいです。

また、その結果としてギャンブルのアプリケーションなどが有用になってしまう。このような問題があります。Plasm Networkでは、アプリケーションの評価はユーザーが行います。

ユーザーがスマートコントラクトに対してステーキングという動作を行い、その量に応じてアプリケーションの人気度のようなものが計算されて、それに応じてチェーンから報酬が支払われるという仕組みを導入します。

スマートコントラクトの開発者は、チェーンに対して貢献しているとみんなに思われたら、コントラクトの開発者はチェーンからブロック報酬のような形で報酬を獲得することができるようになります。

そのため、DApps開発者は、スマートコントラクトをどのチェーンにデプロイしようかなとなったときにPlasm Networkで開発すると別途、利益を獲得することができますう

ブロックチェーンは報酬設計を自由にいじれるので、そこの第一ステップとしての実験的な仕組みだと考えています。

その中で、私が考えるユースケースはいくつか有ると思っており、我々がPlasm Networkのユースケースとしてマイクロペイメントなどを実装していきたいと思っています。

このマイクロペイメントのユースケースの例でいうと、ポイントアプリや広告があげられます。我々は最初は広告のアプリケーションをQ4に提供する予定で開発しています。

– 本日はありがとうございました。最後にお二方から今後に関してコメントをいただけますか?

山下 : 今ある世の中に理不尽を感じている人が多数。全体の多数というよりはクリプト、ブロックチェーン界隈の多数であると思っています。

社会の理不尽に対抗する手段がブロックチェーンであり、その性質は解決に対して極めて有効です。

「自由」「公平」「透明」

自由な行動を透明なプロトコルによって制御し、透明な仕組みを構築することで、自分がハッピーになるような行動で皆がハッピーになる世界を作り上げたいです。

我々が、パブリックチェーンのマネタイズを成功させることで、氷河期を迎えていた2018、仮想通貨・ブロックチェーンに対してまだやれるということを示していきたいです。Web3.0の夜明けとなるプロダクトを我々が作っていきたいと思います。

渡辺 : 日本人として、グローバルでの日本のプレゼンスが低いことを危惧しています。そして、これはもっと高めないといけないものであると思います。

やはり、グローバルで国際標準が進むEthereumやPolkadotなど、その他諸々のパブリックチェーンがあって、日本人が技術貢献している、エコシステムの中で重要な立ち位置であり続けなければならないです。

EthereumやPolkadotがデファクトスタンダードになっていく中でまだまだ日本人が少ない、こういった疎外感を切り開いていきたいですね。

 

取材/編集 = 新井 , 文章 =平田 , 画像提供 = 新しい経済

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