従来の医療業界では、患者の医療データ(カルテなど)を病院ごとに作成していることから、特定の患者の完全な医療情報が得難いことが問題視されてきました。

しかし、ブロックチェーン技術の登場により、医療データを医療機関ではなく患者自身がデータベース上で所有・管理できるのではないか、という考えが生まれました。

2018年9月現在ICO実施中のEMIも、日本を中心とした「患者が管理する電子カルテのデータベース」の開発・普及に務めているプロジェクトのひとつです。

同プロジェクトでは、患者が自身の医療データをブロックチェーン上で所有することで、医療・研究機関や製薬会社とのデータのやり取りを、コストやリスクを抑えて行うことができるとされています。

以下ではEMIプロジェクトの仕組みやトークンの仕様・役割を詳しく解説し、競合・類似プロジェクトとの比較も行っていきます。

EMIの概要を紹介!

プロジェクト名 EMI
主な提携先 株式会社エストコーポレーション
特徴 パブリック・プライベートチェーン両方を利用した医療データの統合
公式リンク 公式サイト
LinkedIn
Medium
テレグラム
GitHub

EMIとは一体どのようなサービスを提供するプロジェクトなのでしょうか?

ここでは、EMI公式サイトおよびホワイトペーパーに掲載されている情報をベースに、同プロジェクトが目指すゴールやシステムの特徴を紹介します。

EMIが目指す3つのゴールとは?

EMIは、ブロックチェーン技術を医療業界に応用することで、以下の3つの目標を実現させるとしています。

  1. 安全で追跡可能な医療データの共有
  2. 形式の異なる医療データの統合
  3. ビッグデータ・AIを利用した医療データの解析

トークンメカニズムを導入することで、患者が自身の医療データをブロックチェーン上で所有し、医療・研究機関や製薬会社などとのデータ共有を容易にするというのがEMIプロジェクトの概要です。

EMI(エミ)を利用するメリットとは?

複数の医療機関で発生する医療データをひとつのデータベースにまとめる」利点は多数存在します。

病院などの医療・研究機関は他機関で記録された患者データにもアクセスすることができるため、より質の高い医療サービスを提供できる可能性が広がります。

更に、国や地域によって異なるデータの記録形式が統一化されることで、医師や研究者などは必要な情報をより素早く参照することができます。

また、製薬会社や保険会社も、従来より内容の整った患者データを自社商品の開発や品質改善に役立てることができます。

EMIの特徴を詳しく解説!

それでは、EMIプラットフォームの具体的な仕組みや、医療データの安全な管理方法とはいったいどのようなものなのでしょうか?

パブリックチェーンとプライベートチェーンの使い分け

EMIでは、「医療データ」と「データへのアクセス権」をアクセス権限を分けた別々のチェーンに保存しています。前者はプライベートチェーン、後者はパブリックチェーン上に保存されます。

パブリックチェーンとは、ビットコインやイーサリアムのように、誰でも閲覧・参加可能なブロックチェーン・ネットワークのことを指します。

対して、プライベートチェーンでは権限を与えられたもののみがネットワークの閲覧・参加を行うことができます。

EMIでは、患者の医療データはプライベートチェーン上に、そして、そのデータを誰が閲覧・書き込みできるのかをパブリックチェーン上に保存しています。

こうすることで、患者のプライバシーに関わる医療情報は基本的に、プライベートチェーンに参加する権限を持つ者(=患者自身)のみがアクセスできることになります。

データの所有権は患者にあり

EMIでは、特定の医療データには権限を与えられた者のみがアクセスできる、と解説しました。それでは、権限のコントロールを実際に行うのは誰なのでしょうか?

患者の医療データへのアクセス権限を管理するのは患者自身となります。EMIでは、医師や研究機関、製薬会社などに自身の医療データへの一時的なアクセス権を与えることが可能とされています。

具体的には、身長・体重や視覚・聴覚、血液関連など、健康診断などで得られるような基本的なデータから取り扱いを始めるもようです。

EMIプラットフォームでは、プライベートチェーン上の自身のデータがいわゆる「電子カルテ」の役割を果たし、このデータを医師や他の医療機関に見せる権限は患者が持つ、ということです。

EMIトークンとは?仕様や使い道を徹底解説!

ここでは、EMIプラットフォームが発行する「EMIトークン」について詳しく解説していきます。

通貨名 EMIトークン / $EMI
規格 イーサリアムベース・ERC223
主な使い道 データ提供に対する報酬、プラットフォーム上での決済
発行枚数 600,000,000 EMI
タイプ ユーティリティトークン

インセンティブ・メカニズム

EMIトークンの最も重要な役割は、従来の医療情報管理システムからEMIプラットフォームに移るインセンティブ(動機)となることです。

患者や医療機関は、EMIプラットフォームに医療データを提供する度にEMIトークンを受け取ることができます

こうすることで、患者や医療機関には正確な医療情報をプラットフォーム上で更新していくメリットが生まれます。

トークンのユーティリティ

EMIトークンは、研究機関や製薬会社へのデータの売却提供など、プラットフォーム内で発生する取引に使用できるとされています。

また、EMIはエストコーポレーションと呼ばれる日本の診療予約サービス会社と提携しており、今後同社サービス「ESTDoc」の利用での決済時にもEMIトークンが使用できるようになるとされています。

ESTDocとは、PC・スマートフォンから手軽に日本国内約8000の医療機関での診療予約を行うことができるサービスです。

トークンの分布

トークン総発行数6億枚のうち、半数の3億枚が2018年8月27日から10月3日の間で行われるICOで発行される予定のもようです。

ICOで発行される3億枚のうち、20%(6000万枚)はサービス開始後の医療データの価格補正のためにEMIがリザーブとして保有するとされています。

残りの3億枚は、プラットフォーム参加のインセンティブとして、データを提供した患者や医療機関に配布されるとされており、期間あたりの発行量は時間とともに逓減していくもようです。

ERC-223・NEOおよびEOSでの開発

EMIトークンは、現在最も普及しているERC-20規格と互換性の高いERC-223規格を採用しています。

ERC-223規格では、トークンが稀にスマートコントラクト内に取り残されてしまうバグを修正し、さらに、ネットワーク処理にかかるコスト(gas)をERC-20規格より小さく抑えることができます

ERC規格についての詳しい解説は以下をご参照ください。

また、EMIは異なるブロックチェーン・プラットフォームを用いた開発にも取り組んでおり、現在のところEOSおよびNEOでもシステム開発を進めているもようです。

EMIのロードマップ

EMIは、直近3年間の詳細な計画に加え、2025年までの長期的な目標もロードマップに掲げています。

2018年Q1 EMIトークンの発行
2018年Q4 複数の医療機関間で患者のデータが共有可能に / 医療情報提供者へトークンの配布を開始 / 海外支社の設立
2019年Q1 データ売却提供サービスの開始 / データ管理アプリのリリース / ビッグデータ・AIの応用に関する研究の開始
2020年Q1 医療機関への物品の販売開始
2021年 EMIプラットフォームにおける医療データのフォーマット作成
2024年 AIを利用した医療サービスの提供開始
2025年 日本全国共通の電子カルテの作成

EMIが公表しているロードマップによると、現在行われているICOが終わり、年末あたりから患者・医療機関間での医療データ共有サービス、およびインセンティブメカニズムが始動するもようです。

EMIの「3つのゴール」のひとつである「ビッグデータ・AIを利用した医療情報の解析」に関する研究は2019年初旬に始まるとされています。

また、患者や医療機関が自身のデータを確認できるモバイルアプリのリリースなども2019年内に予定されているもようです。

同プロジェクトは、医療関連物品の販売やAIを利用した医療サービスの提供などの将来的な実現も考えているようで、今後プラットフォームがどう発展・普及していくかが重要となるでしょう。

EMIと競合・類似プロジェクトを徹底比較!

ブロックチェーンを応用した電子カルテ系プロジェクトは多数存在します。

今回は、MedicalChain(メディカルチェイン)Medibloc(メディブロック)の2つをEMIの類似・競合プロジェクトとして比較していきます。

強み ベースブロックチェーン マーケット
EMI 診療予約サービス(EstDoc) Ethereum 日本
MedicalChain オンライン診療サービス Hyperledger イギリス
Medibloc 保険適用機能などのついたアプリ開発 Qtum 韓国

今回比較するプロジェクトは全てEMI同様、インセンティブメカニズムを利用してブロックチェーンネットワーク上に電子カルテのデータベースを構築するというものです。

しかし、これらのプロジェクトは、アプリケーションの機能ベースとなるブロックチェーンアドバンテージのある市場などといった点で大きな違いがあります。

サービス・アプリケーションの違い

EMIが発行するEMIトークンは、提携先であるエストコーポレーションの診療予約サービス、EstDocでの決済手段として使用することができます。

EstDocは上項の通り、日本国内の歯科医を中心とした約8000の医療機関での診療の予約を行うことができるサービスで、同社と提携をしているEMIには日本市場との強い繋がりがあると言えます。

対してMedicalChainでは、診療予約でなくオンラインで直接診療を受けられるサービスの促進に務めているという点で違いがあります。

Mediblocが展開するサービスの中には、保険の適用などを自動で行う機能があるとされており、EMIやMedicalChainとはまた違った利点があると言えるでしょう。

また、Mediblocは韓国の大学数校と提携を組んでいることから、同国でのサービス展開がしやすいとも考えられます。

ベースとなるブロックチェーンの違い

EMIは、イーサリアムERC-223トークン規格を使ったブロックチェーンを採用しています。

同プロジェクトは、パブリックチェーンとプライベートチェーンを使い分けることで、プライバシーと透明性の両者を確保できることが見込まれています。

一方、MedicalChainはリナックス財団が開発したHyperledgerをベースにしたブロックチェーンを採用しています。

このブロックチェーンには、データのアクセス権限を細かく設定できる強みがあり、MedicalChain上のユーザーは、「誰が、どのデータを、どれくらいの期間」見れるかまで設定できるとされています。

Mediblocは、Bitcoin Core ($BTCC)の技術を応用したQtumをベースにしたブロックチェーンを使用しています。

Qtumは、イーサリアムを含む他のブロックチェーンとの互換性が高いことから、異なるトークン向けのウォレットにも容易にトークンを発行できるという強みがあります。

EMIトークンのエアドロップについて

現在、EMIではトークンのエアドロップを行なっています。こちらのイベントでは、抽選で30,000人に10EMIずつが配布されるもようです。応募期限は2018年9月30日となっています。

同エアドロップイベントには、以下の手順で応募することができます。

  1. EMI公式テレグラムに参加
  2. 公式ツイッターをフォロー、エアドロップについてのツイートをリツイート
  3. こちらのページから応募者情報を登録

まとめ

EMIプロジェクトは、EstDocとの連携をはじめ、トークンのユーティリティを早い段階から生み出している点が大きな強みであると考えられます。

また、同サービスは日本向けに広く展開されているものであることから、今回紹介した類似プロジェクトと比べても、日本での普及に大きなアドバンテージがあると言えるでしょう。

ロードマップを見ると、サービスの完璧な充実にはまだ数年かかることがわかります。年末の主要なサービス開始をはじめ、予定通りに開発が進むかどうかに注目が集まります。