MALTA Blockchain Summit参加レポート / ブロックチェーン島・マルタを歩いてみて
Yuya
マルタ共和国はイタリアの南、地中海中心部に浮かぶ小さな島国です。その大きさは東京都23区の半分・人口は約40万人で、ヨーロッパの人気観光名所のひとつとなっています。
イギリス連邦加盟国であるマルタでは、マルタ語と英語が公用語に定められており、日常会話レベルの英語が話せれば旅行する上で特に困ることはありません。
観光業で栄えるマルタのもうひとつの顔が、ブロックチェーン技術を国レベルで推進する「ブロックチェーンの島」としてのマルタです。
世界最大の仮想通貨取引所・Binance(バイナンス)が今年春にマルタに本拠地を移転したことをきっかけに、同国でのブロックチェーン関連事業の誘致に火がつきました。
今では、数々のブロックチェーン系企業が後を追うようにマルタでの法人設立に取り組んでいます。
Crypto Timesは、そんなマルタで11月初旬に開催されたイベント「マルタブロックチェーンサミット」にメディアパートナーとして参加し、「ブロックチェーンの島」の様子を徹底調査してきました。
目次
マルタってどんなところ?
11月のマルタは日本では考えられないくらい暖かく、気温は昼夜常に18~25度くらいでした。割と湿気が高く、少し歩いただけで汗だくになってしまう感じでした。
カンファレンス開催の1日前に上陸したので、観光地として有名な海岸や港を散歩…のはずでしたが、絶賛雨男の記者は約4日半の滞在中、一度も晴空を見ることなく毎日豪雨に見舞われました。
観光業が盛んなだけに、食べ物は基本的に美味しいものが多く、ファストフードはだいたい5~10ユーロ(650~1300円)、レストランは10ユーロ(1300円)から、という感じでした。
イギリス連邦加盟国であるマルタには、英国風パブ(日本の居酒屋的な存在)が至る所にあり、ビール一杯4ユーロ(500円)と、他のヨーロッパ諸国と比べると割と安めでした。
ちなみに、マルタは観光先の他に英語の語学留学先としても人気が高いらしく、街中ではたくさんの日本人の方を見かけました。
ブロックチェーンの島・マルタ
マルタの主要産業は電子・繊維・観光業の3本柱でしたが、近年ではブロックチェーン系産業がゲーミング・映画製作産業と共に急速な成長を遂げています。
同国は租税回避地(タックス・ヘイブン)としても有名で、関連規制も比較的緩いため、金融やブロックチェーン系の企業が集まりやすくなっています。
BinanceやOKEx、BitPayなどといった大手ブロックチェーン関連企業が揃って本拠地をマルタに移転したことを皮切りに、現在では多くの企業が後を追うように同国での法人設立を試みています。
ジョセフ・ムスカット首相率いる政府はブロックチェーン系イベントに積極的に参加したり、同技術を学ぶ学生に奨学金を給付するなどして「ブロックチェーンの島」をアピールしています。
マルタブロックチェーンサミット
ブロックチェーンの島・マルタでは、マルタブロックチェーンサミットと呼ばれる大型カンファレンスが11月1日・2日に開催されました。
Crypto Timesは参加者5000人以上の同カンファレンスにメディアパートナーとして潜入し、ブロックチェーンの島・マルタとヨーロッパの仮想通貨コミュニティの様子を見学してきました。
仮想通貨大国・マルタの大型カンファレンス「MALTA BLOCKCHAIN SUMMIT」が11月に開催
首相・金融大臣が自ら登壇・スピーチを行う
同サミットでは、初日にジョセフ・ムスカット首相、二日目にはシルビオ・シェンブリ金融サービス大臣が直々に登壇を行いました。
特に、シェンブリ金融大臣は、ブロックチェーンの島・マルタとしての世界的な立ち位置について触れ、今後の国内での規制整備について考えを発表しました。
「ブロックチェーン産業の中心地となれたことを誇りに思う」とした同氏は、「市場の誠実さ」「市場の安定性」「消費者保護」の三本柱を軸とした規制を展開していくとしました。
日本では、日本仮想通貨交換業協会、通称JVCEAと呼ばれる団体が認定協会に指定されており、この非政府団体の自主規制方針が国内におけるブロックチェーン技術の発展の鍵を握る傾向にあります。
対してマルタでは、政府のトップが自らカンファレンスに出向き、関連企業を海外から積極的に誘致しています。
国内企業を軸として法規制を固めていく日本と、比較的オープンな規制を魅力とした国外企業誘致に力を入れるマルタには、ブロックチェーン技術の発展戦略に大きな違いがあると感じました。
街全体によるブロックチェーン産業推進
マルタでは、ブロックチェーン技術の推進や関連企業の広告運動が他国に比べより大規模に行われていました。
カンファレンスが行われたサン・ジュリアンと呼ばれる街では、街中に大手プロジェクトの広告が大きく掲示されていました。
また、会場近くのレストランやバーと提携し、同業界に関わる人々が集まって食事を取れる場を提供する参加企業などもありました。
「ブロックチェーンの祖」や「AIロボット」も登壇
マルタブロックチェーンサミットでは、政府・EU議会や有名企業の重役が政治・法律・金融・ビジネス・技術といった様々なトピックについてプレゼンを行いました。
テクニカルなプレゼンテーションが大半でしたが、中にはブロックチェーン・フィンテック界の「大御所」がスピーチを行う場面もありました。
そんな大物スピーカーの一人が、1990年代にブロックチェーン技術の基礎を考案した「ブロックチェーンの祖」ことスコット・ストーネッタ氏です。
ストーネッタ氏の「ブロック・チェイン」に関する文献は、サトシ・ナカモトによるビットコインのホワイトペーパーで度々引用されています。
日本での勤務歴もある同氏は、ステージ上で流暢な日本語で「私はサトシ・ナカモトではありません」と公言しました。
また同カンファレンスでは、「人間以外の」スピーカーも現れ、来場客の注目を集めました。
世界で初めて市民権(サウジアラビア)を獲得したAIロボット・ソフィアは、ステージ上で彼女の能力を披露しました。
ソフィアは、ブロックチェーン技術を活用したクラウドソースにアクセスすることで複雑な会話を理解したり、ヒトの表情を読み取ったりできるといいます。
そんな彼女は「世界中の分散型ネットワークを包括する分散型ネットワーク」の構築に憧れを抱いているといいます。
【MALTA BLOCKCHAIN SUMMIT 1日目】余談ですが、AIロボット・ソフィアは登壇早々開発者からの質問を無視し、3分間ほど硬直していました。インターネットの接続環境が悪く、ソフィアがクラウド上の情報にアクセスできなかったことが原因だそうです。 pic.twitter.com/bcS2sVdkny
— CRYPTO TIMES@仮想通貨メディア (@CryptoTimes_mag) 2018年11月1日
まとめ
ブロックチェーンの島・マルタは、国全体でブロックチェーン関連企業の誘致や技術の発展に力を入れている国であることが目に見えてわかりました。
首相・大臣らや、著名人(またはロボット)を招いた大型カンファレンスは、ただのビジネスの場ではなく、国の素晴らしさをアピールする良い機会となっていました。
こういった戦略は、もとから観光地・租税回避地として海外資産が行き来するマルタでこそできるものなのだろうとも思いました。