【Tokyo DOT DAY】Polkadotはシンプルかつ直感的にブロックチェーンを作ることができるプラットフォーム -ChainSafe, Commonwealth Labs インタビュー-
Shota
2019年4月10日にDMM株式会社にて、Polkadotを中心としたミートアップ『Tokyo DOT DAY』が開催されました。
本ミートアップでは、Polkadotを主導する、Ethereum 共同創業者CTOであるGavin Wood氏をはじめ、Web3 Foundationのメンバー、Parityのコア開発者、Edgeware、Chainsafeなどと言ったプロジェクトが六本木に集結しました。
今回、CRYPTO TIMESでは、Polkadotを利用した研究開発を行うChainSafeのAidan氏、Commonwealth LabsのDillon氏の2名にインタビューを実施しました。
目次
インタビューに対応してくれたプロジェクト
Commonwealth Labs
Commonwealth Labsはカリフォルニア・サンフランシスコに拠点を置き、Edgewareと呼ばれるSubstrateのスマートコントラクトプラットフォームを開発する企業です。
EdgewareはPolkadot最初のスマートコントラクトチェーンであり、RUSTやWebAssembly(WASM)が利用されています。
ガバナンスにフォーカスを置き、その汎用性や様々なオンチェーンガバナンスのメカニズムを提唱しているEdgewareは、世界中から大きな注目を集めています。
今回、Edgewareを提供するCommonwealth LabsのDillon氏は共同創設者でありながら、分散型のプロトコルなどの研究開発を行う企業に対して投資を行うTuring Capitalでも活躍しています。
Commonwealth Labsでは、様々なガバナンスのシステムのチェーンが共存しワークする仕組みを目指してEdgewareの開発を行っています。
ChainSafe
ChainSafeはカナダ・トロントに拠点を置き、EthereumやPolkadotなどのブロックチェーンの研究開発を行う企業です。
Go言語を利用してPolkadotの開発を行うことのできるランタイムや、EthereumのBeacon Chainの開発などを行っています。
12月には、EthereumのVitalikからTwitter上で直接1000ETHのGrant、2月には、Web3FoundationからのGrantを受けており、業界の最前線にいる人物・企業から大きな注目を集めていることがわかります。
Thank you so much for your support! This is more than anything we ever imagined.
— ChainSafe (@ChainSafeth) December 19, 2018
Aidan氏はChainSafeの共同創設者兼CEOを務めています。
EthereumのBeacon Chainの開発を行う傍らで、Polkadotを含む様々なオープンソースプロジェクトの開発に貢献しています。
Aidan氏、Dillon氏にインタビュー
今注目を集めるPolkadotで何が起きているのか!?
— 今回、インタビューに応じていただきありがとうございます。自己紹介をお願いします。
Aidan:私はAidanといいます。ChainSafeの共同創設者兼CEOです。
ChainSafeでは、Web3.0のインフラを創り上げることをミッションとし、ブロックチェーンの研究開発を行っています。
Dillon:Commonwealth Labsという会社の共同創設者の一人であるDillonです。よろしくお願いします。
私たちは、主に分散型のスペースにおけるガバナンスに焦点を当てています。
Commonwealth Labsで開発を手伝っている最初のプロダクトは『Edgeware』というもので、これはParity Substrate上の汎用スマートコントラクトプラットフォームになります。EdgewareはPolkadotにおける最初のParachainの一つとしてローンチされる予定です。
— ありがとうございます。今回、日本に来るのは初めてだと思いますが、どういった目的で来日したのでしょうか
Dillon:一つは、我々の認知度を上げるためです。日本のコミュニティでも、既にSubstrateを利用した開発が行われており、LayerXが開発している『Zerochain』は本当に素晴らしいものだと思います。彼らと直接話がしたかったというのも理由の一つです。
とはいえ、主な理由はやはりEdgewareの認知度向上にあります。
EdgewareはLockdropと呼ばれるETHのロックアップによるエアドロップを行っており、3 / 6/ 12か月間のETHのロックアップを行うことで、終了後ETHとEdgewareのトークンを獲得することができる仕組みを採用しています。
6月1日からの開始を予定しており、これにより開発者は新しいチェーンで開発を始めることができるようになります。
Aidan:私たちも、日本のブロックチェーンのコミュニティについて知るいい機会だと思い日本に来ました。
特に、Polkadotについて日本でこのように話す機会を手にすることができてとてもワクワクしています。
この2年半の間、私たちは多くの開発を行ってきており、Ethereumだけでなく様々なブロックチェーンに繋ぐことのできるサイドチェーンの実装を行ってきました。
なので、私たちにとってPolkadotについてコミュニティの皆とお話ができるということは、一つの大きな問題の解決につながると信じています。
なぜPolkadotを利用するのか
— 最近、ブロックチェーン界隈にいると、Polkadotの話題を非常に多く耳にするようになりました。今回、お二方の会社でPolkadotを利用した開発を行っていくと決めた大きなキッカケは何だったのでしょうか
Dillon:私たちは、2年半の間Ethereumのコミュニティで活動をしており、6か月ほど前からEthereumのBeacon Chainの実装に向けての開発を行っています。
Beacon Chainの実装に向けた開発では、私たちが思い描くものをしっかりと作り上げることを目的としています。
一方でそのためには、オープンソースの技術に対しても貢献し、エコシステムにそれを加えていく必要もあると感じており、これを通じて様々なものを生み出していけるのではないかと考えています。
私たちにとってのPolkadotは、インターオペラビリティという面だけでなく、現状世界に存在する中でも、最もシンプルかつ直感的にブロックチェーンを作ることができる素晴らしいプラットフォームです。
これは、エキサイティングなだけでなく、Mass-Adoptionを考えた場合の最高のプラットフォームで、また開発者が生み出したプロダクトを利用するユーザーによってこれらが実現されていくだろうと思っています。
Aidan:Dillonの言う通りで、ユーザー側に立って考えるとき、Polkadotは非常に興味深いプラットフォームの一つだと感じます。
Jack(Web3.0 Foundation / Poladot開発者) とも話していたのですが、Polkadotには様々な技術の実装に着手する120以上のcore contributors(貢献者)、様々なparachainやエコシステムに関連するプロジェクトの開発を行う500以上の人々を抱えています。
そんなPolkadotのエコシステムの一部として開発に参加していくことはとてもワクワクすることでした。
Commonwealth Labsとしてのフォーカスはガバナンスにあり、このガバナンスの背景には必ず人々がいます。
成長を続け、人々が集まるエコシステムに参加をする方向性に向かっていきたいときに、Polkadotという素晴らしいプロジェクトがそこにあり、それがPolkadotで開発を行っていくことを決めた大きな理由です。
Polkadotがブロックチェーンに及ぼす変革と今後
— ガバナンス、セキュリティ、インターオペラビリティなど様々な問題を解決するPolkadotですが、開発が進んでいくことで将来的にどのような変化が見られるのでしょう
Dillon:PolkadotのサイドチェーンとしてのEdgewareについて話すのであれば、Parachainとしてこれが実装されていくことでセキュリティは十分に担保される形となります。
全体的な変化というより、Edgewareに関してになりますが、今後は匿名Votingなどの機能の実装を進めていく予定です。
例えば、この機能により開発者やユーザーは自身のアドレスを紐づける(公開する)必要なしに様々なことができるようになります。
その他では、Identityの部分でもPolkadotに実装していくことを目指しており、EdgewareがPolkadotに大きな変化をもたらすことを望んでいます。
Aidan:私たちは、主にサイドチェーンの開発を行っていますが、インターオペラビリティを実現していくためにはセキュリティだけでなく、それぞれのチェーンが相互に繋がるためには様々な問題を解決していく必要があります。
私たちにとってPolkadotは、セキュリティやインターオペラビリティなどの根本的な問題を解決するだけでなく、これまで多くの努力が必要とされてきた部分を3ステップ、10ステップ以上も容易に実装することを可能とします。
また、チェーンの変更などもフォークを伴わないため、ガバナンスの問題も解決することができます。
Ethereumのサイドチェーンなどはセキュリティやガバナンスなど多くの問題がありますが、Polkadotのランタイム環境やSubstrateがあれば、GoやRUSTなどブロックチェーンの領域の外にいるエンジニアなどもこれを簡単に実装することができるようになります。
— Polkadotが実現しようとするインターオペラビリティは単なるクロスチェーンで価値の交換だけを実現するといったわけではなさそうですね
Aidan:そうですね。Polkadotでは、開発者はハッキングやネットワーキング、その他多くの問題を考える必要がなくなります。
世界中の多くの人々がブロックチェーンの開発の難しさという障壁を気にせずに、自分が得意な部分で開発を行うことができるようになるので、彼らが見つけた問題をすぐに解決していくことが可能となり、より多くのユーザーを引き込むことも容易になるでしょう。
— 現状、世界的にもブロックチェーンの技術的な部分に注目が集まってきています。そんな注目が集まっている中で、今後何をすべきかと考えていたり、逆に技術的以外の分野ではどういったことに力を入れていくべきだと考えていますか?
Dillon:私の観点では、個人が問題を見つけたとき、その解決策を彼ら自身で導ける仕組み、問題を解決できる仕組みをどのように実現していくかという点が重要だと思います。
ブロックチェーンを利用する多くのプロジェクトはとても野心的ですが、フレームワークとして容易にそれを実現できるものがありません。
そんな中、Edgewareはいい例だと思っていて、容易に自身が特化している領域で開発を行うことのできる環境を提供します。
これにより、世界中の開発者それぞれが問題を見つけたとき、実現に時間のかかるであろう大きな野心を掲げることなく、簡単に問題を解決することができるようになり、これがやがてMass-Adoptionの部分にも繋げっていくだろうと考えています。
Aidan:私も同意見で、決断を下す部分にテックが介入していく、介入しやすい環境を作っていくことが必要とされていると思っています。
これが、最終的にはエンドユーザーまで浸透していき、Mass-Adoptionにも繋がっていくため、ブロックチェーン領域外の開発者を巻き込んでより多くの問題を解決していく必要があると感じています。
記事書き起こし : Shota
インタビュー、記事編集 : 新井 (アラタ)