ブロックチェーンは「世代として初めての世界的な波」–ファンド立ち上げで世界に挑戦する大日方祐介

ブロックチェーンは「世代として初めての世界的な波」–ファンド立ち上げで世界に挑戦する大日方祐介

5月30日木曜日、都内で開かれたイベントにて本田圭佑氏が新たなプロジェクトとしてブロックチェーン領域に特化したベンチャーキャピタルファンドを立ち上げることが発表された。

このVCの仕掛け人・大日方(おびなた)祐介を取材した。“Obi”の愛称で世界のブロックチェーン・コミュニティに名が知れ渡る大日方に、前編では、プロックチェーン領域を手がけるに至ったこれまでの経歴について聞いた。

ブロックチェーン領域における日本の特徴や、「世界」に向けたチャンスについての「後編」は次週公開予定。

※ 今回のインタビュー記事は、CRYPTO TIMES の新井が協力の下、GRASSHOPPER編集部とインタビューを実施し、株式会社電通様が運営するWEBメディアGRASSHOPPERに掲載されたインタビューの転載となります。

転載元記事 : ブロックチェーンは「世代として初めての世界的な波」–ファンド立ち上げで世界に挑戦する大日方祐介– GRASSHOPPER

2010年代前半〜今に至るまでのブロックチェーンとの関わり

—若い世代・学生を中心にブロックチェーン・コミュニティを牽引する大日方さんの活動について教えてください。

大日方:2018年初頭から日本の若い世代を中心とした開発者向けのイベントなどを行うブロックチェーン・コミュニティ「CryptoAge」を主宰しておりました。去年11月には国際カンファレンス「NodeTokyo」を主催し、現在この領域の企業やトークンに集中し投資を行っていくベンチャーキャピタル(VC)を立ち上げたところです。

—まず、ご自身がスタートアップに関心を抱くようになったきっかけを教えてください。

大日方:中学校の英語の授業でザ・ビートルズを聴いたのをきっかけに、海外のロックバンドが好きになり、実際に高校時代にはバンドを組んでボーカルもしていました。1960年代からイギリスやアメリカで始まったバンドムーブメントって、若い人が集まって世界的に成功していくサクセス・ストーリーがありますよね。そういった夢を追って世界を目指す人たちが昔から好きで。大学に入るくらいからスタートアップの存在を知り、共通項を多く感じ興味を持つようになりました。大学2年生あたりで先輩たちがスタートアップを立ち上げはじめたこともありインターンとして働き始めたりしました。

スタートアップへの関心と並行して、18歳ごろから東南アジアを中心にバックパッカーをするようになり、日本以外の世界を見て、日本だけに留まるのではなく世界で挑戦するようなことをしたいと強く思い始め21歳のときに大学を1年休学しフィリピンに移住しました。ちょうどその頃の2012年は、東南アジアでもスタートアップ業界が盛り上がり始めていました。

現地で2か月ほど英語を特訓し、ある程度出来るようになった頃に「スタートアップウィークエンド」というハッカソン兼ビジネスコンテストに日本人一人で参加してみたり、滞在後半は現地で出会った開発者らとプロダクト開発に取り組んだりしていました。そういった中で、自分の中で東南アジアのスタートアップへの情熱がより高くなり海外メディアを読み込みリサーチをし、そのまとめを日本語でブログに書き始めたんです。するとイーストベンチャーズの松山太河さんから、いきなりFacebookでメッセージをもらい、急遽会うことになりました。

当時、日本の学生で東南アジアを含め海外のスタートアップを調べている人はほとんどいなかったそうで、すぐに意気投合させて頂き、その日からイーストベンチャーズに参画し始めました。入ってみたら丁度、国内や東南アジア、アメリカで投資をし始めるタイミングで自分の興味範囲とまさに合致していたのです。

—そこから、ブロックチェーンと出会った経緯について教えてください。

当時のイーストベンチャーズでは、同じフロアに創業間もないメルカリやBASEなどがひしめくオフィスで、太河さんとほぼ毎日一緒にいさせて頂いて学びながらベンチャーキャピタルの立ち上げ期を経験させてもらいました。個人的にもdely(クラシル)、Progate、タビナカ、シンガポールのGlintsなどのスタートアップへの投資支援をさせてもらっていました。そんな中で2014年の半ば、まだ加納(裕三)さんがbitFlyerを創業されたばかりのタイミングで、木村新司さんのご紹介から太河さんにご相談にいらした際に同席させていただいたんです。その時に加納さんから初めてビットコインについて教えてもらいました。僕は元々、旅をする中で外貨の両替が面倒だと感じていたり、フィリピンでは街中に出稼ぎ労働家庭向けの国際送金屋が沢山あるのを見ていたと言う背景もあり、すぐにビットコインに興味を持つようになりました。

bitFlyerには、イーストベンチャーズからも出資をさせていただけることになり、個人的にもビットコインのことをリサーチするブログを書き始めたり、当時コインチェックを始めたばかり和田(晃一良)さんらとビットコイン勉強会をするきっかけになりました。

ただ、2014年頃はまだブロックチェーンという言葉が出回り始めたくらいのタイミングで、立ち上がってきているものは取引所くらいしかありませんでした。領域としてまだ狭いかなと感じ、魅力を感じつつ関わるにはまだ時期尚早かなと感じ、個人的にも趣味程度でウォッチしている程度でした。

その後、バンコクに移住し旅行関連の事業などに取り組んでいた2017年頃から世界的にも界隈が再び盛り上がり始め、自分のような日本・アジアにバックグラウンドを持つ人間だからこそ世界で大いに挑戦できる可能性があると感じ、ブロックチェーン領域をまた深掘りし始めました。

—なぜブロックチェーンに特化したVCを立ち上げようとしたのでしょうか。

ブロックチェーン業界に興奮したのは、それまでのスタートアップ業界と違い、必ずしもシリコンバレーが一番の中心ではないという点です。ビットコインやイーサリアムも世界各地でコミュニティができ始めていて、アメリカだけでなくヨーロッパやアジアに開発者がいる状況でした。日本はといえば、2017年4月に世界で初めてビットコインを決済手段として認める法律が出来、世界的にも先駆的なポジションになりつつありました。2017年の後半ぐらいからは取引所がテレビCMをし始めたりという動きがあり、世界的に見ても仮想通貨・ブロックチェーンがここまで浸透し始めているのは日本ぐらいではないかと感じました。このタイミングであれば、アメリカのトッププレイヤーであっても日本に大きな関心を寄せてくれるのでは?という仮説が出来上がりつつありました。

その時、ちょうどいいタイミングでバンコクで初めての本格的なブロックチェーンカンファレンスがあったんです。当時ブロックチェーン関連企業で珍しくアメリカの有名アクセラレータYコンビネーター入りが決まっていたスタートアップ「Quantstamp」の創業者であるRichard (Ma)も、スピーカーとして来ていました。アフターパーティーに忍び込んで彼に話す機会を得て、出来上がったばかりの仮説を検証しようと思ったのです。

—アフターパーティーだけ忍び込んで、話しかけるとはすごいですね!

大日方:はい、彼らに、日本やアジアのことをピッチすれば、強く興味持ってくれるのではないかと思ったわけです。そうして話しかけに行って、自分が日本でしてきたことや、日本におけるブロックチェーンの現状などを話しました。すると、非常に興味を示してくれたんです。さらにその2、3週間後に日本に来てくれることがすぐに決まり、2018年の1月に日本で初めて彼らとともに開発者向けのイベントを開きました。これが今の自分につながる大きなきっかけになりました。

その時に、日本でブロックチェーンを取り組み始めているSBI、DMM、メルカリといった企業を一緒に回ったりしました。そのとき丁度、本田圭佑さんの投資チームの方も日本にいてご紹介できたんです。それがきっかけで、当時メキシコにいた本田さんに自宅へ招いてもらい、食事をさせてもらいながら4時間ほど熱くお話をさせてもらい、すぐに投資を決めて頂いたりということに繋がりました。

そういったこともあり、Quantstampチームは日本市場に大きな可能性を感じてくれ、アジア最初の拠点として東京にオフィスを作ることになりました。色々一緒に回ったりしたことでよく思ってくれたみたいで、そこからシリコンバレーの界隈や彼らが仲がいい人たちに「日本に行くのだったら、オビってやつに連絡したらブロックチェーンだけでなくテック業界にも精通していて、ローカルの美味しい飯屋や、カラオケも連れて行ってくれるぞ(笑)」などと言いふらしてくれるようになり、世界中のいろいろなトッププレイヤーから連絡を貰えるようになりました。

その後、宮口(礼子)さんがイーサリアム財団のエグゼクティブディレクターになるということもあって、Omiseの長谷川(潤)さんなどと一緒に、日本で初めてのイーサリアムオフィシャルイベントを開催するということにもつながりました。

イーサリアムの考案者であるヴィタリック・ブリテンをはじめとして世界のトップ開発者が東京大学の講堂に集結し、日本の開発者を中心に500名以上が集まりました。現在Polkadotを開発しているギャビン・ウッドと親交を持つようになったのもこのタイミングです。このイベントをきっかけに、日本でもイーサリアムなどのブロックチェーン技術サイドに目を付ける開発者や特に若い世代が一気に増えはじめたと、肌で感じ始めました。

これらがブロックチェーン・コミュニティ「CryptoAge」の生まれた背景です。ちなみに、「クリプトエイジ」の名前は1990年代のインターネット黎明期に多くの起業家を輩出した「ネットエイジ」に影響を受けた名前です。最初は僕が一人で主宰していたのですが、徐々に参加した学生たちが参画したいと言ってきてくれたり、早稲田大学や一橋大学などでは、自ら大学内でブロックチェーン研究開発サークルを作ったりという流れも出てきました。そういったメンバーでこの領域で今起業に挑戦していたり、引き続きブロックチェーン関連企業で頑張っている人たちも多くいるのは嬉しいですね。

©Advertising Week Asia 2019

ブロックチェーンは、同世代にとって「生まれて初めての世界的な大きい波」

—ブロックチェーンに興味のある学生や若い人がたくさんいると思いますが、なぜ若い層に刺さったり、燃え上がらせることができたと考えますか?

大日方:僕ら1990年代以降の世代は、これまで自分たちが主役と思えるような大きなテーマがほとんどなかったように思います。インターネット黎明期で何かに挑戦するには子供すぎたし、スマホやアプリみたいなところもちょっと若すぎたんです。

そんな中、僕らが主役の世代として挑戦できるタイミングで来た初めての世界的な大きい波が、ブロックチェーンだと思います。だからこそ、僕もすごくわくわくしてこの領域でチャレンジしようと思ったわけです。これと同じように思っている若い世代はとても多いと思います。

—この傾向というのは日本だけでなく世界的にも多いのでしょうか。

大日方:世界的にも多いと思います。世界のコミュニティを見ていても、中心になって取り組んでいるヴィタリック・ブリテンなどの開発者は20代までが中心だったりと、若い人が多いです。VCや投資家側も若い世代はとても多く、ブロックチェーン領域のファンドで世界トップクラスになってきているPolychain Capital創業者のオラフ・カールソン・ウィーなどはまだ30歳手前です。

このように、開発の領域でも、VCの領域でも、ブロックチェーンに関しては、若者が中心で世界的にも動いているなというのは分かっていたので、日本でもその動きを作っていきたいなと思ったことも大きいです。

Interview & Text:西村真里子
協力:CRYPTO TIMES 新井進悟
トップ画像:© Advertising Week Asia 2019

転載元記事 : ブロックチェーンは「世代として初めての世界的な波」–ファンド立ち上げで世界に挑戦する大日方祐介– GRASSHOPPER

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