[Famiee Project 後編] ブロックチェーンを通じて、多くの企業をその変革に巻き込んでいかなくてはいけない – 株式会社ホットリンク 内山 幸樹 , 石渡 広一郎
2019/08/15

[Famiee Project 後編] ブロックチェーンを通じて、多くの企業をその変革に巻き込んでいかなくてはいけない – 株式会社ホットリンク 内山 幸樹 , 石渡 広一郎

アラタ

アラタ

2017年5月に仮想通貨への投資を開始。ブロックチェーンや仮想通貨の将来に魅力を感じ、積極的に情報を渋谷で働く仮想通貨好きITリーマンのブログを通じて発信するように。2017年6月に初めてICOへの参加も行い、ICOの魅力に取りつかれ、積極的にICOに投資していくように。Crypto Times運営者の1人。好きな食べ物はラーメンとたくあん。

2019年4月末に2日間にかけて代々木公園で行われた『東京レインボープライド2019』。

当イベントに参加していたブロックチェーン技術を活用して「カップル宣誓書」の発行サービスを体験できるFamiee Project前編のインタビューでは開発チームにフォーカスしたインタビューとなりました。

今回の後編記事では、東京レインボープライド2019内でのイベントの模様、そして、Famiee Project発起人である株式会社ホットリンク 内山幸樹さん , 石渡広一郎さんへのインタビューをお届けいたします。

Famiee Project カップル宣誓書発行サービス

今回のFamiee Projectではブロックチェーン技術を活用して「カップル宣誓書」の発行サービスを体験することが可能となっていました。

ブースには発行された『カップル宣誓書』が飾られており、ブロックチェーンに刻まれた『カップル宣誓書』を持ち帰ることができるようになっています。

この発行書に書いてあるURLとパスワードを入力することで、WEB上でもブロックチェーンに刻まれたカップル宣誓書を本人たちで確認することが可能となっていました。

今回は内山さんと川くんにご協力いただき、実際に宣誓書を発行していただきました。

発行書に掲載する写真を撮る内山さんと川くん

今回発行する証明証の手順はiPadにて写真を撮影、その後に互いの名前と誓いの言葉を入力し、お互いがサインした後にブロックチェーンに書き込まれる仕組みとなっています。

ブロックチェーンで新しい証明証を発行していくことを誓う川くん

互いの誓いと名前が記載された証明書

ブロックチェーンに刻まれた

発行された証明書、パスワードとQRコードが記載されており、確認ができる

ブロックチェーンに刻まれた後は、証明書が発行され、発行された証明書に書かれているパスワードとQRコードにアクセスすることでブロックチェーン上に記録されていることが確認ができるような仕組みになっています。

Famiee Project 発起メンバーへのインタビュー

LGBTの人たちへの差別をなくす支援活動と、会社として取り組もうとしたブロックチェーンの話が結びついた瞬間

左 : 石渡さん , 右 : 内山さん

— 今回はインタビューありがとうございます。お二人の自己紹介をお願いします。

石渡 : 石渡と申します、ホットリンクのCEO特別補佐で弁理士の資格を有しています。大学卒業後、弁理士資格の勉強をしながら企業法務などの仕事をしていました。弁理士の資格を取得後、特許事務所で働きその後独立するタイミングでホットリンクの監査役に就き、今年の4月からCEO特別補佐をしています。

ブロックチェーンについては、真新しい技術ということで着目しておりましたが、さらに、ホットリンクでブロックチェーンの勉強会がありまして、それをきっかけにブロックチェーンに関わりを持ち始めました。ブロックチェーンはインターネットに変わる技術やこれからの時代を変えていく可能性のある技術だと思っていますし、「非中央集権」や「分散型」といった観点でも注目しています。

内山:内山といいます。元々、大学院の博士課程のとき(1995年頃)に日本の最初で最初期の検索エンジンを作ったプロジェクトのメンバーでした。それがきっかけで大学時代に検索エンジンベンチャーを作って博士課程を中退して、ITの世界に入りました。その会社はYahoo Japanができて、Googleができて叩きのめされていくわけですが(笑)。

その当時、検索エンジンを作るには人工知能でには無理と言われており、ここのコンテンツは人を感動させる、人間がブックマークした、リンクを貼った、など人間の知恵を社会全体で集めてきて、共有化して人工知能がそのビッグデータを学習して凄い検索エンジンができる。それを人間に介したときに、好きとか嫌いとか人間と人工知能で知識が循環される社会インフラができて、初めてホッとする社会ができるだろう。そんなビジョンを2000年のときに思いつきました。

それでホットリンクを立ち上げました。ホットリンクの社名の由来は、ホッとする(hotto)というところから来ています。ホットリンクはSNSやビッグデータ、AIが社会に広まっていないときに、そういう社会を目指してつくりました。時代よりも早かったこともあり、潰れそうなこともいっぱいありましたが。日本でブログが流行りだした頃に、ブログのポータルサイトを日本で最初期に作りました。

そのときに1995年くらいの検索エンジンを思い出して、当時の検索エンジンはキーワードをいれるとそのキーワードに関する情報がどこにあるか指し示すものでした。ブログやTwitterは一個一個の情報は大して重要ではなく、あるキーワードをいれると、世の中でみんなはどんなことを言っているのか、情報を要約してくれる検索エンジンが必要だとブログが始まったときに気づいて、ブログのテキストマイニング(ブログ分析エンジン)を作り、TwitterがきたときにTwitter分析エンジン、FBがきたときにソーシャル分析エンジンになり、ビッグデータ分析エンジンになり、2013年にマザーズへ上場しました。

今は、世界中のソーシャルメディアのデータ流通ビジネスや、データ分析サービス、そして、分析結果を活用してブームを作りだすためのSNSマーケティングサービス等を、日本・中国・欧米で提供しているホットリンクという会社の代表をやっています。

— 内山さんはどういう経緯でブロックチェーンと出会ったのでしょうか

内山 :会社の中長期的な成長を見据えた際に、非連続的な成長の種をいくつか撒いておかねばならないと考えて、2018年の頭くらいからブロックチェーンの研究開発を始めました。その流れの中で、東大ブロックチェーン寄付講座を作ったり、ブロックチェーンベンチャーへの投資を初めたりというところです。

— ありがとうございます。Famieeはいつ頃に立ち上がったプロジェクトでしょうか

内山 : このプロジェクト自体は昨年の暮れぐらいからです。それまではブロックチェーン技術がどういう分野で適応できるかということを考えて、社内勉強会を昨年の5月頃からやっていました。当時はLGBTという話はでていませんでしたね。

実は、ブロックチェーンの事業開発とは全く別に、3年ほど前に、東京レインボープライドの主催者の杉山さんや、世界的なLGBTの活動家の柳沢さんらとの出会いがあって、お二人が参加されているパネルディスカッションに参加したんです。私はそれまで、自分はオープンで、LGBTの人たちに対する偏見や差別をしていない人間と思っていたんです。しかし、実は、無知なまま、そういう考えを持っていることが一番いけなかったことを知ったんです。

ブロックチェーンに書き込んだ後の完了画面

どういうことかというと、我々は差別をしていないないと思っても、LGBTの当事者の人たちからすると、普段の何気ない生活の中でたくさんの障害があります。例えば、会社に置き換えて話をすると、社内の誰かが結婚すると、結婚手当をもらったり、育休休暇をとったりしますよね?でも、LGBTの人達は、そんな制度の恩恵を受ける機会がないんです。差別をしていないといいながらも、それを前提とした会社制度にはなっていない。

会社外の例だと、例えば、交通事故にあって緊急手術をしないといけない時は、通常家族の同意がないと手術ができない。しかし、LGBTのカップルの一人が、死にそうな状況でパートナーと一緒に救急車に乗っていても、パートナーの人は手術の同意書にサインできない。既存の制度でいうところの親や兄弟を待たないといけない。このような現状であるにも関わらず、会社のトップとして、当社は差別しない会社だと言っていた自分の無知さ加減にショックをうけ、セッションを聞きながら、私は涙がボロボロでて止まらなくなってしまったんです。

それをきっかけに、LGBTの人達の生きづらさを解消しようという勉強会や活動に参加するようになっていったんです。個人的な活動としてやっていたLGBTの人たちへの差別をなくすための支援活動と、会社としてやっていたブロックチェーンで何ができるんだろうという話が、何かの拍子で、頭の中で結びついたんです。

石渡:当時、ブロックチェーンと相性が良い分野として、不動産の権利流通や、サプライチェーン分野での活用などがあがっていました。ただ、これらの仕組みを実際に変えるのはかなり大変です。ブロックチェーン技術は、社会を大きく変えるポテンシャルはあるが、現実社会にすでに存在する仕組みを入れ替えるためには、技術ではない障害があると思っていました。

内山:アイデアはたくさんでたのですが、自分達の強みが活きるのか?、現実的に世の中を動かせるのか?というところです。ブロックチェーンとの親和性でいうと金融が一番早いような気がしますが、正直、我々は金融の分野はあまりわくわくしませんでした。

スポーツは面白いです。スポーツチームやアスリートとファンとのコミュニティーにトークンエコノミーを適応すると、スポーツチームを応援しようとするファンの熱量がトークンエコノミーへ変わると凄いです。ですので、ブロックチェーン x スポーツは明確に事業としてやっています。

石渡:実際に、3月には、スポーツテック企業にホットリンクとして投資をさせていただいております。

ホットリンクが出資するスポーツテックのサービスEsporta

ブロックチェーン技術を用いて社会変革を起こす、多くの企業をその変革に巻き込んでいくことが重要

— 先程の話に少し戻ります。今後、LGBTの人たちがパートナーシップ証明を持てるようになるために、民間証明書を発行していくとありました。こちらに関して具体的に教えてください。

内山:すでに渋谷区やその他のいくつかの市区町村で、LGBT向けのパートナーシップ証明書というものが発行されています。夫婦と思われる方々に対して、婚姻届けを出せない代わりにパートナーシップ証明書を発行しているんです。これは実は法的効力はありませんが、行政が発行したパートナーシップ証明書をもってきたら、ローンの審査の際、二人の収入を合算して査定しますよという動きや、生命保険の受取人にパートナーを指定できるとか、携帯電話の家族割引をうけられたりとか、飛行機のマイルを家族で共有できたりと、民間企業が、法的な家族ではなくても家族として認めるようになってきています。法律を変えなくても、思いのある民間企業が受け入れてくれたことで、世の中が変わってきているんです。

しかし、ここで問題が出てきます。例えば、渋谷区が発行するパートナーシップ証明書は、渋谷区に住んでいる人しか申請できない。そして、引っ越しをすると無効になる。かつ、引っ越し先の行政が、パートナーシップ証明書を発行していない地域かもしれない。これでは不便ですよね。かといって、まだパートナーシップ制度を導入していない全国の市区町村が導入するまでに何年かかるかわらない。

そこで、我々のような民間が、一部の行政が発行しはじめているパートナーシップ証明書に相当するものを、日本のどこに住んでいる人であっても発行できれば、現状の不便さがもっと解決されるのでは?と思い付きました。更には、夫婦関係に限らず、親子関係に応用できると思っています。今では、卵子提供や精子提供、または代理母の助けを借りて生まれてくる子供も増えてきていますが、現状に法律が追いつかず、親子として認定されない親子がたくさんできてきています。そういう人たちの関係を、民間団体がしっかりと確認し、認め、親子関係証明書を発行し、それを受け入れてくれる民間企業が増えれば、今よりはそういう人たちが生きやすいやすい世の中になるんじゃないかと。

正直、会社の利益になるようなプロジェクトではないですが、この考えに共感してくれるメンバーでやってみようといって始めたのが、今回のプロジェクトのキッカケになります。

石渡 : そうです。そのためには、発行するだけではなく、民間団体が発行したパートナーシップ証明書を受け入れる企業を増やしていくことが大事だと考えておりまして、竹中平蔵先生にもこのお話をしたところ、非常に賛同して頂き、アドバイザーに就任して頂きました。

内山 : やりたいことを実現するには、技術とは別に、こういった民間企業の巻き込みをやっていかなくてはいけない。その両方をやっていくプロジェクトになっています。ブロックチェーンの分野には非常に優秀で想いを持った若者が多くいます。しかし、彼らだけでは社会を巻き込んでいく力はまだまだ弱い部分があります。ブロックチェーンで社会変革を起こすには、若い人たちの技術力に加えて、世の中を巻き込んでいく大人達の力も必要だと思っています。

— 今回のパートナーシップ証明書を発行する際、ブロックチェーンの技術を使わないといけない理由はどこにあるのか教えて下さい

内山 : 夫婦や家族の関係って、一人の人の生涯に渡って、それを超えて、何代にも渡って続くていくものですよね?だからこそ、何十年・何百年にも渡って、そのデータは安全に保管され、そして、発行された証明書が正しいものである事が検証できるようになっていなければならないと思います。例えば、現在の日本の戸籍は、”国”という、何十年何百年にわたって永続する存在が管理しているからこそ、長く管理できているのです。

それほど重要で、かつ永続性が必要とされるデータを、一民間団体のシステムやデータベースで管理しようするのは、発行者の責任としてありえないと思うんです。しかし、BitcoinやEthereumのようなパブリックなブロックチェーンをデータベースとして活用すれば、ブロックチェーンの仕組みと、世界中のコンピュータパワーを使って、そのシステムとデータを永続させる事ができるようになります。ある意味、発行団体がなくなったとしても、データとシステムは残り続けます。だからこそ、ブロックチェーンなんです。

ブースで証明書の発行をする内山さん

— 今回、Famieeのブースをだしてみての反応などはいかがでしたか?

石渡 : 今回は、あくまでもイベント用の企画として、カップルさんお二人の誓いの言葉をブロックチェーンに永遠に刻んで、その誓いを証拠として、”カップル証明書”というものを発行する企画でした。多くの人が興味を持って、我々のサービスを利用してくれました。ブロックチェーンを知らない方も多く、ブロックチェーンの仕組みをちゃんと説明した上で、カップル関係をブロックチェーンに刻み、証明書を発行しました。

お二人のプライバシーを守るために、お二人の情報は暗号化してブロックチェーンに刻まれ、発行した証明書に書いてあるパスワードを入力することで、お二人の誓いとパートナーとしての証明を確認して頂けるようになっています。今回は、イベント用に企画した簡単な証明書ですが、今後は、行政発行のパートナーシップ証明書に相当する、本人確認等を本格的にする本当のパートナーシップ証明書を発行するようにしていきます。

— このパートナーシップ証明をブロックチェーンで行う際、難しい点や苦労していることも多いと思います。そこに関して、お聞かせください。

内山 : これらの証明書発行で難しいのは、技術面では、プライバシー保護と検証可能性との両立の仕組みです。LGBTの当事者の方からすると、自分はゲイやレズですと公表するということは、最悪の場合、迫害されて自殺に追い込まれたりすることもありえるリスクがあることです。なので、パートナーシップ証明書を取得するためとはいえ、役所の人や我々のような発行者側にさえ、本当は個人情報や二人の関係を開示したくはないのです。しかし、本人確認をちゃんとせずに発行して、保険金詐欺などが起こっても駄目。

究極的には、我々にもわからない形で、彼らが申請者本人であると確認をし、また、ホントに独身(パートナーがいない)であるということを確認する仕組みが欲しくなります。ブロックチェーンでは、ゼロ知識証明のアルゴリズムとかが活用されたりしますが、そういった問題にまず直面します。

また仮に、ブロックチェーンに、なんらかの二人の情報を書き込む際には、第三者が見たときにわからないように暗号化しなくてはいけません。これらは、本人たちにしかわからないような暗号にしたいけれども、後々、その証明書を提出された民間企業とかから証明書の正当性確認の要請があったときに確認できないといけない。

もう一つは、証明書を発行するのことはできても、それを受け入れてくれる民間企業を巻き込まなくてはいけません。ブロックチェーン技術は、社会変革を起こすポテンシャルはあるが、技術だけだと実際に社会変革は起こせなくて、多くの企業をその変革に巻き込んでいく必要があります。社会的な信用や政治的なパワーがある人がこれを取り組むことで、初めてブロックチェーンで社会変革を起こせるんだと思います。

石渡:あとは現状だとお金の問題も出ています。現状、ボランティアで思いのある人が手伝ってくれていますが、今後ちゃんとした良いものを作っていく、時間をかけて社会を巻き込んでいく、これらのことをしようとするとどうしてもお金の問題は出てきてしまいますね。

Famieeチーム

— 色々と技術的問題や環境的な問題などまで多くのことがあると思います。しかし、社会的に見て非常に重要な問題を解決できるプロジェクトだなと思いました。

内山:ありがとうございます。マイノリティの人たちに対する差別という社会課題を解決するという点で、このプロジェクトはとても意義のあるプロジェクトだと思っています。が、ブロックチェーンによる社会変革という側面からも、重要だと思っています。

今回のこのプロジェクトを通じて、ブロックチェーンを使った社会変革のユースケースを一つ作ってみると、ブロックチェーン技術で社会を動かすためにはどうどういうプロセスだったり要素が必要なのかが見えてくると思っています。今後、ブロックチェーン技術で様々な社会変革を実現していくという意味でも、このプロジェクトは絶対に成功させたいと思っています。


後編の記事では、Famiee Projectの発起人であるお二人へのインタビューをお届けしました。

前後編に分けてのFamiee Projectに関しての特集でしたが、現在のLGBTにおける問題点をブロックチェーンでどうやって解決するか、そして社会変革を起こすためにはどうやって世間を巻き込んでいくか、プライバシーをどうやって守っていくかなど、多くの観点から考えるべきことが多かったと思います。

今回の記事を読んだ方が少しでもLGBTに関しての理解が少しでも深まり、Famiee Projectの今後の動向に関しての興味を持っていただけたら非常に嬉しく思います。

前編 : [Famiee Project 前編] 自分達だけで発行した証明書に価値はない、今後、どれくらい人を巻き込んでいけるか – Staked CEO 渡邉 創太 , withID CEO 川 大揮

インタビュー , 編集 : 新井 進悟
写真撮影 :  フジオカ

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