ICO詐欺?救済?ベネズエラの仮想通貨「ペトロ」の概要と問題点とは
Yuya
Crypto Times公式ライターのYuyaです。
今回は話題のベネズエラ政府が発行する仮想通貨「ペトロ」とは一体何なのか、そしてこれにはどういった問題があるのかを解説していきたいと思います。
この記事の3つのポイント
- ベネズエラではハイパーインフレーションが起こっている
- 対策として、「ペトロ」を新たな通貨として普及させる作戦
- 政治状況を踏まえるとペトロが国内外の信用を得ることは考え難い
ベネズエラの政情
ベネズエラでは現在、Nicolas Maduro大統領の独裁的な政治が大きな問題となっています。
Maduro大統領は、野党がアメリカ等と共謀してベネズエラを不安定にしている、と主張し独裁政治を行っており、国民の間で反政府デモや飢餓が起こっています。
これを受けアメリカはMaduro大統領および他の関係者数名のドル資産を凍結するなど、他国までをも巻き込んだ問題になっています。
この不安定な状況に伴い、ベネズエラでは「ハイパーインフレーション」が起こっています。
経済成長がなく海外からの投資もないため、ボリバル(ベネズエラの通貨)の需要・信用が極端に少なくなってしまったのです。
その結果として、ベネズエラの国内総生産は今年、2013年比で40%も低下すると予想されています。
ブラジルはレアル、ベネズエラはペトロ?
それでは、何故ベネズエラ政府は仮想通貨「ペトロ」を作ったのでしょうか?
ジンバブエやエクアドルといった国は、アメリカドルを国の通貨と制定することによってハイパーインフレから脱出しました。つまり、インフレし切った自国の通貨を捨て、国際通貨であるドルを新たな通貨としたのです。
一方で、ブラジルは90年代にレアルという新しい自国の通貨を作り出すことによってハイパーインフレから脱出しました。
このように一から通貨を作り出す場合、国内外からの信用が大切になります。利用者が通貨の価値を認めて初めて、国の通貨となるからです。
ベネズエラのハイパーインフレ対策はブラジルに似たものです。
ブラジルがドルの代わりにレアルを導入したように、アメリカを嫌うMaduro政権はドルの代わりに仮想通貨「ペトロ」を新しい、信用のある通貨として採用しようとしているのです。
石油で裏付けされた仮想通貨
他の仮想通貨のようなボラティリティー・投機ラッシュがあった場合、ペトロは日常で使用する通貨として機能しません。
昨日1ペトロあたり100ドルだったものが次の日50ドル、なんて事態が発生すると、膨大な損益・混乱が起こるからです。
したがって、ベネズエラ政府はペトロの値段を安定させなければなりません。
そこで政府が考えた作戦が、ペトロを自国の代表的輸出品である石油で裏付けするというものです。言い換えると、ペトロを相応量の石油と交換できるようにする、ということです。
国際的に価値のある石油をペトロと紐付けすることによって、投機ラッシュ等で極端に上下しない、安定した仮想通貨にするというのが政府の作戦なのです。
しかし、現在の不安定なベネズエラで、この作戦は成功するのでしょうか?
現に政治の混乱の影響でベネズエラ政府の石油会社、PDVSAには投資が行き渡っておらず、石油の生産や外貨の貯蓄が伸びることはまずありえないと言われています。
こうなってしまうと、ペトロはボリバル同様、価値も信用もないものになってしまいます。つまり、投資・投機家のお金だけ集めて、始まってみたら何も起こらないなんて可能性があるのです。
ベネズエラの未来はいかに
ペトロはハイパーインフレーションから脱出するためのベネズエラの新通貨であるという事でした。
そして政府は、価格安定性を図るために石油で紐付けを行ったという事です。
ベネズエラ政府のこの戦略の成功には国内外からの信用が必要です。ここで一番の鍵となるのはやはり安定した政治と石油の生産量でしょう。
しかし、反政府デモが日常的に行われ、飢餓が起こり、石油の生産量も明らかに激減している現在の状況ではペトロが新たな通貨として信用を得る確率は極めて低いといえます。
また、ペトロの成功にはアメリカやロシアなどの動きも大きく関わってくると考えられます。現在、アメリカのトランプ大統領は国民のペトロの購入を禁止しています。一方で、ベネズエラ同様に自国の仮想通貨を開発したいロシアは今回のペトロの開発に協力したという噂も出ています。