株式やETFの合成資産に特化したDeFiプラットフォーム「WallStreetBets ($WSB)」とは?
Yuya
WallStreetBets ($WSB)は株式の合成資産やETP(ETFに似たバスケット型資産)の売買ができるDeFiプラットフォームです。
株式やETFなどのトラディショナルな金融商品を分散型プラットフォームに移植する試みはこれまでいろいろな方面で行われてきましたが、WSBは合成資産(シンセティック・アセット)というアプローチでこれを実現しています。
こちらの記事ではそんな画期的な技術を持つWallStreetBetsの特徴やプロダクト、独自トークン $WSBについて詳しく解説していきます。
目次
WallStreetBetsの公式リンクまとめ
WallStreetBetsの概要と主要プロダクト
プロジェクト名/ティッカー | WallStreetBets / $WSB |
プロダクト | 株式等の合成資産取引、バスケット型アセット(ETP)、流動性マイニング |
対応チェーン | イーサリアム(資産取引)、BSC (流動性マイニング)、Polygon (予定) |
WallStreetBets ($WSB)は株式連動型のアセットをDeFi上で実現した分散型プラットフォームです。
WSBは海外のオンライン掲示板「Reddit」上で株式取引などについて議論するr/wallstreetbetsから着想を得ており、ウェブサイトでも「ウォールストリートのDeFi化」というスローガンを大きく掲げています。
WSBには大きく分けて「合成資産取引」「分散型バスケット型アセット(ETP)」「流動性マイニング」の3つのプロダクトがあり、どれもすでにローンチされています。
以下ではこの3つの主要プロダクトについて詳しく見ていきます。
STONKS – 株式の合成資産
STONKS (stocks/株式 のミーム版名称)は特定の株式の価格を追跡した合成資産(シンセティック・アセット)を売買できるWallStreetBets上のDAppです。
決済のベースとなる通貨はUSDステーブルコイン3種(UST, USDT, USDC)となっており、現在購入できる資産は以下の9種類となっています。
- アップル (mAAPL)
- マイクロソフト (mMSFT)
- アマゾン (mAMZN)
- アリババ (mBABA)
- テスラ (mTSLA)
- グーグル (mGOOGL)
- Invesco QQQ (mQQQ)
- ツイッター (mTWTR)
- イーサリアム (ETH)
こういった合成資産は株式そのものではなく、あくまでその株式へのエクスポージャー(価格変動)を表すものです。
したがって、通常の株式保有で得られる会社の所有権や配当を受け取る権利といったものはこちらの合成資産には存在しないので注意が必要です。
しかし、会員情報や口座情報を登録する必要もなければ、国や自治体による制限等もない分散型ネットワーク上で株式へのエクスポージャーを得られるというのは、トラディショナルな金融市場にはない大きな強みと言えるでしょう。
STONKSは現在イーサリアムネットワーク上のDAppですが、今後Binance Smart ChainおよびPolygonへの対応も予定されています。
ETP – DeFi版上場投資信託
ETP (Exchange-traded Portfolio)は、合成資産技術とDAOの特性を活用したバスケット型金融アセットです。
従来の金融市場のETF (Exchange-traded Fund)は主に現物を裏付け資産とし、対象となるインデックス(全米、全世界、新興国など)の変動に基づいてファンドがリバランスを行います。
対してETPは主に合成資産を裏付けとし、DAOとしてインデックスの選定、Balancer上での初期発行、そしてバスケットのリバランスをWallStreetBetsのコミュニティが投票に基づいて実行するという大きな違いがあります。
現在WSB上では、インフレヘッジを目的としたWSB Macro Hedge ETP、および大手のDeFiプラットフォームトークンを対象にしたDeFi ETPの二銘柄がローンチされたばかりで、今後も株式や暗号通貨をバスケット化した銘柄の導入が予定されています。
株式の合成資産同様、ETPの大きな魅力はトラディショナルな市場で大きなシェアを誇るETFをDeFi上に持ち込み誰でも匿名で平等にアクセスできるしたところにあります。
流動性マイニング
WallStreetBetsには独自トークン$WSBを基軸とした流動性マイニングも設けられています。TVLは記事執筆時点で450万ドル超となっています。
現時点では用途やリスクプロファイルに基づいた3種類が設けられており、いずれもAPR変動型のステーキングとなっています。
WSBのシングルアセットプール (Diamond Hands Pool)は同ネイティブトークンのHODL向けのプールで、TVLの大半を占めています。
WSB-BNBおよびWSB-BUSDはBinance Smart Chain (BSC)システム上のトークンとの流動性ペアで、WSB-BUSDの方が低リスク(インパーマネント・ロス)向けとなっています。
$WSBトークンについて
$WSBはBinance Smart Chain (BSC)ベースのWallStreetBetsにおけるガバナンストークンです。総発行枚数は10億枚となっています。
$WSBのガバナンスにおける具体的な用途は典型的な流動性マイニングのものに加え、新たな合成資産の発行・流通、ETPの発行やリバランスなどもあり、プラットフォーム上の金融商品の種類や特性に大きな影響を与えることもできるようになっています。
$WSBはBSCベースのトークンのため元からPancakeSwapに上場していますが、12月に入りCEXではOKEx、DEXではSushiswapと他の大きな取引所でのリスティングも立て続けに発表されています。
用途 | 割当 |
ローンチ時の流動性 (BSC) | 20% |
エアドロップ等 | 2.5% |
パブリックセール | 7.5% |
プライベートセール (ベスティングあり) | 15% |
流動性マイニング | 10% |
マーケティング (ベスティングあり) | 10% |
開発 (ベスティングあり) | 10% |
チーム (ベスティングあり) | 10% |
トレジャリー | 15% |
初回に放出されるトークンのうち、合計約25%はプライベートセールとチームに割り当てられています。対してエアドロップとパブリックセールは全体の10%を占めています。
開発とマーケティングには合計で20%、流動性マイニングが10%、およびDAOの資金源であるトレジャリーには15%が割り当てられています。
WallStreetBetsのパートナーシップ情報
WallStreetBetsは2021年10月末に規模・注目度共に大きなパートナーシップを発表しました。
同提携は証券の発行者や投資家をマーケットとつなぐプラットフォーム「Digital Markets (DIGTL)」と、セーシェル諸島に本拠地を置き株式・債券・デリバティブ等幅広く展開するMERJ Exchange、そしてビットコインブロックチェーン上のインフラ開発を行うBlockstreamの3社との共同提携です。
BlockstreamがLiquid Networkを活用してビットコインチェーン上での証券発行・登録を可能とし、その上にMERJが取引市場を展開、DIGTLがインターフェース等のインフラを提供、そして最後にWSBが合成資産をその上に発行するというものです。
証券取引をブロックチェーン上、しかもビットコインネットワーク上で実現するというのはかなり画期的で、WSB含め4社での大がかりなプロジェクトの賜物といえます。
また、このプロジェクトはWSBの「トラディショナルな金融をDeFi化する」という目標への第一歩、という強い意味合いも持ち合わせています。
まとめ
WallStreetBetsはトラディショナルな金融市場を現実的な方法でDeFiの世界に持ち込み、リテール投資家がそういった市場で抱えていた参入障壁を着実に崩しているプロジェクトです。
商品の数こそまだわずかしかありませんが、株式の合成資産、バスケット型アセット(ETP)共に実際にプロダクトがローンチされているのは注目に値します。
こういった商品の中身やタームがDAOの投票によって変わるというのは実験的な要素を強く感じざるを得ず、トラディショナル・マーケットの従来の株式やETF等とどのような性質の違いが生まれてくるのかとても気になるところです。
ミレニアル世代好みのカジュアルなマーケティングで「アンチ・ウォールストリート」的なメッセージを売り出しているプロジェクトですので、共感して集まってくる$WSBホルダーたちの金融リテラシーがこうしたプロダクトの発展のカギになると考えられます。