相関分析第1回:ビットコインはダウ平均株価・上海総合指数と相関しているのか?

相関分析第1回:ビットコインはダウ平均株価・上海総合指数と相関しているのか?

これから2回に分けて、ビットコインと他の経済指標・資産の相関性についてリサーチをしていきます。

金融産業では相関性が重んじられます。相関している資産があれば利益増大に繋がりますし、資産価格の予測に繋がります。また逆相関しているならばリスクヘッジにもなるため相関分析は頻繁に行われます。

早速今回は、第1弾としまして、ビットコインはダウ平均株価・上海総合指数に相関しているかどうかという点を掘り下げて行こうと思います。

また、一定の期間での相関係数だけを調べるのではなく、約6年間に渡り半年間での相関係数をローリング推定で調べたので、どのように相関関係が推移しているのかその動きもわかると思います。

時系列では少し相関係数を計算する上で考慮しなければならない厄介な点があります。どのような計算をしているのかを知りたい方は以下の記事を合わせて読んでください。

分析手法

本記事第1回では、ビットコインがダウ平均株価と上海指数の2つの経済指標に絞り分析を行います。

一定の期間でのビットコインと経済指標の相関関係を調べるだけではなく、2014年1月から2019年11月までの約6年間をローリング推定し、各期間での相関を計算しました。

ローリング推定とは、期間を固定して、全期間に渡って固定された期間ごとに統計分析を行う手法です。

今回は、90日間ごとに期間を動かしながら180日間でのビットコインと経済指標との相関を計算しました。

つまり、まず2014年1月1日から2014年6月30日までの180日間での相関係数をとり、次に90日間ずらし2014年4月1日から2014年9月30日までの180日間の相関係数を計算していきます。

この作業を2019年11月30日までの約6年間続け、各期間の相関係数を調べていくというわけです。

これにより相関係数がどのように時間と共に推移していくのかということがわかります。

どの統計分析手法を使うかは自由です。分散を求めてもいいですし、相関を求めることもでます。

平均を求めた場合、みなさんにもお馴染みな移動平均線(Moving Average)になります。

ビットコインとダウ平均株価

data.bitcoinity.orgが提供しているデータから、USD建でのビットコイン取引がもっとも高く、平均して全体の60%を占めていることがわかります。それほどビットコイン取引においてはUSDが大きな役割を占めているということです。

もちろん必ずしもUSDの取引量が多いければ、ビットコイン市場と米国証券市場に相関が見られるという訳ではありません。

日本人であれ中国人であれ、その他米国以外のトレーダーも米ドル建での取引ができます。

しかしこれだけ取引高に偏りが出ていれば少しの相関が生まれても不思議ではないだろうという考えの元、ダウ平均株価とビットコイン価格の相関を調べてみましょう。

結果

(ビットコインとダウ平均株価の相関係数:対数差分)

グラフをみたら一目瞭然ですが数値で見ても、ほとんど全く相関していないことが伺えます。最大でも0.1ほどしか相関がないため、ダウ平均株価の影響は無視できるといってもいいかもしれません。

一般に、相関と因果は異なります。相関があるからといって因果があるという結論とはならないのです。全く別の理由・因果が存在して、2つのデータに相関がみられることもあるためです。

しかし逆に、直接的な因果があるなら相関があるということは言えます。一方が他方に影響を与えているならば相関はみられるはずだからです。

そして重要なことにまさにこの論理から、相関がないならば因果もないと考えられます。つまり相関があるということは因果があるということの必要条件なのです。

これによって、ダウ平均株価とBTCに、現時点では相関も因果も認められないということが分析でわかりました。

BTCとダウの相関係数
1-0.100323930181135
2-0.0293062844991319
30.0374249389394158
40.0542995183268618
50.0386419913094286
60.0357901272968806
7-0.05016795606307
80.0583572945006919
90.102268617942366
10-0.0061823139690953
11-0.0134517143817201
12-0.00377869299751656
130.0479295130350903
140.0263641011875511
15-0.111742985058182

ビットコインと上海総合指数

続いて検証していきたい経済指標は上海総合指数です。

上海総合指数とは上海証券取引所に上場されている株式を対象とした時価総額加重平均型株式指数です。

やはりビットコイン市場を考察する上で欠かせないのが、中国の経済です。

特にビットコイン市場の最大のステークホルダーとも言えるマイナーが集中するのが中国です。

BLOCKCHAINによれば現時点で、全ハッシュパワーのなんと60%以上(F2Pool、Poolin、BTC.com、AntPool、SlushPool、ViaBTC、BTCTopなど)のハッシュパワーを中国系のマイニングプールが占めています。

よって中国の経済状況というのはビットコイン価格に影響すると考えることができますので、中国経済の代替指標として上海総合指数とビットコイン価格の相関性を調べてみます。

結果

(ビットコインと上海総合指数の相関係数:対数差分)

チャートをみていただければわかりますが、上海総合指数とビットコインの間にも特に相関性がみられませんでした。

全期間で相関係数の動きは、ほとんどダウ平均株価との相関係数と同じような動きをしています。

ビットコインと上海総合指数・ダウ平均株価をみてみると、双方相関係数が一旦下がっている期間がみられます。

相関係数チャート上では、6と8の間あたりに相関係数値の下落がみられ、マイナスに転じていることがわかります。

この時期は計算すると2016年1月から6月の半年間での相関係数だとわかります。この時期に何が起きたかはわかりませんが、ビットコインと他の経済指標との相関性が逆転するような何かが起こったことが示唆されます。

BTCと上海総合指数の相関係数
1-0.0568458473193128
20.0709359492667733
30.0292794574987708
40.0901074050209548
50.105014983297992
6-0.0765813692587231
7-0.205445040814008
8-0.00501704209460291
9-0.00608731031328722
10-0.13176540829106
11-0.110788231725659
12-0.00152832736037314
130.105368065030532
14-0.0419432895332722
15-0.0628940970987358

まとめ

本記事では、ビットコイン価格とダウ平均株価、ビットコイン価格と上海総合指数の2ペアの相関係数をローリング推定で計測しました。

全期間に渡りほとんど相関がみられないという結果になりました。

よって上海総合指数とダウ平均株価からビットコイン価格を予測することは難しいということになります。

どのような計算をしているのかを知りたい方は以下の記事を合わせて読んでください。

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