DAppマーケット(Ethereum, EOS, Steem, TRON) 2019年 第1四半期分析レポート
Yuya
分散型アプリケーション(Decentralised Application)、通称DAppsとは、スマートコントラクトを搭載したブロックチェーン(ブロックチェーンプラットフォーム)上に構築されたアプリケーションのことを指します。
DAppsには、分散型台帳を活用した暗号通貨取引所(DEX)やギャンブル・ゲームアプリ、金融系サービスなど様々な種類があります。
Crypto TimesのパートナーであるDapp.comは、Ethereum・EOS・Steem・TRONのDAppsデータを公開しているウェブサイトです。
こちらのページでは、Dapp.comが発表した「DAppマーケット 2019年第一四半期報告」を元に、今期のDApp市場について詳しく分析していきます。
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目次
プラットフォームごとのデータ(Ethereum・EOS・Steem・TRON)
2019年第一四半期までのDApps総数は1953件となっており、そのうち1343件がイーサリアムブロックチェーン上のものとなっています。
アクティブなDApps(インタラクションの存在したDApps)をみていくと、イーサリアムDAppsは約半数ほどしかアクティブでなく、他のブロックチェーンとの差を縮める形となっています。
アクティブユーザー数に関しては、既存・新規ともにTRONが圧倒しています。TRONのアクティブユーザーは30万人ほどとなっており、そのうち97%(29万人近く)がこの第一四半期からの新規ユーザーとなっています。
ボリュームに関してはEOSとTRONの二者が1兆ドルを越えており、イーサリアムは約2億ドル、Steemは1300万ドルとなっています。
以下の項目では、2019年第一四半期におけるブロックチェーンプラットフォーム(イーサリアム・EOS・Steem・TRON)ごとのアクティブユーザー数、トランザクション数、ボリュームをまとめたデータを解説していきます。
Ethereum
最も利用されているブロックチェーンプラットフォームとして長らく存在しているイーサリアムですが、アクティブDApp数・新規DApp数ともにEOSやTRONなどの新参プラットフォームを圧倒しています。
シェアの大半は分散型取引所(DEX)となっており、アクティブユーザーの33%、トランザクションの25%、ボリュームの51%を占めています。
Dapp.comのイーサリアムDAppトップ5はIDEX, Bancor, Kyber Network, Fork Delta, FCK (FCKのみギャンブル、他は全て取引所)となっています。
DAppゲームはアクティブユーザーの27%およびトランザクションの38%を占めていますが、実際に動いているネイティブトークンはボリュームのたった2%となっています。
ゲームの代わりにボリュームの大きなシェアを占めているのがギャンブル(44%)で、ユーザー/トランザクションあたりの課金額がとても大きいと推測できます。
イーサリアムのDAppマーケットでは、アクティブユーザー数、トランザクション数、ボリュームはおおよそ順相関となっていますが、トークン価格はあまり大きな相関を見せず140ドルあたりを上下しています。
これは、ETHがあまり投機に左右されず、純粋にエコシステムを支えるトークンとして機能しているからではないかと推測できます。
また、トランザクション数はDAppゲームに大きく依存していますが、分散型取引所が大きなシェアを占めるアクティブユーザー数とも強い相関性を示していることがわかります。
EOS
EOSはアクティブユーザー、トランザクション、ボリューム全てにおいてギャンブル系DAppsが大半を占めています(それぞれ45%, 74%, 82%)。
Dapp.comのEOSトップ5はEOSBet, FarmEOS, Dice, Dapp365, Crazy Diceとどれも全てギャンブル系となっています。
ギャンブル系DAppsとは比にならないものの、DEXやDAppゲームにもそれなりのアクティブユーザー数やトランザクション数存在します。
また、EOSではファイナンス系DAppsもわずかながらユーザー数を獲得しており、低トランザクション数・高ボリュームであることが見てわかります。
EOSのDAppマーケットをみていくと、トークン価格とアクティブユーザー数は1月上旬あたりから徐々に上方向に伸びていることがわかります。一方、トランザクション数とボリュームは2月はじめあたりから緩やかに低下しています。
Steem
Steemのアクティブユーザーの大半はSteemitなどを主軸としたソーシャル系DAppsが占めています(75%)。
一方、トランザクション数はゲームが62%、ボリュームはギャンブル系が94%と、それぞれのカテゴリごとの特徴が顕著に表れています。
ソーシャル系DAppsはアクティブユーザーこそ多いものの、ボリュームにおいては1%にも満たないことがわかります。また、前例同様、トランザクションはDAppゲーム、ボリュームはギャンブルが大半を占めています。
Dapp.comによるSteemのDAppトップ5はSteem Monsters (ゲーム), Magic Dice (ギャンブル), Smartsteem (ツール), Steemit (ソーシャル), eSteem (ソーシャル)となっています。
SteemのDApps市場では、トークン価格が緩やかに伸びる中、ソーシャル系DAppsに依存するアクティブユーザー数とDAppゲームに依存するトランザクション数はほぼ横ばいとなっています。
一方、シェアの94%をギャンブル系DAppsが占めるボリュームは3月上旬に大きなスパイクを見せており、これはMagic Diceなどのギャンブル系DAppsが一時的に流行を見せたからではないかと考えられます。
TRON
マーケティングに大きく依存したエコシステム発展戦略を繰り広げるTRONでは、アクティブユーザー、トランザクション、ボリューム全てをギャンブル系DAppsがほぼ独占する形となっています。
また、他のブロックチェーンプラットフォームでは全く出てこなかった「ハイリスク」DAppsもトップカテゴリとしてデータに表されています。
TRONのトップ5DAppsはTRONbet (ギャンブル), 888TRON (ギャンブル), TronVegas (ギャンブル), Gakex (ファイナンス), TronBank (ハイリスク)となっています。
トークン価格の上下はあまりないTRONですが、力の入ったマーケティングのおかげかアクティブユーザー数は大きく伸びていることがわかります。
また、EOS同様、トランザクション数とボリュームはそれなりの相関性を見せており、同じタイミングで山・谷が発生していることがわかります。
さらに、Steemと同じくギャンブル系DAppsに大きく依存したボリュームがスパイクを見せていることを考慮すると、ギャンブル系DAppsがトランザクション数とボリュームに大きな影響を与えることは確かであると言えるでしょう。
プラットフォームごとのトップDAppsもEOS・Steemの例にならってギャンブル・ハイリスク系DAppsがほぼ独占しています。
DApps市場の分析・考察
ギャンブル系DAppsはボリューム増減に関係
ギャンブル系DAppsはボリュームに大きな影響を与えていることがわかります。トークンを賭けて倍増しようというのが目的なわけですから、これは極めて当たり前であると言えます。
SteemやTRONのボリュームスパイクを見てわかるように、ギャンブル系DAppsはその流行り廃りもとても顕著に現れています。
また、ギャンブル系DAppsはトランザクション数もそれなりに高く、全体的に見て「エコシステム活性化の切り口」なのではないかと考えられます。
ゲーム・ソーシャル系DAppsは高トランザクション・低ボリューム
ゲーム・ソーシャル系DAppsはギャンブル系や取引所系と比較してボリュームはあまり大きくありませんが、トランザクション数はとても多いことがわかります。
EOS・TRONのようにギャンブル系DAppsがトランザクション数・ボリュームともにマジョリティとなっているケースでは、当然両数値がおおよそ相関して上下しています。
一方、イーサリアムやSteemのようにゲーム・ソーシャル系DAppsがトランザクション数を大きく占めている場合、この相関は弱まっています。
特に、トランザクション数をDAppゲーム、ボリュームをギャンブル系DAppsがそれぞれ大きく占めるSteemでは、ボリュームのスパイクに対してトランザクション数がほぼ反応していないことが見てわかります。
アクティブユーザー数と新規ユーザー率の関係
ETH | EOS | Steem | TRON | |
総ユーザー数 | 1,151,657 | 334,480 | 542,777 | 357,953 |
新規ユーザー数 | 114,122 | 163,310 | 23,396 | 286,121 |
新規ユーザー率 | 9.91% | 48.83% | 4.31% | 79.93% |
Q1アクティブユーザー数 | 186,544 | 262,450 | 66,936 | 303,747 |
アクティブ率 | 16.20% | 78.47% | 12.33% | 84.86% |
※アクティブ率 = (Q1アクティブユーザー数 / 総ユーザー数) * 100
これまでの分析では、アクティブユーザー数の推移は特定のカテゴリに大きく依存したり、他のデータと強い相関を見せることはありませんでした。
上の表を見ていくと、アクティブユーザー数がこの四半期で大きく増加したEOSとTRONは、ETHやSteemと比べて新規ユーザー率(総ユーザーにおける新規ユーザーが占める割合)がとても高いことがわかります。
つまり、アクティブユーザー数の大きな推移はマーケティングや特定のDAppsの流行などで大量の新規ユーザーが流入したことに起因するのではないかと考えられます。
また、新規・アクティブユーザー数とは逆に、新規・アクティブDApps数はイーサリアムがEOS・TRONを圧倒している点も特筆すべきでしょう。
これは、イーサリアムが様々なDAppsの開発基盤(=安定したプラットフォーム)として用いられる一方、EOS・TRONには特定のDApp(おそらくギャンブル系)を利用するためにユーザーが集まっているからではないかと考えられます。
まとめ
DAppマーケットはまだ登場して1年も経たないくらいの未熟な業界です。
今回のデータを見ていくと、新参プラットフォームの成長において賭博・ギャンブル系DAppsは重要な要素であることがよくわかります。
しかし、日本では賭博が禁止されているためこれらのDAppsへのアクセスはNGであることがほとんどです。TRONなどでは日本のIPアドレスをブロックするようデベロッパーに促したりもしています。
したがって、今年の残りの3四半期で日本でのDAppsの認知度がどれだけ上がるかには、若者にリーチしやすいゲームやソーシャル系DAppsの普及に大きく関わってくるでしょう。
TRON「日本市場での賭博系DAppsの開発・プロモーションは一切なし」 – CRYPTO TIMES
データ提供: Dapp.com