新たなセキュリティトークン向け規格『ERC1400』の特徴を解説!
Shota

Ethereumのトークン規格と言えば、ICOなどで目にすることの多いERC20やDAppsでNFT(Non Fungible Token)として利用されるERC721などが有名ですね。
これまでEthereum上に構築されるゲームやその他のプラットフォーム上で使われるユーティリティトークンとしての規格が主となってきましたが、先日GitHub上に新たにセキュリティトークン規格である『ERC1400』が公開されました。
本記事では、そんなERC1400の特徴を紹介していきます。
目次
セキュリティトークンの定義は?ユーティリティトークンとの違いを振り返ろう
最近耳にすることも多くなったセキュリティトークンという言葉ですが、この言葉は主にユーティリティトークンの対義語として使用されます。
以下では、この2つに関して簡単に説明を行いますが、セキュリティトークンにフォーカスした記事はこちらをご覧ください。
STO(セキュリティ・トークン・オファリング)とは?ICOとの違いを徹底解説
【ユーティリティトークン】プラットフォームを使うためのトークン
ユーティリティトークンは、簡単に言えばプラットフォーム内でのサービスや機能の利用などに利用されるトークンを示します。
例えば、Aというブロックチェーンを利用したプラットフォームのサービスであるA’を利用するために支払う対価としてのトークンはユーティリティトークンです。この場合、現実の資産やその他の価値を持つものとトークンの紐づけは行われていません。
Ethereumは先日SEC(米国証券取引委員会)により、セキュリティトークンではないと定義されましたが、これもEthereumのトークンであるETHが現実社会の価値と直接的に紐づけられていないことが大きな要因ではないかと考えられます。
【セキュリティトークン】保有が価値になる株式のようなトークン
一方で、セキュリティトークンですが対義語として利用されるように、トークンを保有しておくことが一定の資産や価値を表すものがこの言葉のもとに定義されていきます。
セキュリティという言葉は日本語で有価証券を示しますが、これは権利やその移動が保有トークンのownership(所有権)や枚数によって行われるものと考えると難しくないでしょう。
例えば、ハードウェアや計算能力の売買をトークンを介して行うことのできるSONMなどのプロジェクトで利用されるトークンは、トークンの保有や支払いが単純にプラットフォーム内でのサービス利用の媒体としてのみではなく、一定のハードウェアが持つ計算能力と紐づけられています。
セキュリティトークン規格ERC1400とは?
ERC1400規格は先月9日にGitHub上で、Adam Dossa氏(@adamdossa)、Pablo Ruiz氏(@pabloruiz55)、Fabian Vogelsteller氏(@frozeman)、Stephane Gosselin氏(@thegostep)の4名によって公開されました。
この規格は、Ethereum上にセキュリティトークンの発行を行うことを可能にします。
ERC1400は、同じくこの4人によって開発がすすめられたERC1410(Partially Fungible Token Standard)の規格をベースにしており、ファンジブルトークンの様々なタイプの所有権を管理する追加の機能性を持ちます。
ERC1400はオンチェーンで資産価値をモデリングする必要がある
証券の発行、取引、ライフサイクルをパブリックチェーン上に移行させるためにはオンチェーンで証券や所有権、財産をモデリングしていくための標準規格が必要とされます。
GitHub上に明記されているセキュリティトークンに必要とされる要件は以下になります。
- 譲渡の成功あるいは失敗ならば理由付きでそれをクエリするための標準インターフェース
- 法的措置や資産の回復のために強制的にTXsを執行できる
- 発行や償還向けの標準的なイベント(コントラクト?)を備える
- 特殊な株主権限や譲渡制限のあるデータなど、トークン保有者の残高にメタデータを付与することができる
- オフチェーンデータ、オンチェーンデータ、譲渡のパラメータに応じてメタデータの書き換えを行うことができる
以上5つはMUSTの要件となりますが、このほかにも必ずしも必要とされないいくつかの要件があります。
ERC1400の革新的点はメタデータの付与・書き換えが可能な点
ここまでERC1400がセキュリティトークンの標準規格としてのインターフェースとなることを説明してきましたが、具体的に何がすごいのでしょうか?
おそらく、ERC1400の革新的な部分はメタデータの付与・書き換えを行うことができる部分です。
従来の規格であれば、トークンの保有量に基づいたdividend(配当)を様々な条件に基づいて付与することが難しい状況でした。
これは、トークンそのものに所有権などをしっかりと定義するインターフェースが存在しなかったためです。
例えば、トークンセールでの購入者と新規上場後の購入者でメタデータにより二者を分類したり、トークンセール分の売却や譲渡などにおいても詳細な情報を記載することが可能になります。
ERC1400を利用し、送信者と十分な残高のみを必要とするERC20的なFungible(代替可能)な側面とERC721のNon-Fungible(代替不可能)な側面をメタデータの付与によって実現することで、証券として機能するために必要な所有権の明確化や配当の多様化を行うことが可能になると考えています。
まとめ
セキュリティトークンの標準的なインターフェースであるERC1400規格を紹介しました。
トークンに付与することのできるメタデータを利用することで、これまで簡単に差別化することが難しかった所有権などを簡単に分類することができ、これがdividend(配当)の分配などに今後大きく役に立つ可能性があるというものでした。
現時点では、ERC1400は議論が行われている段階なのでこれを採用したセキュリティトークンはまだ存在しない(と思います)が、今後この規格が活用されていくのが楽しみですね!