STO(セキュリティ・トークン・オファリング)とは?ICOとの違いも交えて解説
Yuya
STO(セキュリティトークンオファリング)とは、主に株式などの証券(セキュリティ)をブロックチェーン上でトークンとして発行することを意味します。
これらの技術は「ウォール・ストリートのレガシーシステムを変える」などと囃されていますが、技術・金融・法律の色々な側面が絡まりなかなか正確に理解しにくいコンセプトなっています。
こちらのページでは、セキュリティトークンの定義やSTOについて詳しく解説し、現在界隈をリードするプロジェクトなどを紹介していきます。
STO(セキュリティ・トークン・オファリング)の正確な定義とは?
STOは、ICOの衰退とともに2018年あたりから注目され始めた資金調達法です。
セキュリティトークン自体には様々なメリットがあるものの、STOは様々な法規制が絡まることでデメリットも出てきます。
セキュリティトークンの定義・メリット
現在ニュースなどで「セキュリティトークン」と言われる時は、次の3つのどれかを指すことが多いです。
トークナイズドアセット(TA) | あらゆるモノの所有権をトークンとして表したもの。 |
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エクイティトークン(ET) | トークナイズドアセットのうち、株式や債券などのセキュリティを表したもの。 |
その他 | (主に米国で)法律上セキュリティに当てはまるトークンなど。 |
STOが意味するセキュリティトークンは一般的に2番目の「エクイティトークン」となります。
トークナイズドアセットやエクイティトークンの実用化には次のようなメリットがあります。
- 発行・流通プロセスの簡易化: ブローカー・ディーラー業務やコンプライアンス遵守などをスマートコントラクトやトークン規格を用いて自動化できる。
- 市場障壁の排除: 市場の24時間化や、国・地域で隔てられた市場を統合できる。
- 所有権の細分化(フラクショナル・オーナーシップ): 物理的にそれ以上細かく分けられない(不動産物件など)資産の所有権を細分化して取引できる。
詳しくは下記の記事でも解説しているので下記の記事も合わせてお読みください
【最新版】セキュリティトークンとは?定義と仕組みを徹底解説 – CRYPTO TIMES
STOにおけるデメリットとは
一方、STOのデメリットとして懸念されているのが、国や地域によって「誰が投資できるか」や「いくら調達できるか」に制限が出てくることです。
例えば国やプラットフォームによっては、特定以上の年収、資産を持つ個人・法人(適格投資家)のみがSTOに参加できる、などといった規制があります。
また、国の法律によっては調達してよい額に限度があったり、不特定多数の投資家に投資を呼びかけることができる・できないといった制限もあります。
STOのプロセスを米国の例で紹介
米国で証券を発行する際には、登録届出を行うか、免除規定を利用するかといった2通りにわかれます。
前者は数億円相当のコストがかかるため、スタートアップの多いブロックチェーン系企業には向いていません。したがって、一般的には免除規定を活用したトークン型証券発行が選択肢に残ります。
STOに利用される「レギュレーション」と呼ばれる免除規定には、D、A+、Sと呼ばれるの3つのカテゴリが存在します。
- レギュレーションD: 調達限度額は存在しないが、適格投資家のみしか対象にできない(例外あり)。
- レギュレーションA+: 非適格投資家を対象にすることができるが、審査に時間がかかる。
- レギュレーションS: 国外投資家を対象にすることができる。
STOの大きなデメリットは、このように対象となる投資家や調達額に制限が生まれる点にあるといえます。
必ずおさえたい: STOはICOの上位互換ではない
STOについて知っておくべき点の中で最も重要なのが、STOはICOの上位互換ではない、ということです。
STOは、モノの所有権をトークン化したもの、特に企業の所有権(=株式)をトークンとして表したものを発行・販売する資金調達法のことを指します。
一方、ICOで主に取り扱われるのは、ブロックチェーンネットワークのサービスを利用する権利を表すユーティリティトークンです。
もちろん、ICOで実質的なエクイティトークン(ET)などが取り扱われてこなかった訳ではなく、各国で規制が強まるにつれ、ETにはよりコンプライアンスに特化した「STO」という別個の資金調達法を設けた、と考えるのが正しいでしょう。
STOを取り巻くエコシステムを解説
ここまででは、各トークンの定義を紹介した上で、STOの仕組みを解説してきました。この項では、実際にセキュリティトークン(TA/ET)の発行・流通に取り組んでいるプロジェクトをいくつか紹介していきたいと思います。
STOに関連する事業は、大まかに2つに分けられます。
ひとつは、セキュリティトークン(TA/ET)の発行を代行する事業です。コンプライアンス・法律の遵守をサポートし、アセットをプライマリマーケット(発行から初めて投資家の手に渡る市場)を確立します。
もうひとつは、トークナイズドアセットやエクイティトークンを取引するセカンダリマーケット(すでに発行されているアセットを取引する市場)を提供する事業です。
主なセキュリティトークン発行プラットフォームを紹介
Polymath
主な業務 | セキュリティトークン発行プラットフォームおよびマーケットプレイスの運営 |
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特徴 | セキュリティトークン規格「ST-20」を提供している |
Polymathのアプローチは、STOの実施やセキュリティトークンの取引に際し発生する各種コンプライアンスを、トークン規格として規格化してしまう、というものです。
同社は、イーサリアムのERC-1400規格と統合予定の「ST-20」と呼ばれるセキュリティトークン規格を提供しており、同規格には、発行されたセキュリティが法規制に則っていることを自動で確認する機能がついています。
具体的には、セキュリティがウォレットを移動する際に、その初期保有期間(通常12ヶ月)を満たしていることや、売り手のKYCが最新であること、買い手がホワイトリストに入っていることなどがチェックされるようになっています。
Securitize
主な業務 | セキュリティトークン発行プラットフォームの運営 |
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特徴 | サードパーティがニーズに応じたツールを提供できるモジュラープラットフォーム |
Securitizeは、証券のライフサイクルの大元となる発行プラットフォームを自社で提供し、流通プロセスにおける他のパートはサードパーティが開発するDApps(SecuritizeではDS Appsと呼ばれる)で補完する、というものです。
これは、配当の配布や株主の投票といった機能を実装するDS Apps(スマートコントラクト)や、セキュリティの取引を行う取引所を「モジュール(後付けのパーツ)」として、Securitizeが提供する発行母体にくっつけていく、という感じです。
プロダクトのコアとなるトークンはデジタルセキュリティ(DS)トークンと呼ばれるERC-20トークンとなっています。
OWN
主な業務 | セキュリティトークン発行プラットフォームの運営 |
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特徴 | デュアルチェーンによるプライバシー強化 |
他のエクイティトークン発行プラットフォームとはまた異なるプロダクトを提供しているのがOWNです。
コンプライアンス遵守もサポートしたエクイティトークンの発行というは他と一緒ですが、OWNではデュアルチェーンシステムを設けている点が大きな特徴です。
取引データをパブリックチェーンに、プライマリ市場における投資家データをプライベートチェーンに分けて保存することで、個人情報の安全性を高めています。
また、OWNは独自アプリケーションなどのプロダクトができあがっている点も特筆に値します。
HARBOR
主な業務 | セキュリティトークン発行プラットフォームの運営 |
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特徴 | 証券発行からセカンダリ市場までのインフラ整備 |
アセットの発行からセカンダリマーケットまでのインフラ整備に力を入れているのがHarborです。
エコシステムで利用されるRトークンはERC-20トークンで、他のプラットフォームと同様に、トークンレベルでのコンプライアンス遵守を掲げています。
また、HarborではREITなどの投資不動産のトークン化に特化している点も特徴です。
主なセキュリティトークン取引プラットフォームを紹介
tZero
主な業務 | セキュリティトークン取引プラットフォームの運営 |
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特徴 | 大手通販会社Overstockの子会社である |
セキュリティトークンの取引サービスに特に力を入れているのが、米通販大手Overstockが提供するtZeroです。
自社株の一部を自らSTOで発行したtZeroは、今年2月に機関投資家のみを対象に取引サービスを開始しました。
Overstockはクリプトやブロックチェーン技術にかなり前向きな大企業として、ビットコインでの納税やクリプトファンドの運営なども行なっています。
SIX Swiss Exchange
主な業務 | セキュリティトークン取引プラットフォームの運営 |
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特徴 | スイスの証券取引所 |
次期セキュリティトークン取引プラットフォームとして注目すべきが、スイスの証券取引所であるSIX Swiss Exchangeです。
クリプトフレンドリーな国はスイス以外にもたくさん存在しますが、国の証券取引所がセキュリティトークン取引所のローンチをアピールしている点はなかなか面白いと思います。ローンチは2019年内に予定されています。
同取引所ではすでに暗号資産の上場投資商品(ETP)も取り扱っています。また、不動産がセキュリティトークンとして取引された事例(SIX Swiss Exchangeを介してではない)もすでにあります。
OpenFinance Network
主な業務 | セキュリティトークン取引プラットフォームの運営 |
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特徴 | インターオペラビリティ重視・ベテランチーム |
OpenFinance Network (OFN)は、トークナイズドアセットのセカンダリ取引に関する規格やAPIの開発に取り組むプロジェクトです。
金商業界のベテランたちによって結成されたチームは、PolymathやHarbor、Securitizeなどともパートナーシップを結んでいます。同取引所は、一般投資家が投資に参加できることも特徴です。
まとめ
本記事では、セキュリティトークン(ST)の定義とセキュリティ・トークン・オファリング(STO)の現状を解説し、STの発行・流通プロセスにおける現在主要なプロジェクトを紹介してきました。
一般的にはエクイティトークンを発行・販売する資金調達法をセキュリティ・トークン・オファリング(STO)と呼び、これには以下のような特徴があると解説しました。
- ICOの上位互換ではない。
- 適格投資家制限や調達上限額などあり。
- 米国ではユーティリティトークンがセキュリティとみなされるにつれ、STOの定義がさらに曖昧になりつつある。
参考記事一覧
- Digital Securities Market Research 2019 by Kepler Finance – Kepler Finance
- What are Security Tokens? – Blockgeeks
- Mapping out the Security Token Ecosystem – THE BLOCK
- Will STOs (security token offerings) rule over ICOs in 2019? – Hackernoon
- Security Token Offerings (STOs) — What You Need To Know – Hackernoon
- セキュリティトークンのエコシステム概観 – Unknown Programmer’s Blog