ブロックチェーン技術の普及をきっかけに、分散型ネットワークを使用したサービス(DApps)がたくさん登場してきています。
これらのサービスをひとつの分散型ネットワーク上のアカウントで統括しよう、というプロジェクトがEssentia(エッセンシア)です。
このプロジェクトでは、それぞれのサービスに関連する個人情報などをひとつのアカウントに統合することで、各サービスへのログインの簡易化や、個人情報管理の改善などといったメリットが見込まれています。
エッセンシアのプロジェクト・ゴールはインターオペラビリティ(相互運用性)、オンライン上の個人情報の保護・管理と分散型オペレーティングシステムの構築の3つです。
今回は、このエッセンシアの仕組みや、サービスを利用するメリット、uPortなどの類似プロジェクトとの違いなどを徹底的に解説したいと思います。
目次
エッセンシアの概要
通貨名/ティッカー | $ESS (ERC-20) |
---|---|
創業者(CEO) | |
主な提携先 | BitFinex, Kenetic Capital, TLDR Capitalと他9社 |
特徴 | デジタル・アイデンティティ・フレームワーク / 分散型オペレーティングシステム |
公式リンク | Webサイト |
Telegram | |
Medium | |
コンセプト
ビットコインの普及をきっかけに、ブロックチェーン技術は大きな発展を遂げ、今では分散型ネットワークを使用したサービス、通称DAppsが次々と登場してきています。
DAppsとは?ブロックチェーンネットワークを利用したサービスまたはアプリケーションのこと。ペイメント、金融、サプライチェーンマネジメント、分散型ストレージ、分散型取引所(DEX)をはじめ様々な分野でDAppsが誕生している。
いくつものサービスを利用していると、都度別のウェブサイト等に移らなければいけないほか、IDやパスワードなどのサービス利用に関する個人データの管理が難しくなります。
そこで、こういった情報やサービスをひとつのアカウントに統合し、あらゆるデバイスからアクセスできる分散型フレームワークを構築しよう、というのがエッセンシアのコンセプトになります。
個人情報を分散型ネットワークを利用してひとつのアカウントに紐付けすることで、他人になりすます「ID詐欺」などを防ぐことが期待されています。
このフレームワークを利用することで、ユーザーはDAppsへのログインや関連する情報の管理などをひとつのアカウントから容易・安全に行うことができるというメリットがあります。
また、エッセンシアでは分散型オペレーティングシステム(OS)の開発も行なっており、プロダクトのコンセプトが可視化されています。
テクノロジー
エッセンシアでは、サービス利用に際しメールアドレスや電話番号などといった情報は全く必要なく、シードと呼ばれる文字列とパスワードのみであらゆるデバイスからサービスを利用することができます。
プロダクトのコアとなる部分はフレームワークで、サービスの利用に際しては必ずしも公式から提供されているオペレーティングシステムを使わなければいけない訳ではないようです。
エッセンシアのOSはコンピューター、スマートフォンなど様々なデバイスで利用できますが、フレームワーク自体はIoTやコマンドラインなどでも利用できるとされています。
エッセンシアを利用するメリット
ユーザーやデベロッパーは、エッセンシアのフレームワークを利用することにどのようなメリットがあるのでしょうか。
エッセンシアではひとつのアカウントで複数のDAppsへのログインを行えるeLoginという機能が備わっています。
これは、FacebookやGoogle+のアカウントを通じて他のオンラインサービスにログインできる機能と似ています。
この機能のメリットはそれぞれのDAppsでのパスワードが不要になるという点にあります。
また、エッセンシアではDAppsやその他のサービスなどで発生する個人情報も分散型ネットワーク上に存在するアカウントに紐付けされるため、各種サービスでのKYCを円滑に進めることにも役立つことが期待されています。
エッセンシアが提供する分散型オペレーティングシステムは、自分が利用しているDAppsや他のオンラインサービスをひとつのシステムから一括で操作できる便利なものとなっています。
ウォレットや取引所、ストレージなどをはじめとするあらゆるサービスを自分のアカウントと紐付けすることで、様々な種類のデータを一目に管理できるようになります。
ESSトークンとは?7つの特徴を解説!
エッセンシアの「ESSトークン」は同分散型フレームワークのネットワーク維持の燃料となる通貨となります。
公式が掲載しているトークンユーティリティに関する文書によると、ESSトークンには7つの特徴があるとされています。
ノード報酬と評判システムの統合
エッセンシアの分散型ネットワークでは、各ノードに一定量のESSトークンをロックさせるPoSコンセンサスメカニズムを採用しています。
悪意のあるブロック承認はロックされたトークンの損失につながるため、各ノードには正当なネットワーク処理をするインセンティブがあります。
スパム対策
ESSトークンには、ボットやハッカーなどによる不正なリクエストを防止する対策が施されています。
スパミングに対しマイナスのインセンティブを施すことで、このような不正行為の阻止が試みられています。
エッセンシアまたはサードパーティへのペイメント
ESSトークンはサードパーティの分散型ストレージサービスの容量拡張など一部の有料サービスへの支払い手段にも利用することができます。
価値の貯蔵 – プロダクトやサービスの購入
上記の項目と似ていますが、ESSトークンは導入されているDAppsが提供するプロダクトやサービスへの支払い手段としても利用でき、将来的にはDAppストアの導入も計画されています。
また、この機能はオペレーティングシステム内での通貨の両替のことも指しており、現段階ではESSトークンを含め14種類の通貨に対応しています。
分散型ガバナンス
エッセンシアでは、ESSトークンの保有量に応じてプロジェクトの方針決定に際する投票権を得ることができます。
また、一定量以上のトークンを保有するユーザーに何らかのボーナスを与えるという計画も立てられているようです。
評判システム
ノード報酬の項目でも紹介した通り、ESSトークンはネットワークへの貢献を助長し、不正行為にペナルティを与える評判システムが導入されています。
インセンティブシステム
コンセンサスメカニズムに関わるインセンティブとは別に、エッセンシアではトークンの総発行量の一部が今後プロジェクトの開発貢献者へのリワードとしてリザーブされています。
このリワードの具体的な獲得方法は言及されていませんが、同プロジェクトではハッカソンやカンファレンスの開催も多数計画しているため、このようなイベントでの報酬として利用されるのではと考えられます。
エッセンシアのプロダクトデモ
エッセンシアはすでに、上記の分散型オペレーティングシステムのデモを公開しています。
プロダクトの利用に必要なのはパスワードの設定のみで、誰でもこちらから簡単に登録・利用できます。
以下では、現段階でのプロダクトデモでできることを紹介します。
ウォレットの一括管理
エッセンシアのアカウントを作成すると、現段階で14種類の通貨のウォレットが自動で生成され、これら全てをアカウント内で一括で管理することができます。
それぞれのウォレットからの送金などもプラットフォーム内で行うことができます。
また、該当通貨のプライスチャートやアカウント内で所持しているアセットの割合なども自動で表示されます。
ストレージサービスの一括管理
エッセンシアでは、IPFS、SWARM、Storjなどといった分散型ストレージサービスにアップロードしてあるファイルなどもアカウントに紐付けし、一括で管理することができます。
今回作成したテストアカウントでは何もしていませんが、データのアップロードやダウンロード、削除など基本的な操作は全てプラットフォーム内から直接行うことができます。
eLogin
eLoginセクションでは、各種DAppsへのログインを行うことができます。
アカウントから紐付けするDAppsへのログインリクエストが一度承認されれば、パスワード不要で自動ログインを行うことができます。
この機能の最大のメリットは個々のサービスごとにパスワードを設定したり記憶したりする手間が省けることにあります。
IDEXへのアクセス
エッセンシアでは、分散型取引所であるIDEXにサービス内から直接アクセスすることができます。
オーダーの発注、注文板、取引履歴など全てがプラットフォーム内で完結するようになっています。
今後追加予定の機能
Essentiaでは、フレームワークに対応させたいDAppsなどに投票を行うことができ、公式によると今後さらに多くの機能が追加されるとされています。
類似プロジェクトとの比較
エッセンシアは、類似するプロジェクトとしてCivic、The Key、SelfKey、Remme、uPortを挙げています。
エッセンシアを含め、これらのプロジェクトはすべてデジタル・アイデンティティ系のものとなっており、eLogin、KYC簡易化、ID詐欺防止などといった利点は共通で存在しています。
しかし、エッセンシアではサービスを利用するにあたり特定のアプリやメールアドレス、電話番号などが必要ないという点で類似プロジェクトと大きな違いがあります。
また、uPortやSelfKeyは独自のウォレットを開発していますが、ウォレットも含めストレージや他のDAppsなどを全て統括できるOSを開発しているのはエッセンシアのみとなります。
プロジェクト開発にまつわる長所・短所まとめ
ここまででは、エッセンシアのフレームワークの仕組みや、利用するメリット、類似プロジェクトとの違いなどを解説してきました。
ここで、プロジェクトの開発にまつわる優れた点や、懸念点などを挙げてみます。
長所
多数ファンドからの戦略投資・アドバイジング
エッセンシアは、BitFinex、Kenetic Capital、TLDR Capitalをはじめとする12社と戦略提携を結んでいます。
これに加え、13種類の仮想通貨・DAppsがすでにシステムに統合されています。
プロダクトデモがすでに公開されている
上記でも紹介した通り、エッセンシアでは分散型オペレーティングシステムのデモがすでに公開されており、実際に誰でも利用することができます。
デジタル・アイデンティティ系のプロジェクトはコンセプトの理解が難しいところがありますが、エッセンシアでは目に見えるプロダクトが存在する点は良いといえるでしょう。
プロジェクトに関する情報が豊富
エッセンシアでは、ホワイトペーパーはもちろん、トークンユーティリティを解説する文書や、ビジネスプラン、さらには専用のウィキなども公開されています。
短所
プロジェクトの内容がとても複雑
エッセンシアには大きく分けて二つのプロジェクトがあります。
ひとつは、複数のDAppsや他のオンラインサービス上に存在する個人情報をひとつのアカウントで管理できるフレームワークの構築です。このプロダクトには、パスワード不要のログインや、ID詐欺防止などといったメリットが見込まれています。
もうひとつは、独自の分散型オペレーティングシステムの開発です。上記で紹介したプロダクトデモなどがこれに当てはまります。このプロダクトでは、複数のDAppsをひとつのプラットフォーム上で利用・管理できるメリットがあります。
エッセンシアはとてもテクノロジー寄りのプロジェクトであるため、上記のようなポイントを理解するのが少し難しくなっています。
他プロジェクトに比べ開発が遅め
紹介した類似プロジェクトは、プロダクトが正式にリリースされているものがほとんどです。
これらのプロジェクトがすでに保有するシェアに対抗し、フレームワークの性能や分散型オペレーティングシステムのマーケティングにどれだけ力を入れられるかに要注目です。
エッセンシアのロードマップ
プロジェクトのロードマップも確認しておきましょう。
2018年 Q3 | βテスト版の公開、ハッカソンの実施やカンファレンスへの参加 |
---|---|
2018年 Q4 | 政府・法人向けソリューションの提示 |
2019年 Q1/2 | サービスの多言語化、IoTでの応用 |
2019年 Q3/4 | 分散型ガバナンスの導入、Essentia主催のカンファレンス |
2018年 Q3
上記でも紹介した通り、オペレーティングシステムのデモ版はすでに公開されています。
ハッカソンやカンファレンスの情報はまだ発表されていませんが、ファンドの開設やフィンランド政府との協力などの様々な活動が報告されています。
2018年 Q4
この四半期には様々なソフトウェア・ハードウェアのアップデートがなされる模様ですが、特に注目すべきは政府や法人とのパートナーシップ展開でしょう。
上記の通りEssentiaはすでにフィンランド政府との協力を行なっており、他プロジェクトとのパートナーシップもたくさん結んでいます。
この時期にはより具体的な提携案が登場してくると考えられます。
2019年 Q1/2
公式ウェブサイトおよびOSデモで導入されている言語は現時点で英語と韓国語のみとなっていますが、この時期に言語設定のバラエティを増やすことでより多くのユーザーがサービスを利用できるようになると考えられます。
また、具体的な提案はなされていないものの、同時期にはエッセンシアフレームワークがIoTにも応用される予定です。
2019年 Q3/4
エッセンシアは、ESSトークンの機能性を徐々に向上するプランを立てており、この時期にはトークンにガバナンス機能も付け加えるとしています。
また、EssConと呼ばれる独自のカンファレンスの開催も企画しており、関連・提携するプロジェクトなどを巻き込んだコミュニティの発展が期待されます。
まとめ
エッセンシアは、複数のDAppsや他のオンラインサービス上に存在する個人情報をひとつのアカウントに紐付けすることで、eLogin、KYCの簡易化、ID詐欺防止などといったメリットを享受できるフレームワークということでした。
また、エッセンシアは同フレームワークを利用した分散型オペレーティングシステムも提供しており、ひとつのプラットフォームから複数のDAppsにアクセスできるようにもなっています。
先月末に終了したトークンセールでは、ハードキャップの98%(24,815,390USドル)を調達するなど、世界中から支持が受けているようです。
プロダクトの完成にはまだ時間がかかりそうですが、今後のさらなるプロジェクトの発展に要注目です。
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