BTC価格変動の94%を説明できたメトカーフの法則は現在でも健在か

BTC価格変動の94%を説明できたメトカーフの法則は現在でも健在か
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過去にBTCの価格変動を94%予測したメトカーフの法則という法則を聞いたことはありますか?

最近はメッキリ聞かなくなってしまったビットコインとメトカーフの法則ですが、2017年頃には「ビットコインの価格変動、94%は1つの方程式で説明可能」などと多く話題に上りました。

メトカーフの法則自体は古く1993年にRobert M. Metcalfe氏によって提唱された法則で、ネットワーク価値を議論する上で欠かせない法則となっています。

端的に言えば、ネットワークの価値はそのネットワークに参加する参加者や端末の数の2乗に比例するという法則です。

メトカーフの法則はよくムーアの法則などと並び話題にされます。メトカーフの法則に関して、よく大きなる疑問が浮かび上がるわけです。

「メトカーフの法則はビットコインネットワークにも適用可能か?」、言い換えれば「ビットコインの価格や時価総額は、ビットコインネットワークに参加する主体数の2乗に比例しているのか?」という疑問です。

この疑問に対する回答がイエスならばビットコインの今後の価格予測に役立つだけではなく、ビットコインの最適価格すらも導くことできる黄金の法則となります。

本記事では、「メトカーフの法則によって現在のビットコイン時価総額を予測することは可能か?」について解説したいと思っています。なるべく簡単に解説しますので、最後までお付き合いください。

メトカーフの法則とビットコイン時価総額の関係

メトカーフの法則を使って現在のビットコイン時価総額の予測に入る前に、これらがなぜ話題になったのでしょうか?

それはズバリ2つの間に強い関係性があることを指摘した研究がなされたからです。

2010年7月17から2018年2月26日までのデータを用いてメトカーフの法則とビットコイン価格の関連性を調べた論文が発表されました。

この論文ではメトカーフの法則が実際に成り立つのかを調べるため、ビットコインネットワークに参加するユニークアドレス数(Number of unique Address)の2乗で、同時点のビットコイン時価総額(Market Capitalization)をどれだけ説明できるかが研究されています。

前述では2乗と記載していますが、これらのパラメーターは厳密に言えば2乗ではなく、論文中では1.69などとされており、データによって多少の違いが生まれます。

なぜなら、メトカーフの法則の本質は2乗で説明できることではなく、参加主体数の累乗でそのネットワークの価値を表現できるような関係が認められます。その為、パラメータは2乗でなくてもよいとなっています。

この論文の研究では驚くことに、高い精度(高い決定係数)でユニークアドレス数の累乗がビットコイン時価総額の推移に当てはまっているという結論になりました。そのため、メトカーフの法則はビットコイン時価総額を高い精度で説明できると、この論文内では結論づけています。

メトカーフの法則を用いて実際に分析

(メトカーフの法則とビットコイン時価総額:高い精度でアドレス数の累乗が、ビットコイン時価総額を説明していることがわかる)

論文で紹介されている手法を使って実際にデータ分析した結果を以下の図で表しています。赤い線であるメトカーフの法則(ユニークアドレス数の累乗)が、黒い点であるビットコイン時価総額をよく説明していることがわかります。

この図も論文中で提示されている図と殆ど同じになっています。上記の図では、赤い直線が黒い点にどれだけ精度よく重なるかを説明しています。

この赤い直線が、黒い点にどれだけ良く当てはまるかを示している指数を決定係数と呼び、この数値は0.9368となっています。この数値は非常に高くなっています。

この数値は、研究者が論文で発表している結果とほどんど一致しています。 (論文中では決定係数は0.95となっていますが多少データ数などが異なるため仕方がないと言えます)

続いて、そのメトカーフの法則から導かれた回帰曲線と実際のビットコイン時価総額を比較したチャートを用意しました。

上の結果から当然ではありますが、回帰曲線がビットコイン時価総額と同じ動きをしていることがわかります。これはつまり、ビットコインの時価総額が、ビットコインのウォレットのユニークアドレス数の累乗で予測できることを表しています。

(対数表示)

図からも数値的にも今回の分析結果が論文のものと同じ結果になりました。よって今回の分析手法の大枠は正しいものとなります。

過去のメトカーフの法則を直近のデータを利用して分析すると?

同様の分析方法を、2018年2月27日から直近2019年12月7日までのデータに適用した場合どうなるでしょうか?上記のデータや論文のように、良い当てはまりを示すのでしょうか。

もし、良い当てはまりを示しているのであれば、メトカーフの法則は現在も使えるという結果になります。当てはまりが悪いのであれば、少なくともユニークアドレス数がビットコイン価値を予測するよい指標であるとする積極的な根拠がないことになります。それでは、早速分析していきましょう。

いざ分析:メトカーフの法則は今も健在か?

2018年2月27日から2019年12月7日までユーザアドレスと同期間のビットコイン時価総額データを使って分析行った図が下記になります。

以前とは打って変わって、ユーザーアドレスの累乗(メトカーフの法則)ではビットコイン時価総額をうまく表すことができないという結果になっています。メトカーフの法則を示していた赤い線はほぼ水平となり、ビットコイン時価総額の予測には何の矢に経っていません。

回帰曲線の精度を表す決定係数も、0.02033と極めて低い値を取っています。

少なくとも2018年2月27日から2019年12月7日までのデータを利用して分析をすると、ビットコインネットワークではメトカーフの法則が成り立っているとする積極的な証拠が見つからないことが言えるのではないでしょうか。

下の図は、メトカーフの法則から導いたビットコイン時価総額の予測値と、実際の時価総額を並べたチャートになります。ほとんど異なる動きをしていることがわかるかと思います。

メトカーフの法則がビットコインの時価総額をうまく表現できていないということになります。

時間軸を併せての比較検証

そもそも、2018-2019年のデータだけを利用しているから、当てはまらないのでは?という事も考えられます。そこで、決定係数が高くなっていた分析の回帰曲線内で時価総額と回帰曲線に乖離が見られた期間をピックアップして分析してみましょう。

四角で囲った部分が、2015年6月22日-2017年2月11日となっており、視覚的に見ても、この期間では回帰曲線が時価総額をうまく表していないようにも見うけられます。

つまり、この期間中に限ってはメトカーフの法則が適用できていないように見えるかもしれません。今回は、四角で囲った期間にのみメトカーフの法則を適応してみた結果になります。

この期間ではおおよそメトカーフの法則が適用されないと視覚的に感じられます。期間的にも2018年2月から2019年11年とほとんど変わらない長さです。

同じように決定係数が高くならなければ2018年から2019年の期間と同様、メトカーフの法則がこの期間では通用していません。そして、四角で囲った期間以外の当てはまりに引っ張られていたということを意味しています。

気になる2015年6月22日-2017年2月11日の決定係数は、0.6056でした。2011年から2018年までの全体のデータと比較するとやや下がってしまうものの、数値としては比較的高い値を示しており、十分メトカーフの法則の適応内であることが言えます。

少なくとも、上で示した0.02033の数値と比べればはるかに大きな数値であることがわかります。

まとめ

今回は過去に話題になったメトカーフの法則という面白い法則について、最近のデータを用いた分析を行ってみました。メトカーフの法則を理解していただけたとともに、ビットコインネットワークへの応用についても理解できたでしょうか。

ネットワークの構成員数・主体数が、ネットワークの価値に影響を与えるとはよく言ったもので、よくよく考えてみると当然、ネットワークを形成する全てのものに適応可能な考えです。

ビットコインには、根本的価値(ファンダメンタルな価値)がない、とよく指摘されています。

しかし、少なくともネットワークを構成する主体がいて、ネットワークを支えるためには多少なりともコストがかかっていることも言えます。

実際にビットコインのファンダメンタルな価値、またその価値を高い精度で説明する指標は存在するのでしょうか?

参考文献

Are Bitcoin Bubbles Predictable? Combining a Generalized Metcalfe’s Law and the LPPLS Model

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