カシオ羽村技術センター見学ツアー|VIRTUAL G-SHOCKの裏側とは【レポート】

2024/06/19・

ユッシ

カシオ羽村技術センター見学ツアー|VIRTUAL G-SHOCKの裏側とは【レポート】

創立から65年以上経過し、日本人で知らない人はいない世界的企業のカシオ計算機。

同社は昨年より「VIRTUAL G-SHOCK」と呼ばれる主力製品のG-SHOCKシリーズを元にしたNFT活用のWeb3プロジェクトを開始している。

今回はVIRTUAL G-SHOCK NFTのホルダーを対象に招待された羽村技術センターの見学ツアーの様子をお届けする。

カシオのVIRTUAL G-SHOCKとは?

「VIRTUAL G-SHOCK」はカシオ計算機株式会社が昨年より開始した同社の世界的な人気時計シリーズ「G-SHOCK」を主軸に、NFTなどの最先端技術を活用しながら新しい形のコミュニティ形成を行っていくプロジェクト。

プロジェクトは特定コミュニティや共創企画への参加権が付随するPolygon上のNFT「G-SHOCK CREATOR PASS(GSCP)」を皮切りに開始。昨年末には、NFTとしてデジタル上で耐衝撃構造が表現された新たなG-SHOCK「VGA-001」「VGA-002」が0.1 ETHで発売されるなどしてプロジェクトの活動が進められている。

VIRTUAL G-SHOCKでは、Discordにて様々な対話が行われており、G-SHOCK CREATOR PASSのカラーを自身でデザインするイベントがコミュニティ内で実施されるなど、プロジェクト側と参加ユーザーの双方的なコミュニケーションが行われている。

VIRTUAL G-SHOCKコミュニティ内の様子。G-SHOCK CREATOR PASSのカラーデザインコンテストが行われた。

羽村技術センター見学ツアーに参加

VIRTUAL G-SHOCK NFTのユーティリティの中にカシオの羽村技術センターの見学ツアーが含まれており、NFTホルダーはカシオの製品開発を支える裏側やVIRTUAL G-SHOCKのデザインについて、最前線で活躍する社員の説明や実際の実験室を見ながら学ぶことができる。

Crypto Timesのメディアチームは今回、同見学ツアーに参加したのでその様子をお届けする。

ツアーの流れ

  • VIRTUAL G-SHOCKについての説明
  • カシオ計算機の歴史などについての説明
  • 羽村技術センターの実験室の紹介
  • VIRTUAL G-SHOCKのデザインの説明
  • 参加者とカシオ社員のディスカッション

東京都羽村市にある羽村技術センターに集合した10名ほどの参加者は同センター内の一室に集められた。

会場には様々なG-SHOCK製品やG-SHOCKの開発過程の模型などが展示されていた他、10弱のカシオの社員が同席しており、参加者全員がいつでも気軽に質問できる状況が用意されていた。

会場の様子

DoodlesやAstarとのコラボレーション事例も

ツアーの最初にVIRTUAL G-SHOCKのコミュニティ運営などを担当する佐藤 一輝氏によるプロジェクトの説明が行われた。

VIRTUAL G-SHOCKの概要のほか、コミュニティ内でデザインコンテストが行なわれた事例などが佐藤氏によって紹介されるなか、人気NFTプロジェクト「Doodles」や日本発プロジェクトであるAstar Network(アスターネットワーク)との取り組みについても説明があった。

コンセプトは「Absolute Toughness」

続いて、カシオ計算機やG-SHOCKの歴史について、商品企画のエキスパートである井崎 達也氏によるセッションが行われた。

1957年(昭和32年)に樫尾(かしお)忠雄氏、樫尾 俊雄氏、樫尾 和雄氏、樫尾幸雄氏の四兄弟によって設立されたカシオ計算機株式会社は、これまで小型計算機や電子楽器、時計など様々な製品を開発。そんな中で、1981年に「Absolute Toughness」をコンセプトにどんな衝撃や水圧にも耐えられるタフネスな時計の開発がスタートしたという。伊部 菊雄氏を中心に開発着手から200以上の試作を繰り返し約2年の歳月を経て、初代G-SHOCKが誕生したと井崎氏は説明する。

その後、G-SHOCKはあらゆるシーンで使える時計として様々なデザインと共に販売されてきたという。

また、G-SHOCKで搭載されるELバックライトと呼ばれる技術により、文字盤の液晶に大きくはっきりとアイコンを映し出せる仕様は他ブランドから評判がよく、様々なコラボレーションが提案され若者のカルチャーシーンでメッセージを発信するブランドとなったと井崎氏は明かした。

「人間の汗」に時計を浸す

一連の説明が終わった後、今回のツアーのメインイベントとも言える実際の実験室の見学が行われた。

紹介されたのは開発段階の製品・部品の評価を行う実験室の1つで、水中や泥水の中に時計を沈め、正常にボタンが作動するかや、ハンマーや落下の衝撃によって時計に影響が出ないかなどあらゆる方面から実験がここで行われる。

水中でボタンが正常に作動するかの実験(左)とハンマーでG-SHOCKに衝撃を与える実験(右)

ツアーではより日常シーンでの使用に関する実験も紹介された。中でも参加者の注目を特に集めたのが「人工的に作った人間の汗に時計を浸す」というもの。実際に実験で使われる液体が紹介され、ツアー参加者はその匂いを嗅ぎ様々なリアクションをとっていた。

人工汗浸漬の実験の紹介パネル

独自の審査基準と共にユーザー目線に立ちながらG-SHOCKの最大のコンセプトである「Absolute Toughness」を実現するため、羽村技術センターには様々な実験設備が備えられていた。

「バーチャル空間でも耐衝撃構造にこだわりたい」

一連の実験室見学が終了し、再度説明会場に戻ってきた参加者は、次にVIRTUAL G-SHOCKのNFTのデザインについて赤城 貴康氏より紹介を受けた。

現実世界で世界トップクラスの技術を持つカシオがバーチャル空間で時計をデザインする際、何をよりどころにデザインするべきか試行錯誤された結果、G-SHOCKのコアテクノロジーである「耐衝撃構造」をデザインのコンセプトとしてフォーカスすることになったと赤城氏は明かす。

「VGA-001」の時計デザインでは、バルーンをモチーフに耐衝撃構造を表現するために、細かいパーツで構成されるG-SHOCKの特徴をデジタル空間ならではのポップでカラフルなデザインが施されているという。また、「VGA-002」では、リボンのようなスプリングをモチーフに弾力性のあるデザインを設計。実物が存在しないこれらの時計では、イメージ動画も重要な要素となるため、音楽もコンセプトに合うものを作成するなどのこだわりを詰め込んだという。

「フィジカル製品を出して欲しい」

最後にツアー参加者とカシオの社員とのディスカッションが行われた。

各々の参加者から意見が出るなか、最も多かったのは「NFTを現実世界の時計として販売して欲しい」といった内容だ。

現物の時計を購入、身につけてきた経験を持っているG-SHOCKのファンの多くは、デジタルの世界だけに限定される時計ではなくフィジカルでの製品を望んでいるという。

前述の「VGA-001」「VGA-002」は現実世界で実現することは難しく、これらが実際に可能となると取り組みの幅は大きく広がると社員は説明していた。また、フィジカル製品を前提としてNFTをデザインするアイディアも参加者から挙がっていた。

海外のツアー参加者からは「G-SHOCKの人気はあるがVIRTUAL G-SHOCKの存在自体がそもそも知られていない」との指摘もなされた。

ツアー参加者側、カシオ側共にG-SHOCKへの思い入れが強いこともあってか、本イベントによるディスカッションでは、忌憚ない有用な意見が多くみられた。

ツアーに参加してみて

今回、見学ツアーに参加してみて、世界トップクラスの技術や長い歴史を持つカシオがどこまでWeb3の文化や構造を理解、共感を得られるかがVIRTUAL G-SHOCKプロジェクトの今後に大きく関わってくると感じた。

カシオの最新の決算報告書を見ると、G-SHOCKのファンはアジアやアセアンエリアなどに多く存在し、今後はインドでの展開強化も行なっていくとしている。英語を日常的に使用したり、自国通貨が不安定な国はクリプトやWeb3と相性が良く、今後これらの国にどれだけアプローチできるかが重要になると感じた。

PFPとしてのユーティリティをメインに持つNFTの価値が大きく下落しているなか、強固なコミュニティの作成/維持はNFTを活用したWeb3プロジェクトには必要不可欠である。長年顧客目線で最高品質の製品を世に送り出してきた、世界トップ企業のカシオのVIRTUAL G-SHOCKプロジェクトに今後も注目が集まる。

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