
CMEビットコイン先物の「窓埋め」の真相解説【4時間足版】 -窓の発生確率から窓埋め期間まで-

Crypto Times 編集部
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ビットコイン投資をしているユーザーでCMEビットコイン先物の窓と言う言葉を聞いた事がある人はいると思います。
この中では、「ビットコインCME先物の窓はどのくらいの頻度で起きているか?」「投資に応用できないか?」という疑問を持つ人も少なくないのではないでしょうか。
先日『CMEビットコイン先物の「窓埋め」の真相解説 -窓の発生確率から窓埋め期間まで-』と題してCME先物の日足データを使って窓埋めの統計分析をしました。
興味のある方はぜひ読んでみてください。また詳しい分析手法についてもこちらの記事に書かれているのでご参照ください。
CMEビットコイン先物の「窓埋め」の真相解説 -窓の発生確率から窓埋め期間まで-
今回は同様の分析を4時間足に適用しました。4時間足チャート上にできる窓の基本的な統計量を見ていきたいと思います。
統計分析により、CME先物の窓の発生確率や窓が埋まるまでの平均期間などの現状を読み取ることができます。
「窓埋めに興味がある」また「窓埋めの定量的な分析結果」を知りたい方は、ぜひ本記事を読んでください。
※本記事は、投資アドバイスなどの行為は行っておりません。本記事の内容を参考にして被った損失に関しては一切責任を負いかねることをあらかじめお伝えします。
目次
CME先物の窓について
はじめにビットコインCME先物とは、日本時間の2017年12月18日に米大手デリバティブ取引所CME(シカゴ・マーカンタイル)によって開始されたビットコイン先物取引です。
受渡日に買付代金または売付有価証券の提供によって決済を行わずに対当する売りまたは買いで相殺する、いわば差金決済取引の取引形態を取っています。
最初に、CME先物の窓について実際のチャートを見ていきましょう。
今回は、CME先物が開始された2017年12月18日から2020年2月25日までの全期間を対象に4時間足ベースで分析をしました。以下が4時間足のCME先物チャート(ある期間抜粋)の画像になります。
各所、拡大してみるとわかりますが、ポツポツと窓(赤色の丸)が空いているのがわかります。
これが、いわゆるCME先物チャート上の”窓”と呼ばれているものです。
それだけ、買い圧力や売り圧力が強く、終値と始値の間に大きな乖離ができてしまいます。
統計結果
今回は、4時間足ベースで2017年12月17日から2020年2月25日の全期間に渡り、窓が発生した件数を調べました。(100ドル以上の乖離が発生した件数)
今回対象となったのは、トータルで44件となります。また、これは各4時間で約0.013回のペースで窓が発生している計算になります。
窓が埋まるまでの期間
続いて、窓がどれほどの期間で埋まるのか?です。
分析の結果、窓が埋まるまでの期間は、バラバラで、最短12時間(4時間足3本分)で閉じるものもあれば最長134日間、閉じるのにかかった窓もあります。
本質的な話をすると、相場の8割はレンジ相場だと言われています。つまり、一定幅で上下を繰り返しているため、開いた窓はいつか閉まるのが当然です。そのため、長期間を経て窓が閉じた場合、窓埋めと言えるのかなどの問題があります。
また、44個の窓の中で、2個ほど観測期間内では閉じなかった窓が存在するため、窓が閉じる・閉じないの解釈が別れてしまいます。
そのため、本記事ではこの窓埋め期間に関する解釈(期間が長い・短いなど)は置いておいて、検出された44回の窓の基本的な統計量を見ることにします。
はじめに実際どれほどの期間で1つひとつの窓が埋まったのかをヒストグラムにまとめました。
このヒストグラムでは、4時間足50本分に相当する約8.3日間ごとに各ブロックが区分けされています。殆どのデータが1つめのブロックに入っています。
つまり、ほとんどの窓が8.33日以内に窓埋めを経験することがわかります。しかし、今回のような荒っぽいヒストグラムですとあまり有益な情報は得られません。
また、ヒストグラムを見てわかるように、窓が閉まるまでに4時間足804本分(134日間)や430本分(71日間)を要したデータという明らかな外れ値も検出されたため、外れ値を取り除いたより詳しいヒストグラムも用意しました。
上記のヒストグラムの区間分けを説明します。最初の区間が「4時間足1本から6本以内に窓埋めが成立した」データ数です。
1本から6本以内なので24時間以内に窓埋めが完了したデータ数ということになります。
そのあとも4時間足6本毎に区分けされています。つまり、次の区間が4時間のローソク足が7本から12本(2日)以内に窓が閉じたデータ数です。
全体の窓の約30%は、1日以内に窓が閉じることを意味しています。
同様の分析を進めていくと、3日以内(4時間のローソク足18本分以内)に窓が埋まる確率を合わせると54%以上となり、窓埋め全体の半分以上が3日間以内で完了することになります。
この確率が高いかどうか、また4時間足18本が長いか否かは個人の判断になります。このヒストグラムとまとめをみてぜひ色々な確率計算をしてみてください。
加えて、窓埋め期間の平均値も合わせて算出しました。外れ値を除いた「窓が埋まるまでの」平均期間に関してですが、こちらが4.9日間(4時間足29本分)となります。
しかし、標準偏差も6.4日(4時間足38本分)と高いことに注意してください。窓埋めまでの期間には結構なばらつきがみられるようです。
窓が発生してから、発生時価格との平均乖離幅
窓発生を確認してから閉じるまでの価格変動の中で、平均的な価格差がどれだけあるかを定量的に分析しました。
これは、窓が発生した直後に初めて形成されたローソク足の安値(高値)と窓が埋まるまでにつけた価格の中の最高価格(最安価格)が平均してどれほど乖離しているかということです。
44個検出された窓を分析した結果、平均乖離幅は1236.5ドルもあることがわかりました。
つまり、窓が確認された直後に形成されたローソク足の価格から、平均して1236.5ドルほど逆方向に価格が推移し、その後窓埋めに向かうという結果が出ました。
しかし、このデータも、先ほど窓埋め完了までに4時間足804本分(134日間)を要したデータや430本分(71日間)かかったデータを含めた場合の平均乖離幅です。
それらのデータは窓埋めまでにかなりの価格変動を経験したはずです。そのため、外れ値として抜く必要があります。
これら外れ値データを抜いた場合の平均乖離幅は、981.8ドルとやや乖離幅が小さくなった結果になりました。また標準偏差は、866.259ドルということも分析から得られました。
ただし、今回の分析における注意点として、窓のデータ個数があまりにも少なく乖離幅のデータ数も少ないため、データ出現が正規分布に従っているとは言えません。そのため、今回の分析結果が必ずしも正しいわけでは無いので、ご注意ください。
観測された全窓の乖離幅をヒストグラムにしました。は下記のとおりです。ヒストグラムは200ドルごとに区切られています。
平均値以外の計量として、観測データの中央値は602.5ドル、最小乖離幅は105ドル、最大乖離幅は4110ドルという結果が得られています。
タイプ別で見る窓形成
さて、ここまでは一緒くたにビットコイン先物の窓を取り扱ってきました。しかし、窓と言ってもローソク足の形成のされ方で種類分けが可能です。
窓をローソク足別に種類分けすると、どのようなローソク足の後に窓が生まれやすいか、またどの窓が一番窓埋め期間が長いか・短いかなどが見えてきます。
まずは窓の形成をどのようなタイプに分けるかですが、今回はこれから以下に説明する4つのタイプに分けました。
タイプ1
タイプ1は、窓を開ける直前のローソク足が陰線で終わっていて、窓発生直後のローソク足も陰線で終わるような形を指します。
タイプ1の典型的な形が以下のようなローソク足の並びです。
陰線が2つ並んでおり、窓を作りながら下落トレンドを形成しているのがわかります。
少なくとも下へ下へと窓埋めに向かうまでは下落トレンドが伺えます。
タイプ2
続いてタイプ2は、前期のローソク足が陰線で終わり、窓を挟んで陽線が形成されるようなタイプです。
このタイプ2では、価格が飛ぶようなおかしな挙動を頻繁にとります。
それは、陰線が形成されたあと、なぜか次の日の始値が大きく上に飛んで、前日の高値を越えてしまうというケースです。
チャートを見ると、チャートのはじめにオレンジ色の陰線が形成されています。その後大きく窓が空いているのが見て取れます。
窓が開く直前に形成されたローソク足は陰線なので、前ローソク足(チャート上1本目)の終値付近かそれより下で次の4時間足が始まるのが普通です。
しかし、画像を見ると分かる通り、窓を挟んだ直後のローソク足が大きく上に飛んで始値をつけています。これはかなり買い圧があったからだと言えるでしょう。
このような特異な状況は、タイプ2に限ったことではありません。タイプ1からタイプ4全てに起こり得ることです。
そのため、窓ができるときは、終値と始値が必ずしも同一方向にないということにも注意してください。
タイプ3
タイプ3はタイプ2とは逆で、はじめに陽線をつけて窓発生後、陰線のローソク足で終わるパターンです。
タイプ2で見たときと同様に、タイプ3でも陽線をつけたからといってその後上昇トレンドを形成するとは限りません。陽線の後、その陽線の終値を大きく下回り窓を形成する可能性も十分にありえるからです。
タイプ4
そしてもっとも窓開け回数が多かったのが、こちらのタイプ4です。タイプ4は、タイプ1と真逆な形をとります。
窓直前のローソク足も、窓を開けた直後に形成されたローソク足も陽線となるパターンです。
上へ上へと買い圧力によって大きく窓が開くタイプだと言えるでしょう。
しかし、陽線2つ続きのタイプ4でも下落トレンドを形成する場合が稀に起こっていることも統計的にわかっています。
これまでに紹介したタイプ別にそれぞれの窓発生回数などのデータを含めて、表にまとめました。
このように見ると、やはりタイプ4の15回がもっとも窓発生回数が多いことになります。
44回中15回などで、約34%はタイプ4のような窓の開け方をしていることになります。
タイプ別基本統計量 | 窓発生回数 | 上昇トレンド回数 | 下降トレンド回数 | 平均窓埋め期間(外れ値を除く) |
---|---|---|---|---|
タイプ1 | 13回 | 5回 | 8回 | 20.61本 |
タイプ2 | 5回 | 2回 | 3回 | 45.6本 |
タイプ3 | 11回(うち1回、窓埋め未完了) | 5回 | 6回 | 32.1本 |
タイプ4 | 15回(うち1回、窓埋め未完了) | 14回 | 1回 | 30.6本 |
タイプ3とタイプ4を合わせると、26回となっています。つまり、陽線をつけてから窓が形成される方(窓の直前のローソク足が陽線であることの方)が、陰線の場合に比べて約2割も多いことがわかります。
タイプ4に続いて、窓形成を多くするのがタイプ1の13回です。しかし「上昇トレンド回数」というのも合わせて見てみると、5回と書かれています。
この「上昇トレンド回数」、「下落トレンド回数」は、窓を開けたあと上昇トレンドを形成した回数と下落トレンドを形成した回数です。
タイプ1は窓を挟む2本のローソク足がどちらも陰線ですから下落トレンドを取るはずですが、半数(5回)近く上昇トレンドを形成していることになります。
これはタイプ2のところでも説明した現象です。
はじめに陰線を形成した後に窓ができ、その陰線の終値を大きく上へ飛び越えて陰線がまた形成されたことが伺えます。
最後に、「平均窓埋め期間」を見ていただくと、タイプ別の窓埋めするまでにかかった平均的な期間がわかります。数値は4時間のローソク足の本数で示されています。
これを見ると大きなばらつきはない中でも、タイプ1が平均的に最短で窓埋めが完了することがわかります。
逆にタイプ2はタイプ1の2倍以上窓埋めに時間がかかっているようです。タイプ2の窓を見つけたら、窓が埋まるまで少し時間がかかると思っていいでしょう。
4時間足チャート上の窓出現確率
これまでは窓が出現した後の話をしてきました。この章では、一旦視点を変えた分析を行いたいと思います。
前章までは、「平均的にどれくらいの期間で窓が埋まるのか」や「窓が埋まるまでどれくらいの価格差が生じるのか」など、窓が出現した後の話を分析してきました。
この章では、どれくらいの確率で窓が発生するのかを説明していきます。
今回のデータ数は3360です。この中で44回窓が発生したので、各4時間足に窓が発生する確率は、平均にして0.013回です。
この時、「窓が発生する確率が、近似的に(ラムダ=0.013の)ポアソン分布に従っている」と考えることができます。
難しい確率分布の話はさておき、このように仮定すれば、ある期間で窓が発生する確率と回数が簡単にわかります。
そこで、「4時間に平均して0.013回発生する事象が少なくとも1回発生する確率が、50%を超えるのはどのくらいの期間か?」という疑問が出てきます。
言い換えれば、どれくらいの期間ならば、最低1回窓が発生する確率が50%を超えるかという疑問です。
例えば、1日に4時間足チャート上に窓ができる確率を計算してみると、7.2%という結果になります。1日ではさすがに窓発生は期待できなさそうですね。
それでは以下の画像を見てみましょう。以下の画像は、2週間で窓が発生する確率を表したグラフです。
少し説明すると、0と書かれている縦棒の上に0.34と書かれています。これは、2週間で窓が1回も発生しない確率が34%ということを意味しています。
次に、1と下に書かれている縦棒をみてみましょう。0.37と書かれています。これは、2週間に窓が1回発生する確率が37%ということです。
同様に2回発生する確率は20%、3回、4回と発生する確率はかなり小さく7%と2%となっています。
2週間という幅で見るならば、窓が1回も発生しない確率(0回である確率)が50%を下回ります。これは言い換えると、「2週間ならば、最低1回窓が発生する確率が50%を超える」ということを表しています。
CME先物の窓を分析する上でも、投資に応用する上でも、窓の発生回数と確率を押さえておくことは重要です。ちなみに、同様の分析を1週間で行いました。
1週間で見ると、窓が1回も発生しない確率が50%を少しだけ上回ります。そのため、1週間から2週間の幅でなら1回以上の窓発生が期待できそうということがわかります。
1週間以上たっても窓が発生しなかったら「おやっ?」と思いながら市場を見てみてください。
まとめ
今回はCMEビットコイン先物の窓埋めに関して徹底的に分析を行ってみました。いかがだったでしょうか。CMEの窓埋めに関して、基本的な統計量は分かったと思います。
窓埋めの期間、窓を埋めるまでの平均乖離幅など、実際に統計を取ってみないとわからないデータばかりです。
しかし、窓埋めに関しては特に、統計分析で出たデータの実際的な解釈やどのように投資判断に利用できるかが難しいところでもあります。そのあたりは各個人の判断が必要です。
また、得られた統計データから窓の発生回数とそれに付随する確率に関してお伝えしました。
また、日足データを使った分析を知りたい方は以下の記事を合わせて読んでみてください。
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