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2019/03/0340兆円越を運用するスイスの大手銀行が仮想通貨産業への参入を発表
スイスにて富裕層向け資産運用サービスを提供する大手銀行のジュリアス・ベア(Julius Baer)は2月26日に仮想通貨産業への参入を発表しました。 Julius Baer is pleased to announce the collaboration with SEBA Crypto AG to provide its clients with access to a range of new digital asset services. https://t.co/5ADODyL58s @WeAreSEBA — Julius Baer (@juliusbaer) 2019年2月26日 ジュリアス・ベアは1890年に創業されたスイスの3大プライベートバンクの一つで、運用額は3820億フラン(約42.8兆円)に達します。 同行はスイスで仮想通貨事業を手がけるSEBAに出資を行い、カストディおよび資産運用などの仮想通貨関連サービスを今後提供していくと発表しました。 SEBAは現在スイス金融市場監督局(FINMA)に銀行業および証券業のライセンスを申請している段階にあり、今後認可されれば規制に準拠した事業の展開が可能となります。 SEBAのCEOを務めるGuido Buehler氏は発表の中で以下のように語っています。 「私たちはJulius Baerを投資家として受け入れる事を非常に光栄に思います。SEBAは仮想通貨市場への安全で簡単なアクセスを規制に完全に準拠した環境下で提供します。SEBAとJulius Baerの提携は間違いなくお互いに、そして顧客にとっての価値を生み出すでしょう。」 CRYPTO TIMESでも報じているように、スイスは仮想通貨に対して前向きな姿勢を示しており、法整備や低税率など環境も整っています。 このような環境から大手銀行が参入する事で、市場への資金流入も見込まれており、ジュリアス・ベアの今後の同行に注目が集まっています。 記事ソース: Julius Baer, Bloomberg
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2019/03/03QuadrigaCX資産消失事件で、問題のコールドウォレットは4月から空であったことが判明
先月はじめ、カナダ発の暗号資産取引所QuadrigaCXが、事業創設者Gerald Cotten氏の死去に伴い1億9千万ドル相当の顧客資産が入っているとされるコールドウォレットにアクセスできなくなっていたことが発覚しました。 Cotten氏の妻が最高裁判所に提出した口述書によれば、顧客資産の大半が入った当ウォレットへのアクセス方法を知る者はCotten氏のみであり、同氏が死去した今ウォレットは半永久的にアクセス不可となったといいます。 しかし、Ernst & Young社の調べによると、問題のコールドウォレットは昨年4月からずっと空であったといいます。 同社が特定したQuadrigaCXのコールドウォレット6つのうち、5つは昨年4月から空のままで、残りのひとつは他取引所からの資産をQuadrigaのホットウォレットに移すために使われていたとみられています。 今回の調査により、QuadrigaCXが何らかの原因で資産を消失していた疑いや、関係者が資産を持ち逃げした疑いが一気に高まりました。 同じくカナダで暗号資産取引所を運営するKrakenは、QuadrigaCXの消えた資産の行方に10万ドルの賞金を掲げています。 カナダ取引所、パスワード保有者が死去し顧客資産が返還不可に 詐欺を疑う声も 記事ソース: Quadriga Crypto Mystery Deepens With ‘Cold Wallets’ Found Empty
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2019/03/02Facebookがステーブルコインの上場を取引所と交渉中?NYタイムズが報じる
Facebookが独自のステーブルコインを上場させるため、仮想通貨取引所と交渉中であるとThe New York Times(NYタイムズ)が報じました。 Facebookは同社のメッセージングアプリWhatsAppでユーザー間送金を行うために、ドルとペッグするステーブルコインを開発しているのではないかと昨年12月に報じられていました。 関係者によると、発行するステーブルコインはドルだけでなく、各国の法定通貨とペッグさせることを検討しているようです。 また、今年の上半期にステーブルコインを上場させる計画で取引所と交渉しているようです。NYタイムズは、取引所に上場させることで資産管理や顧客審査に係る規制の負担を軽減する狙いがあるのではないかと推測しています。 さらに、Facebookのブロックチェーン部門のオフィスは、通常のオフィスと別のカードキーを用いており部門外の従業員は入室することすらできず、社内でも限られた従業員しかプロジェクトの内容を知っていないようです。 記事ソース:The New York Times
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2019/03/02米Coinbase、一般投資家向けにもRipple(リップル)・XRPの取引を提供開始
米サンフランシスコの仮想通貨取引所Coinbaseが、一般投資家向けプラットフォームでXRPの取引サービスを開始したと発表しました。 同取引所は先日、上級投資家向けプラットフォームCoinbase ProでXRPの取引サービスを提供し始めていましたが、これで全てのCoinbaseユーザーがXRPの取引が可能になりました。 Coinbase ProがRipple(リップル)・XRPの取引を開始 取引サービスはCoinbase.comと同社が提供するAndroid、iOSアプリで利用可能ですが、イギリスとニューヨーク州の居住者は利用できないとしています。 また、XRPがCoinbaseに上場したことについて、Ripple社が上場料を支払ったのではないかと疑う声があがりましたが、XRPマーケット担当者のMiguel Vias氏は「CoinbaseのXRPの上場はCoinbaseの自主的な判断であり、Ripple社は何も支払ってはいません」と否定しています。 We’re happy to go on the record. Coinbase’s listing of XRP (also, not “our token”) was Coinbase’s independent decision - we did not give them anything to make it happen. https://t.co/xTVvACqsQa — Miguel Vias ⚡ (@miguelvias) 2019年2月27日 記事ソース:XRP is now available on Coinbase
特集・コラム
2019/03/01TokenLab ブロックチェーンの技術に興味がある人たちが集まる場所(無料レポートリンク付き)
こんにちははるか先生です。今日もコラムを元気に書いています。 僕は他にも寄稿をしている 最近、クリプトタイムズ以外にトークンラボへの寄稿も行なっている。 まず言っておきたい。クリプトタイムズとトークンラボは競合するメディアではなく、読者層やビジネスモデルが大きく異なっていると信じている。この寄稿が認められて皆が読んでいれば間違えないだろう。クリプトタイムズの編集さんがOK出したのだから(笑) 大まかに僕の中ではクリプトタイムズではライター、トークンラボではリサーチャーとして関係をもっている。 クリプトタイムズはおおむねニュースを中心としたメディアとしての存在意義だと認識。比較的ニュース性のある題材を持ってきてコラムを書いているのだ。 トピックスも自由に決めさせていただいているので、そのトピックスをニュースから少し掘り下げて、私見であったり独自のテクニックなどを付加してクリプトタイムズには寄稿しているわけ。 一方、トークンラボについて。こちらは仮想通貨、ブロックチェーンのリサーチコミュニティーとまとめていいだろうか。論文みたいな形式で比較的ネチネチと書いている ブロックチェーンの技術、プロトコル、新しいビジネスモデル的なところに興味がある方にとっては面白い場所になるかもしれない。 トークンラボでは、他のガチ勢も興味があると思われることをプロトコルの細かいところも含めて詳細に調査、レポートする。万人に理解してもらうことは若干捨てている。 トークンラボ どんなコミュニティー? 実はEthereumのコミュニティーが使っているシステムと同じものを持ってきている。掲示板の少しオシャレになった感じのもの。 全てのやりとりの基本はレポートベースとなる。多くのレポートが主催者のCoffee Timesさんやindiviさん、そして仮想通貨の技術が好きなメンバーから投稿される。 それぞれのメンバーは幅広い素養を持った方から構成されているため、いつもバラエティーに富んだレポートが掲載されている。SNSベースのシステムより個人的には軽くて交換がモテる。フォローとか気の利いた通知はあまりありませんが。 それぞれのレポートを中心にディスカッションを行なっていきます。ただ、発言しないといけない雰囲気もないので、ロム専だからといって特に居心地が悪くなりこともない。 取り上げられている題材の一部を少し紹介。例えば、最近脚光を浴びているMInbleWinbleについて、一歩踏み込んだ題材を取り上げた論文が主となっている。 こちらで紹介したものは会員になると読める論文を持ってきた。MinbleWinble関係だとこちらの論文がお試しで読める。雰囲気を掴んでいただけるかな。 BeamやGrinはMoneroやZcashに勝てるのか - TokenLab 無料で読めてお得なものを選んでみました。その他、BEAMにはアドレスが無いってしっていますか?でもちゃんと送金できます。その仕組みついて議論した論文などもあり、様に一歩進んだやりとりがなされています。ちょっと興味わきませんか? 設立の背景 ビットコインをSatoshi Nakamoto が考案、発明したのは2009年のことであり、たったの10年前のことである。このビットコインが、ブロックチェーンの始まりでもあり孵化装置ともなっている そこからこの10年で、ブロックチェーンならびに仮想通貨は実用に耐えうるべく想像を絶する進化をしている。 冗談抜きで、世界の頭のいい人たちが、よってたかって新しいプロトコルや持続可能な報酬モデルなどを考案して実際にプロトコルを作り上げていっている。 これは、インターネット黎明期の状況と酷似していて、いまはインターネットも比較的安定成長しているけれども黎明期には、覇権を取っている TCP/IP以外の方式も多く提案がされ、バチバチ覇権争いをしていた。 そういった、激動の時代の波を掴んでいくのは、とても労力がかかる。大好きな人たちはこの波を追っている。 トークンラボはブロックチェーンの技術周りをずっと追っている二人の方が設立したリサーチ組織。Twitterでも比較的発言の多い方なので聞いたことある方は多いかもしれない。coffee timesさんとindiviさん。Twitterでみたことありませんか? ターゲットは仮想通貨のベースを理解し、さらに技術的や報酬アルゴリズムの魅惑の世界に入っていきたい人がターゲットである。 下記はトークンラボ公式サイトの言葉である。 特に「基礎は何となく分かった。更に一歩踏み込んだ情報を追っていきたいが、ここからの情報収集コストが高すぎる。過度に技術的な情報を深追いする時間とエネルギーはないが概観はしておきたい」という方をメインターゲットにしている。 公開限定が設定されたサイトに各有志が投稿した論文が掲載されその論文に対するコメントや質疑応答が行える。システム自体はEthereumのコミュニティーが使用しているものと同じシステムを持ってきている。SNSをベースとしたものより軽くまた使いやすい。 会費について 月額: 4,980円となっています。この論文の内容に対しての金額としては特に異論はない金額だと考えている。 もしあなたが、技術的、思想的なレポートをかけるのであればおすすめの方法があry。 トークンラボはリサーチャーとして寄稿を受け付けている。その寄稿論文に対しては金銭的な報酬か会費として還元してもらえる。ここで正確な数字はお話できませんが、会費として還元してもらうことにより無償で他の優れた論文を読み漁れる。 ナレッジやリサーチの労力を提供するのか金銭をもって対価を示すのかが選べるようになっている。 私も論文を2本ほど寄稿をさせてもらった。このレベルでの論文は日本国内では無償で出回ってないものだと自負している。また3本目も現在執筆中。これも日本では無償でこの内容を提供している方は知らない情報を独自調査してまとめている。 NFT(Non-Fungible Token)の基礎と現状 DID(DECENTRALIZED IDENTIFICATION(DID)の概要 DIDについては極端に日本国内での情報も限定されているので、初めての人でもわかるような記事をおいおい自分のサイトかクリプトタイムズ様に寄稿しようと思っている。個人的にはDIDは熱い分野の一つだと思っている。 最後に 今回の記事は特にTokenLabに入った方がいいよとゴリ押しする意図はありません。でも良質な情報ソースは知っておいて損はありません。あなたが企業で仕事をするのであればこういったアウトソース先は知っておいて損はないでしょう。企業向けのプランについてはぜTokenLabにお問い合わせください。 TokenLab公式サイト https://blog.token-lab.org/ TokenLabレポートカタログ http://docs.token-lab.org/ ではまた会いましょう。 ちゃんとはるか先生をフォローしてね。
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2019/03/01HTCのブロックチェーンスマホ『Exodus 1』の販売が3月中に開始!
台湾を拠点にスマートフォンなどの製造を行う企業であるHTCが独自のブロックチェーンスマホである『Exodus 1』の販売を3月中に開始することを発表しました。 価格は699ドルを予定しており、今回の販売では、仮想通貨ではなくUSDなどの法定通貨に対応していくとされています。 これまでExodus 1の販売はBTC, ETH, LTCのみの扱いとなっていましたが、法定通貨対応に引き続きBNBなど様々な決済手段の導入を行っています。 今回発表された、法定通貨での決済の導入により、現金を仮想通貨へ替える必要がなくなるので、より多くのユーザー獲得が期待されます。 また、HTCはいくつかのパートナー企業に対してにAPIを提供することも発表しており、このAPIを利用するExodus 1上のアプリはExodus 1の強力なセキュリティを有効活用することが可能となります。 HTCのチーフオフィサーであるPhil Chen氏は Exodusはデータの未来であると同時にインターネットの正しい構造を手にしていて、安全性やプライバシー、そしてデータを作った人物への所有権を返還する機能を有している とコメントをしています。 SamsungのGalaxy S10は仮想通貨ウォレット機能を搭載するかもという噂 記事ソース:VentureBeat
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2019/03/01Etheream(イーサリアム)のアップデート、コンスタンティノープルの実装が完了
Ethereum(イーサリアム)のアップデート、「コンスタンティノープル(Constantinople)」が2月28日19時55分(UTC)時点の728万ブロックをもって実装が完了した事が明らかになりました。 Success, the Constantinople 'network upgrade' has been completed!#basset_crypto #fork #soft_fork #hard_fork — Abdelbasset Benali (@benaliA94) 2019年2月28日 コンスタンティノープルはイーサリアムの大型アップグレード計画の3番目にあたるもので、当初は2019年1月の実施が予定されていましたが、セキュリティの脆弱性を改善するべく延期されていました。 Ethereum(イーサリアム)アップデート計画「コンスタンティノープル」が2月28日に実施されることが判明! - CRYPTO TIMES 今回のアップグレードでは、コンスタンティノープルと同時に「サンクトペテルブルグ(St. Petersburg)」というアップグレードも行われています。 これらの2つのアップグレードはスマートコントラクトの検証コストの削減やビット演算変換機能の追加などイーサリアムのシステムに様々な変更をもたらすことになります。 中でも、最も大きな変更点はマイニングに対する報酬が1ブロックあたり3ETHから2ETHに引き下げられる点でしょう。イーサリアムはマイニング報酬を段階的に引き下げていく事で、最終的にマイニングの必要性を払拭しようと計画しています。 今回のアップグレードはハードフォークを伴っていますが、新たなトークンの発行などはなく、特別操作をする必要はないようです。 Coinmarketcapのデータによると、$ETHはコンスタンティノープルの実装を受けて、前日比で3%ほど上昇しており、記事執筆時点では15,300円付近で取引されています。 記事ソース: Coinmarketcap
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2019/03/01韓国の取引所Coinbin(コインビン)が29億円の損失を計上し、破産申請へ
韓国の仮想通貨取引所であるCoinbin(コインビン)は今月20日に同社のウェブサイト上で事業の停止と破産申請の適用を公表しました。破産の主な理由としては、買収したYoubitの負債と規制の影響、さらには幹部の横領が関与しているとしています。 Business Koreaが報じるところによると、今回の破産申請により、影響を受ける利用者数は約4万人、損失額は293億ウォン(約29億円)に相当するとされています。 Coinbinは2017年に「Youbit」という仮想通貨取引所を買収しています。Youbitは同年12月にハッキング被害を受けており、ユーザーから預かった資金の5分の1が流出したとされています。 また、同取引所の元CEOはCoinbinで仮想通貨の管理を担当する幹部として勤めていましたが、Coinbin側は同氏が横領を働いたと主張しています。 Coinbin側の主張は仮想通貨の専門家である同幹部が、2億円相当の仮想通貨が入ったウォレットの秘密鍵を意図的に無くしたと言うものです。 CoinbinのCEOであるパク氏は、横領を図った幹部を告発する予定であることを明らかにしています。 記事ソース: Business Korea, Coinbin
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2019/03/01BinanceでFetch.AI(FET)の取引が開始、ICOの価格から4倍に高騰
2月25日にBinance LaunchpadでICOが実施されたFetch.AI(FET)が、Binanceに上場しました。BTC、BNB、USDT建てで取引が可能になっています。 Fetch.AIはBinance Launchpadの第二弾のプロジェクトで、人工知能を活用した分散型ネットワーク/プラットフォームの開発をしています。 Binance Launchpad 2019年第2弾プロジェクト「Fetch AI」の概要や仕組みを徹底解説! トークンセールでは1FET=0.008584BNBで販売されましたが、上場後は0.036BNB~まで高騰しており、ICO価格のおよそ4倍となっています(記事執筆時)。 また、トークンセール開始後22秒と驚異的な早さで600万ドル相当のFETが交換され、11分14秒で終了したようです。 3月にBinance Launchpadで実施されるプロジェクトは未だ公開されていませんが、第一弾のBittrent(BTT)やFetch.AIと同じく高い関心を集めると思われます。 記事ソース:Binance
インタビュー
2019/02/28エストニア×ブロックチェーン スタートアップ事例と電子政府化の必然性
2017年よりエストニアと日本の二拠点生活を送っている、blockhive Co-Founderの日下光に、CRYPTO TIMESの協力のもとインタビューを実施。エストニアにおいてブロックチェーン領域に取り組む彼に、移住の背景、ブロックチェーンの魅力、エストニア国民が電子政府から受け取るメリットなどを聞いた。 ※ 今回のインタビュー記事は、CRYPTO TIMES のFounderである新井(アラタ)が協力の下、インタビューを実施し、株式会社電通様が運営するWEBメディアGRASSHOPPERに掲載されたインタビューの転載となります。 ブロックチェーンが生活に浸透して見えなくなっていた –エストニアにはブロックチェーンを利用したスタートアップがたくさんあるのでしょうか? 日下:エストニアはブロックチェーンこそ発達しているものの、スタートアップの数は少ないですね。最近少しずつ増えて来ています。エコシステムがあるともいわれていますが、実際にはありません。むしろそれを我々が現在、作っています。 2017年にエストニアに行ったとき、衝撃を受けたのはブロックチェーンが生活に浸透しているので見えなくなっていたことでした。これはブロックチェーンの成功例と言えるでしょう。ただ、世界的にはブロックチェーンが注目されているので、ブロックチェーンの導入がインビジブルになっているエストニアに飛び込んで、現地でそれを実体験しながら世界に向けて挑戦しています。 今テクノロジー面でのアドバイスを行っているAgrelloというリーガルテックのスタートアップがあります。創業者は19歳で司法試験に合格しましたが、ブロックチェーンの登場で、これからはブロックチェーン、スマートコントラスト、AIが弁護士の仕事を奪っていくだろう=弁護士になる意味はないと考え、この会社を創業したのです。 Agrelloは、電子署名を利用したデジタル契約書などのサービスを提供していて、紙の書類が一切不要になります。Agrelloが提供する「AgrelloID」は、エストニアのIDと同じ仕組みで、日本でもパスポートがあれば、アプリからこのAgrelloIDを作成することも可能です。国境を跨いだ二者間の契約がより簡単になりますので、我々は日本とエストニアでも利用しており相手の方にAgrelloIDの作成をお願いしたりしています。もちろん、契約の情報はブロックチェーン上に記録され、改竄もできません。 –このAgrelloのビジネスモデルはどのようなものなのでしょうか? 日下:AgrelloID発行自体は無償です。企業の導入や、自社システムへの導入時のビジネスが肝となっています。導入したい企業は、契約のプラットフォームをエンタープライズで採用し企業間で利用します。ライセンスでマネタイズするSaaS (Software as a Service) 的なイメージが近いですね。 本人性の担保としては、Agrelloが採用している電子署名を利用することで、証明を確実にすることができます。 さらには、タイムスタンプにより、契約書のサインをお願いして一週間後に紙の書類が返送されてきたなんてこともなく、どのタイミングから契約が執行されるのかわかります。 –他に関わっているブロックチェーン事例を教えてください。 日下:まだ公開前なので名前は出せませんが、保険 × ブロックチェーンで進んでいるところがあります。 エストニアでは既に個人のデータが存在するので、こういった個人が提供する情報に基づく最適化を行った保険を提供していくことが可能となります。そこで、保険にかかわる情報を個人に帰属させるという企業向けアドバイスを我々で行っています。 日本では、行政間での連携が取れていないだけでなく、病歴の移行やインプット・インターフェースの統一など様々な課題があります。我々はよく「データポータビリティ」と呼んでいるのですが、IoTの連携でヘルスケアのデータを自身に帰属させるような仕組みが整えば、あとはサービス・アプリケーションレイヤーでそれをどう扱うかによって、マーケットプレイス的に保険機関との連携もスムーズになっていくのではと思っています。 ブロックチェーンを使うことで、こういった個人に帰属すべき情報を不当に我々が売買できないということを担保・証明できるのも一つのメリットです。 エストニアの考え方はLocation Independent(場所からの独立) –日下さんはエストニアで構想された仮想通貨エストコイン関連でも仕事をしていましたが、その活動についても教えてください。 日下:私はエストコインの規格検討委員会に個人として入っています。前述の通り、エストニアでは行政の方々もブロックチェーンに対する理解があるためブロックチェーンエンジニアやスタートアップは歓迎されます。是非に、とエストニア行政に迎えてもらっています。 彼らは、行政を『Government as a Service』と呼んでおり、行政がインフラを作り、あとは課題も問題も熟知している民間に任せる、OSのような立ち位置にいると言っています。 私のエストニアでのキャリアはe-Residencyのアドバイザーから始まりました。これは、住民だけでなく、会社を作ることもできるボーダレスなコミュニティで、e-Residencyによって世界中の人がエストニアに起業することができるようになります。実際、エストニアにはイギリスやアメリカ、シンガポール、日本などから起業する会社も多く、独自のグローバルなコミュニティも出来上がっています。 フィジカルなエストニアはEUに属しておりユーロという通貨がありますが、バーチャルなエストニアにも通貨があってもいいんじゃないのか?とのことで始まったのがエストコインの構想です。私の役目は民間のスタートアップ側からどのように実現していくかを考えることで、現在でも続いています。 –フィジカルもバーチャルも行き来しているのがユニークなところですね。 日下:そこがエストニアの面白い点で、考え方がLocation Independent(場所からの独立)なのです。エストニアでは、衣・食・住は縛られてしまいますが、それ以外は場所に縛られない生き方として、公共財として行政が提供すべきものは平等に提供していくことで色々な人にチャンスを与えようとしています。 日本では2018年1月、電子政府化5ヵ年計画を発表しています。日本をエストニアのようにしていこう!ということで、エストニアの成功事例を日本に輸入しようとしています。 日本と違い、エストニアの電子政府化には必然性があって、九州ぐらいの大きさの土地に130万人しか住んでいない国なんです。その中で、行政サービスを国民全員に提供する道は、デジタル化しか残されていなかったんです。なぜなら、人もいなくてお金もなかったからです。 これから日本も人口縮小し、過疎地が増えることも予想されます。なのでエストニアの仕組みを導入するのは必要なのですが、その前提となるマイナンバーの普及率もまだ10%(約1,300万人)くらいなんですよね。政府の動きと同様、国民もインターネット上で本人性を担保できるようになる必要があると考えております。 –電子政府時代を迎えるにあたり、企業はどのような準備をすべきでしょうか? 日下:いままさに我々でやっていることの一つで、日本が電子政府化する前提で日本企業をエストニアに誘致しています。 我々社内では『Back to the Future』プロジェクトと呼んでいるのですが、エストニアでは、Xroadのおかげで行政基盤と連携したビジネスを作ることができていて、行政と民間企業は切っても切り離せない状況にあります。様々なサービスがありますが、既に3,000社以上が行政のサービスと連携しています。 もし、日本でも電子政府が実現するのであれば、これに備える必要があると考えています。日本企業が行政と連携したサービスを現状で作る方法としては、エストニアに行ってしまうことが近道になります。 エストニアには法人が作れる上、130万人の個人のデータも存在しているので、アルゴリズムだったり機械学習のモデルだったり、国民のデータを活用することも可能です。例えば、ある製薬会社などが、いずれは厚生労働省などと連携して医療費の削減をしたいと考えたとして、エストニアに行き、処方箋の電子データを活用したサービスを考えることも可能です。 日本での電子政府というアイデア自体が、エストニアの技術を日本が採用して作っていて、マイナンバーもこれらを参考・活用しているので相互互換性が生まれます。そういった意味でも、将来的な日本の電子政府化が完了し次第、エストニアから技術を戻す『Back to the Future』なのです。 −−最後に日本でブロックチェーンをこれから活用しようとしている方々向けにコメントいただけますか? 日下:まだ信用のないスタートアップが何かサービスを作るとき、特にフィンテック・サービスを作る際にはブロックチェーンテクノロジーを活用していくべきだと考えています。自分たちが作るサービスがスケールする際に、信用コストが求められるかどうかがYESなら検討していくべきでしょう。 データを中央集権的に集めてそこでマネタイズではなく、その主権を個人に戻す思想があるサービスであればブロックチェーンは最適です。 個人的に、Freemium戦略の次に現れたのがブロックチェーンだと思っています。みなさまのビジネスでブロックチェーン採用を考える上で「データの保管をどこにおくのか?」を考えるのが重要です。もしもデータを個人に戻すのではなく、自分の会社で管理したいと思うのであればブロックチェーンは不要なのでバズワードとしての「ブロックチェーン」という言葉も使わないでほしいぐらいです。収益性とかエンジニアの単価などを見ても、データの保管や思想がないのであれば、ブロックチェーンを使わない方が圧倒的に安く済みます。 ブロックチェーンは哲学を実現することのできる一つのツールですから、収益性などの観点からではなく、自分がどのような世界を実現したいのか?を 考えた上で活用していく方々が増えていくことを期待します。 エストニア在住日本人 blockhive 日下光 に聞くブロックチェーン事情 〜データ主権を個人が持つ魅力 - CRYPTO TIMES Interview & Text:西村真里子 Edit:市來孝人 協力:CRYPTO TIMES 新井進悟 転載元記事 : エストニア×ブロックチェーン スタートアップ事例と電子政府化の必然性 - GRASSHOPPER