Starknet上のレンディングプロトコル「zkLend」AMAまとめ

2023/10/25・

boarding bridge

Starknet上のレンディングプロトコル「zkLend」AMAまとめ

執筆:Taka

Ethereumレイヤー2のStarknet上でレンディングプロトコルを構築するzkLendのAMAを、CryptoTimes公式コミュニティであるboarding bridge(bb)にて開催しました。

今回のAMAでは、EVM互換性のないStarknetを選択した理由や、エコシステム内でzkLendが担う役割についてお話しを伺いました。

以下はAMAの内容を要約したものです。

AMA概要

日時:2023年10月20日(金)22:00 JST

場所:bb Discord AMA-Voice/Chat

Giveaway:250 USD

スピーカー

Brian | Co-Founder of zkLend
w33 | CryptoTimes
Taka | Moderator
(敬称略)

AMAの内容

自己紹介

Brian

zkLend共同設立者のBrianです。zkLendを立ち上げるまでの13年間、金融業界で様々な仕事をしてきました。

最初はBloombergで、債券チームの分析担当者としてキャリアをスタートしました。その後、Standard Chartered銀行の投資銀行部門に入り、China Merchants Capitalでプライベート・エクイティに携わりました。

私はブロックチェーン技術と特にDeFiに魅了されてきました。従来の金融業務に対して、DeFiが持つパーミッションレスかつ分散化された全く新しいユニークな側面に、とても興味を感じていました。私はすぐにこの急速に進化しているテクノロジーと金融の分野で働きたいと思いました。

2021年半ば頃、私は他の2人の共同創業者であるJaneとJonathanに出会いました。 私たち3人は同じビジョンを共有し、すぐにチームを組んで一緒にDeFiプロジェクトを始めることを決めました。これがzkLendを設立した経緯です。

質問トピック

zkLendについて簡単に紹介をお願いします。

zkLendは、Starknet上に構築されたネイティブマネーマーケットプロトコルです。ユーザーが資産を預けて利回りを得ることを可能にする一方で、他の資産で新たな運用を行うための担保として扱うことができます。現在、zkLendはUSDC、USDT、DAI、ETH、wBTCの5つの資産をサポートしています。そして最近、StarknetのwstETHのサポートを拡大しました。

Market | zkLend

zkLendは、2つのマネーマーケットソリューションを提供しています。

1. パーミッションレス・レンディングプラットフォーム

DeFiユーザーは、zkLendのプールに直接入金し、その入金に対して過剰担保型による借り入れを行うことができます。このパーミッションレス・プラットフォームは、Starknet上でホストされ、その後他のネットワークに渡って貸し出しと借り入れが可能になるよう拡張されます。

ARTEMIS | zkLend

2. 機関投資家、法人顧客、プロの投資家を対象とした、コンプライアンスに特化した許可制のレンディングプラットフォーム

機関投資家向け商品では、分散型オーダーブック・マッチング・アプローチで変動金利と固定金利のローンを提供することに重点を置いており、これらのローンは顧客のERC-20トークンとトークン化されたRWAのバスケットを担保としています。

APOLLP | zkLend

なぜzkLendはEhereum L2の中で、EVMと互換性のないStarkNetを選んだのですか?

私たちは、最も分散化された堅牢なブロックチェーン・ネットワーク上に将来性のあるマネーマーケット・プロトコルを構築することを目標に掲げ、Ethereumを選びました。レイヤー2はEthereumのスケーラビリティに新たな次元を提供すると信じており、中でもzk-rollupこそ最もEthereumのセキュリティと分散に特化した将来性のある技術であると考えています。

私たちは、いくつかの客観的な事項に基づいてStarknetを選択しました。

(1) StarknetはStarkWare社によって開発されており、同社はdYdX、Immutable、Sorareなどの有名なアプリケーション向けに最先端のスケーリングソリューション(StarkExなど)を提供してきた実績があります。StarkExの累積取引高は1兆米ドルを超え、取引件数は5億件を超えています。

(2) Starknetは、トラストセッティングを必要としない優れた耐量子暗号アプローチであるzk-STARKを使用しています。StarknetがEVM非対応のプログラミング言語Cairoを使用していることは、ご存知の方も多いと思います。実はStarkWare社は、ゼロ知識証明(ZKP)のパフォーマンスを最適化するためにCairoを開発したのです。CairoはSolidity言語からの制約を一切受け継いでいないため、カスタムプレコンパイルによる妥協が少なく、より柔軟で堅牢です。

(3) Starknetには活気ある開発者コミュニティがあります。エコシステムは過去2年間で急速に成長し、多くの新しいチームがさまざまなインフラ、ツール、dAppsを積極的に構築しています。新しい開発者は、Starknetが提供する設計と開発の自由度に魅力を感じており、それがさらに創造性とイノベーションを促進し、正の強化サイクルを生み出しています。Starknetが長期的に勝者となるためには、このようなネットワーク効果が絶対に欠かせないと考えています。

StarknetのエコシステムがL2市場でシェアを拡大するためには何が必要だと考えますか?

10月19日現在、StarknetのTVLは約1億3,000万ドルです。100億ドルのTVLがあるL2全体と比較すると、Starknetの市場シェアは1.3%程度です。しかし、zk-rollupのL2だけに注目すると、zk-rollupで55%以上のシェアを持つzkSyncに次いで、Starknetは市場規模の約17%を占めています。

zk Rollup | L2BEAT

この数字が示すのは (1)zk-rollupはまだ技術的な実装の初期段階にあり、多くのプレーヤーが同じような開発段階にあること、(2)zk-rollupsおよびL2sスペース全般において、成長の余地を十分に持っているということです。

私見では、エコシステムが(市場シェアやTVLの面で)成功するための鍵は、(1)堅牢なネットワーク・パフォーマンス、(2)活発な開発者コミュニティ、(3)繁栄するDeFiエコシステムの3つの推進力に依存します。

Starknetの初期バージョンのTPSの低さとUXの不安定さについては、ご存知の方も多いでしょう。それ以来、RustシーケンサーやRust CairoVM、Papyrusフルノードの書き換えなど、パフォーマンス向上のために多くのアップグレードが行われてきました。最近のアップグレード(v0.12.1または “Quantum Leap”)では、トランザクション速度が劇的に改善されました。新技術の実行と提供には時間がかかります。

どのような新しい技術でも、初期段階においては不安定です。StarkWareチームと幅広い開発者エコシステムは、ネットワークのパフォーマンスと安定性を向上させるために懸命に取り組んできました。特にこの段階での活発な開発者コミュニティの存在は重要であり、そのコミュニティがあれば、何か問題が発生したときに、迅速な修正や改良を行うことができます。Starknetには、Kakarot、Madara、Katanaなどを支えるチームのように、重要なコンポーネントの保守や構築に精力的に取り組むアクティブなエコシステムのメンバーやチームが何百と存在します。

最後に、新しいユーザー、資本、市場シェアを獲得するためには、盛んなDeFiエコシステムが重要です。現在、Starknetにはウォレット(ArgentXとBraavos)、AMMとスワップアグリゲーター(JediSwap、Ekubo、MySwap、AVNU、Fibrousなど)、マネーマーケット・プロトコル(zkLend、Nostra)など、基本的なDeFiコンポーネントが揃っています。次の成長段階は、トレーディングプラットフォーム、パーペチュアル取引所、LSDFiの開発を通じてこれらのDeFiナラティブを拡大し、Starknet上のユーザーと資本にさらに幅広いユースケースを提供します。

Starknet Ecosystem

LSDFiへの取り組みについて教えてください。

LSDFi(リキッドステーキングデリバティブ金融)市場はまだ初期段階にあります。ETHの17.9%しかステークされておらず、170億ドルのETHが遊休状態となっています。レイヤー2においてもまだ黎明期にありますが、そのアダプションは拡大しており、DeFiやLSDFiの可能性をレイヤー2が牽引しています。

wstETHの場合、現在はArbitrumが最も高い主要L2ハブ(TVL~1億4,000万ドル)となっています。Starknetには約760 wstETHが存在し、44,000以上のユニークウォレットに分散しています。ユーザーはwstETHをzkLendに預け入れることで、それを担保に他のアセットで借入れできるようになります。我々は、Braavos、mySwap、JediSwapといった他のエコシステムパートナーと緊密に協力し、Starknet上のwstETHに新たな資本をさらに呼び込むことを目指しています。

wstETH Share | Dune

zkLendのアプローチは、DeFiのレゴにおいてStarknet上の流動性レイヤーとして機能します。我々は、より洗練された利回り戦略がLSDの貸し借りを活用し、ユーザーに魅力的なリターンを生み出すことができるよう、様々な形態のLSDをサポートするマネーマーケットサービスを拡大することを目指しています。これと並行して、zkLendはテネットLSDCのような、LSDを裏付けとするステーブルコインとの協業も模索しており、レイヤー2全体のユーティリティを高めることを目指しています。

機関利用者のためのインフラ構築への取り組みについて教えてください。

web3に関わる多くの機関投資家に話を聞いた結果、我々は次のように結論づけました。

(1) 全体的なトレードアクティビティの低下に伴い、借り入れ意欲が減退している
(2) オフチェーンでのリスクフリーレートの上昇により、オンチェーンでの機関投資家の流動性は乏しい
(3) 規制やコンプライアンスがより厳しくなっているため、パーミッションプールがより重要視されている
(4) 利用可能性の確実性と資金調達コストの観点から、一般的に固定金利借入の方が望ましい

このような見解に基づき私たちは、当初の機関投資家向けレンディングモデルを、以下の主要原則に基づいて再構築しています。

– レンディングモデルは、ピアツープール(Maple、Clearpoolなど)からピアツーピアの分散型オーダーブックモデルに移行し、パーミッション制のレンディングに焦点を当てます。ユーザー(貸し手と借り手の両方)は、KYCコンプライアンスを完了する必要があります。

– 借り手は金融機関であり、貸し手は金融機関と個人顧客の両方になります。借り手はまた、デューデリジェンス情報を提供するために企業プロファイルを設定する必要があります。さらに、ローンは完全に担保され、ERC-20トークンのバスケットを担保とし、将来的にはRWA担保トークンの可能性もあります。

– プロファイルを作成して担保を預けることで、借り手は「売り」注文を作成できます。(固定借入金利、期間、担保の範囲から選択可能)一方貸し手は、最低貸出金利、希望する借入期間、目標LTVの範囲を指定した「買い」注文を作成します。zkLendはこれらの注文をマッチングし、橋渡しするためのブックキーパーとして機能します。

zkLend Institutionalのビジョンは、オンチェーン・クレジット市場のプラットフォームとなり、リテールユーザーと機関投資家の双方にオンチェーンでの債券発行と取引を促進するインフラを提供することです。私たちは、分散型オーダーブックモデルが、固定金利取引、金利スワップ、フォワードレート契約、シンセティックボンドなど、将来の機関投資家グレードのDeFiイノベーションを構築する上で最もコンポーザブルな基本構造を持っていると信じています。

コミュニティ質問

初心者向けにzkLendの具体的なユースケースを教えてください

zkLendはマネー・マーケット・プロトコルで、ユーザーが資産を預けて利回りを得たり、預けた資産を担保に他の資産を借りたりできるように設計されています。

私が知る戦略の例としては、zkLendにUSDCを預け入れてETHを借りるユーザーがいました。そしてそのETHをBraavosのステーキング・ブーストに預け、さらに利回りを得ます。これによりユーザーは、USDCの貸し出し利回りとwstETHのステーキング利回りを得ることになります。zkLendのETH借入レートは比較的低いため、ユーザーはUSDCの預け入れにレバレッジをかけた運用が可能となります。

もちろんこれはzkLendの潜在的なユースケースの一例に過ぎません。zkLendはパーミッションレスの DeFiレゴとして存在するため、ユーザーは自分のニーズに最も適した独自のユースケースや戦略を組み立てることができます。

Assets and APY | zkLend

zklendの観点から、今後Starknetにどのようなアップグレードを期待しますか?

StarknetのKakarot(Cairoで書かれたzk-EVM)、Madara(分散型シーケンサー)、Herodotus(ストレージ証明)の開発にとても期待しています。これら3つのコアインフラは、開発者が新しいプライベートStarknetインスタンスやアプリチェーンをシームレスにスピンアップでき、他のStarknetレイヤー、ロールアップ、EVMネットワークへの即時メッセージングブリッジ接続を可能にする強力なコンビネーションを提供します。

zkLendのビジョンは、さまざまなレイヤーやロールアップを横断して資本を集約し、レバレッジを管理する流動性レイヤーになることです。アプリチェーン開発は特に関連性が高く、zkLendのビジョンを実現する上で重要なインフラであることが証明されるでしょう。

セキュリティ対策について教えてください。

zkLendには3つの防御ラインがあります。

プロトコル設計

zkLendは、市場リスクを軽減するために、多くの内部設計を実施しています。zkLendは、貸し借りに使う異なる資産ペア間の価格変動相関リスクを切り離すため、各資産に特定の担保係数と借入係数を設定しています。また価格操作による攻撃から保護するため、オラクルからの価格を検証するバックアップとしてVWAP価格チェックを実装しています。

セキュリティ監査と正式仕様

zkLendのコードは、Nethermind Securityによるセキュリティ監査を完了し、コードベースが堅牢なリエントランシー保護と徹底的な入力検証とチェックを行っていることが認められています。

リアルタイムのリスクモニタリング

zkLendはHypernativeとパートナーシップを結び、実装後のリアルタイムのリスクモニタリングを行っています。Hypernativeは、潜在的なハッキングやエクスプロイトに関する早期警告をzkLendに提供するために、機械学習を活用して継続的にスキャンし、異常なアカウント操作や脅威を検出します。

まとめ

zkLendは、Ethereumレイヤー2のStarknet上に構築されています。StarknetはEVMとの互換性がないため、利用にはBraavosやArgent Xといった専用のウォレットアプリが必要となります。ユーザーにとってこの障壁は決して低いものではありません。

しかしAMAを通じて、分散性とセキュリティを犠牲にしないzk-Rollupへのこだわり、中でもゼロ知識証明のパフォーマンスを最適化するために開発されたCairo言語を使用するStarknetのメリットは良く伝わりました。

レイヤー2ソリューションはまだ初期段階にあり、特にzk-Rollupによるレイヤー2の市場規模は全体に比べて小さいものです。その中でzkLendは、マネーマーケットとしてエコシステムの重要な流動性ハブを担い、現在すでにStarknetにおいて第4位のTVL(Total Value Locked)を抱えています。今後zkLendとStarknetエコシステム全体がどのように発展していくのかが注目されます。

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