【韓国滞在レポート②】BlockWater Capital – ChaeHo Shin氏 インタビュー
Shota
現在、Crypto Timesにて掲載中の韓国のブロックチェーン / 仮想通貨市場に関するレポートです。初回は韓国市場をターゲットにしているAelfに関してお送りしました。
今回のレポートではあくまでプロジェクトだけではなく、ブロックチェーン企業への投資ファンド、リサーチャー、カンファレンスなど様々な視点から見る国内外の仮想通貨市場に関しての状況や戦略などをまとめていくをポイントに発信しています。
第2回となる本レポートでは、韓国で大規模なブロックチェーンファンドであるBlockWater CapitalのChaeHo Shin氏にインタビューを行ったレポートをお届けします。
BlockWater Capitalにより、インキュベートされた取引所DFLOWも2月よりローンチされます。こちらも是非注目ください。
第1回のレポートは以下よりご覧ください。
【韓国滞在レポート①】Aelf – JB Lee氏 インタビュー
目次
BlockWater Capitalインタビュー
— はじめまして。CRYPTO TIMESです。VCの方にこうやって取材できるのもなかなかないので緊張しています。まずは自己紹介とBlockWater Capitalの紹介をお願いします。
ChaeHo氏 : BlockWater CapitalのChaeHo Shinです。よろしくお願いします。私自身は、過去に韓国の中央銀行に務めており、その後昨年に仮想通貨の業界に参入しました。
韓国のプロジェクトであるMediBlocのCFOを務めたのち、2018年8月にBlockWater CapitalにManaging Partnerとして参加しました。私たちは、2017年の夏からオペレーションを開始した韓国のファンドです。2人の個人資産によって創業され、現在もこの2人の資金を運用しています。
2017年末の段階では、15倍のROIを記録し、運用資産の面で見ると韓国では大規模なファンドであるということができます。
ファンドとしての強みは、私たちは世界各国の大規模なファンドと強力な繋がりを持っているという点です。過去に、ICOプロジェクトである『FANTOM』にリード投資で参加しましたが、当時(6月)は、非常にhypeも高く10倍以上の倍率があったため、韓国国内でも『BlockWater Capital』のプレゼンスは大きく向上しました。
BlockWater Capitalの投資判断基準とは?
— ありがとうございます。2017年から2018年の頭にかけてはICOが特に盛んでしたが、韓国では現在ICO周りの規制はどうなっていますか?
ChaeHo氏 : 韓国政府は、ICO周りの規制を準備していると言っていますが、このスピードは非常に遅いと言えますね。
— 色々訪問したり、話を聞いている中で韓国は日本と似ているなと思っていたのですが、規制周りのスピード感も遅いんですね。
ChaeHo氏 : そうですね。また、私自身、彼ら(韓国政府)が実際に何かをしているかという点に関して懸念があります。過去に、Regulator(規制を行う側)として仕事をしていたことがあるので、政府がどのような動きを取るかということに関しては容易に想像することができます。
現時点で、韓国国内では明文化されたICOの規制はありませんが、これはEUや米国の動きを伺っているためと考えるのが健全で、韓国が米国のSECより先にリスクを取って規制を固めていくということは考えにくいでしょう。こういった理由で、世界各国は米国SECやEUの動きに注目しているのではないかと考えています。
— 日本でも規制を作りつつはあるものの、なかなか決まりきらない部分はあるので同じですね。因みに先程年末は15倍のROIを達成したと話がありましたが、BlockWater Capitalがプロジェクトに投資する際の判断基準について教えていただけますか?
ChaeHo氏 : 現在のプロジェクト精査におけるテーマは”Mass-Adoption”(一般への大規模な普及)にあります。このテーマですがこれは中国他、大規模な複数のファンドとの話し合いの後に何が戦略として有効であるかを話し合って決定したものです。
2018年夏くらいまでは、どちらかというと技術力を重視したプロトコルレイヤーやプラットフォームのものに注目していましたが、メインネットのローンチで何ができるのか・ユースケースを世界に示すことができませんでした。
— イメージとしては逆で、技術よりな部分に力を入れていると思ったのですが、今はそうではないんですね。
ChaeHo氏 : もちろん技術的なプロジェクトにも投資はしますが、まずはプロジェクトがスキャムでないこと、実際に何ができるかを広く示すことができるプロジェクトとして”Mass-Adoption”のテーマが選択されました。
そのため、投資先を選ぶ際は、”Mass-Adoption”面での実現可能性や個人ユーザーへの技術の浸透の可否が非常に重要になります。
しかし、実現可能性やプロジェクトが目指すものも十分に確認しますが、最終的にはファンドとして利益を上げる必要があるので、参入する市場規模などしっかりと数字を使ったマトリックスも、もちろん重視していきます。
技術からマスアダプションへ
— BlockWaterのポートフォリオに多く散見されているプロトコルや取引所などは過去に行った技術への投資ということなのですね。
ChaeHo氏 : 先ほど伝えた通り、現在のトレンドは”Mass-Adoption”です。そのため、今はプロトコルにはあまり注力していません。
当時は、次世代のLinuxを目指して多くのプロトコル系プロジェクトに対するhypeが高まっており、次にどれが生き残るのか、どのプロジェクトが次のLunuxとなるのかを仮想通貨ファンドとして判断するのは難しかったために、幅広く投資を行っていました。
— 次世代のプラットフォームの地位を勝ち取ろうというプロジェクトは確かに多かった気がしますし、そのようなプロジェクトに投資してるファンドも多かった印象があります。
ChaeHo氏 : そうですね。当時は高いhypeのために、容易に資金が集まり開発も進んでいましたが、最近では優良なプロジェクトでも調達金額に到達しないケースも稀ではありません。
一方で、取引所との提携は非常に重要で、それが大規模なものであればあるほど、強力な関係であればあるほどファンドとしては大きな強みとなります。仮想通貨プロジェクトへの投資において、ファンド側としては資金の投入だけではなくしっかりとしたイグジット(出口)プランも挙げておく必要があります。
トップティアの仮想通貨取引所との強力な関係を構築しておくことで、投資を行ったプロジェクトのトークンの売却、つまり出口を確保するということと同義になるため、これが非常に重要です。
Blockchain Fundの今後の投資判断とは
— 今だと市場も冷え込んでいますが、今後はどのような判断をもとに投資を行っていくのでしょうか?
ChaeHo氏 : これまでは、ICO(Initial Coin Offering)でトークンに対しての投資がメインでしたが、各国の規制やその表明などにより、資金調達方式におけるトレンドがSTO(Security Token Offering)に移行しつつあります。
私たちは、このような状況を受けて、ICOのリード投資だけではなく、上場済みの上位仮想通貨や株式への投資なども積極的に行っています。
— 従来のようにトークンではなく、株式に対しての投資も行うようになっていると。
ChaeHo氏 : こういった意味だと、私たちは従来のベンチャーキャピタルの戦略に近づいているとも捉えることができるのかもしれませんね。直近だと私達は、韓国国内で行われた2社のリバースICOにも参加しました。
— 投資におけるリターンはどのくらいのスパンで見ていますか?短期で見ているのか長期で見ているのかなど。
ChaeHo氏 : 仮想通貨への投資であれば、まず長期のスパンで見ることはありません。基本的には1年以内で考えています。
私たちは、プロジェクトに危害を与えることは極力避けたいので、他のファンドがやっているような即座のイグジットは行いません。
しかし、株式に投資するとなれば、長期で考えることも多いですが、トークンは市場心理などとも深い関係を持つので、必ずしも1年以内というわけでもなくフレキシブルに対応していくことができると思います。
— 本日はありがとうございました。色々と韓国市場に対してや投資に対する考え方もわかり、非常に勉強になりました。
まとめ
今回の記事では、BlockWater CapitalのChaoHo氏とのインタビューの内容をまとめました。
プロジェクトの発表などを普段読んでいると、ようやく実装レベルまで迫っているという感じですが、一方で、BlockWater Capitalを含むVCでは早期に技術サイドへの投資から手を引き、エクイティやMass-Adoptionに注力している点などは、非常に興味深い内容でした。
また、市況に合わせて柔軟かつ慎重に投資のスタイルを変化させているといった点などは、一個人投資家としても真似していきたい部分だなと感じました。
そんなBlockWater Capitalがインキュベートする取引所DFLOWも近日オープンのようです!
次回のレポートでは、WebでICOのレビューや市場の調査レポートなどを行うBlock RatingsのPaul氏とのインタビューをまとめていきます!
(インタビュアー : アラタ , Shota)