中央型から分散型へ:EUが見据えるデータ管理の新しい信頼モデル

中央型から分散型へ:EUが見据えるデータ管理の新しい信頼モデル

はじめまして。五月雨まくら(@samidare_makura)です。

経済活動の活性化には、企業の製品(プロダクト)やサービス、労働者が市場ニーズに応じて柔軟に移転できるシステムが必要です。そのためには「データ」のやりとりが非常に重要な役割を担います。

確かに、インターネットやクラウドサービスのおかげで、データを自由にやりとりすることは容易になりました。しかし、欧州委員会(以下、EC)の取り組みである「Building a European Data Economy」が提起するように、ローカライゼーション制限やデータの移転に関する規則の欠如により、データのやりとりにはいくつか障壁あります。

データの信頼性を保証する検証方法の欠如

ECは、GDPR(General Data Protection Regulation)などの規制を打ち出し、データのやりとりに関する枠組みに対して提案を行い、データのやりとりに関する障壁を取り除くために尽力してきました。

これらの取り組みは重要なステップですが、現在のインターネットにおける最大の問題の一つであるデータの「信頼性」については言及していません

オンラインでショッピングをした人の誰もが知っているように、インターネット上における信頼の有無は大切な意味を持ちます。

例えば、販売主が商品をきちんと配送してくれることを信頼できますか?商品が偽造されていないと信じることはできますか?これらの懸念に対する対応としては、レイティングシステムがありますが、十分な情報が集まっていない場合は多々あります。

これらはEコマースにおける懸念のほんの一部ですが、重要な示唆を与えてくれます。個人および法人の経済圏がインターネット上で拡大していくにつれて、日常的なトランザクションのために、さまざまな種類のデータを検証する必要があります。しかし、肝心の方法については決定打に欠けているのが現状です。

信頼性モデルの過渡期

現在、データはプラットフォームに基づくビジネスモデルに集中管理されています。さらに、ネットワーク効果により一部のプラットフォームがデータを独占的に制御、成長を続けるとともに影響力が拡大していくと推測できます。

このモデルでは、単一障害点(SPOF)を持つ中央型プラットフォームへの依存により、セキュリティリスクが肥大化する恐れがあります。

例えば、1億4500万人以上の個人データが盗まれた「Equifax breach」や「Facebook」による5000万人以上のユーザデータの漏洩などが印象的だと思います。

このような懸念があるため、データの信頼性を保証する新しいアプローチが求められます。そこで登場したのが、分散型ネットワークに基づく信頼モデル「ブロックチェーン」です。

ブロックチェーン技術が注目されている理由の一つは、中央型の信頼モデルへの依存における問題を解決する方法として期待されているからです。このモデルではデータの真正性を、分散型のP2P(Peer-to-Peer)ネットワークに参加するノード(ユーザ)による検証によって証明することができます。

データを管理することは組織にとっては大きなリスクとなる反面、事業の基盤を強化し得る大切な資産にもなります。それでは、組織はどのようにデータを扱えば、漏洩リスクと規制の圧力を避けることができるのか?これを明らかにすることはGDPRの目標の一つです。

分散型ネットワークによる信頼性の証明

分散型ネットワークによる新しい信頼モデルでは、個人データの持ち主が安全に他者へ情報提供することが可能になります。ここでいう個人データとは、名前、政府ID、住所、健康、学位などを指します。

ブロックチェーン上に直接データを格納することは危険ですので、ブロックチェーンにはデータに対するポインタのみ含まれています。データは、所有者により認証された時のみ、アクセス可能になります。データへのアクセスは政府や企業だけではなく、あらゆる領域のプレーヤーにとって不可欠な要素となります。公共および民間 部門は、分散型ネットワークによるデータの管理を推進するために、試行錯誤する必要があるでしょう。

考察と結論

現在のデータの信頼性モデルの問題は、データを十分に検証できないことです。EUはこの問題を解決しようとしていますが、依然として課題は多いようです。

一方、過去2、3年の間にブロックチェーンに基づく分散型ネットワークが登場して、新しい信頼モデルを提起しました。これは、データを検証するための方法として有力な選択肢です。

ブロックチェーンによる信頼モデルが浸透するためには、ブロックチェーン技術の発展も重要ですが、膨大なデータを抱え込む政府機関と企業組織との協調が不可欠であり、今後の動向を注視する必要があるでしょう。

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