イチからわかるマイニング事情【第2回】: 実際の統計からみるマイニング産業
2019/10/04

イチからわかるマイニング事情【第2回】: 実際の統計からみるマイニング産業

shimada

Takahiro

経済学・金融論、また統計学をはじめ数学の分野にも興味があり、勉強しています。

前回はマイニングの難易度やハッシュレート、ビットコインの価格下落などがマイニング産業にもたらす影響を解説しました。

今回は、BitMEXが出しているリサーチを元に、去年2018年11月初めから12月初めに見られた価格下落と、ハッシュレートやマイナー報酬の関係性を実際の統計と共に見ていきたいと思います。

この記事を読めば、暗号資産と難易度の密接な関係、そしてそれらが市場に及ぼす影響がわかると思います。

基本統計

みなさんも記憶に新しいと思いますが、2018年11月〜2018年12月にビットコインの価格は45%近い下落を見せました。

価格の下落後に、ハッシュレートも31%ほど下がったという統計がBitMEXから出ています。

ハッシュレートの低下はマイナーの市場撤退を意味します。より少ないマイナー人口でマイニングを進めようとすると必然的にハッシュレートが低下していきます。

今回の31%ものハッシュレート低下は、ビットコイン価格の下落のために市場からマイナーが撤退したことによって起きたということです。

BitMEXは、130万人以上のマイナーが市場撤退したと概算しています。

結果的に、1日のマイニングによる利益が1300万ドル(現在の日本円換算で約14億2千万円)から600万ドル(約6億5千万円)まで落ち込んでしまいました。

難易度調整の遅れ

またこの価格下落が、11月16日と12月3日にそれぞれ7.4%と15.1%の難易度下落を引き起こしたようです。

状況をより複雑にしているのが難易度調整の遅れです。難易度は2016ブロックごとに行われますが、その2016ブロック、約2週間の間にも価格の低下が起きてしまうことが多々あります。

価格は一夜にして暴落することもある一方で、マイニングの難易度は2週間おきに行われます。難易度の調整が価格の下落についていけないことが大きく市場自体に影響を及ぼしているのです。

価格が下落したとしても難易度の適切な調整でハッシュレートの低下は抑えられるはずですが、難易度の再調整に遅れが出てしまい、ビットコインの価格に対するマイニングコスト(電気代)が割に合わず、マイナーの数が激減することが昨年起こりました。

マイニング産業の利益率推定

BitMEXのリサーチによれば、1kWh(電気ストーブを一時間使用したときの消費電力量)につき0.05ドルの電気使用料のみを可変費用と仮定した場合、価格が下落する以前は約50%ほどの利益率を保っていました。

これは、0.05ドルの費用に対して1ドルの収益を上げていたということになります。これが価格の下落以後、ビットコインの場合30%に下落してしまいました。

これらの概算は、全てのマイナーに同一の費用がかかっていることを想定した場合でした。しかし現実には全てのマイナーが同じ費用を抱えているわけではありません。

中国でマイニングを行うマイナーはアメリカや日本でマイニングを行うマイナーに比べて可変費用(1kWhの電力量をしようする時の費用)が少なくて済みます。

そのことも考慮に入れた概算をBitMEXが出しており、そちらの方が現実を分析する上で適しています。

実際は、価格の下落に伴って電気代と比較して元が取れなくなったマイナーから順に市場退出をしていくことが考えられるからです。

そこでBitMEXは、電気代が平均0.05ドル・標準偏差0.01ドルの正規分布に従っていると仮定して分析を行いました。

 

平均0.05、標準偏差0.01の正規分布に従っているということは、だいたい68%のマイナーが1kWhあたり0.04ドルから0.06ドルの費用を持っている仮定になります。

そしてマイニングコストが高くつくマイナーから徐々に市場退出していくということです。

ですから、ビットコインの価格が下落すると、初めに0.09ドル/khw(平均から4つ標準偏差づれている費用)から0.08ドル/khw(平均から3つ標準偏差高い費用)のコストがかかってしまうマイナーが先に市場退出していきます。

次に0.07ドル/khwから0.06/khwの費用がマイニングにかかってしまうマイナーが市場退出をしていくといった次第です。

この仮定の下で価格下落がどれほど利益率に影響するのかということを分析しています。

この仮定で分析を行った結果、利益率が50%から40%台の下落で抑えられていることがわかりました。

これは市場にいるマイナーにとっては以前の30%に比べ幾分良い状況であるということになります。

マイニング市場からマイナーが撤退するとトランザクションの処理速度に遅れが出てしまう他、51%攻撃などのブロックチェーンに対する攻撃に無防備になってしまうということが考えられるため、当初の仮想通貨の理想から遠ざかってしまう恐れまであるのです。

価格下落の考えられる原因

それでは価格下落が起こった原因はなんでしょうか。

はっきりした原因はわかっていません。

しかし、見過ごすことのできない前兆として、価格が下落する前にマイナーによる大量の売り注文があったことがわかっています。

投資家向けに仮想通貨市場のデータを提しているプラットフォームーBoltzmannが、11月12日に大量にビットコインの売り注文を入れるマイナーを確認したと報告しています。

その中でも多くのマイナーが巨大マイニングプールであるSlushpoolのメンバーだった可能性が高いと見ています。

マイナーが保有しているビットコインを売ることで価格下落の原因を作ってしまったことも考えられるということです。

まとめ

今回はマイニングのハッシュレートと難易度、そして価格の関係を顕著に表している実際のデータを見ていただきました。

BitMEXのリサーチからもわかるように、やはり価格の下落とマイニングの難易度、そしてマイナー達のインセンティブの間には大きな関係があります。

このあたりをしっかり理解して、難易度の再調整などのニュースを見ればよりマイニング事情が頭に入るのではないでしょうか。

また今回紹介したリサーチに関して、マイナー達の売り注文がビットコイン価格の変動に大きく影響していることもおわかりいただけたかと思います。

独占状態にあるマイニングプールが価格の変動にまで影響することも見て取れたと思います。

次回は「マイニングプールの形成と巨大化は防げるのか?−理論と現状」と称しまして、マイニングプールの説明とその巨大化が懸念される中でどのような理論的枠組みが提供されてきたのかを、The Miner’s Dilemmaという論文をご紹介しながらご説明していきたいと思います。

関連記事 同じライターから

同カテゴリの人気記事