7月20日に福岡市で開催された「Web3.0 Town Hall」の潜入レポート

2023/07/26・

Crypto Troll

7月20日に福岡市で開催された「Web3.0 Town Hall」の潜入レポート

7月20日17時から福岡市エンジニアカフェ(https://engineercafe.jp/ja/)にて「Web3.0 Town Hall」が行われました。

このイベントは福岡市からの委託を受けたFracton Ventures株式会社(https://fracton.ventures/)によって開催され、「福岡におけるWeb3の機運の醸成及びプレイヤーの創出」を目的として行われました。

この記事は、筆者が当イベントに参加した際のレポとなります。セッションの要約と実際の対談を織り交ぜながら、紹介していきます。(対談形式で引用している登壇者の文言や言い回しに関しては、必ずしも厳密に文字起こししたものではないことをあらかじめご承知おき下さい)

※使用しているイベント会場の写真は全てFracton Venturesからの提供です。快く提供をして下さったこと、この場を借りてお礼申し上げます。

※登壇者及び関係者に対する敬称は、対談形式の部分では付けず、それ以外では氏をつけさせて頂いています。

高島宗一郎福岡市長からの挨拶

「Web3.0 Town Hall」は特別ゲスト・高島宗一郎福岡市長の直々の挨拶から始まりました。

「Web3.0 Town Hallにようこそおいでくださいました。先着順での申し込みでしたが、速攻で満席になったということでした。最初、Web3が出来た時には、日本は世界的にも注目がされたものの、投機的な目的の人たちも多く入って来ました。しかし、ChatGPTが盛り上がっていく中で、最近Web3に対する投機的な目的の方達が落ち着いてきたように思えます。今後、Web3が世界をどのように作っていくのか、そうした可能性に興味ある皆様が活動出来るようなタイミングになってきたのかなと思います。また、この一年間で、政府の方も平さん(※自民党衆議院議員・平将明氏)を中心にレギュレーションの整備などもして頂いたので、逆に一周回って日本の方がやりやすい良いタイミングになってきたのかなと。そうした時、感度高く(こうしたイベントに)集まってきて下さっている皆様が、まさしくフロンティアの皆様だと思っています。今回色々な実装の事例や、実際に企業の中で世界観を切り開いていく中で見えてくる景色や課題を共有していって、こうした初期の段階で、皆様で一緒に可能性をどう広げていくのかを話せたらいいなと思っています。

週末にはDAO CAMPもあります。いずれにしても、新しい世界を切り開くというのはバズる前は大変ですが、その先にはそれにチャレンジした人にこそ、新しい広い可能性の世界が待っているのだと思います。なので皆様で力を合わせて、行政としても福岡市からも後押ししていきたいと思っていますので、ぜひ一緒になって新しいチャレンジを、皆様が世界のリーダー的存在として世界を切り開いていくような人材になってほしいなと思います。

そのためにも個人個人ではなくて、福岡にはこうしたエンジニアカフェがあって、この秘密基地の中で、我々一緒にどんどん成長していきましょう。ということで、本日はよろしくお願いいたします。」

挨拶が終わった後、市長は業務の都合で退席されました。そして、早速セッション1「ユースケースから学ぶ~Web3.0×JR 九州/アビスパ~」が始まりました。

セッション1「ユースケースから学ぶ~Web3.0×JR 九州/アビスパ~」

(左から)田中隆一氏、牛島卓二氏、Nanami氏

登壇者紹介(敬称略)

  • 田中隆一(https://twitter.com/ryu1):株式会社フィナンシェ 取締役COO
  • 牛島卓二:九州旅客鉄道株式会社 事業開発本部デジタル事業創造部(デジタル・データ分析) 副課長
  • Nanami(https://twitter.com/grow_mercury):Astar Network CEO Assistant & Marketing Team

このセッションでは、Web3を身近に触れてもらうために、福岡でのユースケースの紹介及びその取り組みの背景やビジョンが語られました。

それぞれの取り組みについて

まず初めに、それぞれの取り組みについて語られました。そのいずれもが、コミュニティや人とのつながりを重視するものでした。

フィナンシェ

フィナンシェの福岡県内における取り組みとして、スポーツと地域創生を挙げました。自分たちの業種を「Web2.5」と称しており、各分野の橋渡しになれればととのことです。フィナンシェは、自身でも暗号資産を発行しており、コインチェックIEO第二弾として、フィナンシェトークン(FNCT)を発行しています。

また、スポーツに対する取り組みとして、スポーツチーム5つと一緒に活動していること、今回のイベントではその中でもアビスパとの協業について語られました。コミュニティ作りに寄与しており、アビスパを応援するファンだけでなく、アビスパ自身もコミュニティ作りに対して一緒に頑張っているとのことでした。トークン保有者は1000人を超えており、その中にはサポーターもいれば、福岡県外の人もいるとのことで、コミュニティから新しいプロジェクトを生み出していくとのことです。

その他フィナンシェの取り組みとして、50ほどのプロジェクトが進んでおり、静岡県のウイスキーや熊本の和牛業者などクラウドファンディングに近いコミュニティを有しています。福岡ではFFGとの資本業務提携を行っており、福岡での地域コミュニティ作りに注力しています。

JR九州

牛島氏は、JR九州の中でも、関連事業や駅ビルなどを取り扱う業種に従事しており、その一環でNFTを取り扱うマーケットプレイスを始めたと語りました。コロナがきっかけで、移動を伴う業務である鉄道業界は打撃を受けましたが、そこでリアルの移動に拘らなくてよく且つ、移動にも繋げることができるリスクヘッジ的な候補として、NFTが挙がったとのことでした。

お客様との繋がりを再構築すること、また、移動に繋げるためにどうすればいいかを考え、それらを達成するために、POAP(Proof of Attendance Protocol)という「実際に行ったことが記録になり、記憶になり、記念になる」という形を選んだとのことでした。昔から記念として切符を保管するなどありますが、切符は感熱紙なのでどうしても薄れていってしまうという問題があり、そこでNFTを活用する方向へ進みました。 これらを背景として、

  1. 「配布」という形が重要
  2. そこからのインセンティブ
  3. そこからのコミュニティ構築

というようにそれぞれの段階を考え、こうした世界観を実現したいという背景で、NFTの取り組みを開始したとのことです。

イベントの際に特別に開かれたJR九州NFTのWebページ

イベントの際、JR九州NFTのサイトはエラーが出てしまっており閉じている状態だったとのことでしたが、特別にこのイベントの一時間半だけ開けてもらったとのことで、来場者たち皆でサイトの見学をしていました。

Aster Network

Aster Networkの実際のユースケースが語られ、多くの業務提携やハッカソンを行うなどで、各種分野のサポートに着手していることが紹介されました。

ターゲット層は?

話は次の話題へと移り、フィナンシェ及びJR九州の主要なターゲット層に質問が進みました。

フィナンシェの場合は、基本的には以下の三つの段階があるとのことでした。

  1. 基本はコアなファン。そこから広げていく。
  2. サービスを受けるだけでなく、過程を楽しんでいきたい人が入ってくる。
  3. トークンの価値が上がるかもしれないという期待。

投機的というより、長期的な視野で応援してくれている人を見据えているとのことです。

JR九州の場合は、始まり自体はコアなファンからではあるものの、配布となるとライトユーザーが大事であり、NFTということを意識させず、スタンプラリー的にハードルをいかに下げることが出来るかを意識していると述べました。

どうしてWeb3に着目したのか?

まずは牛島氏からの説明がされ、「そこにいった証明というのが、現地でQRコードを読み取るだけでなく、実感を持った証明を持たせられるというのがWeb3の魅力であり、そこに着目した」とのことでした。

次に田中氏の場合は、「BTCが流行り始めた時に、海外送金は手数料で20%とかかかっていたりしたのですが、しかし、BTCの価値の交換性に注目しました。また、インセンティブ作りとしてのツールとしても見ています」と語られました。

また、ここでNanami氏から「ブロックチェーンはあくまでも管理方法であって、サービスの提供する道筋作りが大事」との言及がされました。

この道筋づくりに対しては、田中氏も牛島氏も両社同意するところで、両社以下のように語りました。

田中:日本の法律的な話もあるけれども、技術の一つとしてはオープンなインセンティブを作れるということで、プロジェクトを立ち上げてトークンを発行したり、他のトークンを保有することで価値貢献をしていく二つの方法があるのではないか。自分たちのリソースによって最適な方法を選べるというのが良い。エンジニアはエンジニアリング、ファンベースがあるところはそれを活かすなどして、それぞれで価値貢献をしていくことが出来るのではないか。

牛島:すべての駅でNFTを取得できるネットワークを作りたい。鉄道網をもとにした楽しみ方が出来ると、駅は目的地ではなくて経由地でもあるので、そこから観光地だとか自治体と連携して、コラボレーションによる発展をすることが出来るのではないか。

あくまでもWeb3というのは道筋であり、何かしらの目的を実現するための手段であって、目的それ自体ではないという話が印象に残りました。

Web3を導入するまでの過程・経緯

まず最初に、JR九州におけるNFT導入の経緯について牛島氏からの解説がされました。

牛島:デジタルデータ分析に携わってきたのは私だけであり、NFTというのが何かを勉強し始めて、そこからローンチまで一年でした。事業者と話をしてみても、エアドロすら分かりませんでした。そこから一年で事業化へと進んだ感じです。周りがついてこないことをいいことに自分で進んだという感じですね。たまたまNFTでブロックチェーンなだけなのですが、しかしNFTを持つ持たないは財政の話にもなるので、そこには気を付けながらも、ただの通販サイトであると社内を説得しました。

また、プロジェクトの期間についての言及もあり、これに対して田中氏は以下のように答えました。

田中:目指すところが大事ですが、自分たちのプラットフォームで発行するトークンとの兼ね合いを考えながらリリースしていきます。その中で徐々にトークンを持っていただいた人たちが、他のプロジェクトを立ち上げるときに支援していただくというのがWeb3的ではないでしょうか? 最終的には個人の何かをやりたいと実現するかのようなプラットフォームを作りたいですね。

次に、Nanami氏から、「これからWeb3で何かをしたいという抽象的な願望が(多くの企業で)あるが、企業のニーズの焦点はどこに当たっていますか?」という問いが挙げられました。

田中氏は「まだ漠然としたワードであって、とりあえず試してみたいという人がほとんどではないか。その中で、今までだと、何かを渡して収益を上げていたところから、今後一緒に成長していくというように、外部の人たちも巻き込んでという形になっていくのではないでしょうか」と回答しました。

これからの事業者に対するアドバイス

次に、事業者へのアドバイスが語られました。

牛島:DXと同様に、Web3をやりたいというのが目的になっていて、適切な実現ができているかは微妙です。何をするための手段なのかということは間違わないようにしないといけません。そうでないと、何のためにやったんだということになってしまいます。

また、「どういう依頼であれば動きやすいか?」という問いに対しては、田中氏から「クラウドファンディングとかとどう違うかとよく言われるが、(まずは)場を作るということではないか。そうした考え方に腹落ちしていただければ、早めに色々提案することが出来るのではないかと思います」と語られました。

その他、「web3にはどういった企業が参加できるのか、しやすいのか? して欲しいのか?」という質問がNanami氏からされましたが、それぞれ以下のような返答がされました。

田中:いろんな業種が考えられます。テックだけでなく金融など。Web3でもNFTやDEXというようなトレンドがありますし、新しく作っていくのかそれとも既にあるものに乗っかっていくのかをイメージするのが大事ではないでしょうか。

牛島:ファンとの距離を縮めたいと思っている事業者さんは、囲い込み的な意味でも親和性が高いのではないか。

そして最後にNanami氏からの、「どんな業種でも出来るでしょうし、ここにいる色々な事業者さんとも一緒にやっていけたらと思います」とのまとめの言葉で締め括られセッション1が終わり、質疑応答へと移りました。

質疑応答

以下、質疑応答の内容を、箇条書き形式で記述していきます。

Q. 自分はエンジニアであり、最近色々とやり始めたが、ウォレットを使ったりなどやはり難しい。マスアダプションという形でいろんな人に使って欲しい、Web3を意識しないで使って欲しいということであったが、見た目は普通のWebアプリだけど、裏側でブロックチェーンを動かすみたいになるのでしょうか?

田中:そうしていかないと一般の人が使ってくれないものになってしまいます。しかし、UI的なサービスであればWeb2.5的に入って行きやすいですし、セキュリティであればもっと先端に入っていけるのではないでしょうか。

Q. アビスパDAOでもそうですが、(ユーザー)自身がウォレットを持っているということですが、例えば秘密鍵をユーザーが触れるようになっているのですか?

牛島:(Web)2.5よりであり、とはいえweb3に長けた人からの流入ができない。なので、パブリックでAsterを使っています。裏側はWeb3ですが、メタマスクだけだと厳しいので、極力簡単なウォレットを用意しておいて、どちらでも選べるように設定しています。

Q コミュニティやDAOに興味があるのですが、モデレーターでもそうですが、コミニティを自走させるのは難しいのではないですか?

(この質問に対しては、実際のアビスパのモデレーターの方が答えられました):クラブとモデレーターだけだと形の上では、今までのファンクラブと近しい形になる。人が増えれば触れるほど自立型になっていくのではないでしょうか。コミュニティの展望はやはり考えなければならないところだと思います。

牛島:ファンがある程度の規模になっていくと、コミュニティの中で色々と案が出てきて、自分たち(事業者)がそれを実現していってというように出来るのではないでしょうか。まだ構想ですが考えてはいます。しかし、それがDAOという形でできるかは分かりません。Discordなどでやっていく形になるかもしれません。いずれにしても、モデレーターの役割は極めて重要ではないでしょうか。

 

セッション2「Web3.0 にキャリアチェンジした理由と始め方」

(左から)Crypto Baby氏、ビニール氏。

登壇者紹介(敬称略)

このセッションでは、異業種からWeb3業界へとキャリアチェンジした経緯について語られました。

Crypto Baby氏は元美容師、ビニール氏は元教師という経歴を有しており、異業種からの転身理由や、転身するとして何から始めたらいいのか、実体験を通して語られました。

前職及びWeb3業界に入った理由

ビニール氏を司会として、話が進められました。まず最初に、それぞれの前職についての話となりました。

ここからは主に対談形式で紹介いたします。

Crypto Baby:(前職は)美容師をしていました。ITでも金融でもなかったので、この業界(Web3)にはどこからでも来れると思います。

ビニール:昨年の3月までは教師をしており、昨年の4月でFractonに入りました。

また、この業界に入った時の話へと移り、その時はまだweb3という言葉ではなく仮想通貨という言葉が使われていたとのことでした。Crypto Baby氏の場合は早めにWeb3という言葉が入ってきていたものの、ビニール氏が業界に入った2017年には仮想通貨という名称だったとのことです。

次に、話は業界に入った理由へと移りました。

Crypto Baby:お金を増やしたかったからこの業界に入ったのが、正直な理由ですね。とはいえ、ちょうどちょうどその頃にコロナが流行り始めた時で、陰謀論だとか色々な話が出てくる中で、(クリプトの)既存金融から離れようだとか、管理者がいない新しい資本主義的なものといったところに対して面白いなとは思いました。

ビニール:自分もお金が欲しいと思ったからですね。副業というわけではないですが、自分の使えるお金が増えると嬉しいなと。でも、株は難しい。ちょうど仮想通貨のCMがあって、CoincheckかbitFlyerあたりで購入したと思います。そこから今に至ります。別にお金増やしたいという気持ちで入ってくるのはまぁおかしくはないかなと。

Crypto Baby:別に恥ずかしがらなくても良いですよね。

仕事を辞めるきっかけは?

Crypto Baby:自分は運が良くて。この前のバブルの前から投資始めたので、これくらいお金があれば自分のやりたいことに挑戦できるというくらいにお金が増えたからですね。もし、失敗してたらきっとこの業界には来ていなかったと思います。

ビニール:余剰資金が増えるというのは良いことですが、決断をするというのは結構大きくはありませんでした? 美容師の免許を取るまでの投資を考えると、それを超えてキャリアチェンジをするというのは大きな決断だと思います。

Crypto Baby:2、3年くらいは大丈夫だろうと思いましたし、失敗しても美容師に戻れるという保険はありましたね。

ビニール:それは自分も同じで、6年くらい教師をしていましたが、資格があるから最悪教師に戻れるという思いがありました。そこでリスクヘッジできるというのがありましたね。それに、リスクヘッジ以外にも、それだけこの業界が魅力的に見えました。

現在、どの分野に注目している?

ビニール:技術的な部分の話となりますが、人生をベットできるくらいの面白い部分などありましたか?

Crypto Baby:全てが自分にとって新しいことだったので、面白かったです。技術の種類もありますし、興味がある部分を一つ見つけてそれを追っていくというのが良いかなと。

ビニール:現在、どういった部分に注目していますか?

Crypto Baby:ソーシャルネットワークの変化ですね。

ビニール:どうなったらいいなの未来などありますか?

Crypto Baby:最近だとTwitterに対する不満などありますし、慣れ親しんだプラットフォームが中央集権的に変わるなど色々あるのではないでしょうか。自分の言いたいことが制限されるというのもあるし、個人の意見がディスカッション出来るというのはいいかもしれません。

ビニール:デジタルアーティストがこれまで収益化できなかったことがNFTなどで収益化できたりするといったことが出来ます。Web3というのは、自分みたいな自己評価が低い人間でも、これでもいいと肯定的に思わせてくれますね。

異業種からの転身について;個人の発信力やコミュニティの重要性

またここから、異業種の人間がWeb3に来ることへの、きっかけや活動しやすくするための話もされました。

重要なのは「発信力」とのことでした。

ビニール:異業種の人間であっても、web3で何かしらはできる。少なくともこうして登壇して話すことが出来ますよね。

Crypto Baby:個人で発信力を持つというのは人生を変えますね。

ビニール:最初はYouTubeからでしたっけ?

Crypto Baby:YouTubeもtwitterも両方やっていますね。

ビニール:具体的にMaskでもKudasaiでも、楽しいことや困ったことなどありますか? まずは面白かったことなど。

Crypto Baby:トレンドの中心地が海外ということもあり、一年のうち半年くらいを海外で過ごしていて、いろんな人たちに会えて意見交換ができるというのは嬉しいし、楽しいですね。

ビニール:私も学校の先生をしていたこともあって、狭いエコシステムの中で動いていました。だからこそ、異業種の人と話すのがとても楽しいです。美容師時代はお客様と色んな話をされてました?

Crypto Baby:昔住んでいたのは名古屋で、大企業の方々と話す機会などあり、テンションは上がっていましたね。

ビニール:自分もそうした社長たちとWeb3の話をする時などは非常に楽しいですね。この業界だと大企業のお偉いさんとも親しくなれる。そうした距離の近さっていうのも常に感じていて、日々楽しい。では、困ったところなどはありますか?

Crypto Baby:いい点でもあり困った点でもあるのですが、言葉の壁は感じます。プロジェクトの紹介をしたりする時など翻訳が必要ですし、言葉が通じないと心の距離もできるので、そこをどう埋めて相手を理解していくのかで躓いてしまいます。

ビニール:自分も英語はやらないといけないし、会社に入る時もやりますと言っていたのですが、結局出来ていないですね。こないだのIVS京都でも英語で話すとなると困ったりしました。昔、学校にいたこともあり、ビジネス的な話にも苦労してしまいます。

Crypto Baby:自分も苦労しています。交渉ごとなどで胃がキリキリしますが、自分の方が強くなれば相手の方から来てくれるので、そこがアドバンテージかなと。

ビニール:Twitter頑張りましょうってことですよね。

Crypto Baby:いろんな媒体で影響力があると、良いことがありますね。

ビニール:DAOまではいかないかもしれませんが、徐々に交流が広がっていて良いコミュニティが生まれているように思います。

Crypto Baby:福岡でもこうして色んな人が集まっているし、福岡でもコミュニティの拡大をしていると良いことがあるのではないでしょうか。

ビニール:場所にとらわれないというのはweb3の魅力ではないでしょうか。自社の他のメンバーは東京ですが、自分だけは大阪。東京を起点としてweb3は広がっているけど、やはりそこら辺も分散化してもいいのでは。地方という文脈で、Web3をする人が増えたらなと思っています。

ここでセッション2は終わり、質疑応答へと移りました。

質疑応答

以下、質疑応答の内容を、箇条書き形式で記述していきます。

Q. Crypto Babyさんは、Mask NetworkやKudasaiJPそれぞれの役職でどんなことをしているのですか?

Crypto Baby:エコシステムマネージャー(Mask Network)では、うちの社長に日本の良いプロジェクトを紹介したり、日本のイベント関連の管理をしています。KudasaiJPの方では、コミニュティのイベントにモデレーターで入ったりや業界の人たちと交流して提携などをしています。最近では、イベントの共催などをしています。

Q. 私も美容師をしています。最初のきっかけは仮想通貨であるとのことでしたが、次のステップに行く時に何を勉強しましたか?

Crypto Baby:最初はDeFiに触ったりしたのですがよく分からず、アウトプットをすることを心がけて少しずつ自分の力にしていきました。自分はTwitterやYoutubeを中心に動いてきたのですが、分からないことなどを聞きながらやっていきました。

ビニール:来週にも福岡でDAOキャンプがありますし、そこでもわからないことを教え合うなどできたら良いですね。そこではWeb3だけでなくDAOとは何かなど、初歩的なところから始めますので、興味ある方どうぞという宣伝をさせていただきます。

Q.  Crypto Babyさんはどこの国で何をしていたんですか?

Crypto Baby:自分はカナダに行っていて語学研修をしていました。そこでエンジニアの人たちを会ったりもしました。

セッション3「福岡で活躍するWeb3.0 プレイヤーに学ぶ」

(左から)紫竹佑騎氏、みなもとこうき氏、岡崇氏。

登壇者紹介(敬称略)

このセッションでは、福岡を中心として活躍するWeb3プレイヤーを招いて、Web3事業を始める上での福岡の強みや、Web3の未来について語られました。

自己紹介

このセッションは、岡氏の司会によって進められました。まずは自己紹介から始まりました。

ここからは主に対談形式で紹介いたします。

岡:生まれも育ちも福岡で、自分の拠点はスイスにあります。

みなもと:企業のインターンシップの証明書などを発行したりしています。福岡には20年もずっと住んでいます。北九州に住んでいて、北九州高専の出身ですね。今やっている業務としてはデザインをしています。

紫竹:暗号をしている会社で社長をしています。ブロックチェーンを活用しています。前の仕事で仮想通貨の取引所のCTOをしていて、サイバーエージェントでもエンジニアをしていました。そのほかにも色んなIOTデータの活用など、福岡市の支援を得ながらやっています。ブロックチェーンが関係していることであれば何でもですね。

ここで、岡氏から、来場者へ職業の質問がされました。挙手形式でしたが、エンジニアの方はあまりおらず、事業家の方が数人、勤め人でブロックチェーンを学びたいという方も数名いました。

ここから早速、Web3への話となりました。

そもそもWeb3とは何なのか? 業界に入った理由は?

岡:では、Web3の可能性について話していきましょうか。

みなもと:web3は何かという逆質問からしてみてもいいですか?

岡:認識としてブロックチェーンを活用して、コミュニティを軸として、かつトークンを活用していく組織作りをすることかなと。DAOなどにも繋がるでしょうし、ユースケースとしてNFTが多いと思います。では、AIなどいろいろありますが業界に入った理由を聞いていきましょうか。

紫竹:サイバーエージェントにいた時の話ですが、上司がビットコインが造詣が深く、ビットコイン論文を勧められたりしていました。GOXにお金を預けていのですが失くなってしまい、GOXの本社が近くだったので直撃してみたら、WBSに取材され被害者として出演したりしました。そこからイーサリアムなど出てきて、色々あって取引所の手伝いなどをしました。最終的にブロックチェーンの技術を生かそうと思い、いざそれを表に出したら、大企業から誘いがあり、中には数千万円の誘いもあったのですが、社員としてやるよりかは、会社としてやった方が良いのではないかと思い、暗号屋を立ち上げました。やっていることはブロックチェーンの社会実装ですね。

みなもと:高専生だったときに仮想通貨に興味を持ちました。友達はNEMに投資していましたね。ブロックチェーン(の世界)に入ってみて、いろいろと面白いことになっている時に創業者と知り合って作ってみたら、その時がブル相場だったこともあって資金調達も決まって、いつの間にかこの場にいます。

岡:アメリカにいた時に、「死んだり生き返ったり通貨」があるとニュースがあり、それがBTCでした。そこから触っていったのですが、BTCがどこの国にも所属しない形で価値を作っているというのが(興味を持った)きっかけ。そしてその価値を成り立たせるための仕組みに衝撃を受けました。

Web3を選んで良かったと思える時

岡:これは市役所の人から聞きたいという質問なのですが、Web3 を選んでよかったという実体験はありますか?

みなもと:なーちゃん(Crypto Baby氏)が言っていたことにも繋がりますが、色んな海外の人と触れ合えるというのが大きいですね。サイドイベントもあって、IVSでもWeb3の人たちはサイドイベントがありました。二条城を貸し切ったっていうのは、パリピですよね。それはオープンな文化だからかなと。いろんな人たちと仲良くなって、その人たちに呼ばれるなどあります。

岡:クリプト業界は、カルチャーがそもそもオープンですよね。ヴィタリック(イーサリアム開発者)みたいな人が、半袖半ズボンで歩いてたりする。業界を牽引しているような人たちにすぐ近づくことが出来る。通常の企業であれば出来ないフラットな部分がありますね。

紫竹:出来立ての業界だからというのもあるかもしれません。きっとインターネットの業界もそういった時期はあったでしょうし、今のweb3はそういう時期でしょう。Web3のカルチャーとしていいなと思うのは、NFTアートというのがありますが、「こんなjpeg何なんだよ」と思われながらも、自分が良いと思うから買うといった風になっている。BTCだってみんなが価値があると思うから価値があるのであって、昔の貝殻みたいなものではないでしょうか。価値があるという人もいれば、価値がないという人もいる。自分はブロックチェーンがいいなと思っていて、銀行口座を作ってもらえない時期もあったけど、自分がいいと思っているものをやっているというのが、いざ陽が当たると良いですし、否定されながらも良いと思うからやるのだというようなカウンターカルチャーでもあると思います。

岡:この業界は通名や偽名で活動している人も多いですよね。自分と切り離したアイデンティティで活動している人も多くて、それによって個人的なパーソナルな情報に関係なくいろいろすることもできる。それもカルチャーではないでしょうか。

Web3という言葉すらなかった時代から携わっている人からすると、今の業界はどのようなフェーズに入ってきていると考えているのか?

岡:web3という言葉すらなかった時代から携わっている人からすると、今の業界はどのようなフェーズに入って来ていると思いますか?

紫竹:一回飽きられているという状況だと思います。AIに人が流れているけれど、そうした光景はブロックチェーンをしてきた自分からすると何度も見てきた光景。しかし、BtoBをしていると、一社の基盤に乗っかろうというよりはみんなで一緒にフェアな基盤作ろうという部分でブロックチェーンを使おうというような動きがあって、沢山のところで社会実装され始めている。もしかしたら、皆が思うweb3と自分にとってのweb3は違うかもしれない。例えば、NFTを見ると幻滅期(※ハイプ・サイクル)にあるように思うのですが、しかしそれを乗り越えるときちんと歴史がある人なんだと思われるのではないでしょうか。ブロックチェーンでもそうでした。

岡:自分の時は仮想通貨と言えば怪しいという印象が世の中にありました。これが決定的に変わったタイミングが、エルサルバドルの法定通貨の採用かなと。怪しいものを国が法定通貨として設定するというのが、信頼できるものというラベリングになりました。そこから仮想通貨が信用されるものという入り口になったのではないかなと思います。Web2.5という言葉も今日出てきたが、どのようにしてマスに向けて訴求していくかという動きがあります。その他としてあるのが、仮想通貨に対する規制ですね。このような流れが以前にもあり、株式にだって最初は規制があった。規制を通して健全化していってマスへ向いていった。そういった流れがありました。

みなもと:飽きられつつあるけども、技術を導入したいという企業は増えてきています。自分としては信頼の網が大事であって、信頼できるインターネットでの取引というのが大事だし、分散型IDというのもそこが大事になってくる。証明書の業務をしていく中で、信頼できる情報が少ないことが多いことに気付きます。表に出る情報は表面的なものであって、顔写真とか収入とかも表には出せない。質の高い情報は信頼の網に乗っていかないと、活用ができない。NFTはマーケティングに使われることも多く、属性の判断に使われる。しかし、NFTから得られる情報が信頼できるパーソナルで質の高い情報とも限らない。自分たちはそうした質の高い情報を事業会社さんにベネフィットを示しつつ、信頼できる情報を増やしていけるかという部分が大事ではないでしょうか。

福岡市からweb3を増やしていくという点から、これから福岡市はどのようなところに力を注げばいいのか。現場の声としての提案。

岡:福岡市からweb3を増やしていくという点から、これから福岡市はどのようなところに力を注げばいいかを、現場の声として提案していきましょうか。

紫竹:Web3の人たちに対して有利な規制緩和は大きいと思います。スタートアップ支援という点では日本一といっていいですね。福岡市で起業するという点でも自分は恩恵を得ているし、こうした場を作ってくれるのもとてもありがたい。現時点でもありがたいが、そこに規制の緩さという空白を作ってくれると、もっと良いのではないでしょうか。福岡県レベルではブロックチェーン学習のコミュニティもあるし、そういうイメージもあるし、新しくそういうイメージを作るのもあるし、身近にブロックチェーンを詳しく話せる人が実は身近にいたりもしました。そうしたエンジニアの人たちが集まりやすいようなコミュニティを作るようなのもいいのではないでしょうか。

岡:自分としてもエンジニアを集めるのがとても大変でした。昔そうしたことを企画した時には、人に教えられるレベルの人はいなくて、海外から呼んだりしないといけませんでした。柴竹さんのいうように、福岡はエンジニアがいっぱいいますし、そうした土台はすでに十分あるように思います。

みなもと:本当に仰る通りで、東京の次にということになれば、やはり福岡ではないでしょうか。

岡:人材という点を除くと、今はスイスにいますが、日本に移住するとなると福岡かなと。冗談抜きでご飯が良いです。規制とか物価とか大事ですけど、ご飯はとても大事。スイスも美味しいけど、(福岡は)安いし美味い。他にはやはり規制周りですかね。

ここでセッション3が終わり、質疑応答へと移りました。

質疑応答

以下、質疑応答の内容を、箇条書き形式で記述していきます。

Q. 「人が多い」という言及がされましたが、それはエンジニアが多いということですか? ユーザーが多いということですか?

岡:私が話した「人が多い」というのは、プレイヤーが多い、ソリューションを提供するような人が多いということですね。

みなもと:投資をする人も多い印象です。

Q. 一般の人たちにブロックチェーンが広まるにはどういう風にするのが良いのでしょうか? SUGOCAみたいな多くの人に触れてもらうような機会の提供など、皆さんが考えていることなどありますか?

紫竹:何かの仕組みの裏側に仕込んでおくというのが、マスに向けたという点においては簡単ではないでしょうか。

岡:JR九州の取り組みもそのようなものかと思いますね。

柴竹:コロナワクチンの証明書でも、それ自体はブロックチェーンではないのですが色んな技術があります。結局はインフラであって、裏側にまで目が向くことはありません。こっそり裏側にというのが良いのではないでしょうか。

みなもと:NFTもブロックチェーンも埋もれているものでしょうし、マイナンバーだってある種のウォレットですよね。

柴竹:他には、エルサルバドルでは、皆が自国の通貨を使わない中で強制的にウォレットを渡しているのですが、これもマスへの訴求の一つだと思います。

Q. 福岡のエンジニア状況は足りている状況なのでしょうか? 新しく学びたい人が学べる環境なのでしょうか? 体感でいいので教えて下さい。

紫竹:うちは東京半分、福岡半分ですね。福岡の人である人である必要はないですし、採用したりする場所は特に気にしていません。育てる環境という意味では、学習コミュニティがあるのでそういうところに行くのが良いのではないかと思います。それこそうちに入りたいという人がいれば、人を育てる土壌はあるので門を叩いてもらえればと思います。

終わりに

(一番左・マイクを持った方)Fracton Ventures 亀井聡彦氏(https://twitter.com/tolehico

最後、Fracton Venturesの亀井氏から、イベントの総括が行われました。

「本日は17時という時間から、皆様来て頂いてありがとうございました。ここまできて頂けるとは思いませんでした。これでやる気だとか湧いてもらえればと思いますし、文脈として、福岡市とFracton Venturesを感じていただければと思います。今回の一回で終わるということでもないですし、福岡市は以前よりスタートアップ支援をしています。その中の一環としてweb3が取り上げられていて、コミュニテイ作りの一環となればと思います。」

この締めくくりの後、Fracton Venturesの紹介がされ、イベントはネットワーキングへと移り、閉幕しました。

実は私自身、このようなWeb3イベントを体験することは初めてでした。

イベントでは度々、Web3の現状や展望について語られていましたが、いずれもに共通する事柄として、コミュニティや体験、人との繋がりを重視しているように思われました。

セッション1では、NFTを通じてのコミュニティに所属している人の体験を重視すること。

セッション2では、仕事をより充実させる要素として人との繋がりが大切であること。

セッション3では、福岡をより素晴らしいWeb3の発信源にするには、エンジニアといったプレイヤーが増えることが重要であり、そのためにはエンジニアが気軽に教え合ったり交流したりする場所が必要であること。

Web3分野は、一見するとブロックチェーンという技術的な言葉ばかりで、てっきりパソコンやスマホといったデバイスばかりに目を向けがちかもしれません。しかし、実際にはそれらデバイスに触っている人間こそが重要なプレイヤーであり、インターネットの世界で繋がるからこそ、現実のリアルな体験や、直接交流出来る機会が重要なのかもしれません。

私自身、今後ともWeb3業界を取材していく中で、積極的にイベント参加をしていこうと思える良い機会でした。

締めくくりの中で、亀井氏は「規制が進む中で、規制から逃れるという意味でもDAOは重要」と話しており、それが個人的には印象に残りました。

ちょうど、今週末(7月29日と30日)にも「FUKUOKA DAO CAMP」があります。そちらにも取材し、潜入レポを書かせて頂きますので、ご期待して頂ければ幸いです!

(謝辞)

今回のイベントを主催するにあたって尽力して下さった福岡市職員の皆様。私の突然の取材を快く受け入れて下さるだけでなく写真提供もして下さったFracton Venturesの皆様。興味深いお話をして下さった登壇者の皆様。イベントに来て下さった来場者の皆様。その他全ての方々に、この場を借りて改めてお礼を述べさせて頂きます。ありがとうございました。

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