働き方を変える?社内通貨のメリットや国内企業での導入事例を紹介
2019/03/01

働き方を変える?社内通貨のメリットや国内企業での導入事例を紹介

kaz【CRYPTO TIMES公式ライター】

kazCRYPTO TIMES公式ライター

スイスの高校を卒業し、アメリカの大学に通う大学生。去年の6月に仮想通貨に参戦し、その面白さと魅力にハマり投資を始めました。

仮想通貨という言葉が世間に認知され始めてしばらく経ちましたが、似たような言葉で「社内通貨」というものが存在する事はご存知でしょうか?

社内通貨は企業の労働環境や福利厚生に大きな影響を与えうる存在で、最近では導入する企業も増えつつあります。

今回の記事では、そんな社内通貨の導入事例やメリット、仮想通貨との違いをご紹介していきます。

社内通貨ってそもそも何?

社内通貨とは企業が自社の社員に向けて企業内限定で使える通貨を発行する仕組みの事を指します。

一説には2005年頃に導入され始めたと言われており、ブロックチェーンの登場も合間って最近では導入する企業が増えています。

主に企業内での評価制度やコミュニケーション手段として導入されている例が多く、企業側が用意した商品およびサービスの購入や、給与の金額に影響を与えるなどの使われ方をしています。

しかし、社内通貨と一括りにされてはいるものの、定義は広く、ポイント制度であったりブロックチェーンを用いた仮想通貨そのものであったりします。

仮想通貨との違いは?

社内通貨と仮想通貨の最も大きな違いは利用者の違いです。

上でも説明しているように、社内通貨は主に企業内での使用に止まるため、ユーザーは社員に限られます。一方の仮想通貨は誰でも取引に参加できるため、ユーザーは世界中の人々という事になります。

どちらもトークンをベースにした経済圏(トークンエコノミー)を構築しているという点では似ていると言えます。

実際に導入されている社内通貨の例

社内通貨はすでに複数の企業で導入されており、成功を納めているケースも少なくありません。ここでは、実際に社内通貨を活用している企業の例を紹介します。

ロート製薬株式会社|「ARUCO(アルコ)」

目薬やスキンケア用品の販売で知られるロート製薬は社内通貨を導入した最新の例の一つです。CryptoTimesでも報じているように、ARUCOは社員の健康を考えて設計された社内通貨です。

具体的な獲得方法としては、1日8,000歩(早歩き20分を含む)で1日10コイン、非喫煙で毎月500コイン、週に2回30分以上の運動で50コインとなっています。

そして、コインの使い道ですが、こちらも健康食のランチチケット1,000コイン、食リラクゼーション体験2,000コインなどと健康を意識した内容になっています。

ロート製薬はARUCOの導入を通して社員が自主的に健康と向き合う事を目標として掲げています。

株式会社DISCO|「Will(ウィル)」

半導体などの精密機器加工装置で高いシェアを誇る株式会社ディスコは、2003年に独自の会計管理システムとしてWill(ウィル)を導入しました。

当初は部門ごとの収支記録を管理するために使われていたWillですが、2011年に個人レベルに落とし込み、現在のWillのシステムに至ります。

1Willは1円の価値に固定されており、それぞれの社員がWillを管理する口座を保有しています。Willは全ての業務によって獲得もしくは支出する事が必要となっており、各社員がWillの最大化を目指す事で結果として会社全体の利益も最大化されるという仕組みの元運用されています。

具体的な例としては、製品の保守点検で10万Will獲得、航空券の手配で1.7万Will獲得となっています。

一方で、会議室の利用や備品の使用の際にはWillを支払う必要があります。さらには残業も支出としてWillが差し引かれるようになっています。

また、ディスコでは社内業務をオークション形式で受発注する仕組みがあり、Willを多く保有していれば仕事を発注できる機会が増えるという事になります。

獲得したウィルはボーナスの金額に影響を及ぼすため、社員は率先してウィルの最大化を考える事ができるようになっています。

株式会社オロ|「Oron(オロン)」

ビジネスソリューション事業とコミュニケーションデザイン事業を手がける株式会社オロでは社員同士が感謝の気持ちを伝える手段として社内通貨「Oron(オロン)」が導入されています

社員には毎月3Oronづつ配布され、感謝の気持ちを伝えるメッセージとともに他の社員に贈る事ができます。Oronを贈るケースとしては、プロジェクト完了後や社員総会の終了後の他にも、結婚時や部署移動の際にも贈られているそうです。

Oronのやりとりは匿名通貨のように非公開となっており、気兼ねなく贈りあえる環境が整備されています。

溜まったOronはアイテムと交換する事ができ、Oron限定アイテムやMacbook Air、極め付けにHummer(30,000Oron)も用意されています。

カブドットコム証券|「OOIRI(オオイリ)」

ネット証券会社のカブドットコム証券は2016年10月に、三菱UFJフィナンシャル・グループのイノーベーションラボおよびイスラエル発のフィンテックベンチャー企業、ZEROBILLBANKと共同で開発した社内通貨OOIRI(オオイリ)を発表しました。

OOIRIはブロックチェーンを用いて開発されたコインとなっており、スマートコントラクトで付与する条件が設定されています。そして、ジオフェンシング技術を活用して特定の場所に決められた時間までに入る/出るという条件をクリアするとOOIRIが社員のZ-Walletに送付されます。

さらに、Z-WalletはLINEとの連動が可能となっており、IoT技術やBot技術も取り入れられた最先端の取り組みとなっています

OOIRIの使い道としては、他の社内通貨と同様に感謝を伝える際や、社内でのインセンティブとして付与するケースがあります。また、使い道の一つとして大手町エリアの近隣の飲食店でも利用できるような施作が講じられているようです。

カブドットコム証券およびイノベーションラボはOOIRIを通して、働き方改革や社員の健康促進の実現を目指します。

社内通貨のメリットとは?

社内通貨には数多くのメリットが存在します。上で紹介した導入企業のように、社員間でのコミュニケーション向上や仕事のモチベーション向上、評価される機会の増加などに繋がり、最終的には企業全体の業績にもポジティブな影響を与える事ができます。

これはブロックチェーンを用いた仮想通貨にも言える事ですが、社内通貨は中央集権であった企業の体制から個々が価値を決める体制へとシフトさせています

また、独自の経済圏を築けるという点もメリットの一つに数えられるでしょう。カブドットコム証券のOOIRIでは、大手町エリアでのオフィス経済圏を形成しており、近隣の飲食店との交流や企業間をまたいでの交流が実現されています。

社内通貨は目的がはっきりとしていれば、社員側にとっても企業側にとってもプラスなシステムだと言えるでしょう。

一方でデメリットも存在

しかし、一方で社内通貨にはデメリットも存在します。当たり前ではありますが、社内通貨を新たに導入するという場合にはそれ相応のコストが発生します。

開発段階はもちろん、運用していくのにもコストがかかってくるため、そのコスト以上のパフォーマンスが発揮できないと導入した意味が薄れてしまいます。最近では、社内通貨の導入をサポートするサービスも登場していますが、自社で開発するという場合は知識も必要となってきます。

また、他の企業や店舗などと提携して包括的な経済圏の創出を目指すという場合には各所との連携が必要です。ここにも手間や時間、コストがかかってきます。

そして、手間やお金をかけて開発した社内通貨も使われないと全くもって意味をなしません。これは企業側が社内通貨の目的を明確にして、社員に積極的に利用してもらうように呼びかける事が必要だと言えるでしょう。

社内通貨でブロックチェーンを活用する意味とは

社内通貨と仮想通貨はぱっと見似た字面に見えますが、社内通貨の中にはブロックチェーンを採用しているものもあれば、全く別のシステムを使っているものもあります。では、社内通貨にブロックチェーンを導入する意味とは何なのでしょうか。

信頼性の獲得

社内通貨にブロックチェーンを組み込む事のメリットの一つは信頼性だと言えます。

ブロックチェーンではネットワークに参加するノードの合意形成によって取引情報が承認され、ブロックチェーン上に記述されます。また、ブロックチェーンは取引情報をまとめたブロックが連なる構造になっているのですが、この連鎖構造により、取引内容の改ざんは非常に困難になっています。

特にOOIRIのように金銭的なやりとりが絡む社内通貨や、給与に影響を与える社内通貨では信頼性や透明性は非常に重要な要素となってきます。

開発における難易度とコスト

もう一つのメリットとしては、既存のブロックチェーンプラットフォームを活用する事で簡単かつコストを抑えて社内通貨を開発する事ができます。

イーサリアムやNEMなどのプラットフォームを使えば比較的用意に独自のトークンの発行が可能であり、一から社内通貨を開発するよりは手軽に行えます。

しかし、社内通貨は社員や近隣コミュニティ内で完結するように設計されており、不特定多数の相手と取引を行う仮想通貨とは根本的に異なります。社員や社内通貨の利用者を信頼できる相手だという前提があれば、ブロックチェーンのようなノードによる合意形成は必要ないかもしれません。

実際、現在提供されているブロックチェーンサービスの中にはブロックチェーンを用いなくても実現可能なものが多数存在します。社内通貨もこの例に漏れず、明確な理由を持ってブロックチェーンを採用しない限り大きな恩恵は受けられないでしょう

まとめ

10年以上前からいくつかの企業で導入されてた社内通貨は仮想通貨およびブロックチェーンの登場によってじわじわと増えつつあります。個人的には社内通貨導入の最も大きなメリットは個々がお互いを評価し合えたり、より自由に仕事ができる環境の実現だと感じています。

実際に、株式会社ディスコはGreat Place to Work Institute Japan(GPTW)が選出する2019年版「働きがいのある会社ランキング」で第3位に選ばれています。ランキングへの選出は過去11年間連続となっており、社内通貨が与える影響の大きさが伺えます。

仮想通貨が非中央集権の社会の実現を目指しているのと同様に、今後企業でもより自由で自律的な働き方を目指して社内通貨の導入が進んでいくのではないでしょうか。

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