「ビットコインは夜に大きく動く」は本当なのか?ボラティリティと時間帯の関係性を分析!
Crypto Times 編集部
ビットコインをトレードしていると、時間帯によってボラティリティが上下することが感覚的になんとなくわかります。
例えば皆さんも、「昼ごろはあまり値動きがないのに夜になると出来高を伴ってよく動く」ですとか、「21〜22時頃からいきなり動き出す」などと感じたことがあると思います。
こういった勘は果たしてどれくらい正しいのでしょうか?こちらの記事では、ビットコインにおける時間帯別ボラティリティを数値的に検証していきます。
※本記事はデータを統計的に処理したレポートです。投資のアドバイスや勧誘では一切ありません。
目次
ビットコインのボラティリティは時間帯によって異なるのか?
今回の分析では1日の時間をニューヨーク時間、日本時間、ロンドン時間に3分割して、各期間のボラティリティを測りました。
出来高は過去18ヶ月間を6分割し、3ヶ月ごとの出来高平均を上記時間帯に区分けして計算しました。
ここでは便宜上、FXや株式市場で分けられる時間軸をベースに、本来被りのある時間でも被りをなくすように調整を施しています。よって、FXや株式の時間帯との分け方とは少し異なることに注意してください。
今回の分析には1時間足を採用し、それぞれ7時間間隔で23:00から5:00をニューヨーク時間、9:00から15:00を日本時間、16:00から22:00をロンドン時間とします。
加えて、上記の分析を大きく分けた2期間に適応します。
- 2018年4月1日0時から2018年12月31日23時の9ヶ月分のデータから得られたボラティリティ平均
- 2019年1月1日0時から2019年9月30日23時で得られたボラティリティ平均
上記の2つの期間を比較することで、去年と今年でボラティリティに大きな変化が見られるかどうかを調べます。
【曜日別ボラティリティ】ビットコインは何曜日に大きく動くのか?
具体的な分析方法
18ヶ月を2期間に分け、9ヶ月間分(毎日)の各時間帯におけるボラティリティを計算します。
その後ボラティリティの平均値を取り、時間帯別の9ヶ月間のボラティリティ平均を算出します。
上の図の例では、10月1日の24時間で得られるニューヨーク時間のビットコイン価格のボラティリティを計算します。
これを9ヶ月間・毎日分続けて、その9ヶ月間でそれぞれの時間帯で見られるボラティリティと、出来高の平均値が計算できます。
結果: 時間帯別ボラティリティと出来高平均
まず、時間帯で区切らない<2018年4月1日から12月31日>、<2019年1月1日から9月30日>全体を通してのボラティリティを確認します。
<2018年4月1日から12月31日>でのボラティリティは0.6152%、<2019年1月1日から9月30日>では0.6105%で、大きな違いは見られませんでした。
ボラティリティが0.6152%とは、1時間足で見たとき値動きの幅がだいたい(変動値が正規分布に従っているとすれば68%の確率で)、0.6152%以内に抑えられるということです。仮にビットコインの価格の平均値が7000ドルだとしたら、68%の確率で、7000ドル±42ドル幅に収まることを意味します。
当然このボラティリティが大きな数値ならば、大きく価格が変動することを意味し、アセットをトレードするリスクは高いと言えます。
それでは期間別・時間に応じたボラティリティと出来高を見ていきましょう。
2期間の時間帯別ボラティリティ平均
2期間の時間帯別平均ボラティリティ | ニューヨーク時間 | 日本時間 | ロンドン時間 |
---|---|---|---|
2018年4月1日0時から12月31日23時まで | 1.078% | 0.587% | 0.574% |
2019年1月1日0時から9月30日23時まで | 1.046% | 0.575% | 0.585% |
上記の表から、この期間ではニューヨーク時間で見られるボラティリティが全体の中で圧倒的に大きいことがわかります。
ボラティリティが他の時間帯に比べて2倍近く大きいのでリスクが2倍近く(リターン幅も2倍)になると言えるでしょう。
やはり夜の方がビットコインの値動きが激しかったわけですね。
よって、ニューヨーク時間(日本時間23時~5時)でビットコインをトレードする方が、他の時間帯に比べてリスクが高くなり、その分リターンも多くなる可能性があるということが示唆されています。
3ヶ月区切りでの時間帯別平均出来高
3ヶ月区切りでの時間帯別平均出来高は以下の通りになっています。これは、それぞれの期間で、時間帯別で平均してどれだけ出来高が生まれたかを示しています。
時間帯別出来高平均 | ニューヨーク時間 | 日本時間 | ロンドン時間 |
---|---|---|---|
2018年4月1日0時から6月30日23時 | 398.35 | 395.42 | 468.95 |
2018年7月1日0時から9月30日23時 | 331.8 | 316.59 | 454.7 |
2018年10月1日0時から12月31日23時 | 488.17 | 421.08 | 642.35 |
2019年1月1日0時から3月31日23時 | 294.31 | 286 | 391 |
2019年4月1日0時から6月30日23時 | 743.84 | 604.5 | 870.35 |
2019年7月1日0時から9月30日23時 | 570.82 | 575.18 | 737.31 |
どの時間帯の平均出来高も2018年4月から順調に増加しているのがわかります。これは、時間の経過と共に市場のプレイヤー数やひとりあたりの資本流入量が増え、市場の規模が大きくなったからだと推測できます。
2019年1月から3月までの平均出来高が他に比べ低いこともわかります。これは、2018年11月に発生したハッシュウォーの影響でビットコインの価格が下がったからだと考えられます。
本グラフを見て、平均的に出来高が多いのは、ニューヨーク時間とロンドン時間であることがわかります。
偶然発見した事実
今回の分析では、ニューヨーク時間、日本時間、ロンドン時間の3つの時間帯でボラティリティを比較し、統計解析を行いました。
統計解析を進めている途中、不注意で23時の時間帯をニューヨーク時間から抜いて分析をしてしまったところ、思わぬ発見がありました。
それは、23時の1時間を含めるか含めないかでニューヨーク時間のボラティリティ平均が大きく異なるという事実です。
以下の表は23時のデータを除いた際のボラティリティ平均です。期間は正しい分析と同一になっています。ニューヨーク時間の平均ボラティリティが23時を含めた場合に比べ格段と下がっていることがわかります。
(23時を除いた)2期間の時間帯別平均ボラティリティ | ニューヨーク時間 | 日本時間 | ロンドン時間 |
---|---|---|---|
2018年4月1日から12月31日まで | 0.459% | 0.549% | 0.545% |
2019年1月1日から9月30日まで | 0.462% | 0.560% | 0.574% |
つまり、23時の1時間は価格が大きく動くということです。
現実の市場では、時間の被りが生まれています。夏時間であれ冬時間であれ23時はニューヨーク時間とロンドン時間の両方が被る時間帯です。
この1時間がもっとも価格が動くとする結果は、「夜に動く」という経験的洞察と整合していると思います。
分析の振り返り・今後取り組みたい分析
分析の振り返りと不足点
今回の分析にはいくつか不足している点があります。
「ボラティリティは23時が一番高く、ビットコインの価格がもっとも動く」と結論づけてはいますが、より強固に結論づけるためにはさらなる分析が必要でしょう。
本記事では、分析に1時間足を採用しました。1時間足では1時間に対して1つのデータしか取れないため、23時の方が16時よりも価格変動が大きいなどの、1時間単位での比較が難しくなってしまいます。
本当に23時がもっとも価格変動が激しい1時間であると結論づけるためには、15分足などを用いて同様の分析を行うことが必要でしょう。
その点で23時が一番動くという結論はまだ弱さを持っています。
しかし、23時を抜いた時に平均値が50%下がったことも無視できない事実ではあり、23時の変動分が大きな影響力を持っていることは間違いないと思います。
今後の分析
今後行いたい分析についてですが、このボラティリティが何によって引き起こされたものなのか、それはニュースによる原因が一番大きいのか、どのようなニュースなのか、どれほどの影響があるのかなどを分析したいと思います。
まとめ
今回は、ビットコイン市場でみる時間帯別の特徴について、統計解析を行った上でどういう関係性があるのかという分析を行いました。
本記事の分析結果がビットコインのトレードをする上で、参考になれば幸いです。
価格が「夜に動く」ということが巷で言われていますが、その感覚を数値に落とし込む実証分析は必要でしょう。
「夜に動くことくらいわかっている!」という意見もあるかと思いますが、このような統計的処理でその感覚を数値化することは大切なことだと思います。
その感覚が、バイアスによるものだとしたら修正する必要があるからです。
今回は、ビットコイン価格は夜型であるという感覚を検証しました。