【最新版】セキュリティトークンとは?定義と仕組みを徹底解説

2019/03/25・

Yuya

【最新版】セキュリティトークンとは?定義と仕組みを徹底解説

近頃、「セキュリティトークン」という分類に属されるデジタルアセットがSTO(セキュリティトークンオファリング)という新たな資金調達法など共に注目を集めています。

セキュリティトークンとは、正確には株式などの証券(セキュリティと呼ばれる)をブロックチェーン上にトークンとして表したもののことを指しますが、最近のニュースなどではこの定義が曖昧に使われており、様々な意味が混在しているのが現状です。

本記事では、混乱しがちな「セキュリティトークン」という言葉の意味を詳しく解説し、そのメリットや、ユーティリティトークンとの違いなどを紹介します。

セキュリティトークンと比較される「ユーティリティトークン」を簡単におさらい

イーサリアムはユーティリティトークンの代表例として挙げられる。

ユーティリティトークンとは、ブロックチェーンネットワーク(エコシステムと呼ぶ)の利用・参加権を表すトークンのことを指します。

例えば、EthereumのネイティブトークンであるETHは、スマートコントラクトの実行にかかる手数料(Gasと呼ばれる)やネットワーク維持の報酬として取引されるユーティリティトークンです。

言い換えれば、Ethereumネットワークの利用・維持費は、日本円や米ドルではなく、最終的にはETHでのみ支払われる(=トークンが利用権を表す)ということです。

ちなみに、ユーティリティトークンは現在存在する暗号資産の大半を占めており、その多くがEthereumのERC-20と呼ばれるトークン規格に準拠したものとなっています。

ユーティリティトークンの多くはICOを通して販売され、その投機的価値はプロジェクトのマーケティング方法や投資家の注目度によって異なります。

BNBが利用できるサービス/プロジェクト一覧

また、Binanceが発行するBNBもユーティリティトークンの一つですが、現在、BNBが利用できるサービスは非常に多くあります。BNBはDApssでの受け入れにも利用されているだけでなく、CryptoATMでも受け入れられていたりリアルサービスとの関わりも非常に大きいです。

BNBが利用できる範囲が大きいということはBinanceのエコシステムが成長している証拠であると言えるでしょう。

セキュリティトークンの定義は色々と曖昧

ここまででは、ユーティリティトークンの定義を解説してきました。

ここからは、セキュリティトークンの解説に入りますが、面倒なことに、「セキュリティトークン」という言葉はとても曖昧に使われており、ここではさらに「場合分け」をしていく必要があります。

2019年3月現在では、「セキュリティトークン」というと次の3つのどれかを指すことが多いです。

トークナイズドアセット(Tokenised assets)

貴金属や石油などのコモディティをトークン化したアセットは近年注目を集めている。

トークナイズドアセット(Tokenised assets:トークン化された資産)とは、特定の(物的)資産の所有権を表す暗号資産または通貨のことを指します。こういったトークンのことをアセットバックトトークン(Asset-backed tokens)とも呼びます。

ここでいう「特定の資産」とは一般的に株式、債券、不動産、通貨、コモデティ(貴金属、石油等)などの金融商品や、絵画、ブランド品などのコレクタブルのことも指します。この例のうちセキュリティ(証券)であるのは株式と債権のみです

よってコモデティやコレクタブルなどの所有権を表すものは正確にはセキュリティトークンではありません。しかし、全てを総称してセキュリティトークンと呼んでしまうことが多々あります(TAセキュリティトークン)

株式や債券は、電子化されるまでは紙として配布され、その紙自体が資産の所有権を表しました。同様に、アセットバックトトークンとは11枚が特定の資産の所有権を表すトークンのことを意味します。

例えば、Digixというプロジェクトでは「1トークン=1グラム」となるDGXトークンを発行しています。

Tetherが発行する$USDTやTrueCoin社が発行するTrue USD ($TUSD) のようないわゆる「ステーブルコイン」も、広義ではトークナイズドアセットと考えることができます。USDTTUSDは「1トークン=1ドル」となるトークンです。

エクイティトークン(Equity Tokens)

トークナイズドアセット(TA)うち、株式(企業の所有権)を表すトークンのことを特別に「エクイティトークン(Equity tokens: トークン型株式)」と呼ぶことがあります。株式は証券ですから、エクイティトークンは必然的にセキュリティトークンであると言えます(ET=セキュリティトークン)

なぜ株式だけが特別扱いされているのかというと、株式のトークン化には既存のシステムの非効率性を大幅に改善することが期待されているからです。

株式は「企業の所有権」を表す資産で、保有量に応じて配当や株主総会への参加などといった色々なファクターが織り込まれたものです。

エクイティトークンでは、証券発行、ブローカレージ、コンプライアンス遵守などといった従来であれば時間のかかるプロセスをブロックチェーンとスマートコントラクトの活用し自動化できることが見込まれています。

既に自社株式をETとして発行した企業はいくつか存在しており、諸々の手続きを手助けするプラットフォームも登場してきています。

法律上セキュリティにあたる暗号資産

「セキュリティトークン」という言葉は、上記で解説したトークナイズドアセット、特にエクイティトークンを指すことが一般的でした。

これらに加え最近では、セキュリティトークンを「(特に米国の)法律上で証券(セキュリティ)とみなされる暗号資産」という意味で使っている例が多く見受けられます。

これは、どういうことかというと、暗号通貨は「ユーティリティトークンであるか、また、アンダーライイングアセットがあるかどうかに関係なく、投資契約を定義する法律に引っかかれば証券、つまりセキュリティである」ということです。

したがって、この意味でのセキュリティトークンは、上記で解説したユーティリティトークンやトークナイズドアセット、エクイティトークンとは異なるスペクトラムの話になります。

特定の暗号資産が金融資産かどうかを判断する機関として世界から注目されているのが、米国証券取引委員会(SEC)です。同国では、「ハウイ・テスト」と呼ばれる以下の基準に当てはまるトークンは全てセキュリティ(証券)であり、米国投資家を対象に含むICOを行う際当局に届け出を行う必要がある、としています。

  • 金銭や資産を投資する行為であること
  • 投資家が利益を見込んでいること
  • 投資先が法人団体であること
  • 資産の成長は第三者に託されていること

米国が制定するこの基準では、ほとんどの暗号資産がセキュリティトークンに分類されます。

SECは、未申請のままICOを行なった企業の摘発なども行なっており、多くの暗号資産をセキュリティとして扱うスタンスを固めています。

しかし同局は、元々セキュリティとしてみなされていたトークンのうち、投機的価値の落ち着いたものをセキュリティとみなさないという見解も示しています。直近の例でいうと、SECの会長はETHは証券とはみなさないという可能性も示唆しています。

ここまでのおさらい

ここまでで、セキュリティトークンという言葉が一般的に含みうる意味を3つ解説してきました。

正確には、セキュリティトークンとは2番目に紹介した「エクイティトークン (Equity Tokens)」のことを指します。

しかし、結局のところ、3つとも全て「セキュリティトークン」と総称されることが多いのが現状です。

セキュリティトークンの3つのメリットとは

トークナイズドアセット(TA)やエクイティトークン(ET)は、既存の金融商品市場を自動化・透明化することで効率性を大幅に改善できるものとして期待が集まっています。

具体的には、以下のような改善点が挙げられます。

発行・流通プロセスの効率化

金融商品(特に株式)の流通には、発行母体、カストディアン、ブローカー・ディーラー、取引所、法律・コンプライアンス顧問といった様々な機関が関係しています。

これらの機関のコミュニケーションは、従来では紙面やフォーマットの異なる電子文書を通して行われているため、たいへんな時間と労力を要するものとなっています。

しかし、法整備が整うとともに、このプロセスの大部分はブロックチェーンとスマートコントラクトの活用で自動化することができます。

例えば、商品の買い手・売り手をつなぐブローカー・ディーラーの役割をスマートコントラクトが担うことで、より効率の良い(手数料の低い)市場を作り出すことができます。

また、株式を取り扱うエクイティトークンでは、株主による投票プロセスの透明・効率化も期待されています。

市場障壁の排除

金融商品をトークンとしてブロックチェーン上で管理することで、24時間無休の取引や、国・地域をさかいに隔てられた市場へのアクセス、同じ商品を異なる価格で取引している市場の統合などを確立することができます。

例えば、中国などでは米株式市場へのアクセスが難しいなどと言われていますが、株式の所有権がトークン化されることで法律・配当管理など諸々を自動化し、より多くの国の投資家が参入できる環境を作り出すことが期待されています。

所有権の細分化 (フラクショナル・オーナーシップ)

モノの所有権の単位としてトークンを設けることで、資産ひとつを複数人で所有する(フラクショナル・オーナーシップ)といったことが可能になります。この利点は、特に不動産取引の分野での活用が期待されています。

例えば、ある物件の5%を所有し相応の賃貸所得を受け取る、などといった従来であれば複雑な処理も、トークン化された物件であれば容易に行うことができます。REITIUMBlockimmoなどはこういった事業を運営する企業の一例です。

ゴールドバーや不動産物件のように、物理的にそれ以上細かく分けることのできない資産も、その所有権自体はトークンという単位を使うことで細分化でき、取引することができます。

これのメリットは、ひとつの資産がより細かい単位で取引できるようになることで、市場の流動性を高めることができるという点にあります。

セキュリティトークンについて考察すべき点

ここまででは、セキュリティトークンがもたらしうるメリットについて詳しく解説してきました。

セキュリティトークンやSTOは、様々な側面で従来のユーティリティトークンやICOとは異なる点があるため、両者を比較した上で知っておくべき事項を紹介します。

エクイティトークンの流通は従来の暗号通貨より手間がかかる

株式などの証券をトークン化したエクイティトークンの発行(STO)は、米国を中心としたほとんどの国では数多くの法的プロセスを経ていく必要があります。

エクイティトークンは、元となる資産(アンダーライイングアセット)が証券なわけですから、各国の法規制に則って発行する義務があり、取引の場を提供する側も必要なライセンスを取得しなければなりません。

そういった意味合いでは、STOは従来のICOのような自由度の高い資金調達法ではないという点は知っておくべきでしょう。

また、本来セキュリティトークンは、伝統的なアセットのセカンダリ市場での流動性を向上できる可能性があるとして注目されてきたものです。

STOはすでにアメリカやスイスなどで行われていますが、どれも適格投資家(プライマリ市場)のみを対象としているのが現状です。

セキュリティトークンはあくまでブロックチェーン技術を既存の金融システムに応用したものである

セキュリティトークンは、ビットコインのように独自の通貨として機能することや、ユーティリティトークンのようにネットワークの維持をすること使われる暗号通貨ではありません。

このコンセプトはあくまでも、モノの所有権をブロックチェーンで管理することで既存の金融システムをより効率の良いものにしていくというブロックチェーン技術の応用例である、ということです。

したがって、セキュリティトークンを「価値をアンダーライイングアセットで紐付けた通貨(アセットバックトトークン)」として捉えることはできても、それ自体は既存の集権的な経済圏からの脱却を目的としたものではない、ということになります。

まとめ

本記事では、セキュリティトークン(ST)の定義やメリットについて詳しく解説しました。

「セキュリティトークン」という言葉には、以下の3つの意味が混在していると解説しました。

  1. トークナイズドアセット(TA): あらゆるモノの所有権をブロックチェーン上にトークンとして表したもの。
  2. エクイティトークン(ET): トークナイズドアセットのうち、株式(企業の所有権)を表したもの。
  3. 法律上セキュリティに当たるトークン: ユーティリティトークンも含む。
  • TAセキュリティトークン、ET=セキュリティトークン
  • 正確には、セキュリティトークンとはエクイティトークン(ET)のことを指す。
  • 結局のところ、全部(誤って)セキュリティトークンと総称されることが多い。

そして、TAおよびETには、以下のようなメリットがあると解説しました。

  • スマートコントラクトの活用による発行・流通プロセスの効率化
  • 市場障壁の排除: 取引の24時間化、市場の統合
  • 所有権の細分化(フラクショナル・オーナーシップ)

ブロックチェーン技術はこれまで「政府や中央銀行を必要としない分散型経済圏」などといったスケールの大きいプロダクトを新しく作るテクノロジーとして期待されてきた側面があります。

この期待が各国の規制強化とともに薄れる中、トークナイズドアセットやエクイティトークンはブロックチェーン技術がいかに既存のプロダクトや産業の効率化に役立つものかを示す良い例だと考えられます。

STOハイプの未来は、今後セカンダリ市場でのセキュリティトークン流通が整い始めた段階で、どれだけ世間の理解が得られるかに大きくかかってくるでしょう。

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