【緊急対談】ステーブルコインxUSD暴落の裏に潜む「見えざる支配者」の正体

【緊急対談】ステーブルコインxUSD暴落の裏に潜む「見えざる支配者」の正体

4日前の11月3日に始まったDeFi(分散型金融)プロジェクト「Stream Finance」のステーブルコイン「xUSD」の崩壊は、87%という壊滅的な暴落を記録。その余波は瞬く間にDeFiエコシステム全体へと広がり、推定400億円規模の資産が凍結される事態となっています。

この緊急事態を受け、専門家の仮想NISHI氏と弊メディア運営者のアラタが緊急対談を行いました。

たった3日で崩壊したステーブルコイン

仮想NISHI:今回、ステーブルコインのxUSDに異常事態が発生しています。DeFiでテラ・ルナショックの再来のような事態が起きているため、アラタさんと緊急解説を行いたいと思います。

アラタ:よろしくお願いします。

仮想NISHI:CryptoTimesの記事によると、72時間でxUSDの価値が0.16ドル、つまり約7分の1まで下落しています。この背後で何が起きているのか見ていきましょう。

Stream FinanceのステーブルコインxUSDは、わずか3日間で$1.26から$0.16へと急落。直接損失は$93M(約130億円)に達し、さらにMorpho、Euler、Siloなど複数のレンディングプロトコルで推定$285M(約400億円)相当の債務が「凍結」状態に陥った。

仮想NISHI:アラタさん、今回の問題の中心にいる「キュレーター」について説明していただけますか。

アラタ:キュレーターは、DeFiにおいて複数のプロトコルを組み合わせて高利回りの運用戦略を提供するプレイヤーです。ユーザーが個別にDeFiプロトコルを使いこなすのは難しいため、キュレーターが代わりにレゴブロックのようにプロトコルを組み合わせて、高いAPR(年利回り)を実現する戦略を提供しています。

しかし今回、このキュレーターたちがUSDTやUSDCではない、いわゆる「俺々アルゴリズムステーブルコイン」で過度なレバレッジをかけてしまったことが問題となっています。

Curator(キュレーター)は、2020年代初頭にMorpho、Eulerなどの主要レンディングプロトコルが採用したいわば「プロフェッショナル管理者」。上位5社だけでDeFi全体の推定60%の資産配分に影響を与える市場支配者となっている。

仮想NISHI:つまり、DeFiという分散型金融なのに、実際は中央集権的に資産を管理する存在が損失を出したということですね。

アラタ:その通りです。

危険な「ループ投資」の実態

仮想NISHI:これは2022年のテラ・ルナショックと似ています。テラのUSTが担保資産の価値崩壊により仮想通貨市場全体の大暴落と連鎖倒産を引き起こしました。その再来の可能性が出てきているんですね。

Stream Financeが行っていた「ループ投資」について説明します。これは株式市場でいう「二階建て投資」のようなものです。

例えば、100万円分のステーブルコインを発行し、それを担保にさらにステーブルコインを発行する。実際の担保は100万円しかないのに、市場には200万円分が存在するような状況です。これをステーブルコインの担保で繰り返していました。

アラタ氏:金を担保にドルを借りて、そのドルでまた金を買い、その金を担保にまたドルを借りる、という操作を繰り返すイメージです。

通常、2倍程度のレバレッジなら問題ないのですが、オンチェーン分析によるとStream Financeは約7.6倍のレバレッジをかけていました。自己資本は約3億円しかないのに、約20億円分を生成していたのです。

仮想NISHI:すごいですね。

オンチェーン分析で判明した実態:

  • 実質的な自己資金:$1.9M(約2.7億円)
  • 生成されたxUSD:$14.5M(約20億円)
  • レバレッジ倍率:約7.6倍

この構造により見かけ上のTVL(総預かり資産)は膨張するが、わずかな市場変動で連鎖的に崩壊する極めて脆弱なシステムとなっていた。

アラタ:TVLが大きく見えるため、ユーザーは「これだけ資金が集まっているなら安全だろう」と考えてしまいます。しかし実際は約3億円でTVLをかさ増ししていただけで、xUSDや関連ステーブルコインのUSDX、deUSDのペグが外れると深刻な問題が発生します。

仮想NISHI:これは錬金術ですね。通常、ステーブルコインは100%の担保が必要なはずです。アメリカの法律でもそう定められています。

USDeへの波及リスクと市場の不安

仮想NISHI:10月にバイナンスで、Ethenaが発行するUSDeというステーブルコインがフラッシュクラッシュを起こし、一時0.6ドルくらいまで下落しました。これが金曜日のCME終了タイミング(日本時間7時頃)に発生したのですが、同様の事態が再来する可能性があります。

アラタ:私の調査では、USDeのエクスポージャーは5億ドル程度で10月11日時点では20億ドルの償還にも耐えたというデータがあります。

仮想NISHI:本当ですか。

アラタ:ただし、USDeは基本的に大丈夫だと考えています。USDeはイーサリアムやビットコインを担保にして、デルタニュートラルでヘッジを打つ仕組みなので、ステーブルコイン自体は健全です。

USDeのデルタニュートラル戦略の仕組み
USDeは、xUSDのような不透明な仕組みとは異なり、数学的に健全な戦略を採用しているとされる:

  • 担保:ETHなどの暗号資産現物を預け入れる。
  • ヘッジ:同額の永久先物ショートポジションを建てる。
  • 結果:現物と先物の損益が相殺され、価格変動リスクを排除(デルタニュートラル)。
  • 収益源:ショートポジションが受け取るファンディングレート(資金調達率)。

この戦略により、暗号資産の価格変動リスクを排除しつつ、安定した高利回り(15-30% APY)を生み出すことができる。

アラタ:でも、キュレーターがどのような運用をしているか不透明で、急激に資産が減少していることから、償還不足になる可能性が市場で噂されています。バイナンスショック以降、約40%が償還され、12億ドルから9億ドルに減少しています。

仮想NISHI:ドル建てで4分の1減少していますね。銀行の取り付け騒ぎのように、本当に償還できるのか疑心暗鬼になっている状態です。もし担保不足になればUSDeも連鎖倒産を引き起こす可能性があります。

アラタ:キュレーターが管理する5億ドルのUSDeがどう運用されているか不明で、XUSDやUSDXのデペグによる清算でUSDeが大量売却される可能性はあります。その場合、一時的にUSDeのデペグが発生する恐れがあります。

仮想NISHI:最も怖いのは噂ですね。

アラタ氏:確かにそうですね。

仮想NISHI:この対談中にビットコインが10万ドルを割り込みました。金曜日で流動性が低下するタイミング、CMEが明日7時頃に閉まり、アメリカも日本も週末になるタイミングが狙われている可能性があります。

リーマンショックの時も倒産の噂が下落を加速させ、最後に政府救済で持ち直しました。今回もステーブルコインの担保不足が明らかになれば、10月のようなフラッシュクラッシュが起きる可能性があります。

投資家への警告

アラタ:大丈夫であってほしいというのが私たちの願いですが、何とも言えない状況です。

イーサリアムだけでなく、SuiのレンディングでもUSDC不足が発生しています。SuiのTVL上位プロトコルにも波及しており、キュレーターがこれほどエクスポージャーを取っていたとすると、同様の問題が他でも発生する可能性があります。しばらくDeFiの利用は危険かもしれません。

Stream Finance事件の波及状況:

  • Morpho:$150M+の債務凍結(複数VaultでxUSD担保ポジションが清算不能)
  • Euler:$80M+が機能停止(Vault Kit使用市場)
  • Silo:$40M+の流動性枯渇(孤立市場の特性が裏目)
  • その他小規模プロトコル:$15M+

さらにUSDXやdeUSDも連鎖的にデペグし、一部のレンディングプールでは金利が800%を超える異常事態が発生。

仮想NISHI:担保割れが連鎖的に起きているということですね。

アラタ:DeFiでエクスポージャーを持っている方は警戒を強めた方がいいでしょう。何事もないことが一番ですが、リスク管理は重要です。

仮想NISHI:現在は噂が噂を呼んでいる段階で、事実は不明確ですが、ステーブルコイン不安がクリプト市場全体を覆っています。爆発するかは分かりませんが警戒が必要な状況です。

今回の緊急放送には100人以上の方に聞いていただきました。ありがとうございます。

アラタ:ありがとうございます。またよろしくお願いします。


この対談で議論されたStream FinanceとxUSDの一件は、DeFiの構造的問題を浮き彫りにしました。

問題の核心は「ハードコード・オラクル」(市場価格が$0.16まで暴落しても担保価値を$1.00と評価し続ける仕組み)やキュレーターのインセンティブ構造にあります。DeFiの「分散化の理想」と「効率性を求める現実」の間で生じた矛盾が今回の危機を引き起こしたと言えるでしょう。

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