【韓国滞在レポート①】Aelf – JB Lee氏 インタビュー
Shota
Crypto Timesでは、韓国のブロックチェーン / 仮想通貨市場に関してリサーチを行なうため、5日間、韓国に滞在していました。
本滞在レポートでは、第1回から第5回にかけて、プロジェクトやファンド、開発者など様々な視点から見る国内外の仮想通貨市場に関しての状況や戦略などをお届けしていきます。
第1回となる本レポートでは、中国を拠点としてビジネス向けのブロックチェーンインフラの構築を目指すAelfのJB Lee氏にインタビューを行ったレポートを執筆します。
Aelf JB Lee氏へのインタビュー
–はじめまして。日本国内向けに仮想通貨 / ブロックチェーンのWebメディアを運営しているCryptoTimesです。本日はありがとうございます。
JB Lee氏:はじめまして、aelfの韓国市場を担当している JB Leeです。よろしくお願いします。
–Leeさんは韓国で活動をされているということですが、韓国の市況は現在、どの様になっているのでしょうか?
JB Lee氏:韓国の市場においては主にBTC、次点でETHが注目されています。国内取引所の中でもBithumbと並んで、大手であるUpbitには230を超えるERC20トークンなどの通貨ペアがありますが、これらの出来高はそこまで大きくありません。
韓国では、自国の法定通貨であるKRW(韓国ウォン)とのペアにおける取引が全体の大部分を占めており、BTC建てやETH建ての取引はまだ浸透していないのが現状です。
また、ユーザーに関しては約8割が仮想通貨を金融商品の一つと捉えており、ブロックチェーン技術に注目しているユーザーは現段階だと多くはありません。
韓国から見た日本の市場イメージ
–法定通貨建ての通貨ペアが主要なボリュームとなる点は日本国内の取引所などと似ている部分がありますね。韓国サイドから見た日本のマーケットについてどのようなイメージがありますか?
JB Lee氏:韓国の人々が持つ日本のマーケットのイメージは、個人投資家がBTCやETHの取引を主に行っているイメージです。
世代について話すと、例えばBTCが第一世代、ETHが第二世代、次いで第三、四と続いていくと思うのですが、日本はまだ第二世代にとどまっているような印象で、中国やアメリカとはジェネレーションギャップ(世代格差)があるように感じます。この辺は実際どうでしょうか?
–日本でも皆がBTCやETHの取引だけを行っているわけではなく、実際にICOや新規の第三、四世代のプロジェクトに興味を持つ人々も多くいますね。
JB Lee氏:そうなんですね。韓国から見た日本のイメージというのはさっき話したとおりでした。大体の人が同じような印象を日本に持っているとは思いますよ。
–ただ、最近でいうと市場が冷え込んでいるので、昔ほどBTC/ETHの取引もそこまで活発ではなく、日本のコミュニティではテック系の話題や技術者の人が目立っていますね。韓国はコミュニティはどうですか?情報はどのように発信・共有されていますか?
JB Lee氏:韓国国内における情報交換は各種プラットフォームでおおよそ以下の比率で行われています。
- 50%:フォーラム
- 25%:コミュニティ
- 25%:ウェブメディアやYouTube等
コミュニティの中には、韓国独特のものもあり『nonce』と呼ばれるコミュニティでは、ブロックチェーン技術に興味を持つ人々向けに、co-workingスペース兼co-livingスペースである大きなアパートのような空間が提供されています。
aelfの韓国マーケティング戦略
–さきほど、韓国の人々はブロックチェーン技術にあまり関心がなくKRW建ての取引をメインに行っていると話していましたが、そんな中でaelfは韓国国内でどのようにマーケティングを行っていきますか?
JB Lee氏:仮想通貨の投資を行っている世代を考えると、20代~40代と比較的若い年齢層がメインになっているので、ソーシャルメディアを利用したアプローチが最も最適だと考えています。
一方で、プロジェクトの魅力を伝えるためには、ユーザーの方々がしっかりと根幹にある技術を理解する必要もあります。
そこで、aelfでは『トークンが持つユーティリティは何か?』『どのようなDAppがこのトークンを利用するのか?』『投票は何のために行うのか?』『なぜトークンに価値があるのか?』などの教育的な部分にも力を入れています。
ブロックチェーン技術に関心がない人々に対して、SNS上でこれを発信しても注目されるのは確かに難しいですが、継続して行うことで少しでも興味を持っていただくことができると考えます。
また、インフォグラフィックや解説も20-30秒以内で完結するものを作成するよう心がけています。
–日本でもほとんどの投資家から技術者まで、ソーシャルメディアを利用して情報の交換や収集などを行っているイメージがあるので、言語問わずに視覚的に分かりやすいインフォグラフィックなどは非常に有効かもしれませんね。今は、市況的にも悪い市況ですが、そんな状況を踏まえて、次の戦略はどう考えていますか?
JB Lee氏:私たちは、ブロックチェーンのエコシステムにおいてはコミュニティが非常に重要だと考えています。ブロックチェーンは一つの巨大なシステムではなく、人々の集合によって成り立ちます。例えば、Airbnbなどのサービスにおいてユーザーが存在しない場合、サービスが成立しないように、ブロックチェーンにおいてもユーザーが極めて重要な役割を果たします。
市場こそ落ち込んでいますが、最近では昨年末や年初と比較すると、より多くのユーザーが仮想通貨ではなくブロックチェーン技術そのものに興味を持ち初めています。
戦略に関しては、メインネットのローンチまでが残り3-4ヶ月となっていますので、現段階ではあまり大きな懸念はありません。コミュニティの構成要素であるユーザーのターゲットをしっかりと決めて、その人々向けにプラットフォームをデザインしていくことに注力しています。
–コミュニティといえば、Ethereumなどが非常に大きなコミュニティを持つイメージですが、このようなブロックチェーンのインフラ構築を目指すEOSやEthereumなどと比較した際のaelfの違い・強みなどは何ですか?
JB Lee氏:他のプラットフォームと比較した際の違いですが、主に2つの大きな強みがあります。aelfでは、プラットフォームをビジネスソリューションとして利用することのできるパブリックチェーンとして提供することを目指しています。
EOSやEthereum、その他のプラットフォームと比較すると、明確なターゲットが設定されているため、aelfはビジネスに最も最適なプラットフォーム(①)となっています。
例えば、すべてのビジネス向けにEthereumで提供するとなると、利用を考える企業はSolidityでのコーディングを余儀なくされてしまいます。aelfは現代でいうLinuxのような、幅広い拡張性を持つOSのようなものを目指しており、各企業に対して最適なインフラを提供することが可能です。
現在では、エンタープライズ向けのプライベート・コンソーシアムチェーンを利用したソリューションを目にすることがありますが、Permissionedのチェーンではデータサイロの延長でしかないため、ブロックチェーンのポテンシャルを最大限発揮することができません。
パブリックチェーンはビジネスに不向きと考えられることが多いですが、これにより既存の枠を超えたビジネス間でのコラボレーションなどを実現することも可能となります。
技術面では、パラレルコンピューティングやクラウドノードと呼ばれる技術を採用している点(②)も大きな強みの一つです。
aelfはEOS同様にDPoS(Delegated Proof of Stake)を合意形成アルゴリズムとして採用していますが、パラレルコンピューティングを採用しているため、大幅に高速なTPSが実現されます。
パラレルコンピューティングは、演算処理を並行して行うことが可能になる上、必要なに応じてノードの数を追加・削減することも可能なため、ダイナミックかつスケーラブルなソリューションであるということができます。
— 本日はありがとうございました!韓国の市況についてのお話やビジネス向けのインフラをどのように提供していくかといった話は非常に参考になりました。
まとめ
韓国レポート第一弾は、韓国市場も拠点にするaelfのJB Lee氏とのインタビューの内容になりました。
海外からは日本の市場は非常に魅力的だと言われることが多いですが、ジェネレーションギャップなどという印象は非常に興味深いものでした。
プロジェクトに関して、パブリックチェーンとエンタープライズは相性が悪いと思われがちな部分がありますが、aelfはカスタマイズ可能なインフラを提供することで、コストの削減だけでなくより広いビジネスの可能性を提案することができ、一括りに語られてしまいがちなインフラの立ち位置に存在するプロジェクトも全く別物であるということを再度理解することができました。
次回のレポートでは、韓国でもTOP TIER VCであるBlockwater CapitalのChenHo氏とのインタビューをまとめていきます。