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2023/04/11Arbitrum、約2100億円規模の大型エアドロップを振り返る|今後の獲得戦略も解説
2023年3月下旬、記事公開時点で約2100億円分のArbitrum/$ARBトークンの大型エアドロップが行われました。 一般ユーザーに配布されたのは、初期供給量のうち12.75%にあたる12.75億枚のArbitrum/$ARBトークンで、下記がその概要となります。 ・最小配布数量:625 $ARBトークン ・最大配布数量:10,250 $ARBトークン 今回のエアドロップは、2023年2月6日以前にArbitrumプラットフォームを使用したユーザーと、Arbitrum上でアプリを開発するDAOが配布対象でした。 本記事ではArbitrumでのエアドロップの事例を振り返り、今後のエアドロップ獲得における戦略を考えるうえで参考となる情報を解説していきます。 関連:総額最大6500万円が配布 | CRYPTO TIMES公式コミュニティに$ACSエアドロップが実施 Arbitrum/$ARBトークンの概要 Arbitrum(Arbitrum OneとArbitru Nova)とは、OptimismやPolygonと同じくLayer 2というカテゴリに含まれるEthereumのロールアップチェーンの1つです。 Arbitrum RollupとArbitrum AnyTrustという2つのプロトコルの実装により、Ethereumよりも一回あたりのトランザクションのガス代を低く抑え、かつ高速で安全な取引を実現しています。 $ARBトークンは、Arbitrum Oneロールアップチェーンで使用されるERC-20トークンで、Arbitrum Oneでのオンチェーントークンの取引を促進するために設計されています。また、同トークンは、Arbitrum Oneロールアップチェーン上でのみMint(生成)およびClaim(請求)が可能であり、Ethereum L1へのブリッジも可能です。 CT Analysis 『Arbitrumの直近の成長要因の分析と関連プロダクト調査』レポートを無料公開 トークンの割り当て 割合 配布数量 配布先 42.78 % 42.78 億 ①Arbitrum DAO Treasury 26.94 % 26.94 億 ②Offchain Labs Team and Future Team + Advisors 17.53 % 17.53 億 ③Offchain Labs投資家 11.62 % 11.62 億 ④Arbitrum プラットフォームのユーザー(ユーザーのウォレットアドレスにエアドロップで配布) 1.13 % 1.13 億 ⑤Arbitrum上でアプリを構築するDAO(DAOトレジャリーアドレスにエアドロップで配布) 3月下旬に実施された$ARBトークンのエアドロップでは上記の割合で配布されました。 一般ユーザーに関するエアドロップは④と⑤で、冒頭で紹介した「12.75%」という数字は上記表の11.62 % + 1.13 %の合算値です。 Optimism/$OPトークンと異なり、Arbitrumでは今回のエアドロップでユーザー割当分の全てのトークン配布が完了しました。 トークンのユーテリティー $ARBトークンは「ガバナンストークン」という括りに含まれ、トークンの保有によりガバナンス投票への参加が可能となります。 それ以外のユーテリティーは未定ですが、今後、 レンディングプラットフォームでの担保 Layer 2で実行されるトランザクションのガス代としてETHの代わりに使用 など、様々な可能性が考えられます。 エアドロップの対象者と獲得トークン数の詳細 初期供給枠 100億 インフレーション 最大年2% Minting/burningメカニズム L2スマートコントラクト Ethereum L1とのブリッジ あり トークンのローンチ先 Arbitrum One オンチェーンガバナンス Arbitrum One上 エアドロップスナップショット Arbitrum One上のブロック58642080 = 2023年2月6日 クレーム開始日 Ethereum Mainnet上のブロック16890400 = 2023年3月23日より開始 クレーム終了日 Ethereum Mainnet上のブロック18208000 = 2023年9月23日(予定日) 概要 今回、Arbitrumで配布されたトークンの数量は「ポイント制」を用いて決定されました。 ポイント付与の判断基準は主にArbitrum Oneでの利用に焦点を当てており、Arbitrum Novaに関する活動にも最大で4ポイントが適用されました。 全体で獲得できる最大ポイントスコアは15で、エアドロップの獲得対象になるために3ポイント以上のスコア獲得が必要であり、獲得したポイントをトークンに換算した場合、650 から最大で10,250の$ARBを獲得が可能でした。 * $ARB 辺りの価格を $1.25USD / 為替レートを¥132と仮定した場合、¥107,250 ~ ¥1,691,250を今回のエアドロップで獲得できたと算出できます。 早期参加することによるメリット また、押さえておきたいポイントとして、今回、Arbitrum Novaがローンチする前に参加したユーザーには、獲得ポイントが2倍になるメリットがありました。 例えば、アリスとボブがお互いにArbitrum Oneローンチ前後でそれぞれ4ポイントを獲得したとします。 アリス = Arbitrum Novaローンチ"前"に4ポイント獲得 ボブ = Arbitrum Novaローンチ"後"に4ポイント獲得 この場合のエアドロップ時における獲得数量は、下記のようになります。 アリス = 8ポイント獲得により4,250 $ARBを獲得 ボブ = 4ポイント獲得により1,750 $ARBを獲得 この通り、早期に参加するのとしないのでは、獲得数量に大きな差が発生したのです。 獲得ポイント毎の$ARB配布数量 次に獲得したポイント毎の$ARB配布数量を見ていきましょう。 下記の配布数量は、公式ドキュメントの内容に一部情報を追加したものです。 獲得ポイント $ARB 配布数量 前ポイントとの差異 3 1,250 (625) 0 4 1,750 +500 5 2,250 +500 6 3,250 +1,000 7 3,750 +500 8 4,250 +500 9 6250 +2,000 10 6,750 +500 11 7,250 +500 12 ~ 10,250 +3,000 上記表を見る際に、気をつけていただきたいのが1点。 Arbitrum Nitroローンチ前に、3ポイントを獲得していたユーザーは6ポイント扱いとなり配布数量が3,250 $ARBとなります。 一方で、Arbitrum Nitro後に獲得したポイントがスナップショットの日までに3ポイントだった場合は、1250/2 = 625 $ARBが配布数量になります。 また、Nitroローンチ後に4ポイント獲得した場合は、1,750 $ARBです。 Nitroローンチ前後による獲得ポイントの変動、特定の条件に該当することでのポイント減算などによって最終配布数量が決定しましたので、ぜひ上記を参考にしながらどこでポイントを獲得したのかなど振り返ってみてください。 Arbitrum One でのポイント獲得条件 Arbitrum Oneでのポイント獲得方法は、以下の14通りでした。 Arbitrum Oneに資金をブリッジする 2つの異なる月に取引を行う 6つの異なる月に取引を行う 9か月間取引を行う 4回以上の取引を行うか、4つ以上の異なるスマートコントラクトとやり取りする 10回以上の取引を行うか、10つ以上の異なるスマートコントラクトとやり取りする 25回以上の取引を行うか、25つ以上の異なるスマートコントラクトとやり取りする 100回以上の取引を行うか、100以上の異なるスマートコントラクトとやり取りする 合計で10,000ドルを超える取引を行う 合計で50,000ドルを超える取引を行う 合計で250,000ドルを超える取引を行う 10,000ドル以上の資産をArbitrum Oneにブリッジする 50,000ドル以上の資産をArbitrum Oneにブリッジする 250,000ドル以上の資産をArbitrum Oneにブリッジする 配布条件を満たすためのポイントを獲得するためには、複数の月に渡って取引を行うか、あるいは数ヶ月間取引を継続することが必要であったことがわかります。 8ポイント獲得までは、金額による足切りが無かったのも特徴的な点と言えるでしょう。 Arbitrum Novaでのポイント獲得条件 Arbitrum Novaでは、最大4ポイント獲得することができました。以下が、その条件になります。 Arbitrum Novaへのブリッジ 3回以上の取引を行う 5回以上の取引を行う 10回以上の取引を行う こちらも金額による足切りが無かったのが特徴的です。 ガス代含め約$10をAbitrum Novaにブリッジして10回以上スワップしておくと、1,750 $ARB が獲得できたのは、初めてクリプトを触ってみるという人に対しても非常に優しい条件だったと言えます。 シビル判定による対象者除外 公平性とbotなどによるトークン配布の偏りを防ぐために、今回は下記に該当するウォレットアカウントはポイントの減算もしくはエアドロップの対象外になりました。 今後エアドロップを狙う方も、是非下記を参考に該当ウォレットが対象外にならないよう注意しましょう。 エアドロップ受領者のウォレットの取引が全て48時間以内に行われている場合、1ポイントが減点 エアドロップ受領者のウォレット残高が0.005 ETH未満で、ウォレットが複数のスマートコントラクトとやり取りしていない場合、1ポイントが減点 エアドロップ受領者のウォレットアドレスが、Hopプロトコルのバウンティプログラムでシビルアドレスとして特定されている場合、受領者は失格 最もコスパ良く10,250 $ARBを獲得する戦略 結果論ではありますが今回のエアドロップでは、Arbitrum Nitroローンチ前に4ポイント(= 8ポイント)を獲得して、その後、Arbitrum Novaで4ポイントを獲得するのが最善の策でした。(前述の内容をもう一度見返してみて、アクションと獲得ポイント、獲得トークン数などを照らし合わせてみましょう) そのための最善の動きの一つとして下記が良かったのではないでしょうか。 Arbitrum Oneに資金をブリッジする 2つの異なる月に取引を行う ( 月末と月初に行う ) 4回以上の取引を行うか、4つ以上の異なるスマートコントラクトとやり取りする ( ステーブルスワップ ) 10回以上の取引を行うか、10つ以上の異なるスマートコントラクトとやり取りする ( ステーブルスワップ ) 上記の条件を$100未満で実行。その上で、下記の条件を満たします。 Arbitrum Novaへのブリッジ 3回以上の取引を行う 5回以上の取引を行う 10回以上の取引を行う これで、理論上は12ポイント獲得で10,250 $ARBの獲得に。記事公開時点で1 $ARB = 163円なので、約167万円分のエアドロップ報酬が配布されたことになります。 ぜひ皆さんも、今回解説してきた内容を元に次回以降の他チェーンでのエアドロップ獲得の戦略を考えてみてください。 Q&A 「いくらあれば、エアドロップを獲得できましたか?」 今回のArbitrumエアドロップでは、獲得できるポイントに基づいてトークンが配布されました。 そのため、特定の金額が必要というわけではなく、Arbitrum Oneおよび/またはArbitrum Novaでのアクションを通じて獲得したポイントに依存しています。具体的な金額を挙げるのは難しいですが、配布対象の3ポイントを獲得するには$10も必要なかったのは事例の一つとして確認できております。 「今後、同様のエアドロップが開催されると予測されますか?」 今後も同様のエアドロップが開催される可能性はありますが、具体的な予定や開催されるかどうかは確定的には言えません。 プロジェクト側がコミュニティの成長やユーザー獲得を促進するためにエアドロップを行うことが一般的です。エアドロップに関する情報は、各プロジェクトの公式アナウンスメントや公式ウェブサイトで確認できます。 今後のエアドロップ情報を逃さないように、関連プロジェクトの公式チャンネルやソーシャルメディアをフォローし、最新情報をチェックすることが重要です。また、ブロックチェーン業界全体の動向にも注目しておくと良いでしょう。 「Optimismの$OPと同様にデリゲートすることで、追加のエアドロップを獲得できると思いますか?」 今回のエアドロップにより、エアドロップとしてのトークン割り当て分は全て使用しました。 そのため、追加のエアドロップがあるかを予測するのは難しいですが、コミュニティ形成の過程においてトークンのデリゲートは非常に重要な要素の一つです。そのため、違った角度から異なるエアドロップが実行されるかもしれません。 「今後もLayer 2のチェーンが開発されていくに当たり、エアドロップが発生すると考えますが、どのようなことをしておくと良いでしょうか?」 エアドロップの対象となるアクションには、ブリッジを介して資金を移動させる、異なる期間や回数でトランザクションを実行する、特定の金額を超える取引を行うなどが含まれる可能性が高いです。 まとめ 昨年のOptimismに続いて、Layer 2で二度目の大規模なエアドロップとなったArbitrumの事例では、ポイント制の導入で利用金額に基づく制限を排除し、多くのユーザーが$ARBトークンを獲得するチャンスが得られました。 今回のエアドロップを逃してしまった方は、ぜひ次回のチャンスを狙ってください。 次回のエアドロップ獲得に向けて「①他チェーンからのブリッジ」と「②トランザクションの実行」という2つの要素に重点を置き、獲得を目指してみてはいかがでしょうか。 また、CRYPTO TIMES公式コミュニティ「boarding bridge」では、エアドロップについて日々最新の情報が発信されているので、是非こちらもご参加ください。 boarding bridgeに参加する 関連:総額最大6500万円が配布 | CRYPTO TIMES公式コミュニティに$ACSエアドロップが実施 *注意点: エアドロップに参加する前に、投資や暗号資産のリスクについて十分に理解し、適切な投資戦略を立てることが重要です。 エアドロップ対象の方は、2023年9月23日にまでにClaimを完了させて下さい。 参考: https://docs.arbitrum.foundation/airdrop-eligibility-distribution https://dune.com/0xroll/arbitrum-airdrop 免責事項 ・本記事は情報提供のために作成されたものであり、暗号資産や証券その他の金融商品の売買や引受けを勧誘する目的で使用されたり、あるいはそうした取引の勧誘とみなされたり、証券その他の金融商品に関する助言や推奨を構成したりすべきものではありません。 ・本記事に掲載された情報や意見は、当社が信頼できると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性、完全性、目的適合性、最新性、真実性等を保証するものではありません。 ・本記事上に掲載又は記載された一切の情報に起因し又は関連して生じた損害又は損失について、当社、筆者、その他の全ての関係者は一切の責任を負いません。暗号資産にはハッキングやその他リスクが伴いますので、ご自身で十分な調査を行った上でのご利用を推奨します。(その他の免責事項はこちら)
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2023/02/04仮想通貨取引所の財務情報を分析 | 見えてきた収益の”鍵”とは?
FTXの一件から「財務情報」や「内部統制」という言葉に対して、多くの方が関心を持つようになったのではないでしょうか。 また「そもそも取引所はどんなビジネスモデルで成り立っているのか」といった部分も、これからクリプトの世界に入ろうとしている方にとって興味深いところかと思います。 本記事では「財務諸表」を構成する要素の一つ「損益計算書」の「営業収益」の構成要素に焦点を当てながら、日本国内で暗号資産交換業に登録している企業の中から7社をピックアップし、公式に開示されている損益計算書の内訳の一部を解説します。 - 分析対象の企業 - コインチェック株式会社 https://corporate.coincheck.com/disclosure 株式会社bitFlyer https://bitflyer.com/ja-jp/s/company GMOコイン株式会社 https://coin.z.com/jp/corp/about/kaiji/ 株式会社ビットポイントジャパン https://www.bitpoint.co.jp/disclosure/ ビットバンク株式会社 https://bitbank.cc/about/corporate/ 株式会社DMM Bitcoin https://bitcoin.dmm.com/overview/koukoku 株式会社カイカエクスチェンジ (Zaif) https://corp.zaif.jp/business-report/ *今回の対象は、国内発であること、そして 一般的に認知が広く一定の売上規模の取引所を対象としています 取引所の営業収益を構成している勘定科目一覧 各取引所の営業収益を構成している損益計算書上の勘定科目は主に以下の通りです。 【営業収益を構成する勘定科目】 受け入れ手数料 *委託手数料 / その他の受け入れ手数料 - bitFlyerのみ「受け入れ手数料」を細分化して表示。 暗号資産売買損益 その他の営業収益 トレーディング実現損失 - 「暗号資産売買損益」と同義 トレーディング評価利益 - 「暗号資産売買損益」と同義 レバレッジ決済損失 建玉手数料収入 システム管理収入 役務収益 業務受託収入 その他売上高 商品売上高 一般的に取引所の収益として認知されているのは、「受け入れ手数料」ではないでしょうか。 その他の、収益部分に関しては収益を副次的に支える補助的な立ち位置と思われている方々が多いかもしれません。 *企業によっては、「暗号資産売買損益」を「トレーディング実現損失 / 利益」とも開示している場合もあり、同義ではあるものの勘定科目名が異なるケースもあります。 従来の金融業界における証券会社の収益構造 [caption id="attachment_83722" align="aligncenter" width="773"] https://www.fsa.go.jp/frtc/seika/discussion/2022/DP2022-1.pdf[/caption] 各取引所の収益構成に移る前に、従来の金融商品を取り扱っている証券会社の収益構成を確認しましょう。上記の図をご覧ください。 手数料収入に重きをおいていたのは昔の時代で、徐々にトレーディング収益の割合を広げていき、2020年度の時点では全体の25.9%を占めています。 *このトレーディング損益は、上述した勘定科目一覧の「2. 暗号資産売買損益」にあたります。 2022年3月期末における野村HDの要約連結損益計算書では、収益合計1兆5,940億円の約23%にあたる3,688億円がトレーディング損益に、株式会社SBI証券の2022年3月期連結損益計算書では、収益合計1,666億2千7百万円対して、約28%を占める 466億7千万円がトレーディング損益となっています。 そのため、従来の金融業界における証券会社の収益構造では、「トレーディング損益」を全体の営業収益に対して20~30%程の割合にとどめることが最適と現代では考えられているということがわかります。 もし、取引所が「暗号資産取引」をトレーディング損益と同義と考える際は、既存の金融商品よりもリスクが高いため、より一層保守的に、その割合を縮めても良いかもしれません。 参考 ・https://www.nomuraholdings.com/jp/investor/summary/highlight/statement.html ・https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/info/home/irpress/tanshin_220527.pdf 各取引所の収益構成 それでは各取引所が開示している実際の収益構成を見ていきましょう。 Crypto Timesでは、国内の暗号資産交換業者が開示している財務諸表の分析を2018年まで遡っておこないました。 下記は、その入り口として2022年の対象企業の営業収益順に並べた一覧となります。(スマートフォンの方は拡大してご覧ください) [caption id="attachment_83860" align="aligncenter" width="989"] *開示情報より当社で作成[/caption] 営業収益を構成している勘定科目は、先に記載したとおり12ありましたが、そこから重要性の高い「受け入れ手数料」と「暗号資産売買益」が全体の売上の何%を占めているのかを理解するため、上記のように一覧化しました。*「-」は、開示されていない情報 / 開示されていないため算出できない数値 暗号資産取引手数料の割合が大きい企業 暗号資産取引手数料の割合が大きい企業は、下記の2社でした。 ビットバンク株式会社 - 全体収益の約74%が受け入れ手数料です。 株式会社カイカイエクスチェンジ - 全体収益の約73%が受け入れ手数料です。 これら2社は受け入れ手数料に重きをおいてビジネスを展開していると数字上は捉えられます。 暗号売買資産売買益の割合が大きい企業 暗号資産取引手数料が大きい企業は下記の4社となりました。 コインチェック株式会社 - 全体収益の約91%が暗号資産のトレーディング損益 株式会社bitFlyer - 全体収益の約72%が暗号資産のトレーディング損益 GMOコイン株式会社 - 全体収益の約83%が暗号資産のトレーディング損益 株式会社ビットポイントジャパン - 全体収益の約79%が暗号資産のトレーディング損益 上記4社については、トレーディング収益に重きをおいてビジネスを展開していると捉えられます。 まとめ 今回は、取引所の収益構成に焦点を当てた記事でした。 一見、収益の構造に偏りがあると思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、最適な収益構成というのは、各社が取れるリスク許容度によって異なるため、その最適解を一括りに出すのは難しいのが正直な所です。 例えばGMOコイン株式会社や株式会社DMM Bitcoinは、暗号資産取引所をグループ事業の一環として行っておりますので、全体の連結で見た場合、もっとリスクを取って良いと言えるかもしれません。 最後まで読んでいただきありがとうございました。
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2022/11/15FTXが申請した”連邦破産法/チャプター11″とは?過去事例からFTXの今後も考察
2022年11月11日にFTXグループ会社が米国連邦破産法第11条 (以下、チャプター11) の手続きを開始したことを正式発表しました。 Press Release pic.twitter.com/rgxq3QSBqm — FTX (@FTX_Official) November 11, 2022 本記事では、米国の連邦破産法の概要、チャプター11及びそれに関連する用語などをFTXの事例を交えて解説していきます。 *当該記事は、該当の法律の全体像を専門家以外の方にもわかりやすく知っていただくため、一部の詳細を省略しています。より一層、理解を深めたい場合は、参考LINKを参照ください。 記事に出てくる専門用語 「債権者」- 今回の場合、FTXに対して金銭の支払い要求が出来る人を指します。例. 出金できなくなったユーザー、FTXに投資していた投資家など 「債務者」- 今回のケースではFTXです。 「連邦破産法 - 米国には、合衆国憲法、連邦法、州憲法、州法があります。連邦破産法は、合衆国憲法により権限を与えれれた法律の中の一つです。 「破産」- "清算”と捉え間違えられる事が多い言葉ですが、広義の意味での債務整理の"手段"です。 「倒産」- 資金繰りが出来なくなり、会社を経営することが存続出来なることを意味します。 「清算」- 一般的に"破産"と聞いて、イメージする内容が"清算"です。全てを綺麗サッパリ精算して会社を終わらせる手続きを意味し、"破産"手続きの一つです。 「自己破産 / 強制破産」- この申立がされた場合、債権者の債権回収行為が出来なくなります。 「救済命令」- 破産手続きを開始するという裁判所からの合図です。 「破産管財人 」- 弁護士、会計士などが選ばれることが多く、資産の調査、売却、各種書類の審査など、様々なことを行う権限を有します。 「破産財団」- 債務者の資産の集合体です。例 ) 現金、保有暗号資産、保有建築物など。 「免除財産」- 破産財団に含まれない債務者の財産です。例えば、日常生活に必要な住宅などは、一定額の持ち分を免除されることが認めれれています。 「破産裁判所」- 破産手続きを専門に管轄する裁判所で、この連邦破産裁判所米国の各地方にあります。 そもそも破産手続きとは? そもそも"破産手続き"とは一体どのような内容を指すのでしょうか。 破産続きを簡略化して説明していきます。 登場人物 ・取引所 - A社 "債務者" ・弁護士 - T氏 "破産管財人" ・投資家 - X氏 "債権者" ・取引所利用者 - Z氏 "債権者" ある、取引所A社が50億円の負債を抱えて破産を破産裁判所に申し立てたとします。 その時の資本部分は、20億円ありました。 貸借対照表の"貸し方"側は合計70億円です。 資産の"借り方"側は、申立の段階では財務諸表上70億円ありました。 *一部、専門用語を使用しているため、難しいと感じた方は簡単に「取引所A社が借金50億円、蓄積されてきた利益などを20億円もっており、その70億円で様々な資産を保有している」と認識ください。 破産申立後、救済命令が出されて、手続きが開始。 債権者集会で、破産管財人がT氏になりました。 T氏が、専門家たちを雇い改めて資産を評価した結果、70億円と計上されていた資産は実のところ30億円でした。 この30億円は、破産法に規定に則り、債権者X氏とZ氏に分配されます。 そして、残った40億円の債務 (借金)は、その返済義務を免れます。 これが、破産手続きの大枠の流れです。 *実際は、登場人物も多く、一層複雑になっています。 米国の連邦破産法とは? アメリカでの破産手続きは、連邦破産法(Bankruptcy code)に基づいて行われます。 この法律の主な目的は、 強引な取り立てからの債務者の保護 一部の債権者が他の債権者よりも優位な立場を得ることの防止 = 優先的な債権の回収など 既存の事業関係の維持 などがあり、その包括的な目的は、債務者が"再出発"できるようにするためです。 連邦破産法は、9つのチャプターから構成され、その内チャプター1,3,5は全ての手続きに適用されます。 今回、FTXが申請したチャプター11には"事業の更生 (reorganization )"を目的とすることが規定されています。 上記を見ると、"消費者保護"ではなく、今回の主要登場人物であるサム・バンクマンフリード氏を優位的に守る法律かと思う方も多いかもしれませんが、2005年に"債務者に対して優しすぎる"という批判が当該法律に対して出たため、破産の濫用防止、そして消費者保護の観点から1978年以来27年ぶりにその申請条件や審査が大幅に改正されました。 そのため、連邦破産法は一方的に今回の債務者であるFTX側を守るための法律ではないということを認識ください。 チャプター11とは?=事業の再建/存続を目的に規定された法律 FTXが今回申請した連邦破産法のチャプター11とは、資本構成を新しくすることで債務者 (FTX) を更正し、その事業を再建させ存続させることを目的に規定された法律です。 一般的な事業会社では、チャプター11を最初に申請することが多く、チャプター7への切り替えも当事者たちにとって最大限の利益を考慮した上で可能です。 *日本の「民事再生法」に相当する法律で、事業再建の国内事例だと日本航空株式会社 ( JAL ) が挙げられます。 *チャプター7 とは、「破産型」の手続きであり、そのゴールは「事業再建」ではなく「清算」です。チャプター11を申請していても、その手続に失敗した場合は、チャプター7へと切り替わります。 *日本と異なり、米国ではチャプター7や11が申請されると、債権者からの取り立て行為が自動的に禁止されます。金融関連の漫画で有名な「ナニワ金融道」では、債権者が債務者の自宅に取り立てに行くシーンが頻繁に見られますが、それらの取り立て行為をして一部の債権者だけが債権の回収に行くことは出来ません チャプター11の特徴の一つは債務者 (FTX) が”占有継続債務者"となることです。そうすることで、債務者 (FTX) は破産続き開始後も、自己の財産を引き続き占有することができ、事業自体の継続が可能となります。また、"破産管財人"が必ず専任するされるわけではないのが特徴の一つです。 チャプター11の流れ 1、更正するための計画の提出 2、破産裁判所による計画の確認 3、計画の実行 チャプター11の主な流れを説明していきます。 1. 更正するための計画の提出 債務者 (FTX)は"救済命令"が与えられてから120以内に、裁判所に更正計画を提出する独占権を有します。改正破産法では、この期間を最大で18ヶ月まで延長可能と規定されています。 先の救済命令が与えられ後、債務者 (FTX) は当該計画について180日以内に債務者の承認を得る権利を獲得します。 *もし、当該更正計画が提出されなかった場合、利害関係者により救済命令が与えられてから20ヶ月までの間は当該計画の提案が可能です。 *当該計画書の中には、債務者 (FTX) の新たな財務構造が説明され、債権者と株主 (FTXの投資家、社員、出金できなくなったユーザー)が計画を判断するための十分な情報の開示の提供が求められます。 2. 破産裁判所による計画の確認 債権者がチャプター 7の清算破産に基づいて受け取る金額と同等な金額であり、当該計画が債権者にとって最大の利益になっていること。 現実的に実行可能な内容であること。 債権者が計画を認めること。 上記が裁判所が承認する際の条件です。 3. 計画の実行 当該計画が承認されれば、債務者はその計画に従って債務を弁済していきます。更生計画によっては、債務額が減少されたり、分割での支払いが認められるケースが多いです。 過去にチャプター11の申請手続きを行った大企業 過去にチャプター11の申請手続きを行った大企業はFTXだけではありません。 私達、日本人が耳にしたことある会社だと"ユナイテッド航空"と"リーマン・ブラザーズ"の2社ではないでしょうか。 ユナイテッド航空以外でも、デルタ航空などアメリカの名門航空会社は過去に何社もチャプター11を申請してきました。ユナイテッド航空の場合、2002年12月に申請。その後、再上場を果たしています。 一方で、後者のリーマン・ブラザーズはと言うと、2008年に申請後、2016年まで裁判が続き、現在も復活は果たせておりません。 「事業再建による存続」をゴールとした法律ではありますが、その目的達成までの道程は年単位と長く、また事業の再建が保証されているものでは無いということが過去の事例からも分かります。 FTXのこれから FTXは、これからどのような道をたどっていくのでしょうか。 過去の事例などを見ていくと、事業再建の重要な要素として"社会的貢献価値"があるのかという部分が一つ。そして金融事業は、その他事業会社と異なり顧客との"信頼" や "評判 = reputation risk "が、事業再建の鍵となると筆者は考えています。 航空会社の再建は、日本でもJALが該当します。JALや米国のユナイテッド航空などは、人の移動を支える"インフラ"としての側面による社会貢献価値が大きく、それが多くの人を巻き込み事業再建に繋がった可能性が非常に高いです。 一方で、リーマン・ブラザーズなどは、本来であれば住宅ローンの審査が通らない人々にローンを組ませ、その信用性の低い証券を格付け機関が強引に優良認定させるなどして、ごく一部の人間への利益のために世界的な金融危機を引き起こし多くの損害を生みました。 前者の航空会社と異なり、その一連の行為は世界中の多くの人々の信頼を裏切る行為へと繋がり、社会貢献価値の低い会社となり信頼が落ちました。その結果、リーマン・ブラザーズに対して救いの手は差し伸べられませんでした。 では、FTXの場合は、どうでしょうか。 これについては、これからの債権者や支援者たちが決めるところであり、現時点では何も言えません。 本件に関して、Crypto Timesでは業界内の「重要性」の高い事件として引き続き、その動向を追っていきます。 - 参考リンク - ・https://www.uscourts.gov/services-forms/bankruptcy/bankruptcy-basics/chapter-11-bankruptcy-basics ・https://uscode.house.gov/view.xhtml?path=/prelim@title11/chapter11&edition=prelim FTXが破産申請を実施 | CEOのサム氏退任で再建目指す