仮想通貨Cosmos/$ATOMとは?特徴や仕組み、注意点を解説
airutosena
Cosmosとは、ブロックチェーンの開発を簡易化し、ブロックチェーン間の相互運用性を実現するプロジェクトです。
現在、多数のプロジェクトがCosmosが提供するソリューションを活用して構築されています。
今後、ブロックチェーンの開発が活発になるにつれて、Cosmosのような相互運用性を実現するプロジェクトは重要になると考えられるでしょう。
本記事では、そんなCosmosについて以下のようなポイントから解説しています。
この記事のまとめ
・Cosmosではブロックチェーンを簡単に開発可能
・各チェーンはIBCによって接続可能
・ペグゾーンによって規格外のチェーンとの接続も可能
・Cosmos Hubはハブの1つ
・IBCを有効にしているチェーンは40以上
目次
Cosmosとは?=チェーンの相互運用性を提供するプロジェクト
Cosmosとは、ブロックチェーン間の相互運用性(インターオペラビリティ)を提供するプロジェクトの総称です。
現在、代表的なものではイーサリアムやビットコインなど多数のブロックチェーンが展開されていますが、その多くは相互運用性を持ちません。
各ブロックチェーンが、異なるルール・規格で運用されており、トークンの送付が各ブロックチェーン間で不可能だったり、さまざまなデータをやり取りできないといった課題が見られます。
また、イーサリアムなど代表的なブロックチェーンの裏側の仕組みに依存することで、各アプリケーションの拡張性・柔軟性が失われるといった問題も見られます。
Cosmosは、上記のような課題を解決するために、各ブロックチェーン間の相互運用性を確保や、ブロックチェーン開発を容易するためのソリューションを提供するプロジェクトです。
Cosmosの3つの特徴
①柔軟性、拡張性の高いチェーンの開発
②開発されたチェーン間の接続
③規格外のチェーン同士の接続
これから、Cosmosの簡単な特徴について、上記3つの観点から解説していきます。
Cosmosの魅力・特別なポイントをチェックしていきましょう。
①柔軟性・拡張性の高いチェーンの開発
Cosmosは、ブロックチェーンの開発が行えるソリューションを提供しています。(Cosmos SDKなど)
Cosmosのソリューションを利用することでブロックチェーン開発を容易に行え、アプリケーションを独自のブロックチェーンに構築することが可能となります。
各アプリケーションが独自のブロックチェーンを持つことで、用途にあったチェーンを開発し柔軟性を持たせることが可能です。
イーサリアムに構築されたアプリケーションは、ブロックチェーンの開発を行わない代わりに、多くの部分をイーサリアムに依存するため、設定されているルール内でしかアプリケーションの開発・運用ができません。
一方で、Cosmosのソリューションを活用すれば、各アプリケーションにとって最も望ましいブロックチェーンを開発し、運用が可能となります。
②開発されたチェーン間の接続
Cosmosのソリューションを利用して開発されたブロックチェーンは、IBCと呼ばれる規格を活用して容易に接続できます。
そのため、Cosmosのソリューションで開発された各ブロックチェーンは、相互運用性を持ちます。
具体的には、各ブロックチェーン同士のトークンの転送等が可能です。
また、IBCの汎用性はCosmos関連のソリューションに留まりません。
IBCを利用する規格にさえ沿っていれば、どんなブロックチェーンでも接続が可能なのも注目すべき特徴となっています。
③規格外のチェーン同士の接続
Cosmos関連のブロックチェーンは、前述したような規格に沿っていないブロックチェーンであっても、間接的に接続できます。
前述した規格にはいくつか条件があり、その中にファイナリティの種類があります。
例えば、ビットコインのようなPoWを採用するチェーンではファイナリティに至る過程が規格に沿っていないため、IBCを用いて直接の接続はできません。
Cosmosでは、IBCと互換性を持つペグゾーン(Peg-Zone)と呼ばれる専用のブロックチェーンを中間に置くことで、間接的な接続を実現しています。
そのため、規格に沿わないチェーンであっても、ペグゾーンの利用により接続が可能です。
Cosmosの特徴を実現する仕組みを解説
前述したようなCosmosの特徴を実現する仕組みについて、以下のポイントから解説していきます。
・TendermintとCosmos SDK
・接続を可能にするIBC
・規格外のチェーンを対応するペグゾーン
・接続の中心となるCosmos Hub、ATOM
Cosmosの仕組みとその詳細についてチェックしていきましょう。
Tendermint BFTとCosmos SDK
Cosmosのブロックチェーン開発者向けに、Tendermint BFTを利用したCosmos SDKが提供されています。
Tendermint BFTとは、ブロックチェーンの裏側の仕組みをまとめたソリューションです。
ブロックチェーンには、主に以下のような層が存在しており、各層が重要な役割を担っています。
- アプリケーション
- コンセンサス
- ネットワーク
これまでのブロックチェーン開発では、上記全ての層を一から開発する必要がありました。
Tendermint BFTは上記の課題を解決するために、コンセンサス部分とネットワーク部分をまとめて処理するソリューションになっています。
Tendermint BFTを活用することで、ブロックチェーンで取引を処理する際に必要となる仕組みを簡単に構築できます。
そして、Tendermint BFTを利用したブロックチェーンを開発するためのフレームワークがCosmos SDKです。
Cosmos SDKには、ブロックチェーンの開発に必要なツールが備わっており、前述した各ブロックチェーンと相互運用性を持つブロックチェーンを容易に開発できます。
接続を可能にするIBC
Tendermint BFTとCosmos SDKを用いて開発された各ブロックチェーンは、IBCによって接続が可能になり、相互運用性を持たせることが可能です。
IBCとは、ブロックチェーン同士が通信を行うための規格のことです。
IBCに沿ったブロックチェーン同士は直接接続し合うことが可能で、トークンやデータのやり取りが可能になります。
具体的には、以下のような流れでトークンのやり取りを行います。
- 送付元のチェーンにトークンをロック
(ロックのことを、bondedとも呼称)
- 送付元チェーンにロックした旨を送付先チェーンに伝達
- 送付元にてロックしたトークンを、送付先にて発行
ただし、送付先で発行されるトークンは、ロックされたことを証明するトークンのため、厳密には送付元のトークンとは異なるので注意が必要です。
上記の仕組みでは、トークンといった用途に限らず、さまざまなデータが扱えます。
例えば、Cosmos Hub(後述)では、IBCを通して他のチェーンへのセキュリティの提供・共有が可能となります。
IBCと似たようなソリューションに、ブリッジが挙げられます。
ブリッジは異なるブロックチェーン間で、トークンを送付する際に多用されていますが、IBCとブリッジは同じものではありません。
ブリッジはトークンの送付に伴って、送付元・先になるブロックチェーンの間に何らかのサードパーティを利用するため、サードパーティにおいて欠陥が見られる場合、リスクを伴います。
一方で、IBCは送付元・先になる2つのブロックチェーンを直接接続しトークンをやり取りするため、2つのブロックチェーンへの信頼性が確立されていれば、安心してトークンを扱うことが可能です。
規格外のチェーンに対応するペグゾーン
IBCを活用できないブロックチェーンとの接続には、ペグゾーンを利用します。
ペグゾーンは、IBCと互換性を持つブロックチェーンであり、IBCと互換性を持たないブロックチェーンとIBCと互換性を持つブロックチェーンの中間に位置します。
前述したとおり、IBCの規格にはさまざまな条件が設定されており、その1つがファイナリティです。
PoWなどを採用するブロックチェーンでは、確率的なファイナリティしか得られません。
IBCを利用するには、決定論・決定的なファイナリティが必要であり(接続後に各チェーン間で矛盾を起こさないため)、この点が互換性を持たせる上での障害となっています。
そのため、ペグゾーンはファイナリティを確立させる場所として利用され、ペグゾーンを中間に位置させることで、互換性を持たせ各ブロックチェーンを接続できる状態にします。
ただし、ペグゾーンは各ブロックチェーンごとに開発を行う必要があり、各ブロックチェーンの特性によって技術的な難易度も異なります。
(イーサリアム用、ビットコイン用といった各ブロックチェーンに合わせた独自のペグゾーンが必要になる)
接続の中心になるCosmos Hub・ATOM
Cosmos HubとATOMは、各ブロックチェーンの中間に位置するハブとして機能するブロックチェーンとそのトークンです。
Cosmosには、「ハブ」と「ゾーン」の概念があります。
ゾーンは、Cosmos関連のソリューションを利用して構築されたブロックチェーン、ハブはゾーンを接続させるために、以下のような形で中間に位置するブロックチェーンです。
「IBCを利用して、ブロックチェーンを直接接続可能なのに、なぜハブを通す必要があるのか?」と気になった方もいるかもしれません。
もちろん、IBCを通して各ブロックチェーン同士を直接接続することは可能です。
しかし、直接接続してしまうと、ブロックチェーンが増えるに従って、接続する数も大量に増えていきます。(1つ1つブロックチェーンに対して、接続が必要なため)
Cosmosの公式サイトでは、100のブロックチェーンがある場合、必要な接続数は4,950になると記載されています。
そのため、Cosmos Hubのような各ブロックチェーンとIBCによる接続において中間となるハブを利用し、効率的な接続を行えるようにします。
各ゾーンはハブに接続することによって、ハブと接続しているその他全てのゾーンとの通信が可能です。
また、Cosmos HubはATOMというネイティブトークンを持ち、ATOMはCosmos HubにおけるDPoSへのステーキングなどに利用されます。
Cosmos Hubは、Cosmos ネットワークにおいてはじめてスタートしたハブの1つというだけで、ハブ自体は複数展開することも可能です。
また、IBC接続によって直接ブロックチェーン間を接続できるため、仮にハブに何らかの問題があったとしても、前述の通り各ブロックチェーン自体が直接接続しあうことができます。
Cosmosを活用したチェーン・プロジェクト
現在、多数のブロックチェーン・プロジェクトがCosmosを活用して、開発されています。
トークンを実装しているものから、一例として以下のようなものが挙げられます。
- BNB
(Binance Chain) - OKB
- CRO
- OSMO
また、IBCを有効にしているブロックチェーンは40個以上に渡り、1兆円以上の時価総額を持っています。
また、Cosmosを活用したアプリのジャンルは多岐にわたっており、2022年10月時点で、260以上のアプリが展開されているようです。
Cosmosの注意点・リスク
Cosmosの注意点・リスクについて以下のような観点から解説していきます。
・競合の存在
・その他の潜在的なリスク
Cosmos関連のエコシステムの利用などに伴う注意点をチェックしていきましょう。
エコシステムとATOM
Cosmosでは、多数のブロックチェーン(ハブやゾーン)を構築することができます。
最も代表的なハブがCosmos Hubであり、Cosmos HubのネイティブトークンはATOMです。
しかし、前述の通り、Cosmosを利用したブロックチェーンの開発は各々が独立しており、IBCにて接続するか否かも選択できます。
そのため、イーサリアムなどと比較すると、Cosmos周りの開発や運用が必ずしも、Cosmos HubやATOMの直接的な需要に繋がる訳では無い可能性があります。
競合の存在
ブロックチェーン間に相互運用性を持たせようという試みを行っているのは、Cosmosのみではありません。
複数のブロックチェーンを開発できるといったプロジェクトには、PolkadotやAvalancheといったプロジェクトが挙げられます。
しかし、各プロジェクトごとに、相互運用性へのアプローチ方法は大きく異なっており、一概に同様のプロジェクトと評価することはできません。
ただ、開発者やユーザーの数は限りがあるため、各プロジェクトとの競争が行われていく可能性は高いです。
そのため、各プロジェクトの動向などについてもチェックしていく必要があるでしょう。
その他、潜在的なリスク
Cosmos関連のアプリ、サービス、チェーンなどの利用には、潜在的に多数のリスクが存在しています。
各アプリにバグや欠陥が存在している可能性や、Cosmosエコシステムに触れるにあたって利用する何らかのソリューションでトラブルが発生する可能性も否定できません。
他の仮想通貨の購入や利用と同様に、何らかのトラブル・攻撃などによって損失などが発生する可能性は常に押さえておきましょう。
Cosmosについてまとめ
この記事では、Cosmosについて解説しました。
Cosmosは、ブロックチェーン間の接続や、アプリケーション独自のブロックチェーン開発など、多数の特徴を持つプロジェクトです。
今後、ブロックチェーンの開発・運用などがさまざまな分野において加速していく中で、各ブロックチェーンの接続や開発にフォーカスしているCosmosには注目していきたいと言えるでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
USDCがCosmos、Polkadotなど複数チェーンで対応へ | 2022年末から利用可能予定
ー Cosmos 公式リンク ー