DeFiに固定金利オークションという新しい選択「Term Finance」AMAレポート
boarding bridge

執筆:MARU
金利の安定性と取引の透明性を重視し、三者間レポ取引をオンチェーンで実現するレンディングプロトコル「Term Finance」のAMAを、CryptoTimes公式コミュニティboarding bridge(bb)にて開催しました。
今回のAMAでは、Term独自の金利決定モデルや具体的な利用方法、$TERMトークンの役割、さらにPlasmaとの連携や今後のロードマップについて伺いました。
以下はAMAの内容を要約したものです。
AMA概要
日時:2025年10月26日(日)21:00
場所:bb Discord & X Space
Giveaway:100 USDC × 5名
DeFiに固定金利オークションという新しい選択
「Term」のAMAを開催✈️⏰ 10月26日(日)21:00
🎁 Giveaway:100 USDC × 5名✅ Like, RT & Follow ↓@term_labs & @bb_jpdao
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— boarding bridge (@bb_jpdao) October 19, 2025
スピーカー
・Dion | CEO of Term Labs
・taka | boarding bridge
・Aki | boarding bridge
(敬称略)
質問トピック
自己紹介
Term Labsの共同創業者でありCEOを務めるDionです。当プロトコルでは、透明性の高い固定金利オークション方式を採用することで、借り手・貸し手ともに安定したレンディング体験を提供しています。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
boarding bridgeのtakaです。個人的にもTermを利用しています。固定金利オークションという独自の仕組みを採用していて一見難しそうに見えますが、実際にはユーザーが手軽に使える機能もあります。本日はそのあたりを中心に話していきたいと思います。
Term Financeとはどんなプロジェクトか教えてください。
Termは、DeFi(分散型金融)領域におけるレンディング分野に、安定性と予測可能性をもたらすことを目的としたプロジェクトです。Aaveなどの既存レンディングプロトコルと構造は似ていますが、すべてのローンを固定期間・固定金利で提供するという点が大きな違いです。
DeFiの世界では、DEX(分散型取引所)とレンディングが二大基盤として存在します。レンディングは、暗号資産を担保として他の資産を借りる仕組みであり、多くのプロトコルでは、借入額以上の担保を預け入れる過剰担保方式を採用しています。
たとえばBTCやETHなどの保有資産を長期的に持ち続けたい投資家が、これらを売却せずに担保として預け入れ、USDCなどのステーブルコインや他の暗号資産を借りることで、資産を手放さずに資金を活用することが可能です。この方法は、利確扱いを避けることで税務上の計算を簡略化できるという点でも、多くのユーザーに利用されています。
しかし従来のレンディングでは、金利が市場の需給や流動性によって常に変動してしまうため、運用の見通しが立てにくいという課題がありました。たとえば、貸出金利が数パーセント変動することも珍しくなく、長期的な資金計画を立てる上での不安要素となっていました。
Termは、この課題を固定金利オークションによって解決します。貸し手と借り手が非公開のオークションによりマッチングします。この仕組みにより、契約期間中は金利が変動せず、借り手は返済額を正確に把握でき、貸し手は安定した利回りを得られるようになります。つまり、Termは変動金利の不安を取り除き、安定的に運用できるレンディングプロトコルです。

固定金利オークションの入札画面 | Term Finance アプリ
固定金利オークションの仕組みはどんな利点がありますか?
Term Financeが採用する固定金利オークションは、従来のAMM型レンディングとは異なる仕組みで、金利決定の透明性と資金効率を両立させています。このモデルによって、DeFiのレンディングを時間と信用を取引する本来の市場構造へと進化させることを目指しています。
従来のAaveなどに代表されるAMM方式では、貸し手と借り手が共通の資金プールを利用し、流動性の需給によって金利が常に変動します。この仕組みには二つの課題があります。一つは、使われずにプール内で待機する資金(アイドル・リクイディティ)が発生すること。もう一つは、利用するタイミングによって金利が大きく変動し、安定的な資金運用が難しいことです。
Term Financeは、これらの課題をオークション形式のマッチングモデルによって解決しています。貸し手は「この金利以上なら貸したい」、借り手は「この金利以下なら借りたい」という条件をブラインドオークション形式(他の入札内容が見えない仕組み)で提示します。すべての入札が終了すると、市場の需給に基づいて単一のクリアリングレート(金利)が決定されます。この金利は契約期間中は変動せず、借り手は返済額を、貸し手は利回りをあらかじめ把握できるため、安定した運用が可能になります。
また、オークションの実行から清算までのすべてのプロセスはオンチェーンで完結します。これにより、中央管理者を介さずに透明で監査可能な金利市場が成立しています。
この設計は、伝統金融における三者間レポ取引(Triparty Repurchase Agreement)に着想を得ています。レポ取引とは、借り手が保有する証券を一時的に売却し、一定期間後に買い戻す契約を通じて資金を調達する仕組みです。Termは、このモデルをオンチェーンに置き換えることで、第三者を必要とせず、スマートコントラクトによって安全かつ効率的に担保を管理します。
Termのオークションは数週間から最大1年程度の期間で設定され、ユーザーは希望する金利と期間を指定して参加します。貸し手は安定した利回りを得ることができ、借り手は固定金利でコストを予測しながら資金を利用できます。こうした仕組みにより、TermはDeFiのレンディングをより効率的で安定的なものへと進化させています。
- AMM
- 自動マーケットメイカーの略。流動性プールを活用し、需給バランスに応じて金利や価格を自動調整する仕組み。
- アイドル・リクイディティ
- プール内に預けられているものの、貸出や取引に使われず遊んでいる資金。資本効率を下げる要因となる。
- クリアリングレート
- オークションにおいて、貸し手と借り手の条件が一致し約定が成立する最終的な金利水準。

標準的な三者間レポ取引の流れ | Term Finance Docs
$TERMトークンは現在どのように使われていますか?
Termのネイティブトークンである$TERMは、プロトコルのガバナンス(運営参加)に使用されています。このトークンを保有し、ステーキングすることで、ユーザーはプロトコルの意思決定に関わる投票権を得ることができます。
ガバナンスの対象には、たとえば新しい担保資産の追加、プロトコルパラメータの調整、アップグレード提案の承認などが含まれます。これらの提案はTally上で公開され、$TERM保有者は投票を通じて賛否を示します。決議が可決された場合でも、24時間のタイムロック期間が設けられており、その間に$TERMをステーキングしている保有者が「拒否(VETO)」を行うことが可能です。
この仕組みにより、重要な変更が拙速に実行されることを防ぎ、プロトコルの安全性と透明性を担保しています。
また、将来的には$TERM保有者がプロトコル収益の一部を受け取れるようなレベニューシェア機能の導入が予定されています。具体的には、オークション手数料によるプロトコル収益が安定した段階での実装を予定しています。これにより、将来的なプロトコルの成長とともに、$TERMがガバナンスとリワードの両面で機能するトークンとして活用されることが期待されます。
- レベニューシェア
- プロトコルが得た手数料や収益の一部を、条件に応じてトークン保有者やステーカーに分配する仕組み。

$TERMトークンのガバナンス画面 | Tally「Term Token」
おすすめのTermの始め方を教えてください
Termの魅力は、オークション形式で金利が決まる固定金利レンディングを体験できる点にあります。貸し手と借り手が希望する金利条件を提示し、マッチした時点で金利が確定する仕組みは、DeFiならではの楽しさがあります。ただし、オークションは周期的に開催されるため、タイミングが合わないこともあります。
そのような時におすすめなのが、公式アプリ内の「Earn」ページです。ここでは、オークションの開催を待たずに、ワンクリックで固定金利を確定し、すぐに運用を始めることができます。「Earn」で利用できる貸付ポジション(=オークションで成立した固定金利の契約)は、マーケットメイカーが再販売する二次市場のような仕組みで提供されています。オークションを待たずに固定金利で貸し出せる点が大きな特徴です。
さらに、より柔軟な運用をしたい人には「Meta Vaults」ページもおすすめです。ここでは、ステーブルコインを預けるだけで、Termの固定金利ポジションを含む複数の戦略に自動分散されます。一部に変動金利の要素もありますが、全体として安定性が高く、運用内容はすべてオンチェーン上で公開されています。
Termは専門的な仕組みを持ちながらも、初心者でも始めやすい設計になっています。
- マーケットメイカー
- 市場で売り手と買い手の間に入り、常に流動性を提供する役割を担う参加者。取引が円滑に成立するように、一定の価格帯で資産の売買を行う。DeFi領域では、オークションで成立したポジションやローンを二次市場で販売・供給する形で流動性を支えている。
直近のアップデートと今後のロードマップを教えてください
先日のPlasmaのメインネットローンチに伴い、「Plasma USDT0 Meta Vault」をリリースしました。Plasmaは、ステーブルコインと実世界資産(RWA)への応用を軸に、Web3と実社会の金融をつなぐことを目指すプロジェクトです。
こちらはPlasmaのエコシステムリワードの対象となっており、通常の金利に加えて高いAPRが提供されることで注目されています。
Termはステーブルコインの固定金利レンディングの分野でリードしており、Plasmaとは理想的な補完関係を築いています。Plasmaが今後、自社のネオバンク構想(デジタルバンクの仕組み)を推進していく中で、Web2の銀行体験に慣れた新たな層がWeb3に流入することが予想されます。その際、Termは固定金利を軸とした安定した利回りを提供し、Web3の金融基盤としての役割を担います。
さらに、Termの開発ロードマップとして、現在「Term V2」の開発が進行しています。V2では特に以下の2点に注力しています。
1.ユニバーサルルーターによる操作性の向上
複数の承認や送信操作を一括処理できる仕組みを導入し、借り手もワンクリックでローン操作が可能になります。これにより、ユーザー体験(UX)が大幅に向上する見込みです。
2.インテントベースの注文モデルの導入
ユーザーがウォレットでメッセージ署名を行うだけで、条件付きの注文(指値注文)を出せる仕組みです。0x ProtocolやOpenSeaの設計に近く、より柔軟かつ効率的な取引が可能になります。
これらのアップデートにより、Term Financeはレンディング体験のさらなる自動化とUX改善を進め、より多くのユーザーにとって利用しやすい金融プラットフォームとなるよう開発が進められています。
- ユニバーサルルーター
- 複数のスマートコントラクト呼び出しを1つのトランザクションにまとめる技術。ユーザーは複雑な操作を一括で完了でき、ガス代と操作時間を削減できる。
- インテントベースモデル
- ユーザーが希望条件(意図)を署名して提示し、ブロックチェーン上の他者がその条件を満たす形で取引を成立させる仕組み。従来のオンチェーン注文より効率的に流動性を引き出すことができる。
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— Term Labs (@term_labs) September 25, 2025
Plasma USDT0 Meta Vaultローンチ告知投稿 | Term Labs公式X
Term Financeはどのチェーンに対応していますか?
オークションは現在、Ethereum、Base、Plasma、Avalancheの4つのネットワークに対応しています。またMeta VaultはEthereum、Plasma、Avalancheの3つをサポートしており、今後も対応ネットワークを増やしていく予定です。
なぜ固定金利オークションを採用したのですか?
Termが固定金利オークション方式を採用しているのは、レポ取引などの伝統的な金融の仕組みをオンチェーン上で再現するためです。すべての入札・マッチング・清算がスマートコントラクトによって自動実行されるため、透明性が非常に高く、公正な金利形成が実現します。
さらに、機関投資家が固定金利レポ取引を日常的に利用しており、今後は米国債などRWAのオンチェーン化とともに、こうした取引が広がると見られています。Termはその先駆けとなるプロトコルの一つです。
特定のマーケットメイカーがオークションを買い占める可能性はありますか?
理論上は可能ですが、買い占めるほど落札価格が上がり、利回りが下がるため、誰も購入しなくなります。つまり、市場原理によって自動的にバランスが保たれる設計になっています。
まとめ
今回のAMAでは、Term Financeが採用する固定金利オークションモデルの仕組みや、既存のDeFiレンディングとの違い、$TERMトークンの役割、そして今後の開発ロードマップについて詳しく共有されました。
Termは、オークション形式で貸し手と借り手をマッチングすることで一定期間内における変動金利による不確実性を解消しています。これにより、双方が金利変動の影響を受けずに安定した取引を行うことができます。すべての入札・清算プロセスはスマートコントラクトによって自動実行され、透明性と安全性を兼ね備えた設計となっています。
また、Plasmaとの連携を通じてWeb2的な金融体験をWeb3環境に取り入れる取り組みが進んでおり、今後リリース予定のTerm V2では、ユニバーサルルーターとインテントベースモデルの導入によって操作性と効率性の向上が図られています。これらのアップデートにより、DeFiレンディングをより多様な層が利用しやすくなることが期待されています。
関連リンク
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