行動経済学から見る仮想通貨【第4回】- ブロックチェーンの価値をめぐるバブル –
Yuya
Crypto Times公式ライターのYuyaです。
「行動経済学から見る仮想通貨」シリーズ第三回では、ハイマン・ミンスキーが提唱したバブル理論を用いて仮想通貨バブルのメカニズムを解説しました。
今回は、仮想通貨から一歩外に出て、ブロックチェーンという技術全体から仮想通貨バブルを考察したいと思います。
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スペキュラティブ・バブル
Eden BlockのCEOであるNoam Levenson氏は、バブルを理解するカギは「推測(=スペキュレーション)」と「実用力」であると語ります。
この2つの言葉は、ある資産の真の価値をめぐる推測と、その資産の実用性のことを指します。
ブロックチェーンで例えてみましょう。
まず、この技術(ビットコイン)が話題になるにつれ、人々が(仮想通貨)市場に投資を始めます。これから大きくなる技術、つまり、現時点で過小評価されている資産にお金を入れるということです。
ここで難しいのが、どのポイントでブロックチェーンが正当な価値に到達するのか、つまり、ブロックチェーンというテクノロジー自体がいくらなのか、を判断することです。
この結果、利益への誘惑や情報の欠乏が重なり、人々はブロックチェーンはまだ正当な価格に達していないと推測し、価格が高騰します。
これがスペキュラティブ(推測・投機)バブルの始まりなのです。
過大評価されやすい資産
Levenson氏は、こういったスペキュラティブ・バブルの崩壊には資産の実用力が関係してくると主張します。
バブルの崩壊は、この推測上の真の価値(バブルピーク時の価格)に技術の実用性(実社会への応用に基づいた価格付け)が追いつかないことが判明した時に起こるというのです。
過去の金融危機から考察すると、バブルというのは
- 現時点で資産があまり実用・応用されていない。そして、
- 価値を付けにくい。特に、資産自体に利用価値がない。
資産に起こることが多いといえます。
90年代後半に起こったドットコム・バブルはインターネットの普及とその莫大なポテンシャルをめぐって起こったスペキュラティブ・バブルでした。
似たように、ブロックチェーンにも社会・金融・ビジネスの構造をガラリと変える可能性が備わっています。そして今、私たちはこの技術が少しずつ実用化されている段階にいることになります。
しかし、家、食べ物、石油などといったものと違い、ブロックチェーンという概念自体には直接的な利用価値はありません。
ブロックチェーンを利用したプロダクトが生まれて初めて、価値を計算することができるのです。
これが将来、実用化が進んだ段階でのブロックチェーンの価値を推測する上で問題となるのです。
その結果、推測された価値が、ブロックチェーンが実際に社会にもたらす価値よりも遥かに高くなる可能性があるわけです。
ブロックチェーンには、上記の項目以外にも特別に価値付けを難しくする要素があります。
Milano-Biococa大学のFerdinando Ametrano氏は
- ゲーム理論
- 暗号学
- コンピューターネットワークとデータ処理
- 経済・金融理論
といった理論・技術的な面、そして更に一番大きいのが、現在の社会・金融・ビジネスの価値観が変わることに対する抵抗が仮想通貨に対する理解を複雑化していると言います。
まとめ
ブロックチェーンが社会を激変させることはほぼ確実といってよいでしょう。しかし、この技術が完全に普及するまでにはまだ10~20年かかると言われています。
言い換えれば、今の市場では10~20年先の「ブロックチェーンの値段」を推測しているわけですから、とうてい正確なものとは言えないでしょう。
投機的な取引はこういった現象に生かされているとも言えるのかもしれませんね。
参考文献: