行動経済学から見る仮想通貨【第2回】- 仮想通貨ブームとバイアス

2018/03/20・

Yuya

行動経済学から見る仮想通貨【第2回】- 仮想通貨ブームとバイアス

CryptoTimes公式ライターのYuyaです。

「行動経済学から見る仮想通貨」シリーズ前回では、仮想通貨市場には「仮想通貨を次世代通貨として支持する人」、「一攫千金を狙う投機家」、「クリプトETFなどの金融商品開発を狙うファンド」など、様々な動機を持った参加者がいる、ということをお話しました。

行動経済学から見る仮想通貨【第1回】 -仮想通貨を買う人とその動機-

今シリーズ第二回では、人々が次々と市場に参入し、仮想通貨ブームが形成されるメカニズムを行動経済学の観点から解説したいと思います。

ハーディング効果

ハーディング効果とは?
みんながやっているから私もやった方がいいのかも」という心理のことをハーディング(=群集)効果といいます。

ニュースで仮想通貨の話題が取り上げられているのを見て、「ニュースになるくらい注目されているのだから私も今のうちに始めなきゃ」と市場に参入することなどがハーディング効果の例と言えるでしょう。

また、投機を見逃すことや損を出すことへの恐怖に負けトレンドに従うという考えは仮想通貨市場のボラティリティーをハーディング効果の観点から見たものと言えるでしょう。

ハーディング効果は物事の決断に際して理由付けを省略する方法であると言えます。しかしこれが裏目に出てしまうと、真っ当な根拠・調査も無しに投資・投機の決断をしてしまうことになります。これは、現在の仮想通貨市場、およびバブル等でよく見られます。


ビットコインのチャートは典型的なバブルのチャートに酷似している。

利益を見逃すことや損を出すことの恐怖から、ついトレンドをフォローしてしまうんですね!

可用性ヒューリスティクス


可用性ヒューリスティクスとは1974年にAmos TverskyとDaniel Kahnemanという二人の心理・行動経済学者によって定義された認知バイアスの一つで、現代の行動経済学の基盤的な考えとなっています。

可用性ヒューリスティクスとは?
「頭にすぐ浮かぶ」「印象に残っている」現象は起こる確率が高い、と誤認してしまうバイアスを可用性ヒューリスティクスと言います。

ブーム前に持っていた●●コインが膨らんで大金持ちになった」などというサクセスストーリーを皆さんもお聞きになったことがあるのではないでしょうか。このような印象に残る話は仮想通貨市場に参加するか、しないか迷っている人の背中を押してくれるヒューリスティクスなのです。

しかし、1600以上あるとも言われている仮想通貨の中で、実際に何百・何千倍にも膨らむコインは果たしていくつあるのでしょうか?また、世界中に数え切れないほどいる仮想通貨市場参加者の中で、本当に大金持ちになった人は一体どれくらいいるのでしょうか?

また、サイバー攻撃のニュースが出るたびに仮想通貨が批難されますね。これも印象に残る報道を見たため取引所がハッキングされる確率を実際より高く見積もっていると言えます。またこの場合、仮想通貨は実体のある通貨と違って物理的に盗まれることはない、という事実を無視しています。

仮想通貨市場のボラティリティーにはこういった印象に残る報道やイベントが大きく関係しているのです。

印象に残った情報だけを取り入れて、他の重要な情報を軽視してしまうということですね。

代表性ヒューリスティクス


TverskyとKahnemanは「代表性ヒューリスティクス」というもう一つの認知バイアスも定義しました。

代表性ヒューリスティクスとは?
ある事象“X”が”Y”に似ていれば似ているほど、”X”が”Y”の仲間であると信じやすくなる、というバイアスを代表性ヒューリスティクスと言います。

言い換えれば、「ステレオタイプ / レッテル」のようなです。

では、これが仮想通貨ブームとどう関係するのでしょうか?

仮想通貨は供給量に上限があることからしばしば金の代替商品と捉えられることがあります。これに伴い、「膨れ上がるコインを素早く見つけたものが大金を得る」という仮想通貨版・ゴールドラッシュが起きていると言われています。

しかし、仮想通貨と金が有限の供給量という特徴を共有することは確かに事実ですが、ここで本当にこの二つの商品が似たものだと言って良いのでしょうか

仮想通貨を類似する特徴から他の金融商品の一種または代替品と考えるのは代表性ヒューリスティクスの働きと言えます。

必ずしも悪い習慣という訳ではありませんが、この考えでは仮想通貨のテクノロジー、分権性、次世代通貨としてのポテンシャルといった他の商品にはない特徴を無視していることになります。

仮想通貨にしか見られない特徴がある訳ですから、この投機ブームもゴールドラッシュやドットコムバブル時とは違う、今までにないタイプのものである可能性があるということです。

このバイアスに頼りすぎると、「仮想通貨にしかない利点・リスク」を見逃してしまうということですね。

まとめ

行動経済学から見る仮想通貨シリーズ第二弾となる今回では、ハーディング効果、可用性ヒューリスティクスと代表性ヒューリスティクスが仮想通貨ブームを形成する理由について解説しました。

これらのバイアスは複雑な仮想通貨市場を他人の意見や似た経験を用いて簡易的に理解するツールとして役立つ一方、真っ当な根拠付けや統計的な事実を無視させる働きもあるということでした。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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