インタビュー
2021/07/23IOSTのヨーロッパ進出を手掛けるKuda Samkange氏にインタビュー!
IOST(アイオーエスティー)は、スケーラビリティとネットワークの非集権化に力を入れたブロックチェーンプラットフォームです。 CRYPTO TIMESでは度々IOSTを特集しています。前回は最高技術責任者(CTO)のTerrence Wang氏をインタビューしましたが、今回はIOSTのヨーロッパ進出を手掛けるKuda Samkange氏にお話を聞きました。 【仮想通貨】IOST(アイオーエスティー)の特徴・将来性を徹底解説! - CRYPTO TIMES Kuda Samkange氏にインタビュー! 今回インタビューしたのはIOSTのKuda Samkagne氏です。 2013年、南アフリカ共和国・ケープタウンの投資顧問会社に勤めている時にビットコインを知り、リサーチを重ねるうちに金融包括などの分野でのブロックチェーンのポテンシャルに興味を抱くようになったとのこと。 2017年には大手取引所Krakenに転職し、口座管理チームを一から創設。同取引所で全般的な業界知識を身に着けたのち、技術サイドにより惹かれるようになりIOSTに移ったといいます。 今回はそんなKudaさんに、IOSTのヨーロッパでの活動について詳しくお話を伺いました。 ブロックチェーン/分散型台帳技術の教育・研究 — ヨーロッパへの事業拡大で、今まで行ってきたことや、これからの計画について教えてください。 Kuda Samkagne氏: IOSTでは、ヨーロッパ市場で自分たちの存在感を出したい分野は何かとずっと考えてきました。 その結果、これから2, 3年というスパンで3つの分野を突き詰めていこうと決めました。 まずひとつめはブロックチェーン技術および分散型台帳技術(DLT)の教育・研究です。新しい技術はそれをきちんと学んだ人がある程度出てこないと普及しないと考えています。 なので、IOSTではこれまでスイス・チューリッヒ大学と提携してブロックチェーンサマースクールなどの学習機会をたくさん設けてきました。 [caption id="" align="aligncenter" width="700"] スイス・チューリッヒ大学でのブロックチェーン講義[/caption] そして今回、さらに権威のあるヨーロッパの大学一校とブロックチェーンやDLTの教育を広める戦略提携を結びました。 詳細は近日発表しますが、この提携では質の高い講義を提供し、IOSTからも資金をコミットして奨学金も付与する予定です。 また、今年末から来年を目標に、ある問題に対しIOSTを活用したソリューションを創り出すコンテストを大学間で開催する予定です。 この"Multi-university Challenge"ではもちろん賞金を出し、現実味のあるソリューションに関しては実際に開発を援助することも考えています。 DeFi / リキッドステーキング Samkagne氏: ふたつめのフォーカスは昨今話題のDeFi(分散型金融)です。IOSTでは特に「リキッドステーキング」と呼ばれる分野に目を付けています。 これは簡単に言うと、流動性をロックしてしまう従来のステーキングの代わりに、ロック額に応じて運用に使える派生資産を発行できる仕組みです。 ロックしているトークンをただステーキング報酬で増やすだけでなく、リキッドな(流動性のある)資産としてさらに動かせるというわけです。 これに関しても、共同開発のパートナーシップをすでに結んでおり、マーケットの様子などとタイミングを合わせて発表する予定です。 HODLする資産を預けるカストディ型のリキッドステーキングを開発しています。 このように人々に金融包括の恩恵をもたらす技術は個人的に重要視しています。アフリカの国々では多くの人々が金融へのアクセスがないという現実を見てきていますから、こういう話はすごくワクワクします。 あとDeFiの分野でいえば、私たちは分散型保険(decentralised insurance)にも興味があり、先ほどの高等教育機関との提携などを通して研究を進めていきたいと考えています。 トークンのリスティング Samkagne氏: そしてもうひとつ私たちが力を入れているのが、各取引所でのリスティングを進めていくことです。 直近では、オーストリア発の取引所「BitPanda」にIOSTがリスティングされました。この取引所はBitPanda Savingsなど暗号通貨関連の金融プロダクトを続々発表していて面白いです。 さらに、取引所口座と紐づけて暗号通貨を支払いに使えるVISAカードを提供しているCrypto.comでもリスティングが決まりました。 また、これはヨーロッパではないですが、インドの大手取引所「WazirX」にも上場しています。インドは優秀なエンジニアが多く、新しい技術をすすんで応用する傾向があるので、IOSTチームはインド進出にも力を入れています。 [caption id="" align="aligncenter" width="230"] IOSTをリストしている取引所[/caption] やはり、規制やデューデリジェンスの厳しい取引所でのリスティング作業はとても骨の折れるものです。しかし、こういう時こそKrakenで得た経験が活かし、取引所側の立場を考えてうまく立ち回るようにしています。 ノード・パートナー貢献報酬について — IOSTがこれまで提供してきたノード運営者およびパートナーへの貢献報酬について、なにかアップデートはありますか? Samkagne氏: はい。貢献報酬プログラムのこれまでのパフォーマンスを検証してみた結果、少し軌道修正が必要と判断しました。 もちろん基本的なシステムは変わりませんが、貢献報酬のハードルを上げ、よりクオリティの高い貢献をリワードするようにしていこうと考えています。 これまではコミュニティを大きくする貢献に重きが置かれていたのに対し、これからはDeFi、NFT、分散型保険、デベロッパー教育などといったテクノロジー方面にシフトしていきます。 コミュニティが大きく成長した今、やはりプロジェクトとしての次のステップは技術をより深めていくことだと思います。 まとめ [caption id="" align="aligncenter" width="640"] IOSTのNFTマーケットプレイス「Revival」[/caption] IOSTのヨーロッパ展開はブロックチェーン教育、DeFi開発、トークン上場の三点にフォーカスしているということで、それぞれの分野で今後IOSTがどれだけプレゼンスを出してくるのか注視したいところです。 人材や技術、情報が活発に行き来するヨーロッパでいち早く教育・研究機関と手を結んでいる点にはとても期待できます。 またDeFiの分野においても、IOST上のNFTプラットフォーム「Revival」がローンチされるなど、着々と開発が進んでいることがうかがえます。
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2021/07/08駅メモ!Our Rails (略称 : アワメモ!)NFTリリースと参入の経緯 株式会社モバイルファクトリー COO:深井 未来生
2021年7月6日に6年間運営している『ステーションメモリーズ!(略称:駅メモ!)』 をベースにNFT要素を加えた新たなゲーム『駅メモ! Our Rails(アワメモ!)』のステーションNFTをリリースした株式会社ビットファクトリー。マーケットプレイスのユニマを中心にNFT事業に参入しました。 今回のインタビューでは、株式会社モバイルファクトリー COO 深井 未来生さんにNFT販売の経緯や今後の展望などをインタビューしてきました。 現状、NFT市場が世界的に見ても非常に盛り上がっている中、モバイルファクトリー社がどのような形で『アワメモ!』のステーションNFTを提供していくのかを掘り下げたインタビューとなっています。 駅メモ!とアワメモ!の違い ※本インタビュー記事を読む前にこちらの内容を読んで理解した上でインタビューをお読みください。 『ステーションメモリーズ!(略称:駅メモ!)』は6年前にリリースされたスマホアプリの位置情報ゲームです。過去に100万DLも達成しています。そして、今回紹介する『駅メモ! Our Rails(略称:アワメモ!)』は『駅メモ!』にNFT要素が追加されたゲームとなっています。 『アワメモ!』は、Webブラウザで遊ぶことができるゲームとして、ステーションNFTリリース前からサービス開始されています。今回『ステーションNFT』が販売されることになり、『アワメモ!』の機能の中に、NFT機能が実装されます。 ※ステーションNFT:駅や鉄道を未来に残すため、思い出を残してくれる人々を駅に集めるフェアマスターに関する情報や、駅に人々がアクセスした情報などゲーム上のユニークなデジタルデータとブロックチェーン上のトークンを紐付けたNFTです。 ブロックチェーン技術により、保有しているとその駅の世界で唯一無二の『ステーションオーナー』であることが証明されます。 駅メモ!とアワメモ!の違い 株式会社モバイルファクトリー COO:深井 未来生インタビュー アワメモ!とはどんなゲームか -- アワメモ!(駅メモ!)はどんなゲームなのでしょうか? 深井 未来生:GPS機能を使った全国に所在する鉄道駅のスタンプラリー・陣取りゲームです。現実に存在している駅の近くに行くことで、スタンプラリーが押せるというゲームになっています。 現在地から最も近い駅に足跡を残すことができて、訪れた駅を記録として残していくことが可能になっています。駅を収集することで、今までどこに行ったことがあるのか?とユーザーは思い出を振り返ることもできます。 アワメモ!には多彩なキャラクターが存在して、『でんこ』と呼ばれるゲーム内キャラクターと一緒に駅集めをすることができます。このキャラクターたちもゲーム内では重要な存在です。 駅メモ!の実績ですが、鉄道や旅行などが好きな方に使って頂けることで、観光地の誘客・集客に繋がっていきました。コロナが流行る前の話にはなりますが、駅メモ!のユーザーは、ロイヤリティが高く鉄道会社とコラボイベントを行うと数千人単位でユーザーが移動してくれていました。 2019年には地域振興の経済効果が約15億円ほど生まれ、2020年からコロナの影響で苦戦はしているものの、想定よりユーザー数は減らず、根強いファンに支えて頂いています。 -ありがとうございます。駅メモ!と今回NFTが実装されるアワメモ!は違うプロダクトでしょうか? 深井 未来生:駅メモ!はアプリ版のゲームとなっていて、6年間運営実績があります。駅メモ!にNFTの要素を加えたのがアワメモ!になります。こちらは、Web版でプレイするゲームとなっています。 基本的なゲーム性の部分は駅メモ!と同じで、既にアワメモ!としてWeb版でリリースされています。(※本インタビュー時にはNFT要素は未実装) アワメモ!のHPにあるQRコードをスマホで読み込んでもらうことで、無料でアワメモ!のプレイができるようになります。 スマートフォンからHPを見た場合は、ゲーム開始ボタンからすぐに開始できます。 駅メモ !Our Rails(略称:アワメモ!) HP -先程も話しに出てきたゲームキャラクターであるでんこというキャラクターですが、これらのキャラはゲームに影響するのでしょうか? [caption id="attachment_64145" align="alignnone" width="800"] 駅メモ!のキャラクター『でんこ』[/caption] 深井 未来生:駅にチェックインすると、ユーザーは駅を保持した状態になります。この時にどのキャラを使ってチェックインするかによって、あとから来たユーザーとバトルになるので、パラメーターが影響してきます。 これが冒頭でもお話した陣取りゲーム要素になります。長く保持をすれば、キャラの経験値が多くなります。 -ユーザーが移動をしたくなる理由というのがあると思うのですが、何をモチベーションにユーザーは移動したくなるかを教えて下さい。 深井 未来生:駅を回るとアイテムや着せ替えなどがゲットできます。鉄道会社さんや自治体さんと一緒にイベントをやるときは、リアルグッズの提供などを行なっています。 これらによって、鉄道ファンやゲームプレイをして、キャラを好きになった方々が移動をして楽しんでもらえています。 -イベント要素やアイテムなどが手に入ることが移動モチベーションに繋がってるんですね。例えばですが、過去の自治体、鉄道会社とのコラボはどんなものがあったか教えていただけますか? 深井 未来生:アプリ版の駅メモ!の実績になりますが、2020年には、『JR西日本和歌山支社』『伊豆急/下田市/河津町』などとコラボをしています。過去6年間で20件以上のコラボをさせていただいております。 アプリ版とWeb版でゲームを分けた理由 -駅メモ!とNFTを組み合わせようと思った経緯を教えてください。 深井 未来生:NFTの盛り上がりを見ていく中で、面白いものだということに弊社も気づきました。 このNFTをどうやって活用していくのか?と考えたときに我々は位置情報ゲームの運営実績があります。NFTを利用することで、ゼロから新たなゲームを制作していくより、既存のゲームの一部の要素をNFT化して新しい体験を用意することができれば、既存の駅メモ!のユーザーにも新しい体験になりますし、かつリスクもそこまで大きくないものとして考えました。 そこで駅メモ!をアワメモ!というWeb版としてリリースして、今までの駅メモ!ユーザーや新規ユーザーたちにNFT要素が加わった新しい体験をして頂きたいと考えています。 -因みにですが、駅メモ!はアプリ版、アワメモ!はWeb版となっており、ゲームが別れていますが、これらは全く違う世界になっているのですか? 深井 未来生:はい、アプリ版(駅メモ!)とWeb版(アワメモ!)は違う世界になっています。 AppleさんとGoogleさんの規約でブロックチェーンやNFT、トークンなどのゲーム内使用に明確なOKが出ていないため、今回アプリ版とは別にNFTに対応したアワメモ!というものをWeb版でリリースする運びとなりました。 -気になるところとして、アプリ版のデータというのはWeb版に持っていけたりとかはできるのでしょうか? 深井 未来生:アプリ版のデータ移行というのは、ユーザーからの要望はかなり多いのですが、現状できません。 ですが、アプリ版の駅メモ!は6年間の運営実績があることで、昔からプレイしている人たちが強すぎる問題が正直あります。NFT要素が追加された、Web版のアワメモ!を提供することで、新しいユーザーに対してのアプローチや新規開拓ができるのではないかと考えています。 - ありがとうございます。アプリ版のユーザーにも遊んでもらうために、アワメモ!のエアドロップ等は考えていたりしますか? 深井 未来生:この辺りは前向きに検討はしていますが、今のところ予定はございません。 NFT機能追加での変化 -事前資料をいただいた中で、気になった点をいくつかお聞きさせてください。NFT保持者になるステーションオーナーのインセンティブはどんなことがあるのでしょうか? 深井 未来生:今回、アワメモ!に追加されるNFTである『ステーションNFT』は1駅あたり発行枚数1枚になっております。 このNFTを保有することで、ステーションオーナーになることができ、オーナーは他のユーザーにフェアマスターになり『フェア』を開催してもらうことで、フェアマスターの利用料をインセンティブとして受け取ることができます。 https://www.youtube.com/watch?v=qHgHx7K3uMU フェアを開催するユーザーをフェアマスターと呼び、駅のフェアマスターが多ければ多いほど、利用料が多く得られる仕組みとなっています。 ※現在フェアマスターが1駅で利用できる枠数は最大60枠 -フェアマスターになって、利用料を払ってまでフェアを開催するというのがイメージできないのですがフェアマスターは何で、フェアを開催するのでしょうか? 深井 未来生:我々が想定してるフェアマスターは、アワメモ!のヘビーユーザーでゲーム内課金をしているユーザーです。その人たちがフェアマスターになって駅に人を集めることで、有料アイテムや特別なアイテムがもらえるようになります。 例えば、500円の利用料をステーションオーナー(NFT保有者)に支払ってフェアを開催し、プレイヤーを集めることで500円以上の価値のアイテムが獲得できるチャンスがあります。ここがフェアを開催する1番のメリットとなります。 またフェアを開催して、実際にユーザーを駅に集めることで、地域活性化にも繋がる可能性があります。これによってゲーム運営の一部を担っているような体験をして頂きたいと思っています。 -例えば、軽井沢でペンション経営してる人が軽井沢に人来て欲しいなって思った時にフェア開催して、ゲームも楽しみつつ地域活性化に繋げることもできますか? 深井 未来生:おっしゃる通り可能性はあります。今後、ゲームの一部が民主化するような将来像を考えています。 アワメモ!を楽しむことで、将来的にゲーム運営に関わりインセンティブも受けられるということも考えています。こういったことも想定した上でNFT実装とともにフェアという機能を実装しました。 -ステーションオーナー(NFT保有者)がフェア開催を促進できるような機能だったり、ステーションNFTの二次流通などはありますか? 深井 未来生:今の時点では促進機能はありませんが、実装を検討しています。また、現状ステーションNFTの購入はユニマ(マーケットプレイス)のみで一次流通市場のみでしか手に入れることができませんが、今後は、Openseaなどのマーケットプレイスでの二次流通でも購入ができるようになります。 -ステーションNFTはどんな方に興味を持ってもらいたいですか? 深井 未来生:既存の駅メモ!のユーザーさんやアワメモ!のユーザーさんに興味を持って頂きたいのですが、トークンやNFTに対して理解が少ないのが現状です。 既存のユーザーさんには、徐々に理解を深めていって頂きつつ、NFTを既に所持している方や暗号通貨業界に知見のある方々にも興味を示して頂きたいと思っています。 今後の展望 [caption id="attachment_64180" align="alignnone" width="800"] 株式会社モバイルファクトリー 取締役 : 深井 未来生氏[/caption] -今、モバイルファクトリー社ではNFT以外のトークンエコノミーの構想はありますか? 深井 未来生:ユニマ(マーケットプレイス)で自社トークン発行を中長期で検討しています。 この辺りは法律などの関係性もありますので、様々な問題を解決する必要があります。環境が整った暁には、ユニマ自身の経済圏を考えています。そのユースケースのひとつとして、アワメモ!にも使えるトークン設計を検討していきたいです。 -今後、NFTを利用してどのように発展させていきたいですか? 深井 未来生:NFTブームで3月よりは価格が落ち着きを見せていますが、NFTには未来があると思っています。思っているだけではなく、しっかりと既存のサービスに組み込んで需要がある、楽しめるというのを証明しなければいけないです。 ユニマでは、アワメモ!以外にもアートのNFTや電子書籍のNFTなどのプロジェクトが動いています。いずれにせよ、既存の業界の中にNFTをプラスすると「こんな面白いことができるよ」というユースケースを提示していきたいところです。 アワメモ!もそうですが、ユニマ(マーケットプレイス)を中心にNFTで「こんな遊び方できるなら面白い」と思っていただけるようにしていきたいと考えております。 -本日はご対応いただきましてありがとうございました。アワメモ!や今後のNFT関連のプロダクトの発表にも期待しております。 ステーションNFTのオークション参加方法 ステーションNFTのオークション参加にはユニマのアカウント登録が必要になります。大まかなステップは3つです。 Googleアカウントと連携してユニマの新規会員登録 「ユニマ」サイト内の「駅メモ! Our Rails」プロジェクトをクリック オークションへ参加 ステーションNFTのオークションが開催されたら、ユニマへアクセスしてほしい駅があるか確認をしてください。 また、ユニマの会員登録方法などより詳細な記事はこちらをご確認ください。 ユニマ マーケットプレイス アワメモ以外のNFT アワメモ以外にも今後NFTのリリースを予定しています。 『でんこ』NFTトレーディングカード 杉田陽平氏 デジタルアート 山口周氏 電子書籍 また日本の第一線で活躍しているNFTアーティストたちの参加予定もありますので、様々なNFTたちが今後リリースされる予定です。 今後リリース予定のNFT 最後に 本インタビュー実施時には、まだ未発表でしたが7月6日に株式会社モバイルファクトリーはNFTマーケットプレイス「ユニマ」の提供に加え、女優・創作あーちすとの、のんさんと「ユニマ」のコラボ企画を発表しています。 今後、のんさん制作のNFT作品も「ユニマ」を利用して購入できるようになり、のんさんがNFT作品の販売によって得た利益は全額、岩手県や東北地方への寄付を予定しているとしています。 また、7月6日から「駅メモ! Our Rails」ステーションNFTで、永田町駅と豊島園駅の2つが、オークション形式で販売されており、期間は7月12日15時までとなっています。 今回は駅メモ!やアワメモ!のみのインタビューとなりましたが、今後もNFTの分野で多くリリースを行っていくモバイルファクトリーの動向は非常に注目していきたいところです。 インタビュー : 清水 , 記事編集 : 新井
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2021/06/21「nanakusaを通じてNFTを所有する価値理解や意識を伝えて、大きなエコシステム形成へ」株式会社スマートアプリ CEO : 高長徳
2021年に入り、世界中で注目の集まるNFT。国内、国外でも多くの有名アーティストがNFTを発行してきました。 そんな中、4月26日に正式リリースした国内NFTマーケットプレイス『nanakusa』は、多くの認定アーティストと提携し、アート、写真、動画のNFTを販売しています。 アートNFTだけではなく、ゲームNFTなども幅広く扱っている国内で勢いのあるNFTマーケットプレイスです。またEthereum Networkだけではなく、Polygon Networkに対応しており、問題視されている環境問題改善も務めています。 CRYPTO TIMESでは、スマートアプリ社のCEOである高長徳さんに『nanakusa』に関しての、リリース後から現在まで、競合プロダクトと比較した際の優位性、NFT業界への意気込みなどを聞いたインタビューをしました。 以下、インタビューの内容となります。 NFTマーケットプレイス『nanakusa』とは -nanakusaの正式リリースおめでとうございます。nanakusaの特徴について教えてください。 高長徳:nanakusaはクリプトアーティストに向けたNFTマーケットプレイスで、登録制を採用している点が特徴です。 デザイナー / イラストレーター / 作家 / 音楽アーティスト / 声優など、さまざまな分野におけるアーティストが参加できる NFT マーケットプレイスとなっています。 公認アーティストになるためには審査が必要で、結果として優秀なアーティストを抱えクオリティの高い作品を販売する NFT プラッ トフォームを実現することができると考えています。 初回時は380人の公認アーティスト審査への応募があった中、約80名が正式に公認アーティストとして認定されました。 -初回時は、狭き門を越えたアーティストが公認されたということですね。アーティストになるためには選考を突破する必要があるようですが、どのような観点で審査を行ったのでしょうか? 高長徳:まずはコンプライアンスです。ポートフォリオで著作権や版権を侵害した活動を行なっているアーティストは採用することができません。またアートやアートとする対象がモラル的に問題がないものである必要があります。 クオリティの面も勿論重要で、実際にクリプトアーティストとして活動している方々に審査を依頼しました。その中で、クリプトアートとの相性をチェックしてもらいました。 審査員の中にはSuper Rareという海外のハイレベルなNFTマーケットにも公認され、数百点の販売実績のあるアーティストも含まれています。 -- そして、第2期の公認アーティスト募集もスタートしていましたが、こちらは順調に集まりましたか?初回と比べたときと比較して、どのような反応があったか教えて下さい https://twitter.com/nanakusa_io/status/1397757409464971271 初回募集時の数と比較すると今回の応募数は半分以下になりました。ただ、応募者のポートフォリオのクオリティは全体的にレベルが高いという印象を感じています。 前回の募集では、とりあえず応募してみようかという方が多かった印象ですが、今回はしっかりとNFTを意識した作品をポートフォリオとしてあげてくる方が多いです。 リリース後のnanakusaでリストされている作品を見て、しっかりアジャストされたと思っています。そのため、初回公募時と比べて合格率がかなり高くなっています。 nanakusaでのNFT発行に関して -公認アーティストがnanakusaでNFTを発行する際の方法や、nanakusa上で発行するメリットを教えてください。 高長徳:NFTを発行する際はEthereumまたはPolygonのネットワークから選択することが可能です。発行を行う際は、nanakusaのコントラクトアドレスだけでなくアーティスト自身のコントラクトアドレスを使用することも可能です。 nanakusaでNFTを発行する際に、そのNFTの閲覧権を所有者のみに限定できる機能があります。 この機能を使うことで、例えば漫画や雑誌などの電子書籍をNFT化して、所有者のみに限定することで、読み終えた作品を二次流通へ流すというようなこともできます。 また、アーティスト同士のコラボレーションを促進するためにクリエイター手数料のスプリット機能を導入しています。公認アーティストが発行したNFTに関して、コラボ相手などのウォレットを登録しておくと自動的に手数料が分割されて送られます。 そして、nanakusaでは、著作権や二次利用に関する規約なども、様々な形の規約文言をテンプレート化しています。 その規約文言をNFTの説明に売買規約として、しっかりと記述することを推進しています。ポリシーをテンプレートとして、公開することでアーティストが使いやすいプラットフォームになるよう心がけています。 -- 因みに公認アーティスト同士のコラボとして、POiNT×とぅんぬがコラボしてnanakusa上でNFTのリリースをしていましたたが、今後は公認アーティスト同士のコラボなどはありますか?nanakusaの公認アーティストになるとこのようなコラボ相手も繋げてくれたりとかもしますか? https://twitter.com/point_party_/status/1402203826061459462 公認アーティストに対してですが、コラボは基本的に一任しています。なので、コラボも公認アーティスト同士じゃなくても問題ないと思っています。 我々が、アーティスト同士のコラボマッチングをすることは考えていませんが、公認アーティストとコンテンツホルダーなど様々な企業とのコラボは企画しています。 これも今後動きが出てくると思うので、楽しみにしていてください。 現在までのnanakusa -- ここからは最近多くでているニュース関していくつか質問をさせてください。直近のニュースで特に気になった点でいうと、OEM事業の第一弾としてサミーとの提携が発表されましたが、これはどのような経緯で提携が進んだのでしょうか https://twitter.com/nilforce/status/1402171982179823622 OEMの構想自体はずっと前からありました。今回のOEMの件に関して、プレスリリースを5月末に発表しました。本発表を見たサミー社が興味を持っていただき、そこから約1ヶ月ほどで提携リリースの発表まで至りました。 -- サミー社との取り組みでいうとどういう形の取り組みになりそうですか? サミー社が持つIPのツインエンジェルシリーズを利用していきます。他にも様々な版権を利用して、サミー社が持つコンテンツを画像や音声などの色々なコンテンツを利用したNFTを作って、販売していく予定です。 -- 楽しみですね。サミー社以降でもOEMは決まっているのでしょうか。 まだ、言えないところが多いのですが、今後もOEMのニュースは多くでてくると思います。デジタルコンテンツ系、アート系、リアル系など色々出る予定なので楽しみにしていてください。 -- 続いて、マイサガの原画オークション実施に関してですが、こちらの手応えはいかがでしたか? 今回のマイサガのオークションは、Ethereumベースでオークションを実施しました。国内マーケットプレイス出初のオークションシステムかどうだったので、大きな事故もなく安定稼働した点はヒットしています。 ここでコケたら、やっぱりマーケットプレイスは海外だな、みたいな雰囲気になりそうだったので正直ドキドキしていました。(笑) -- 逆に課題点などはありましたか? https://twitter.com/mycryptosaga/status/1401511539539021825 今回のオークションの課題点としては、自動延長の仕組みが無かったんです。やはり自動延長は盛り上げる仕組みとしても必須機能であったなと痛感しています。 こちらは今月中に追加実装でリリースする予定です。また、UI部分での課題も見つかったので、合わせて改善を続けていきたいと思っています。 競合プロダクトとの比較と優位性 -Opneseaなど世界規模で話題になっているNFTマーケットプレイスやNFT関連プロダクトがありますし、最近では多くの新規NFTマーケットプレイスもローンチしていますが、nanakusaの戦略や差別化はどのように行っていますか? 高長徳:日本のコンテンツを世界に発信するために、引き続き優秀なクリエイターをたくさん抱え、ゆくゆくは世界一のクリエイターチームとしてブランディングしていけたらと考えております。 それができるのは、現状nanakusaだけだと思いますし、そこに自身もやらないとという責任を感じています。そして、世界に向けては、いわゆる日本の「和」なテイストをしっかりアピールして戦っていけたらと考えています。 -現在は、EthereumとMatic上のみのNFTマーケットプレイスですが、今後他のチェーン(Binance Smart Chainなど)にも対応する予定はありますか? 高長徳:これから、世界的にも普及しそうなチェーンについては注目しています。対応を行う意思決定を行った際は速やかに実行できるように準備も整っています。 今、注目しているのはやはりFlowですかね。他にも様々なレイヤー2ソリューションが出てきており、常に注視しております。 -ブロックチェーンに関する経験や知識がまだ浅い潜在的な日本のユーザーに対して、対応チェーンを増やす以外にもマーケット拡大のための施策は用意しているのでしょうか? 高長徳:マーケットプレイスを利用するための導線を分かりやすくすることで参入障壁を減らす必要性を感じています。例えば、クレジットカード決済は必須だと思っています。なので、nanakusaでもまもなく、クレカ決済に対応する予定ですのでご期待ください。 また、アートに対する認識や価値観が違う一般層のユーザーについては、アート以外の分野のNFTを提供することを検討しています。既存で価値を持っているものをNFT化することで新たなユーザーを取り込むことができると考えています。 [caption id="attachment_63648" align="aligncenter" width="800"] スマートアプリ CEO : 高さん[/caption] -これは個人的に気になる点としてなのですが、将来的にnanakusaにも独自トークンを組み込んで、エコシステムを創造していく!なんて予定もあったりしますか? 高長徳:もちろん独自トークン発行にはチャレンジしていきたいです。しかし、市場の動向や法的整備なども含め、引き続き検討していくことになりそうです。 -様々な分野での応用が盛り上がりを見せているNFTですが、ビジュアルアート以外のNFTの取り組みはどのように考えていますか? 高長徳:アートや動画など、いわゆるデジタルコンテンツ以外に関してもたくさん企画しています。NFTの本質は「権利」、「所有」、「譲渡」なので、それを活用した様々なサービスは今後出てくると思います。弊社でも早ければ夏頃には、アートなどのデジタルコンテンツ以外の新たなNFTサービスを発表できる見込みです。 -今後の中長期的な戦略やマイルストーンを総合的に教えてください。 高長徳:引き続き、国内外の優秀なアーティストを沢山募集していきます。そして今後は、企業とアーティストの様々なコラボなども手掛けていきます。OEM事業に関しても、コンサルティング事業と合わせて推進していくことで、コンテンツホルダーの方々もNFT市場に入りやすい環境を作っていければと考えております。 今後のNFT業界の考察と意気込み -NFTがニュースなどでも大きく取り上げられていますが、今後のNFT業界の発展や状況についてどのように考えていますか? 高長徳:NFT市場は国内でもその認知度が急激に上がり、様々なサービスが生まれてくると思います。また、マーケットプレイスも国内大手IT企業がこぞって参入してきています。 それぞれが特徴のあるサービスになりますが、国内市場での取り合いのような状況が発生するのはまずいなと考えています。弊社もそうですが、今後はより海外ファーストを意識することが大事だと考えております。 -今後、NFT業界で活動を行うにあたって、意気込みなどを聞かせてください。 高長徳:NFTは新しく出てきた分野で、まだ流動的な市場です。しかし、クリエイターやアーティストはNFTを期待の市場だと考えています。こういった気持ちに応えるためにも、事業者やプラットフォーマーとして支えていきたいと思います。 また、市場そのものに関しても、NFTを所有する価値とはどう言うものかといった理解や意識を伝えていくこともプラットフォーマーの役割だと思います。こういった活動を通して、大きなエコシステムを形成していきたいと思います。 インタビュー , 記事編集 : 新井 nanakusa各種情報 web site: https://nanakusa.io/ Twitter : https://twitter.com/nanakusa_io
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2021/05/28“Vegaはトレーダーには新たな機会を、金融機関にはリスクをもたらす” – Vega Protocol CEO Burney インタビュー
Vega Protocolは分散型デリバティブのプロダクトを提供するプロジェクトです。 現在、dydxやHegicなどの多くのデリバティブプロダクトが市場には存在していますが、Vega ProtocolではProof of Stakeを採用しているTendermint上のブロックチェーンプロトコルとして提供されています。 Tendermintで作られたVega Protocolは、Ethereumとは違い、高額な手数料の問題を解決し、1秒未満のブロックタイムで応答性の高い取引体験を提供することが可能です。 また、APIなどの機能も兼ね揃えており、プロ向きのデリバティブ市場を開設することを目指したオープンソースでパーミッションレスなプロジェクトになります。 昨今、非常に話題となっているCoinlistの取引所でのICOを6月2日に実施することも決まっており、こちらのICOに参加するためには5月29日 9:00までの登録が必要になります。 今回のインタビューではVega Protocolがどのようなプロジェクトか?既存の分散型デリバティブの問題点、そして将来のDeFiに関してまで多くを語っていただいていますので是非ともお読みください。 Vega Protocol Burney へのインタビュー Vega Protocolの仕組みとは -- 今回はありがとうございます。最初に自己紹介をお願いいたします。 Barney : 私はBarney Mannerings(バーニー・マナリングス)です。コンピュータサイエンティストで、キャリアの最初の10年以上を、大手取引所、世界的な投資銀行、一流のコンサルタント会社のために、トレーディングシステムや関連技術製品の設計・構築に費やしてきました。 2010年代初頭に、ビットコイン、イーサリアム、その他の分散型テクノロジーのプロジェクトに出会いました。2017年末から2018年初めにかけて、Ramseyと共にVegaを設立しました。 これは、Proof of stake技術の研究が進み、分散型取引ネットワークが中央集権的な商品や市場に代わって、「現実世界」の取引やデリバティブのユースケースのかなりの割合を占めることが可能になると確信したからです。 -- 分散型デリバティブが多くなってきた中、そんな前からプロジェクトを立ち上げていたのですね。Vega Protocolに関しても紹介してもらえますか? Barney : Vegaは、web3におけるデリバティブレイヤーです。 取引に最適化されたカスタムブロックチェーンを使用し、完全に分散化されたネットワーク上で、高速かつ低手数料でデリバティブ取引を行うことができます。VegaはEthereumや他のチェーンと一緒に動作するdexとして機能し、ユーザーやトークン保有者のコミュニティによって、自由参加できるよう(パーミッションレス)に提案・作成された市場で取引することができる資産(EC20トークンなど)を提供します。 Vegaは、第一世代のDeFiプロトコルと比較して多くの問題を解決しており、商業ヘッジなどの「現実世界」の金融やデリバティブのアプリケーションでの使用に適しています。 次世代DeFiとしての強み -- ありがとうございます。さきほど、DeFi第1世代と話題に上がりましたが、分散型デリバティブ領域の競合であるPerptual、Hegic、Leverなどがプロジェクトで存在しています、これらと比較した場合のVega Protocolの強みは何でしょうか? Barney : Vegaのブロックチェーンは、既存のDeFiプロトコルのいくつかの重要な問題を解決する、最適化されたデリバティブとトレーディングのレイヤーを提供しています。 VegaのWendy Fairnessプロトコルは、MEV/フロントランニングの問題を解決します。 洗練された証拠金とリスクのアルゴリズムにより、他のDeFiプロトコルよりもはるかに高い資本効率で安全な取引が可能になります(例えば、市場やリスクモデルに応じて最大50倍や100倍のレバレッジをかけることができますが、他のほとんどのDeFiデリバティブでは通常過剰担保となるため1倍以下です) 高性能のProof of Stake Networkは、高額な手数料の問題を解決し、1秒未満のブロックタイムで応答性の高い取引体験を提供します。 -- これはEthereumのネットワークに依存していないからできることかもしれませんね。そんな中で今も話に上がったProof of Stakeのコンセンサスが使われているTendermint上のプロトコルのようですが、TendermintでPoSのブロックチェーンを作ると、取引を迅速に行うことができるのでしょうか。現状のEtherネットワークの課題は、ガス代の高さやトランザクションが実行されるまでに時間がかかりますが、これらは解決されますか? Barney : これらの問題はVegaによって解決されます。Vegaはブロックタイムが~1秒で、1秒間に数千件の取引をサポートし、代替手段よりも低い手数料で利用できます。ガスは発生せず、注文がマッチしたときの取引手数料のみが発生します。つまり、注文を出すためのコストは一切かかりません。Vegaは、Vegaプロトコルを共有する複数のネットワークを構築し、それぞれがサブセットの市場に対応することで、無限に近い水平方向のスケーラビリティ(別名「シャーデッド」と呼ばれる)を実現することができます。 -- WhitePaperの中にはEthereumとの統合について言及されていましたが、今後はPolkadotやAvalancheなどの他のブロックチェーンとの統合は計画しているのでしょうか? Barney : Vegaは他のチェーンとのブリッジも計画しています。現在、いくつかのチームと協力してこの計画を進めており、年末頃にはEthereum以外の最初のブリッジを稼働させる予定です。近日中にいくつかの発表を行いたいと考えています。 -- ありがとうございます。楽しみです。ただ、デリバティブ取引には最低限の流動性やユーザー数が必要になると思いますが、Vega Protocolではこれらをどのように集めますか?たとえば、流動性マイニングなどでしょうか Barney : Vegaには洗練された流動性プロトコルがあります。「流動性マイニング」によって流動性提供のインセンティブが与えられているのはポイントです。流動性提供者は、手数料収入やVEGAトークンなどのインセンティブを獲得することができます。プロトコルでは、市場のイノベーションを促すために、市場を作ったり(※)、流動性の提供を早めに行ったLPに、後から参加したLPよりも多くの報酬を与えます。また、LPは手数料を設定するための入札を行います。 ※金融商品の作成 - 誰でもVega上で任意の原資産の市場を提案することが可能。市場を作るのはとても簡単で、その後、コミュニティがそれを受け入れるか否かの投票期間に入る。 -- Vegaトークンの話題が出てきましたが、ユースケースは何でしょうか Barney : Vegaトークンの使いみちは以下のとおりです。 Proof of StakeネットワークでのStakingとDelegate 市場の提案・作成、提案された市場への投票権 市場、手数料、オンチェーントレジャリーからの資金の分配などを管理するネットワーク上の多くのパラメータを設定するために使用されるオンチェーンガバナンスです。 今後のDeFiと従来のデリバティブとの棲み分け -- さて、また話題を少々変えます。日本のgumi cryptosなどのVCからも資金調達を行っていますが、現在日本に対してどのような印象がありますか? Barney : 日本は常に暗号通貨における強力な中心地であり、ユーザーと企業の大きな基盤を持っています。私たちは、日本を訪れると、多くの刺激的なイノベーションや価値創造を発見することができます。そして、何よりプロジェクト、コミュニティ、イベントなど、日本には多くのものがあると感じています。 -- デリバティブのユーザーが多い日本では、おそらく分散型デリバティブを使うユーザーも益々増えると感じています。その中で、最近、BTCやETHのクラッシュが有りました。こうした場合、BitMEXやBinanceのようなCEXでもシステムに負荷がかかるなどしてユーザーは身動きが取れなくなることがあります。Vegaでは精算エンジンなどきちんと動くのでしょうか。また保険基金プールなどが枯渇した場合などはどうなりますか。 Barney : Vegaのトレーディングエンジンは、独自に開発したTendermint搭載のブロックチェーン上で動作します。ブロックが一杯になった場合、一部の取引がドロップされることがありますが(すぐに再試行できます)、システムはブロックを処理し続け、正常に機能します。迅速に実行できないトランザクションをドロップすることは、一般的にペースの速い取引において、注文を不確定な時間の間mempoolに置いておく(つまり、列に並んで待っている)よりも好ましいことです。 保険基金プールは市場ごとに分離されており、時間の経過とともにいっぱいになるように設計されています。大きな価格変動があっても、ポジションが決済されると平均して保険プールに入金される仕組みになっているため、ほとんどの場合、時間の経過とともに枯渇することはないと考えられます。 しかし、設定が不十分な市場、新しい市場、非常に異常な値動きをする市場などでは、保険プールの担保が不足する可能性があります。このような場合には、参加者間で損失を共有するロス・ソーシャル化のメカニズムがあります。閉鎖された市場の保険金が再分配されることで、Vegaにロックされている保険金の総額は時間の経過とともに増加し、システム全体の安全性が高まることが期待されています。 -- ありがとうございます。そんな中で、最初に最デリバティブ取引所に対応する通貨は何でしょうか。 Barney : VegaはEthereumとDAIのようなERC20トークンを最初にサポートする予定でいます。 -- さて、ここからは少しプロダクト以外の質問になります。今のところ、DeFiは発展途上の段階にあると思います。今後、この業界はどのように発展していくと考えますか? Barney : DeFiは、特に商品やリスクを定量的に理解することで、より理解されるようになるでしょう。また、技術的にも成熟し、ウォレットや暗号化された銀行口座など、より隣接した製品やサービスとの統合が始まると考えています。これで、企業や個人の「実世界」でのユースケースにDeFiプロトコルを採用するための基盤が整っていくんじゃないかなと思っています。 -- まだ整備しなければならない部分も多いと思います。最後にですが、Vegaのような分散化デリバティブプロダクトが出てくることで、 従来のデリバティブ取引市場とのすみ分けはどうなるのと思いますか。 Barney : Vegaはトレーダーには新たな機会を、金融機関にはリスクをもたらします。Vegaのようなプロトコルは、効率的な市場と堅牢なオンチェーンの取引執行、リスク管理、コンプライアンスツールを用いて、ほぼグローバルに流動性をプールすることで、パワーの所在をユーザーの手に移すことになります。つまり、中央集権的な市場がオンチェーンに移行し、さらに多くの市場が生まれ、市場のロングテールが肥大化することになります。業界は、すべての取引が一握りの企業を経由して行われる「ハブ&スポーク」モデルから移行していくでしょう。 -- 色々とこの度はありがとうございました。CoinListでのToken Saleも発表されて今後の動きも非常に楽しみにしています。 各種Link ウェブサイト:https://vega.xyz/ 日本語Twitter:https://twitter.com/VegaProtocol_Jp 日本語Telegram:https://t.me/vegajp
インタビュー
2021/02/26「世界のトッププレイヤーを巻き込み、日本発のブロックチェーンを世界のブロックチェーンに」Plasm Network CEO : 渡辺創太インタビュー
2月9日にPlasmNetworkは大手暗号資産取引所Binanceをリード投資家とする資金調達を実施しました。 今回のインタビューでは日本発のパブリックブロックチェーンであるPlasm Network(プラズムネットワーク)のCEOである渡辺創太さんへのインタビューに関して書いてあります。以下、インタビューの内容となります。 https://twitter.com/WatanabeSota/status/1358933051279986690?s=20 Plasm Networkとは Plasm Networkはパブリックブロックチェーンの直面している大きな課題である相互運用性(インターオペラビリティ)とスケーラビリティ(処理性能)の解決を目指すSubstrateベースで開発された日本発のパブリックブロックチェーンです。 Plasm Networkは、Ethereum Virtual MachineをサポートしておりEthereum上にデプロイされたスマートコントラクトをPlasm Network上で使用することも可能です。 PolkadotエコシステムにおいてPlasm Networkおよびコア開発会社であるStake TechnologiesはPolkadotのテストネットに世界初となる接続に成功、Polkadotを開発するWeb3財団より世界最多の助成金を獲得、Polkadotのテストネットに世界初のスマートコントラクトをデプロイ、UC Berkeleyのアクセラレーションプログラムを卒業するなど確かな成果を上げています。 過去にはPolkadotエコシステム内で最多となる全6回の助成金をPolkadotの開発主体から獲得、トークン配布では約65億円相当のETHがスマートコントラクトにロックされるなどの実績を持っています。 Plasm Network CEO 渡辺創太氏インタビュー --今日はよろしくお願いいたします。昨日Binanceがリード投資をPlasmに対して実施したという発表が出ましたが、こちらの反響は大きかったですか? 渡辺創太:久しぶりのインタビューありがとうございます。発表はかなり反響があり、良かったです。 大手取引所であるBinanceからの資金調達なので多くのメディアにも取り上げてもらいました。またPolkadotのコミュニティで最初の資金調達であった点も大きかったと思います。 資金調達を行った経緯 [caption id="attachment_59470" align="aligncenter" width="667"] Plasm Network Founder : Sota Watanabe氏[/caption] --資金調達に向けて6ヶ月前から動いていたという話でしたが、去年Plasm Networkがメインネットになってから資金調達を行うまでの経緯を教えてください。 渡辺創太:6ヶ月かかった理由はパブリックブロックチェーンを作る会社として日本に前例がなかったからです。法律、税制、Exitまでの道のり。 チームのメンバーと全てを考慮しつつ慎重に進めました。特に税制と法律は海外と日本は大きく違い、この領域では日本は後手に回っているためどのようなスキームでやれば海外のプレーヤーと台頭に戦えるところまでいくのかの議論を専門家の方々と多くしました。その中で尽力してくれた方々には多大な感謝をしています。結果、シンガポールに法人を作りシンガポールで資金調達をしました。 振り返ると、もう少し早い時期に調達をするべきだったし、時期を早めることも可能であったと思います。 --海外拠点の会社を作ったのですね、それで6ヶ月という長い時間がかかってしまったんですね。それ以外で言うと調達の可否に関する調査に時間を要したのか、アメリカや中国との連携に時間がかかったのかどちらでしょうか。 渡辺創太:どちらにも時間がかかりました。ただ、結果論としてですがPolkadotが盛り上がりを見せたのがここ2、3ヶ月なので結果としてタイミング的によかったとも思います。 --今回の資金調達を進める上で苦労した点はありましたか。 渡辺創太:個人的には、現段階で日本においてパブリックブロックチェーンの起業家は肩身が狭いように感じます。そもそもこの領域に関わっている人が少ないので、チームメイトのような協力できる人があまりいないんです。さらに前例となる事例やベンチマークとなる企業がないので手探りになってしまいます。法制度も事例がないと変わっていかないので、与えられた仕組みの中で結果を出すのが大変でした。 --今回資金調達という面も含め、改めてブロックチェーン領域における、海外と日本の違いを感じたと思うんですが、日本と海外を比べてどう言う印象がありましたか? 渡辺創太:日本ではすでに数年間の遅れが出ていることを客観的に認識したほうがいいと思います。中国は国家戦略としてブロックチェーンを利用していて、行政や司法の分野で活用が進んでいます。アメリカでも政府が銀行に対してステーブルコインの取り扱いを許可、推奨しています。海外では政府として技術を用いてイニシアティブを生み出そうという姿勢がある一方、日本は暗号資産への懐疑的な視点など世論で動いていて明確な戦略もないように見えます。 昔は日本人によるビットコインの保有が多かったですが、今はアメリカ人による保有が多くなっています。こう言った面を見ると日本は遅れていると言わざるを得ないかもしれません。 こう言った状況下で、日本発のスタートアップが海外に勝てるということを証明したいと考えています。ブロックチェーンの中心はパブリックブロックチェーンだと思いますが、日本人でここに関わっている人はまだまだ少ないのが現状です。だからこそ自分が頑張らなければと思います。 Binanceやその他プロジェクトとPlasmの関係について --今回のニュースで海外大手のBinanceがリード投資家となり資金調達を行ったわけですが、今までのやりとりや後のシナジーについて教えてください。 渡辺創太:Polkadotエコシステムの内部の人の紹介でお話ししています。去年の12月にBinanceがPolkadot専用のファンドを立ち上げたので、連絡出来る機会をうかがっていました。そんな中でPolkadotにBinanceとのつながりを持っている人がいたので、お話しにつながりました。 Web3 FoundationからGrantを獲得していたり、Polkadotのテストネットに最初に接続したプロジェクトであり、コミュニティメンバーが増加しているなど我々の遍歴はわかりやすいと思います。それもあってBinanceは2週間で投資を決断してくれました。しっかりと実績を積み上げれてきたことが功を奏しました。 今後のシナジーとしては、取引量で世界最大規模のBinanceにおいて私たちのトークン(PLM)が上場する可能性が高いと思います。そうなるとBinanceの擁する多数のユーザーにPLMトークンを提供できます。 また、将来PolkadotoのパラチェーンになるにはオークションのためにDOTトークンをコミュニティから私たちに預けてもらう必要があります。そこでBinanceに対して、オークションをサポートしてもらうことも話し合っています。 最後に、Binance Smart Chainとの連携に取り組んでいます。ブリッジなどに関しても作っていきたいと考えています。最近はPlasmの認知度も上がってきており、この発表によって問い合わせも増えてくると思うので、コラボレーションも狙っていきたいですね。 https://twitter.com/binance/status/1359238209738317827?s=20 (※Binance Twitterから発表されたPlasmへの投資のニュース) --我々は、先日PolkadotエコシステムのプロジェクトにおいてAMAを我々は実施したのですが、その中でAcalaもいて、Plasmの話も何度も出ていました。今後、PlasmとAcalaとでどのようなコラボレーションを行っていますか? 渡辺創太:はい。AcalaとPlasmは両方ともPolkadotにつながっていて、AcalaのaUSDやトークンをPlasm上で使えるようにしています。逆にAcalaでPLMトークンが使用できるようにもなります。イメージとしてはEthereumのERC20のような感じです。 現在開発しているUIでは、AcalaのポータルでPLMトークンが利用できます。これからクロスチェーン機能も実装していく予定です。このようにユーザーに使いやすいプロダクトになってきています。 https://twitter.com/Plasm_Network/status/1362395586167676936?s=20 (※TwitterはPlasm NetworkとAcalaNetworkでXCMPトランザクションがRococo Testnetで初めて実行されたニュース) --Plasmはアプリケーションも開発しているんですね。 渡辺創太:過去のプロジェクトではアプリケーションの開発まで至らないものが多かったですね。 今はユーザーが使いやすいようにこう言ったアプリケーションの開発までやり切っているところです。将来的にはPlasmネットワークのユーザーがポータルを用いて直接デプロイができるようになったり、ステーキングやDappsへのノミネートができるようになると面白いですね。 Plasm Networkの独自の強み --ところでPlasm NetworkではDApps開発者でも自分たちのDAppsに投票されるとブロック報酬が入る方式を採用しているとお聞きしました。 渡辺創太:はい、これが他のParachain候補のプラットフォームにはないPlasm Networkの強みだと考えています。 簡単にいうと、ユーザーはPlasm上にDappsをデプロイすることによって報酬を得ることができるようになります。一般的なプラットフォームだとガス代を払うのが負担になりますが、私たちのネットワークでは人気になればガス代もしくはそれ以上の報酬が手に入る可能性があります。 この機能はゲームチェンジャーとなりうるものであり、早く公開したいと考えています。こう言ったネットワークに関しては、臨界点のようなものがあって、そこをいち早く取ったもの、また機能を作ったものが勝つと思っています。 そのためにShidenネットワークをパラチェーンオークションの前にローンチする予定です。私たちは早くローンチすることで先にユーザーを集めていきたいです。Kusama Networkのローンチを待っていると乗り遅れる可能性がありますし、Plasmの上で作ると儲かるということがわかれば他のユーザーも同じことをしようとするはずです。 Acalaなどの通常のチームはトークンエコノミクスの影響でパラチェーンの後にしかローンチはできないと考えています。加えてPolkadotの特性上、すでに運用されているものを統合することは難しく直接Polkadotにつなげてデプロイするしかありません。 そのため、私たちは先にローンチしたものをハードフォークさせてPolkadotにデプロイします。他プロジェクトのトークンエコノミクスはコミュニティに対するトークン配布が少ないので、トークンを保持していないユーザーがデプロイしづらいという側面があります。 現状では資金調達の際にVCへはディスカウントをつけて販売するのが主流で、ローンチ後の価格は基本的に上昇するためVCはリターンを得られます。一方、通常価格で購入する必要があるユーザーにとってはこれが負担になります。そこでPlasmではLockDropによりコミュニティにトークン配布を行ってから資金調達を行っています。 Shiden Networkへの取り組みと将来のパラチェーン戦略 [caption id="attachment_59479" align="aligncenter" width="800"] PLMトークンのホルダーは1:1の割合でSHIDENがもらえる[/caption] --先ほどShiden Networkのお話が上がりましたが、現在のShidenへの取り組みはどうなっていますか? 渡辺創太:Polkadotのローンチのタイミングが見えないため、ローンチを待っているとKusamaに接続されるプロジェクトが増加して先を越されてしまう可能性があります。 Polkadotのローンチ時期にPlasmが左右されるのを防ぐために、Shidenを開発しKusamaとつなげることにしました。また先にKusamaに接続しておくことによりPolkadotのオークションに勝利して接続しやすくなると考えています。 --Kusamaへ接続しようとしているプロジェクトにはトークンが一種類のものと複数のものがあると思います。ShidenもPlasmのPLMトークンとは違うShidenトークンがありますが、これらの違いや考えを教えてください。 渡辺創太:トークンが一種類だと一つのブロックチェーンしか作れないという違いがあると思います。AcalaやMoonbeamも同じ考えだと思いますが、Polkadotに最初に接続してパラチェーンとなり1番を取るためにはブロックチェーンを2つ作る必要があると考えました。 現在はテストフェーズなのでKusamaに繋いだりするためにブロックチェーンは2つ必要ですが、本格的に活動を開始する際は1つでいいと思います。そこで将来的にはShidenトークンとPlasmトークンをスワップすることでShidenを買収する可能性はあります。 --なるほど。PlasmはPolkadotで最初のパラチェーンになるのをめざしていると思います。PolkadotではParachainになるためのオークションを定期的に実施すると思います。今回はロックドロップで報酬を払いますが、2年後のオークションが実施されたときの展開はどうするのでしょうか。 渡辺創太:これは難しい部分ですが、私たちはもう一度パラチェーンオークションで勝つために3%ほどのトークンを用意してあります。また2年後にはパラチェーンの数も増えており、初回のオークションよりもコストはかからないと考えています。 長期的な戦略としてTresury機能を開発し、トランザクションの一部を蓄積させておくことでそのPLMトークンを用いてパラチェーンオークションに参加しようと思います。 今後の展開に関して --ありがとうございます。最後に今後の展開について教えてください。 渡辺創太:世界のトッププレイヤーを巻き込んでいくことで、日本発のブロックチェーンを世界のブロックチェーンにしたいです。今回の資金調達でBinanceのバックアップが得られました。 また最近はSecretネットワークとのブリッジを作成していて、BinanceブリッジやEthereumブリッジも開発しています。こうした活動により、PlasmがPolkadotのエコシステムの中でスマートコントラクトのハブとして機能し生き残りたいと考えています。 今後も注目を浴びるような大きな発表ができると思います。世界の主要なメンバーとのネットワークによりサポートしてもらいながら今後より良い活動ができると思います。 最後に 今回はPolkadotエコシステムで初めてBinanceから資金調達を行ったPlasmネットワークに関するインタビューでした。今後の発表にも注目が集まります。 Website:https://www.plasmnet.io/ インタビュアー / 編集 : 新井 書き起こし : 鈴木
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2021/01/24IOST Co-Founder Terry氏による2020年の振り返りと2021年の計画を語り尽くしインタビュー
IOST(アイオーエスティー)は、スケーラビリティとネットワークの非集権化に力を入れたブロックチェーンプラットフォームです。 これまでCRYPTO TIMESはIOSTを度々特集していますが、今回は二度目の登場となる最高技術責任者(CTO)のTerrence Wang氏にインタビューをし、IOSTの昨年の活動、そして今年の計画についてたくさん語ってもらいました。 【仮想通貨】IOST(アイオーエスティー)の特徴・将来性を徹底解説! - CRYPTO TIMES 2020年のIOSTを振り返る 今回インタビューしたのは、IOSTプロジェクトの黎明期から最高技術責任者(CTO)を務めるTerrence Wang氏です。 DeFiは様々な分野をすべて網羅・NFTもインフラ整備から徹底 — 本日はインタビューに応じていただきありがとうございます。まずは、2020年から爆発的に流行しているDeFi(分散型金融)について、IOSTエコシステムではどのようなアプリケーションが出てきたのか教えてください。 Terrence Wang氏 (以下Terry): 2020年は、IOSTのエコシステム上でもレンディングやDEX(分散型取引所)、イールドファーミングといった様々なDeFiの種類を全てをカバーすることができました。 なかでも先日発表したRamp DeFiは「ステーキングでロックされている暗号資産を担保に他のアセットを借り入れられる」という着眼点の鋭いDeFiプラットフォームです。 ほかにも、IOST上でUniswap + MakerDAO的な役割を果たすXigua Finance (XG)やイールドファーミングのPumpkin DeFiなど、それぞれの分野で特徴的なプロジェクトが誕生しています。 また、イーサリアム(ETH)やポルカドット(DOT)などとお互いの技術を貢献し合えるようなクロスチェーンソリューションの開発にも注力しています。 Ramp DeFiインタビュー -ステーキングされた資産をアンロックし、流動性のある資産にする」ことを目標に- — 昨年はNFT(非代替型トークン)もよりいっそう注目されましたが、IOST上ではどんな進展がありましたか? Terry: IOST上ではブロックチェーンゲームデベロッパーのXPETが開発する「モンスターワールド」や「ドリームモンスター」がユーザー数やIOSTの取引量を着々と増やしています。 また、IOST上のNFTを取引できるプラットフォーム「XLOOT」も登場し、レア度の高いゲーム内アイテムをユーザーが売買できる環境も整いました。 コロナがチームに与えた影響は? — 2020年はコロナによって生活や仕事の環境が大きく変わりました。IOSTチームはどんな影響を受けましたか? Terry: 私たちはブロックチェーン技術を開発する「分散型」チームなので、働き方に関してはあまり大きな変化はありませんでした。 ですが、今まで盛んに行われていたオフラインミートアップやカンファレンスなどが一切なくなってしまっていました。ユーザーや他のプロジェクトと顔を合わせるというのはとても大切にしているので、寂しいですね。 これまでは日本にも毎年最低5回くらいは来ていましたが、昨年から一度も行けていない状況です。 ですが、例えばブロックチェーン分野の教育に関しては、スイス・チューリッヒ大学でサマースクールの講師をしたほか、日本や中国のデベロッパーを対象にしたオンラインハッカソンやワークショップも実施したりしたので、今の状況でもできることはたくさんやりました。 ブル市場はプロジェクト認知度アップに貢献 — コロナショックを機に、暗号資産は今までにない規模のブル市場を迎えましたね。これはIOSTにも良い影響を与えましたか? Terry: IOSTプロジェクトの話ですか?それとも僕個人の話ですか?(笑) — いえ、ここはIOSTプロジェクトの話でお願いします(笑) Terry: そうですね、統計的に見てかなり認知度がアップしています。より多くの人々がクリプトに興味を持ち始めて、投資・トレードしながらプロジェクトのことを調べてもらえているのはとても嬉しいです。 イーサリアム(ETH)が私たちが資金調達した時の価格をゆうに超えていくのを見て、想像以上の「暗号資産のポテンシャル」に驚いています。 今回のブルマーケットがどのように落ち着くのかは誰にもわかりませんが、クリプトは大きな可能性を秘めているアセットなんだなと再認識しています。 2021年のIOSTの計画・展望 2020年は、オフラインイベントの開催・参加ができないといった問題はあったものの、エコシステム開発やオンライン教育では躍進を続けたというIOST。2021年はどのような計画を立てているのかも聞いてみました。 ステーブルコインにも焦点を当ててDeFiの環境整備へ — 先ほどは昨年のDeFi関係の進展についてお聞きしましたが、今度はこれから同分野でどのようなことを計画してるのかも教えてください。 Terry: ステーブルコインの利便性を促進して、価値の保存をよりきちんと担保できるDeFiエコシステムを作っていきたいですね。 IOSTにはすでにIOST USD (iUSD)がありますが、今後もっと多くの種類のステーブルコインを開発・導入していく予定です。 こういうものも含め、レンディング、DEX、イールドファーミング、クロスチェーン機能など各分野のインフラを徹底的に整備して、IOST上のDeFiをより活発にしていきたいと考えています。 ゲームとの親和性に注目してNFTキラーアプリをつくる — NFT関連はどうですか?個人的には、NFTと聞くと「アート」と「ゲーム内アイテム」の話ばかりで新鮮味がなくなってきてるようにも感じています。 Terry: それはわかります。ただ、私はやはり「ゲーム内アイテム」についてはレア度・コレクター精神といった概念との親和性がとても強いので、まだまだ注目すべきだと考えています。 なので2021年はこういったゲーム×NFTまたはDeFiの分野で大衆に知られる火付け役、つまり「キラーアプリ」を一発作ってやりたいと意気込んでいます。 NBA Top Shotsなどを見てるとわかりますが、こういう取り組みを行うにはIP(知的財産)周りの底固めがとても大事なので、その辺も注力していますね。 実際、今すでに日本の複数企業と協力してビッグなプロジェクトの開発にも取り組んでいる最中です。 あとは、昨年リリースしたIRC-721に加え、もっと色々なNFTのトークン規格も開発していきたいと考えています。 中国国内での規制や、CBDCの事情 — こうした技術を推進していくにおいて、米国を中心とする各国のコンプライアンス厳格化は追っていくのが大変だと思いますが、中国国内ではどうですか? Terry: 中国はもうかれこれ2年ほど「ブロックチェーン技術はOK、トークンはNG」の一点張りで、相変わらず「グレーゾーン」のままですね。 まあこれはどこの国でも当たり前ですが、国内の技術者や学生向けのオンラインワークショップなどでもトークンや価格に関する話題は完全にご法度です。 — なるほど。ちなみに中国政府発行のCBDC(政府発行型通貨)ってどうなったんですか?確か仕組みの一部にブロックチェーンが使われるとかなんとか... Terry: それが中国に住んでいる私たちでもまだよくわからないんです。昔は確かにブロックチェーン技術というワードにも触れていましたが、最近は全く出てこなくなっていて、ひとまずは単なる政府発行の電子通貨なんじゃないかと考えていますね。 今、国内の小さな都市を対象としてテスティングが行われている最中のはずです。本当の正体や仕組みはまだまだ謎のままですね。 まとめ 前回・2018年7月のインタビューから約2年半ぶりの再インタビューとなりましたが、今回はそれからIOSTエコシステムがどれだけ発展してきたかを語っていただきました。 Terry氏は最後に、IOSTの「新年の抱負3つ」を教えてくれました。 DeFiとNFT分野への注力(インタビューの通り) 日本・韓国・中国だけでなく、米国、南アメリカ、ロシアなどでのコンプライアンスを徹底していく コロナがおさまり次第また対面でのミートアップやイベントに参加する 今後とも、IOST上でのエコシステム拡大や「キラーアプリ」の登場に期待です。
インタビュー
2020/10/13Ramp DeFiインタビュー -ステーキングされた資産をアンロックし、流動性のある資産にする」ことを目標に-
今回は、10月10日にPublic Saleを実施したRamp DeFiのCo-FounderであるLawrenceにインタビューを実施しました。RAMP DeFiは「ステーキングされた資産をアンロックし、流動性のある資産にする」ことを目標に活動するDeFiプロジェクトです。 10月10日に行われたパブリックセールではその人気の高さから5分間で3047名が実施を行ったほどです。 https://twitter.com/RampDefi/status/1315001212681379840?s=20 日本ではまだ認知度の低いRAMP DeFiに関して、彼らのプロジェクトが解決しようとする問題、今後の展望などを赤裸々に語ってもらいました。 参加企業説明 CRYPTO TIMES 「CRYPTO TIMES」は、ブロックチェーン・暗号通貨に関する日本向けのWEBメディア。 2018年1月末にスタートし、一次情報やブロックチェーンに関する正しい情報を発信することで、少しでも多くの人に向けて正しいブロックチェーンの知識を伝えることを目指している。 2020年2月にはリサーチレポートCT Analysisの提供も始め、今後は日本マーケットのブロックチェーンの理解の底上げに努めていく。 IOST スケーラビリティの問題を解決し、Proof of Believabilityというコンセンサス メカニズムを採用した、スマートコントラクトを利用してDAppsを構築することのできるブロックチェーン・プラットフォームを提供するプロジェクト。 2019年2月よりメインネットがリリースし、この1年はIOSTのエコシステムの拡大のために日本は勿論、海外でも大きく活動を続けてきている。 Ramp DeFiに投資を行い、エコシステムパートナーも務める。 関連記事 : IOSTとは DApps開発のための次世代ブロックチェーンの将来性を解説 – CRYPTO TIMES Ramp DeFi 「ステーキングされた資産をアンロックし、流動性のある資産にする」ことを目標に活動するDeFiスタートアップ。過去2年で成長したステーキングエコノミーの「資産を最大限に活用できる分配を行うのが難しい」「ステーキングされた資産の流動性が失われてしまう」という課題の解決を目指す。 ERC20ではないトークンを担保としてイーサリアム上にステーブルコイン「rUSD」を発行できるプロダクトを開発している。これにより、シームレスな流動性の供給を行う。 インタビュー [caption id="attachment_54912" align="aligncenter" width="287"] 今回のインタビューに答えてくれたRAMP DeFi Co-Founde : Lawrence[/caption] 新井(CRYPTO TIMES):今回はインタビューありがとうございます。ブロックチェーンや暗号資産に関するウェブメディアCRYPTO TIMESを運営する新井です。今日は、Rampのプロジェクトについてお話を聞かせてください。 Lawrence(Ramp DeFi):ありがとうございます。私はRamp DeFiのプロジェクトリードのLawrenceです。今日は私たちのプロジェクトについてお話しできるのを楽しみにしています。 Ramp DeFiのプロジェクトについて 新井:初めに、日本市場に向けてRamp DeFiのプロジェクトを紹介してください。 Lawrence:Ramp DeFiはステーキングされたアセットのアンロックに焦点を当てています。過去数年間に、たくさんの投資家たちがイーサリアムVMと連携せず、独立している状態のブロックチェーンエコシステムへ資本を投下しています。今日(インタビューは2020年8月下旬に実施)では、220億ドル(2兆3000億円相当)の資産がロックアップされ、ステーキングされています。 しかし、ロックアップされた資産を保有している状態では、資産の有効活用はできず、生産性も下がってしまいます。そこで、私たちは投資家が資産のポートフォリオを流動性のある資産として扱えるようにします。これにより、従来のキャピタルゲインやステーキング報酬を維持したまま、流動性のある資産を用いて新たな投資の機会を生み出します。 具体的には、IOSTなどのブロックチェーン上からアセットをバリデーションコントラクトへ移し、ステーブルコインの担保として使用できるWrapped IOSTを受け取ります。このステーブルコインはラップされ、イーサリアムチェーンへ移行されるので流動性のあるUSDTやUSDCを借り入れることができます。こうして、IOSTトークンを手放すことなく、現金に変えて使用できるUSDTやUSDCなど流動性のあるステーブルコインを手に入れることができます。 私たちのプロジェクトにはRAMPトークンというものがあり、RAMPはステーキングや担保に使用するなど、プロトコル内の全ての用途に使用することができます。RAMPサプライの45%はユーザーがネットワークに参加するために確保してあります。 新井:現在、DeFiが流行ったことで、Ethereumではガスの高騰などの課題も起こっています。これらの問題もRamp DeFiのクロスチェーンソリューションで解決は可能でしょうか? Lawrence:DeFiがイーサリアムチェーン上で活発になっているのは、流動性の高いUSDTやUSDCの存在が大きな理由であると考えています。また、Uniswapなどの主要なDeFiプロダクトがイーサリアム上に構築されているのも大きな理由です。こう言った理由で、ガスが高騰しているにもかかわらず、投資家はイーサリアムチェーン上でDeFiを使用しているのだと思います。このトレンドは、イーサリアム以外のチェーンがユーザーやその資産をエコシステムへひきつけることができれば変わるかもしれません。 Ramp DeFiの独自性と優位性 新井:現在、流行っているDeFiにおいてはプールやその流動性は非常に重要だと思っていますが、Ramp DeFiはどのように流動性を確保する予定でしょうか? Lawrence:Ramp DeFiは他のDeFiとは違う考え方をしています。他のDeFiプロジェクトは全て、ユーザーにたくさんの資産を預けて(デポジット)もらうよう誘導し流動性を確保します。その結果、プロジェクト同士で競争が起きます。 Ramp DeFiはその反対の考えをしていて、アンロックされた価値を指標としています。私たちはステーキングされているトークンを担保としてステーブルコインを発行することで価値のアンロックを行っています。これにより、エコシステムの中の資産の流動性を高めています。私たちの活動は、DeFiエコシステムにとって強力でポジティブな原動力になると思います。 新井:他のプロジェクトがプールに資産を預けようとしている中で、アンロックされた価値を指標としておくのは面白いですね。今日、多くのプロジェクトがトークンを発行していますが、個人的には価値のないものも含まれていると思います。RAMPトークンは将来のガバナンス以外の価値があると考えていますか? Lawrence:ユーティリティトークンのRAMPトークンの保持者は複数のメリットを享受することができます。1つ目は他のプロジェクトでも行っているガバナンスへの参加です。 2つ目はRamp DeFiのrPoolからの報酬です。Ramp DeFiにはrPoolと呼ばれるプールがあり、全ての借入や利子、そして手数料などが生み出されます。別の言い方をすると、借り入れやステーキング報酬、そして利子が全て入っているプールです。RAMPトークンの保有者は定期的に(Ramp DeFiの公式Mediumによると毎週)配当が与えられます。 最後に、私たちがファーミングパワーと呼ぶメリットがあります。RAMPトークンを用いてステーキングを行うことで、他のトークンと比べてより多くのファーミングを行うことができます。 このように、ユーティリティトークンを保持することで利益を得ることができるビジネスモデルになっています。このビジネスモデルによってユーザーがRAMPトークンを使い続け、rPoolに資産が集まり、エコシステムが拡大するという好循環を生み出すことができます。 新井:ただ、Ethereumのガスが高騰し続けたことや今後様々なプロジェクトがDeFiでも多くでてくると思います。そのため、DeFiにとって他のプロダクトとの連携は非常に重要である私は考えていますが、Rampエコシステムの拡大のために考えていることはありますか? Lawrence:私たちが優先しているのはRamp DeFiのプロダクトを他のProof of Stakeを採用しているブロックチェーンへ拡大することです。そうすると、私たちのソリューションへのアクセスが容易になり、結果としてアンロックされる資産がさらに増加します。 また、他のプロダクトとの統合も進めていきたいと思います。DeFiエコシステムの中にあるCompoundのような他のプロダクトが私たちのプロダクトを利用できるようにすることで、他のプラットフォームからのバリュートランスファーがより統合されたものになります。 新井:因みにですが、少し思ったのはKavaの仕組みにもにているなと思いました。Ramp DeFiのプロダクトはKavaにも似た部分もあると思いますが、Kavaやその他のプロダクトとの差別化や優位性はどのようなものがありますか? Lawrence:KavaとRamp DeFiの違いの一つは、Kavaにはステーブルコインを発行するために支払うStability feeがあることです。一方、Ramp DeFiにはそのような手数料がないので、ユーザーにとって使いやすくなっています。 また、Kavaはレンディングや借入をユースケースのように扱っている側面があります。資産に担保されたステーブルコインを発行することはできますが、米ドルに裏付けられたUSDTなどのようにフィアット通貨のように使用することができません。しかし、私たちは資産を保持している人から借入を行うことによって、ステーブルコインに市場や使い道を作っています。 Ramp DeFiのエコシステムについて 新井:DeFiは世界的に広がっていますが、実世界でももっと活用できるようになったりのような必要があると思っています。例えば、Binanceはデビットカードを発行し始めており、そこにKavaのステーブルコインをチャージできるようになったりするのではないかと考えています。Ramp DeFiは将来的に実世界におけるDeFiエコシステムの拡張は考えていますか? Lawrence:これはユーザーに新たな市場や機会を提供できる革新的なプロダクトの開発に関わるとてもいい質問です。例えばUniswapは中央集権型の取引所が流動性を供給しなくてもトレードができるという機会をユーザーに提供したことでブームが起きています。このように、ユーザーが新たな利益を得ることができる市場や機会を作っていくことが非常に重要であると考えいますし、勿論、我々も将来的にそこに着手していかなければ行けないと考えています。 新井:トークン配布のモデルに関して、変化した点や、重要だと思う部分はありますか? Lawrence:昔のICOモデルとDeFiプロダクトのトークン配布の大きな違いは、DeFiはユーザーの参加に注目していることだと思います。ICOではエアドロップなどの形でマーケティングが行われましたが、ユーザーが入手しても使い道がなく販売目的での購入になっていました。DeFiではトークンを獲得するために流動性を供給する必要があり、ネットワークに参加することになります。ユーザーがエコシステムのオーナーシップを得ることになり、トークンを売るのではなく保持してファーミングを行い利益を得ることができます。 こういったシステムが機関投資家や個人問わずにたくさんの人々のエコシステムへの参加を促しています。ユーザーがネットワークに参加し、トークンを得るために様々な活動を行うというのは持続性という観点からも重要であると考えています。 平田 (CRYPTO TIMES):近年、中央集権的な従来の取引所はUniswapをはじめとするDEX(分散型取引所)によって圧倒されているように感じます。こういった分散化の動きに対してどのような考えますか? Lawrence:分散型取引所は流動性をコントロールできるので市場を独占しているのだと思います。分散型取引所では従来のオーダーブック方式ではなく流動性を用いているので、クリーンな取引が可能です。 流動性の供給者がいて持続的な流動性(continuous liquidity)を持つ分散型取引所では従来のオーダーブックは存在せず、新たな方法の取引が可能になりました。過去2年間で求められていた、新たな選択肢が誕生し、認知されています。これが分散型取引所が人気になっている理由の一つだと思います。 Ramp DeFiの運営について 太田 (IOST Japan):Ramp DeFiはシンガポールで運営されていますが、運営拠点としてシンガポールを選んだ理由やメリットを教えてください。 Lawrence:シンガポールは政府がファイナンスやテクノロジーなどの国としてイノベーションを推進しています。規制もとても明瞭かつ優しく、プロジェクトを行うにあたって規制面で苦労することなくユーザーサイドに尽力することができます。こういった側面から、シンガポールはDeFiプロジェクトを行うにあたって適した場所であると思います。 太田:プロジェクトやその計画はいつ始まったのですか? Lawrence:プロジェクトは2019年の後半に始まりました。当初はデリバティブ商品の提供を行おうと考えていましたが、DeFiのブームが訪れる前の時代であり出資を受けるのに課題がありました。現在も資金調達は続けています。 2020年の第二四半期にはDeFiが盛り上がりを見せ、それと同時に現在のRampプロジェクトへのピボットを行いました。再度投資家の元を尋ねて出資をつのり、DeFi市場が好調だったこともあり以前よりスムーズな資金調達が行えました。 私たちが以前Medium上に記事を公開したところ、私たちに出資してくれたArrington XRP CapitalやIOSTをはじめとしたたくさんの人がプロダクトに興味を持って記事を読んでくれました。その結果たくさんの投資家が資金を出資してくれました。 太田:このプロジェクトはLawrenceさんにとってIOSTに次ぐ2つ目のプロジェクトですよね。IOSTでは様々なことを経験していると思いますが、一番難しいのはコミュニティの形成だと思います。Ramp DeFiは数週間でテレグラムやTwitterのフォロワーを獲得できましたよね? Lawrence:IOSTはRamp DeFiを始める2年ほど前から在籍しており、テストネットやプロダクトのリリースをはじめとしたプロジェクトにとって重要な様々なことを学べたので今でも自身の基礎となっています。IOSTの経験のおかげでRamp DeFiは急激に成長することができ、現在ではテレグラムのフォロワーは4000人、Twitterでは2000人のフォロワーを獲得できました。 急激な成長の理由の一つはインフルエンサーがプロジェクトについて拡散してくれたことです。また、IOSTで積み重ねた投資家などとの繋がりもとても大きな鍵となっています。 IOSTとの違いとして、私たちはユーザーのパーティシペーションに着目しているので、エアドロップは行いません。最初にデプロイするスマートコントラクトにより、ユーザーはRampを受け取ることが可能になる予定です。それ以降はRampトークンを用いたファーミングが可能になります。 これはエアドロップよりも、USDTをデポジットすることでトークンによるファーミングを行うリクイディティファンディングに近い考え方であると思います。こういった理由で、エアドロップをマーケティングとして使う予定はありません。 Ramp DeFiの活動と今後の展望 太田:すでに行われたプライベートセールと、今度行われる予定のパブリックセール(既に10月10日にセールは終了済み)について教えていただけますか? Lawrence:プライベートセールはとても小さなラウンドで、百万ドル(1億円相当)の資金調達を行いました。大事なのは他のブロックチェーンファンデーションへ私たちのプロジェクトを紹介してくれる戦略的なパートナーを見つけることです。全ての投資家はこういった人脈を持っていて、それがRamp DeFiの成長につながります。 こういった戦略により、投資家たちは投資限度額まで投資してくれました。投資限度額があるので、投資家は長期にわたって資金調達に協力してくれます。投資家たちはトークンに対して魅力を感じているので、パブリックセールに参加する他の参加者は不当廉売を心配する必要はありません。 もうすぐ行われるパブリックセールにより、ユーザーが私たちのトークンを保有するようになります。また、パブリックセールに合わせてプロダクトもリリースする予定で、さらにRampトークンを入手することができます。 新井:最後にRamp DeFiの将来の展望や、DeFiとクリプト市場に関するコメントをお願いします。 Lawrence(Ramp DeFi):私たちは革新的なプロジェクトが生まれているDeFiの初期段階にいると思います。革新により、これからさらに成長する余地があると考えています。 また、大事なのは革新はユーザーの課題を課題を解決することと、活動を裏付けるビジネスモデルが存在することです。現在の市場は過剰な盛り上がりのようにもみえ、いつかは修正が行われると思います。しかし、ユーザーのための課題解決やビジネスモデル、新たな機会の提供を通して産業が持続的なものへと育つ余地があると思います。 最後に 今回のインタビューでは「ステーキングされた資産をアンロックし、流動性のある資産にする」ことを目標にシンガポールで活動するRamp DeFiの活躍や今後の展望について知ることができました。 Ramp DeFiはプロダクトを通してクロスチェーンリクイディティの供給やステーキングトークンをステーブルコインに変えて実世界での使用を容易にするなど、現在のクリプト市場が抱える課題を解決するプロジェクトです。 今年8月に行ったトークンのプライベートセールではAlameda Research、ParaFi Capital、XRP Capital、IOST、Signum Capital、Ruby CapitalそしてBlockwater VCから1億円以上の資金調達を行っています。 DeFi分野は近年IOSTをはじめたくさんのファンドが投資を行い、新たなプロダクトが生まれて話題になっています。Ramp DeFiはイールドファーミングに取り組む先進的なプロジェクトであり、今後の成長に期待が集まります。 RAMP DeFi Official Website RAMP DeFi Twitter
インタビュー
2020/09/16ブロックチェーンベンチャーCentralityの活動と将来に関してCo-Founder / Aaron Mcdonald氏へのインタビュー
この記事は、先日行ったテックベンチャーのエコシステムを構築しているブロックチェーンベンチャーCentralityへのインタビューに関して書いてあります。以下、インタビューの内容となります。 Centralityとは Centrality 「Centrality」はユーザー中心のアプローチとオープンソース文化を念頭に、ニュージーランドに拠点を置く分散型ウェブのためのインフラを構築するベンチャー企業です。 SyloやDoughnutといった新たなプロトコルを開発することで、開発者にとって開発しやすく、ユーザーにとって使いやすいアプリケーションの構築を可能にします。 大企業と提携を結びアプリケーションを提供するなど、技術だけでなくビジネスケースとしての活動も積極的に行っています。 インタビュー 新井(CRYPTO TIMES):今回はインタビューありがとうございます。CRYPTO TIMESの新井です。今日は、Centralityのプロジェクトについてお話を聞かせてください。 Aaron McDonald(Centrality):オークランドとニュージーランドで活動しているCentralityの共同創設者のAaron McDonaldです。よろしくお願いします。 Centrality創設のきっかけと活動内容に関して [caption id="attachment_54482" align="aligncenter" width="800"] Centrality Co-Founder : Aaron[/caption] 新井:初めに、Centralityを創設したきっかけを教えてください。 Aaron McDonald:元々、平等な世界を作り出す可能性を秘めたブロックチェーンの技術に興味がありました。ブロックチェーンを用いると、小規模な会社でも価値創造を行いエコシステムを作り上げることができるので、大企業にも対抗することができます。一方で、業界人口が少なく一部の人々によってブロックチェーンの運用が行われているなど実用化には様々な課題もあり、技術の普及には一般の人々が利用しやすいビジネスケースが必要です。そこで、実用的なアプリケーションの提供を通じてすべての人々が簡単にブロックチェーンを利用できる世界を作るためにCentralityを創設しました。 新井:2017年のICO以来、Centralityがユーザーのために取り組んできたビジネスケースやアプリケーションについてを説明してください。 Aaron McDonald:私たちは主に技術面とビジネス面の2点に力を入れて取り組んでいます。技術面ではネットワークをより使いやすいものにするために研究を行っています。現在はトークンの保持者をメインネットに移行する段階にあり、技術チームの尽力により作業は順調に進んでいます。しかし、せっかくコアテクノロジーがあったとしても、ユーザーに使われなければ意味がありません。そこで、ビジネス面ではネットワーク上にあるアプリケーションのユーザー獲得に力を入れています。実際に、私たちの提供しているアプリ「Sylo」は10万人のアクティブユーザー数を誇り、デイリーアクティブユーザー数は他のアプリと比べても10倍ほど差があります。 Syloはユーザーの獲得に成功しましたが、実はアプリケーションのユーザの獲得は簡単ではありません。多くの企業が技術に固執してしまい、ユーザーの獲得などビジネス面での活動が愚かになってしまいます。そこでCentralityは他の企業とパートナーシップの拡大に取り組んでいます。最近の事例ではコカ・コーラとCentraPayがパートナーシップを結び、エンドユーザーへブロックチェーンを使用してもらう機会を提供しています。このように、プライバシーほごやメッセージ機能を有しているSaloなどのアプリと良質なパートナーシップを組み合わせることでネットワークに参加しているユーザーへの価値提供を行うことができます。 Centralityのユーザーと開発者に対する信念 新井:2017年ごろからEthereumをはじめとした沢山のパブリックブロックチェーンやエンタープライズ向けブロックチェーンプロジェクトが台頭してきていますが、技術面やインフラストラクチャーとしてのCentralityの強みは何でしょうか。 Aaron McDonald:いくつもの成功したテック系企業はユーザビリティに注目してきました。実際にアマゾンやグーグル、アップルなどの大手企業はプロダクトやサービスがシンプルでユーザーにとって使いやすくなっています。しかし、ブロックチェーン業界では処理速度やプログラミング言語、開発者用キットなどに重点が置かれてしまい、ユーザビリティに取り組んでいる企業は見当たりません。結果として、素晴らしい技術ではありますがエンドユーザーにとって使用しづらい製品になっています。そこで私たちはユーザビリティを向上させたブロックチェーンを開発するために3つの側面に取り組みました まずは新たなプロトコルDoughnutの開発です。Doughnutはブロックチェーン用のCookieのようなもので、dAppにシングルサインオンとサブスクリプションの2つの機能を搭載することができます。シングルサインオンにより、ユーザーはFacebookなどのログイン認証などと同じように複数のウォレットやアプリケーションを1つのアカウントで安全に管理しログインすることができます。さらに、サブスクリプションが可能になることで、例えば「月々の支払いのために15ドル分の暗号資産を自分のウォレットから引き落とす」と言った支払い方法が可能になります。また、それぞれのアプリケーションに開示する情報について詳細に管理したり、特定の期間中のログインに追加認証を設定することでセキュリティを高めたりと、従来のアプリと同じ水準のユーザビリティを提供しています。 もう一つは新規ユーザーの導入です。通常、dAppを使用するためには取引所でアカウントを開設し、ガスやフィーと呼ばれるゲームの使用料としてイーサリアムなどの暗号資産を購入する必要があります。これがブロックチェーンや暗号資産についての知見がない人々にとっての参入障壁になっているので、私たちはブロックチェーンに関する知識がなくても使用できるシステムを構築しました。私たちのネットワークでは開発者により事前にアプリケーション用のフィーのデザインや配布方法が決定されているため、ユーザーが通常のアプリと同じようにdAppを使用することができます。 このように、私たちはユーザビリティを追求し、エンドユーザーと開発者にとってシンプルで使いやすいサービスを提供しています。 最後に、私たちはネットワークを使用するためのフィートークン(ユーティリティトークン)とステーキングトークンを分離させています。開発者がフィーを使用するアプリケーションを作ろうとする時、フィートークンの将来価値や配布方法について予想しなければビジネスモデルを確率することは困難です。また、トークンの価格が安定しないと良いユーザーエクスペリエンスを提供することも難しくなります。ユーザーにとっても、アプリケーションを使用する時に現在のコストや将来のトークンの価格を考慮に入れる必要が出てきます。 そこで、フィートークンとステーキングトークンを分離させてフィートークンの価格を予想しやすくしています。フィートークンの価格はアルゴリズムによって安定するようにコントロールされている一方、ステーキングトークンは価値が上がる余地があります。これにより、システムの使用が増えてフィートークンの消費が増えてもコストは安定したままとなり、ステーキングトークンの価値だけが上昇します。これにより、どんな時でもユーザーコストのシミュレーションが可能になります。 このように、小さな取り組みを積み重ねることで開発者がアプリケーションを作りやすくなり、エンドユーザーにとってシンプルなサービスが生み出されるので、より良いユーザーエクスペリエンスの提供という大きな目的の達成につながります。 新井:エンドユーザーにとってのユーザビリティはもちろんですが、開発者も大事にしているんですね。 Aaron McDonald:開発者は私たちにとってとても大事な存在です。エンドユーザーを獲得するためには良いアプリケーションが必要ですが、良いアプリケーションを開発するためには開発者が不可欠です。私たちはエンドユーザーにとって使いやすいアプリケーションを提供するだけでなく、開発者にとって作業しやすい環境を作るように心がけています。 例えば、Doughnutプロトコルを使用することで開発者は今までにできなかったことができるようになります。Doughnutはオンチェーンと同様の安全性を担保したままトランザクションやスマートコントラクトの使用がオフチェーンでできるので、より使いやすく、よりプライバシーを重視したアプリケーションの開発を行うことができます。処理をオフチェーンで行うことでコストがかからず、プライバシーも保護することができます。 イーサリアムネットワークでは開発者は全ての処理においてコストを支払う必要があるので、システムから開発者が離れていってしまい長続きしません。実際に、デプロイされたものの使われていないスマートコントラクトが無数に存在しています。そこで、私たちは最高のアプリケーションを開発できる小規模でパワフルな開発者のコミュニティを作り上げようとしています。例えば、たった1つのキラーアプリ(大ヒットするアプリ)がユーザーを獲得しネットワークを成功に導く可能性も大いにあるため、私たちは開発者の量ではなく質を重視しています。 新井:開発者の質を担保するための取り組みは行っていますか? Aaron McDonald:初期の段階では一緒に活動する開発者の選考を行っていましたが、ネットワークがよりパブリックになり分散化するにつれ私たちの影響力は弱くなると思います。そこで私たちはマスマーケットを狙うのではなく市場の中から高いクオリティのアイデアやビジネスプランを持った素晴らしい開発者を取り入れることに尽力しようと思います。 さらに、開発者スペースにも取り組んでいます。消費者行動に関する統計によると、ほとんどの消費者がダウンロードするアプリの数は少なくなり、最終的にたくさんの機能を備えてユーザビリティも良い少数のスーパーアプリを使用するようになります。つまり、ネットワーク上に1000個のアプリを作ったとしてもそれらのほとんどは使われることはありません。そこで開発者には少数のスーパーアプリと、スーパーアプリに統合された小さなアプリの開発を推奨していて、この方針がクオリティコントロールとしても機能しています。 Centralityのビジネス戦略 新井:先ほどコカ・コーラとの提携の話をされていましたが、大企業とパートナーシップに関する哲学や狙いなどについて教えてください。 Aaron McDonald:まずは認知度の向上ですね。大企業はすでに流通経路を持っていて、信頼できるブランドのおかげで新しい顧客に私たちのテクノロジーを届け、エコシステムに加入してもらうことができます。また、ソリューションを実世界のビジネスとして提供し、持続的なエコシステムにする狙いもあります。逆に実世界のビジネスを行わなければ、インフラストラクチャーの利用のためにお金を払うユーザーがいなくなり、持続は難しくなってしまいます。実際に大企業が私たちの技術やネットワークを使用してもらうことで、ビジネスとしての価値を証明しエコシステムの成長につながります。 さらに、ある大企業との提携がアンカーとなって他の企業からも声がかかるようになります。実際に、プロジェクトの認知度が向上したことで取引所などの別の2、3社からも同じようなことをやりたいと持ちかけられました。そう言った意味では実世界のビジネスだけではなく、暗号資産業界での発展も同時に起きています。 新井:Centralityのトークンホルダーには日本人も多くいるかと思いますが、世界の市場を目指す中でも日本市場についてどのように考えているか教えてください。 Aaron McDonald:日本のローカルビジネスと共同する中で、私たちのテクノロジーと日本のビジネスをどのように結び付けられるか考えてきました。COVID-19の影響でチームアップに支障が出ている面もありますが、世界最大規模の経済大国である日本は大事な市場だと考えています。また、日本は諸外国に比べてブロックチェーンの理解が進んでいるので、日本で成功を収めれば他の国への進出もしやすくなります。 たくさんの企業が私たちのソリューションを使ってアプリケーションを開発した場合、同じプラットフォームを共有しているのでアプリ同士のコミュニケーションが円滑に行くという利点があります。つまりこの活動はエンタープライズ向けソリューションの市場とエンドユーザー向けのアプリケーションがあり、大企業との提携を通して私たちのソリューションを日本企業に浸透させることができたら嬉しいです。 トークンホルダーに関しては、長期的なプロジェクトの成功はコミュニティの形成にかかっています。私たちは現在とても良いコミュニティを持っていますが、私たちの活動を広めたり積極的にソーシャルメディアを活用することでCentralityの良い点やプロジェクトの理解を広げていきたいです。コミュニティを拡大することで私たちの組織が強くなり、最終的にプロジェクトの成功につながります。 Centralityのプロダクトと強み 新井:ありがとうございます。CentralityはCENNZnet ver.1のリリースをしていますが、CENNZnet ver.1をはじめとしたネットワークやコアプロダクトについて紹介してください。 Aaron McDonald:CENNZネットワークをスタートさせてから1年ほどが経ちますが、ユーザーを獲得しつつ新たな機能を追加したり安定性を高めたりと様々な改善を行ってきました。CENNZネットワークはアップグレードができるように設計されていて、PoWネットワークでは必要なチェーンガバナンスやフォークをしなくても改良することができ、同じネットワークを使用したまま分散化を行っています。 それでは、ネットワークの現状と分散化の計画について紹介します。現在は柔軟なアップグレードに対応できる特徴を活かして、Centrality(CENNZ)トークンをERC20規格からネイティブトークンへ移行しています。後ほど発表しますが、ユーザーはERC20トークンをデポジットすることでメインネット上でCENNZのネイティブトークンを受け取ることができます。これによりユーザーはステーキングを行ってブロック報酬を受け取りつつ、最終的にはガバナンスに参加することができるのでより一層の分散化につながります。アップデートやコスト、新たなモジュールについてはユーザーによるガバナンスで決定されるようになりますが、終了までにはまだ3、4つの段階が残っています。 コアプロダクトについては、ネットワーク自体がコアモジュールを有していて、それらがネットワークのコアプロダクトになります。分散型メッセージアプリケーションを開発できるメッセージングプロトコルのSyloやインチェイン分散型取引所を開発できるCENNZXプロトコルなどを開発しました。特にCENNZXはオンチェーンでオーダーブックを作ることができる特別なプロトコルです。さらに、Doughnutと組み合わせることで、KYCのためのパーミッションプロトコルが必要なセキュリティトークンなども発行することができます。次は、アプリケーションの中でアイデンティティの設定を行い、ネットワーク上で処理ができるSingleSourceアイデンティティプロトコルです。最後に、自動販売機やPOSシステムなどで私たちのネットワークを実際のビジネスとしてしよすることができるCentraPayもあります。これらが私たちのネットワークのコアプロダクトで、私たちは約25社とアプリケーションの開発を行っており、プロジェクトの内容はウェブページで確認することができます。 新井:暗号資産とメッセージ機能を持ち合わせたSyloについて説明していただきましたが、多数のユーザーを擁するカカオトークなどの既存メッセージサービスに暗号資産の機能を追加する動きも現れています。その中でゼロからSyloを作りあげた理由や他のサービスに対抗するための戦略について教えてください。 Aaron McDonald:Syloは他のメッセージングサービスとは根本的に違うと考えています。既存のメッセージングサービスは暗号資産を取り入れる際にアプリにウォレットを統合していますが、Syloと違って大企業がユーザーに関するデータを収集しビジネスに利用するというユーザープロブレムは解決できません。また、メッセージはエンドトゥーエンドで暗号化されているものの、利用に際しては電話番号やメールアドレスなどの認証が必要です。しかし電話会社やメールプロバイダーは私たちの情報を知っているので、そういった第三機関が私たちに成り済ましてログインしメッセージを確認できてしまいます。一方、Syloはプライベートで分散化されたメッセージングプロトコルで、運営会社や第三機関を介さずにプライベートキーを用いて安全に同等のサービスを利用できます。プライバシーの観点から考えると、Syloが最も適したソリューションとなります。 さらに、Syloプロトコルが基盤から開発されているため、開発者はSyloを利用したシームレスなミニアプリを簡単に開発することができます。そのため中央集権方の暗号資産サービスよりも使用しやすいアプリとなり、エコシステムの発展につながります。 近年の個人情報の流出に関するニュースの報道も、デモクラシーやこういったサービスの重要性を高めています。個人情報の取り扱いに関してユーザーが選択できるのはとても大切なことです。例えば、あるアプリケーションのプロバイダーやサーバーが信用できない場合は、Syloのネットワーク上に作られた別のメッセージングアプリにデータを移行することができます。こういった取り組みもあり、実際にネットワークは暗号資産業界の中でも急速に成長していて、毎週1万人のユーザーがネットワークに参加しています。 新井:個人情報の流出事件などが取り上げられる一方で、まだ多数の人が従来のメッセージアプリケーションを使い続けており、周囲の人々が利用しているので自身も使い続けなければいけないと言う状況にあると思います。ブロックチェーンの思想とも言えるプライバシーの重要性について、どのようにユーザーを啓蒙しようと考えていますか? Aaron McDonald:3つの要素があると思います。一つ目は差別化されたコアバリューで、他社にはないプライバシー保護を行いつつ会話の機会を提供しています。二つ目は、ユーザーに気づきの連鎖を起こします。あるユーザーがプライバシーを気にしてSyloを使い始めると、他のユーザーもその人と連絡を取るためにSyloのネットワークに招待されます。Syloはもうすぐキャンペーンを行う予定ですが、こういった取り組みも相まって連鎖的に私たちのコアバリューであるプライバシー保護の大切さが広まっていくと考えています。ブロックチェーン上に構築されたトークンエコノミクスがユーザーにネットワークを拡大させるインセンティブメカニズムとして機能します。三つ目はパートナーシップとブランドです。Syloのネットワークを利用することで企業にとってもユーザーにとっても今までできなかったことが可能になります。これからはSyloのウォレットを用いた、ユーザーへデジタル資産を利用してもらう機会を提供するキャンペーンを開催するブランドが増えていくと考えられます。これらの3つの要素から、私たちのネットワークを広げられると考えています。 Centralityのビジョンや今後 新井:将来、AaronさんやCentralityが暗号資産業界のなかでどのように活動していきたいか、ビジョンや考えを教えてください。 Aaron McDonald:ブロックチェーン技術を世界規模でインフラストラクチャーとして広めたいと言う考えが根底にあります。そこで重要になってくるのが開発者やファイナンス、法律などの分野で、特に銀行や金融といった分野ではブロックチェーンを用いることで新たなインフラやファンデーションが出来上がっていき、技術の恩恵を受けることができます。実はこの分野に関するプロジェクトを行っており、情報は近いうちに公開される予定です。 さらに、ブロックチェーン技術をコンテンツやコミュニケーションの分野で活かしたいと考えています。私たちはセンサーシップなどに抵抗するため、こういった分野は分散化される必要があると考えています。世間には様々な見方がありますが、コンテンツシェアリングはブロックチェーン上に移行されると言う意見もあります。この2つの分野が一般的にブロックチェーンという文脈で大事になります。 これを踏まえて、私たちはこれらの分野へ投資を行いつつ、可能性やパートナーシップ、ネットワークを拡大していく方針です。私たちは常に「ユーザーにとって世界で一番使いやすいブロックチェーンネットワークを」という目標のもと活動していて、これを武器に100万人規模のアクティブユーザー数を抱えるネットワークにしていきたいと思います。私たちがトークンの保持者に提供したいと考えている価値はネットワークの使用をトークンやネットワークの価値へ変換することです。そのためには、私たちの技術やネットワークが優れていて使いやすいことを証明し、他のネットワークよりも早く成長する必要があります。現在私たちはメインネットへトークンを移行させるのと同時に、取引所を設立してトークンの流動性を高める計画を行なっています。流動性はプロジェクトの将来性にも大きく関わってくるので、来年には流動性に着目して活動も行います。 私の理想のゴールは「人々に世界を変える機会を提供する」ことです。そのためには、自分たちに関するデータを自分で管理するプライバシーと、現在のシステムではカバーされていない人々のためのファイナンシャルシステムの解説が必要です。そのために、Centralityのチームが一丸となって取り組んでいます。 新井:最後に、暗号資産業界ではDeFiなど様々な分野で盛衰が起きていますが、Aaronさんが興味を持っている分野について教えてください。 Aaron McDonald:DeFiはコンセプトとしては新しい金融のドアを開くいい考えだと思います。しかしあまり盲信的になりすぎると安定性に欠けてしまいます。DeFiは私たちユーザーが活動を行うことで収益を生むという構想ですが、実際には新しい価値は何も生み出していません。というのも、金融のインフラストラクチャーの中で、ファンドやトークンの取引所はユーザビリティを生み出しているわけではありません。結果、規模感としても価値観としても、DeFiは非持続的であると言えます。 将来的に、単に機能を提供するだけでなく金融活動の結果まで考慮するファンドなどが出てくれば、それは効率なシステムとなり持続可能なものになると考えます。そうすれば、予測に基づいてデリバティブやローンなどの金融商品も使用することができます。テクノロジーは既存のサービスより使いやすかったり、コストを減らすことによって価値を生み出しますが、DeFiの現状はバブルのように思えます。 もう一つの問題は、多くのDeFi製品を提供している企業は中央集権化されているということです。私たちはDeFiと言いつつも、実態としては通常の企業がバックについており、実際に訴訟事件なども起きています。つまり、ブロックチェーン上にデプロイされたスマートコントラクトは分散化されていますが、その裏にある企業や人々はそうではないのです。DeFiはプロセスが透明化されたという意味でとても興味深い分野であり、可能性を秘めている一方、いまだ完璧ではないと考えています。 新井:ありがとうございます。今回はCentralityの活動やAaronさんの想いを聞くことができました。 最後に 今回は、テックベンチャーのエコシステムを構築しているブロックチェーンベンチャーCentralityの共同創設者であるAaron氏へ行なったインタビューの内容をまとめました。 ユーザビリティに着目して活動しているCentralityの今後の活躍に注目が集まります。 Website : https://centrality.ai
インタビュー
2020/05/28「Plasm Networkを通じて、自由で公平で透明な世界の創造へ」- Stake Technologies CEO 渡辺創太 x CTO 山下琢巳
ブロックチェーン同士の相互運用を行うPolkadot、そのエコシステム内において接続可能なチェーンである「Plasm」の開発を行うStake Technologies。 先日、同社がSubstrateを利用して開発されたレイヤー1ブロックチェーン「Plasm Network」が無事メインネットのローンチを完了させました。 また、Plasm Networkで発行されるPLMトークンは、通算3回のロックドロップによりPLMトークンを得ることができます。 第1回目の3月15日から4月13日に実施された1st LockDropでは全世界から16,783ETHが集まり、世界的にもPlasm Networkに対して非常に注目が集まっていることが伺えました。 https://twitter.com/WatanabeSota/status/1249852357547937794?s=20 今回、CRYPTO TIMESではStake TechnologiesのCEO 渡辺創太氏、CTO 山下琢巳氏にインタビューを実施しました。(※コロナ時期だったため、インタビューはZoomを用いて行っています) インタビューでは、プロダクトの裏にある思想やメインネットローンチ後のビジョンなど、創設者である渡辺氏、CTOを務める山下琢巳氏に話を伺いました。 CRYPTO TIMESでは過去に、株式会社電通が運営するWEBメディアGRASSHOPPERと共同で、Stake Technologies渡辺氏へインタビューを実施していますのでこちらもあわせてお読みください。 ブロックチェーンの本質は「国家の最小単位が再定義され互いに経済圏が繋がること」–Staked 渡辺創太 前編 ブロックチェーンを通し「資本主義や民主主義の新しい実験の場」をどう作るか–Staked 渡辺創太 後編 自己紹介とPlasm Networkの紹介 [caption id="attachment_51842" align="aligncenter" width="800"] 左 : CTO 山下氏 右 : CEO 渡辺氏[/caption] -本日はオンラインでのインタビューの機会をありがとうございます。Plasm networkのメインネットも先日無事ローンチということで、おめでとうございます。早速ですが、自己紹介とプロダクトの紹介をお願いします。 山下 : Stake Technologies CTOの山下琢巳です。Stake Technologiesに参画する以前は、経済産業省直轄のIPA法人が開催している未踏というプロジェクトでパブリックブロックチェーンを0から実装していました。 渡辺 : Stake Technologies CEOの渡辺創太です。もともと大学在籍中にシリコンバレーのブロックチェーンスタートアップであるChronicledに就職し、帰国後Stake Technologiesを設立しました。弊社はPlasm Networkというパブリックブロックチェーンを開発するとともに、企業向けにブロックチェーンソリューションを提供しています。本日はこちらのPlasm Networkについてご紹介できればと思います。 Stake Technologiesが提供するPlasm Networkとは? 山下 : Plasm Networkはパブリックチェーンの大きな課題とされる処理性能とインターオペラビリティ(相互運用性)を解決する日本発のパブリックブロックチェーンです。レイヤー1ブロックチェーンを作っているチームはいくつかありますが大きな比較優位は我々がPolkadotエコシステムの中でグローバルを対象にしたパブリックブロックチェーンを作っているということでしょう。 Polkadotとは異なるブロックチェーン同士を相互に接続するソリューションです。Polkadotに接続することでPlasm Networkには嬉しい特徴が2つあります。 1つ目は、高いセキュリティを担保できる点です。PolkadotにParachainとして接続することで、Polkadot自体のセキュリティをPlasm Networkにインポートすることができます。Polkadotのセキュリティを借りることができれば、パブリックチェーンを提供する上では大きな強みとなります。 2つ目は、繋がっている異なるブロックチェーン同士が相互運用性を持つ点です。BTCとETHの交換を考えると、現状はほとんど集権的な取引所を経由する交換しかありません。これはEthereumとBitcoinが異なる基盤だからです。Polkadotの場合、繋がっているチェーン同士を跨ぐトランザクションであっても、集権的なポイントを必要とせずにオンチェーンで完結することができます。 これらの何が嬉しいかというと、“複数のブロックチェーンがそれぞれ役割を持って展開している”という世界観に合致する点です。 また、Plasm Network自体の特性として処理性能を大幅に上昇させるレイヤー2スケーリングソリューションが実装されていることやハードフォークが仕組み上ないことも大きな特徴です。 レイヤー1パブリックチェーンとしてレイヤー2ソリューションを持つ 渡辺:Plasm Networkの特徴を上げると、Plasm Networkは処理性能の向上に特化したブロックチェーンです。 今でもブロックチェーン自体は、世界人口の数%しか利用されていないにもかかわらず、既にレイヤー1のネットワークというのはパンパンになっています。 Ethereum、Bitcoinにしても、今後もっと多くの人が使い、様々なアプリケーションが乗ることを想定すると確実に耐えられません。我々人間はブロックチェーンの使い方を大きく変えなければなりません。 将来的なパブリックチェーンの使われ方は、レイヤー1を”Trusted Layer(信頼担保レイヤー)”として、ある事象が起きた事実を記録し、それをレイヤー2で処理させて、一定期間ごとにレイヤー1に刻むというパターンが一般的になると思っています。 今回、我々が提供するPlasm Networkは、レイヤー2のソリューションを提供するレイヤー1 ブロックチェーンのような形で作っています。 Polkadotのエコシステムの中では、レイヤー2ソリューションとして現状マーケットシェアを大きく取れていると思っているので、ここでレイヤー2に対する注目、Polkadotに対する注目が日本国内からも集まるようになれば、日本からも十分に使っていただけるパブリックチェーンになることができると思っています。 かつ、そのうえで、Plasm NetworkはPLMというトークン発行も行っているので、将来的な日本の取引所への上場のような点も見据えていきたいです。 Plasm Networkに賭ける理由 Stake Technologiesの目標と思想 山下 : 現在のPlasm Networkには目標・思想があります。それは 自由であること フェア(公平)なシステムで成り立っていること そのシステムはすべて透明なアルゴリズムで記述されていること の3点であり、これらを非常に重視して設計されています。ここで特に重要なのは、アルゴリズムが透明であるという点になります。 EthereumのSolidityで記述されるスマートコントラクトもまさに誰もが検証できるという点で”アルゴリズムが透明”であり、スマートコントラクトで記述されているロジック通りでしか動かないことがEthereum上で保証されています。Plasm Networkも同様に、システムについてのロジックは完全に公開しています。 これらをまとめると、「自由で公平で透明な世界。インセンティブ設計によりできる限り悪意のある行動ができないようなプロトコル」を作ることであり、感覚としては国を作るような感覚が近いです。この点でPlasm Networkは新しい仕組みを導入したバーチャルな国家インフラとしてリリースしていくのが理想形であると考えています。 渡辺 : 日本国外では、アメリカ・中国・ベルリン然り、ブロックチェーンのハブとなっている国・都市にはレイヤー1のブロックチェーンが存在しています。 一方で、プロジェクトを開始した2018年末の時点では、日本でもレイヤー1のブロックチェーンはあるけれど、グローバルを視座に入れて本当に皆に使ってもらうとしているパブリックブロックチェーンはありませんでした。 ブロックチェーンは開発がグローバルに進むインフラ技術です。日本から世界で戦うことのできるレイヤー1ブロックチェーンを開発し、提供することが将来的に日本のプレゼンスを上げることにつながると思います。 なぜ今、Polkadotなのか? 渡辺 : ただ、開発をして提供するにしても、どの段階で勝負をかけるかということも大事です。2019年、昨年で独自チェーン作りますっていうのは時代遅れだし、やるのであれば14年、15年からやっていく必要がありました。 そういう意味で、小さいけれど今後確実に伸びるマーケットに乗る形の方が、将来的に自分たちのやりたいことを達成できるのでは、と思いPolkadotというブロックチェーンを選択しました。 PolkadotはEthereumの共同創業者兼CTOであったGavin Wood氏が0から作っているブロックチェーンなのですが、IoTなどユースケースに特化したブロックチェーンや秘匿化などの技術に特化したブロックチェーンといった異なるブロックチェーンを接続することができます。技術が成熟していくにつれて専業化・分業化が起こるだろうと予測しているのも今、Polkadotをやる大きな理由です。 関連記事 : Polkadot(ポルカドット)とSubstrate(サブストレート)の概要と仕組み、取り巻くエコシステムに関して Plasm Networkのソリューション – Plasm Networkはレイヤー1のパブリックチェーンでありながらも、レイヤー2のソリューションを備えているとのことでしたが、これはどういうことか、もう少し詳しくご説明いただけますか レイヤー1とレイヤー2の技術的な解説 山下 : Plasm Network自体はレイヤー1のパブリックチェーンです。そして、先程も話した通り、Polkadotと接続される予定になっています。そのため、Plasm Netwrok自体はレイヤー2のチェーンではありません。これが前提としてあります。 ではなぜレイヤー2を備えているかというと、レイヤー2を構築するためには色々な作業が必要となってきます。レイヤー2を構築するためにはいくつかのパーツが必要なのですが、この一つがOVMと呼ばれるもの、もう一つがPlasmと呼ばれるものであり、これらを実装する必要があります。 例えば、Ethereumベースでレイヤー2のソリューションを作りたいってなったとき、OVM・Plasmaと呼ばれるロジックをスマートコントラクトを使って実装します。 この役割は、「俗にいうレイヤー2と呼ばれる空間で、レイヤー2での処理をレイヤー1に正しく記録するため」の、レイヤー1のロジックが記述されます。 レイヤー2はレイヤー2で別のチェーンが動いているのですが、これはただのDBであったり、トランザクションをブロックに詰め込んで、マークルルートを保存する普通のDBだったりします。 PlasmaやOVMというのは、そういったレイヤー2のDBとレイヤー1のブロックチェーンをつなぎ合わせるためのプロトコルです。プロトコルであるため、当然規格を合わせなければいけません。 この規格が結構難しくて、EthereumだとSolidityで規格そのものをしっかりと作らなければならず、これが結構な労力を要するものになっています。 Plasm Networkにおけるレイヤー2の実装 山下 : Plasm Networkでは、このプロトコルをスマートコントラクトを使わずに、ブロックチェーンの原始的な機能として提供します。 例えば、Ethereum上で、レイヤー2のアプリを作りたいとき、まずレイヤー2側での独立した処理を記述し、次にEthereum側のコントラクトを開発するというフェーズがあります。 Plasm Networkの場合、レイヤー2は同じように開発しますが、その後レイヤー1の部分にPlasm Networkが提供しているエンドポイントが使われます。これにより、同じレイヤー2の処理でもガスコストが劇的に安価になります。 スマートコントラクトを利用したPlasmaの処理というのは、実は並のスマコンの量ではありません。その処理はとてつもない量で、その量のコードがPlasmaのアプリケーション一つ一つに対してアドホックに実装されています。 そのため、一つ一つのアプリケーションを作る難易度が非常に高くなります。その点、Plasm NetworkではDSL(Domain Specific Language)を使ってレイヤー2のロジックをプロトコルとして定義してあげます。 これをPlasmが読み取り可能な形式に直してデプロイしてあげると、プロトコルとして動作するようになります。これは、スマートコントラクトとは別のものとして動作するため、ガスコストを食わないのが特徴です。 渡辺 : 半ば補足になりますが、処理性能を上げるソリューションというのは、主に2タイプ存在します。 一つは、レイヤー1でできることを増やそうというもの。このパターンではブロックサイズの増加やシャーディングなどがソリューションとなります。 もう一つは、レイヤー1でできることを減らそうというもの。つまりレイヤー1でやることを減らして、ここをレイヤー2で代替しようというものになります。 Plasm Networkではこの2つ目の方法を取っています。このレイヤー2技術を使いゲーム・DEX・ブリッジなどが作られていきます。 Polkadotのエコシステムについて - 現状、Polkadotのエコシステムに接続するチェーン(Parachain)の中で、レイヤー2のソリューションを持っているのはPlasm Networkだけなのでしょうか? 渡辺 : 現状では、Polkadotに接続されるであろうチェーンとしてレイヤー2の実装があるのは我々のみになります。Polkadotの良いところは、チェーンがつながれば繋がるほどユースケースが増えていく点にあります。 例えば、秘匿化に特化したチェーン、スケーラビリティに特化したチェーン、ステーブルコインに特化したチェーンがそれぞれ存在する場合、超高速の秘匿化ステーブルコイン決済なども可能となると言われています。 こうなってきた場合に、Plasm Networkは高い処理性能を有するのでユースケースを実現する基盤として機能することが見込まれます。 別の言い方をすると、組み合わせることで生まれた、新たなエコシステムにおけるユースケースをどの基盤で動かすか?という場合に、スケーラビリティを持つPlasm Networkが利用されていきます。 Plasmとして、アプリケーション基盤としての立ち位置の獲得方法 - メインネットのローンチが完了し、今後さらにアプリケーションがチェーン上に実装されてくると思います。現状、Ethereumでは、DeFi系のアプリケーション、TronやEOSなどではギャンブル系のユースケースが存在しています。Plasmはメインネットのローンチ直後で、パブリックチェーンとしては、後発というポジションです。その中で、今後アプリケーションを増やしていく戦略等はありますか? 山下 : Plasm Networkには、DApps Rewardという報酬付与の新たな仕組みを導入しています。 今までのDAppsの開発におけるマネタイズというのは、取引手数料の中から%をとるとか、そういった思想が一般的でした。これらのケースだと、取引時の時価総額自体 がそんなに大きくないパターンだとマネタイズが難しいです。 また、その結果としてギャンブルのアプリケーションなどが有用になってしまう。このような問題があります。Plasm Networkでは、アプリケーションの評価はユーザーが行います。 ユーザーがスマートコントラクトに対してステーキングという動作を行い、その量に応じてアプリケーションの人気度のようなものが計算されて、それに応じてチェーンから報酬が支払われるという仕組みを導入します。 スマートコントラクトの開発者は、チェーンに対して貢献しているとみんなに思われたら、コントラクトの開発者はチェーンからブロック報酬のような形で報酬を獲得することができるようになります。 そのため、DApps開発者は、スマートコントラクトをどのチェーンにデプロイしようかなとなったときにPlasm Networkで開発すると別途、利益を獲得することができますう。 ブロックチェーンは報酬設計を自由にいじれるので、そこの第一ステップとしての実験的な仕組みだと考えています。 その中で、私が考えるユースケースはいくつか有ると思っており、我々がPlasm Networkのユースケースとしてマイクロペイメントなどを実装していきたいと思っています。 このマイクロペイメントのユースケースの例でいうと、ポイントアプリや広告があげられます。我々は最初は広告のアプリケーションをQ4に提供する予定で開発しています。 - 本日はありがとうございました。最後にお二方から今後に関してコメントをいただけますか? 山下 : 今ある世の中に理不尽を感じている人が多数。全体の多数というよりはクリプト、ブロックチェーン界隈の多数であると思っています。 社会の理不尽に対抗する手段がブロックチェーンであり、その性質は解決に対して極めて有効です。 「自由」「公平」「透明」 自由な行動を透明なプロトコルによって制御し、透明な仕組みを構築することで、自分がハッピーになるような行動で皆がハッピーになる世界を作り上げたいです。 我々が、パブリックチェーンのマネタイズを成功させることで、氷河期を迎えていた2018、仮想通貨・ブロックチェーンに対してまだやれるということを示していきたいです。Web3.0の夜明けとなるプロダクトを我々が作っていきたいと思います。 渡辺 : 日本人として、グローバルでの日本のプレゼンスが低いことを危惧しています。そして、これはもっと高めないといけないものであると思います。 やはり、グローバルで国際標準が進むEthereumやPolkadotなど、その他諸々のパブリックチェーンがあって、日本人が技術貢献している、エコシステムの中で重要な立ち位置であり続けなければならないです。 EthereumやPolkadotがデファクトスタンダードになっていく中でまだまだ日本人が少ない、こういった疎外感を切り開いていきたいですね。 取材/編集 = 新井 , 文章 =平田 , 画像提供 = 新しい経済
インタビュー
2019/12/23ブロックチェーンを活用したデジタルキーを共同開発, アルプスアルパイン社とフリービット社にインタビュー
アルプスアルパイン社、フリービット社の2社は昨年より、ブロックチェーンを利用した車載デジタルキーの共同開発を進めています。 CryptoTimesでは、両社のデジタルキー開発担当者7名にお話を伺いました。 ”インターネットの普及により社会へ大きな変化が起きた。それと同等の変化が起こる!” ”仮想通貨の購入をきっかけに分散性や安全性の技術を調べ始め、面白さを感じた” ”中央管理者がいない分散管理の仕組みなどの技術を深堀していくと興味深いことが多い” などブロックチェーンに関心を寄せたきっかけも様々な2社7名に対してのインタビューです。 今回のインタビューでは、共同開発するデジタルキーやログシステムの詳細、今後のブロックチェーン業界に関する展望など、様々な視点から語っていただきました。 *本記事はインタビューのスクリプトを一部編集したものになります。 アルプスアルパイン社・フリービット社について アルプスアルパイン社は電子部品や車載情報機器を取り扱う企業です。近年ではCASE(Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric)と呼ばれる車載新領域に力を入れています。 フリービット社はブロックチェーン含む様々なインターネット関連サービスの提供・コンサルティング等を行っています。 両社は本年7月、100年に1度の大変革期に直面する自動車業界において、MaaS(Mobility as a Service)に寄与する「シームレスカーライフ」の実現を目的に業務提携を発表。ブロックチェーン技術をベースに、デジタルキーシステムやシステムの改ざんリスクに対応するログ保管サービスなどを共同開発しています。 ブロックチェーン活用デジタルキーシステムについて 今回インタビューに応じていただいた、アルプスアルパイン社とフリービット社が共同開発しているデジタルキーシステムには、ブロックチェーンの技術が応用されています。 プラットフォームにはEthereumが利用されており、所有権を表すデジタルキーは改ざんを数学的に不可能とするデータベース上に保管されます。また、Ethereumに書き込む際に必要となる秘密鍵は、HSM(Hardware Security Module)という秘密鍵を安全に保管する専用機器にて生成、管理しており、よりセキュリティが高い仕組みを目指しています。 CEATEC 2019や東京モーターショー2019で紹介したデモでは、アプリの開閉操作ボタンによる開・施錠が可能となるシンプルなデザインとなっており、ブロックチェーンの知識がない一般の利用者も容易に利用できるようになっています。 開発に携わるメンバーへのインタビュー [caption id="attachment_46320" align="aligncenter" width="800"] 写真左からご紹介[/caption] アルプスアルパイン社 江崎さん:コネクテッドサービスプロジェクト, マネージャー 佐藤さん:同上, サービス開発 横田さん:同上, サービス開発, 量産化に向けた要件整理など 田口さん:同上, 車載キーソフトや関連機能のサーバー設計など フリービット社 Jakub(ヤクブ)さん:デジタルキーのシステム設計など 田中さん:クラウドインフラ事業部, アプリの量産化に向けた要件整理など 玉野井さん:クラウドインフラ事業部 事業部長 ブロックチェーンを利用した共同開発デジタルキー [caption id="" align="aligncenter" width="720"] CEATEC2019 エキシビションより引用[/caption] ※「ア」:アルプスアルパイン社 ご担当者様 「フ」:フリービット社 ご担当者様 --デジタルキーにブロックチェーンを活用しようと決めたのはいつ頃ですか。 ア:18年の夏頃です。AIやビッグデータのほかブロックチェーンも自動車業界に大きなインパクトを与えるゲームチェンジャーになる可能性があると考えています。 当社は長年、車のリモートキー開発に取り組んでおり、Car Connectivity Consortium(※1)にも参画しています。 この強みを活かしつつ、また自社でまかなえない技術はフリービット社と協力することでブロックチェーンを活用したデジタルキーの開発を進めています。 フ:自動車のデジタルキー向けにブロックチェーンを活用する価値は大きいと考えています。 自動車向け製品は安全面・セキュリティ面の要求が非常に高いですが、ブロックチェーンを利用すればそれらをクリアすることができます。 また新車市場だけではなく、中古車市場まで考慮した場合、従来のサーバー管理型のシステムでは誰が管理コストを負担するのかが大きな問題でした。 パブリックに情報を分散管理するブロックチェーンであればこの問題も解決することができます。 ※1 スマートフォンと自動車を連携させる通信ソリューション向け技術をグローバルに推進する業界団体 --現在の開発状況をお聞かせください。 ア:今期に開発を完了させ、来期に事業化できるよう取り組んでいます。 ただし、いきなり量産化するのは難しいので、当社のリソースを活用した社会実験を行って、安全性の確認が取れ次第のリリースを考えています。 製品開発と社内の体制 --開発はどれくらいの人数で進められていますか。 フ:時期による変動はありますが、10人程度です。 ア:5名程度です。 --ブロックチェーン技術に関する研修や勉強会などは定期的に開催されているのでしょうか。 ア:不定期で行っています。 デジタルキーやThe Logなど、ブロックチェーンのプロジェクトに携わっているメンバーが他部門のメンバーに対して、ブロックチェーン技術の基礎から動向までを説明し、社内での知見共有を図っています。 当社はIT企業ではなくメーカーなので、基礎の基礎から説明しなければ、なかなか理解が得られず、勉強会を行うと長丁場で大変になってしまいますね。 ベース技術に関連するサービス展開のビジョン [caption id="attachment_46321" align="aligncenter" width="792"] CEATEC2019 展示資料より引用[/caption] --デジタルキーにはEthereumが使われていると伺いました。施錠における即時性が求められる状況で、処理速度が実用レベルに達していないEthereumをベースとして選択した理由はございますか。 フ:本システムにおいて高い処理速度が必要になるのは開・施錠の実行。これはスマートフォンと車載機間の通信です。Bluetoothを用いることで即座に実行することを可能としました。 Ethereumが関わってくる部分は車の新規予約や予約内容の変更/削除などです。これらはユーザーが自宅や移動中など自動車に乗る前に、事前に処理しておく部分ですので、即時性は求められていません。 --オープンソースのパブリックブロックチェーン上でサービスを展開していくとのことですが、他サービスとの連携も視野に入れていますか。 フ:車だけではなく家やホテル、民泊、ロッカーなどに応用展開できると考えているので、他サービスとの連携・拡大も意識しています。また、サービスの継続性を担保しなければいけないため、Ethereum以外のプラットフォームにも対応できるようにする準備が必要です。 これから更なる研究や検証が必要になってくるでしょう。 業務提携第二弾として開発を進めるThe Logとは --デジタルキー以外でのブロックチェーン活用用途を検討されていますか。 フ:The Logというインターネットインフラログシステムの開発を進めています。 これは書き込みにかかる時間・コスト・情報機密性の問題でパブリックブロックチェーンに全てを保管することが難しいログ情報を分散型のファイルシステムへ格納し、そのデータの参照に必要なキー情報のみをブロックチェーンに連携することで、最小限のコストで高いセキュリティを担保することが可能なオフチェーン向けのログ保管プラットフォームです。 ア:デジタルキー同様に自動車業界への適用が可能なシステムと考えています。当社ではすでに、一部の社内システムに採用しています。 --The Logのリリース時期をお教えいただけますか。 フ:β版は既にリリースが完了しており、現在は機能のブラッシュアップや性能の改善に取り組んでいます。 現段階では、正式なリリースは決めておりませんが、来年の前半ごろにはリリースできればと思っています。 国内外のブロックチェーン業界と今後の展望 --国内だとブロックチェーン技術よりも暗号通貨に関心が集まっている印象があります。日本におけるブロックチェーンを活用した事業のスピード感についてどのようにお考えでしょうか。 フ:日本のエンジニアは新しいものに飛びついて何かを始めるというより、既存の技術をいかに応用していくのかを考えていると感じます。 まったく新しいものを創りあげるワクワクドキドキ感を諦めている空気が日本にはあるのではないでしょうか。 ア:日本では新しいものをいかに早くリリースするかではなく、安定したものを提供することが優先されていると感じます。 事業のスピード感が遅いと感じる一因ではないでしょうか。 日本で浸透していく確信はありますか。 ア:自動車業界では企業ごと独自に実証実験が行われていたり、コンソーシアムチェーンを立ち上げるなどの活動が進んでいるので、少しずつ浸透してきていると感じています。 当社は売り上げの8割が海外のお客様なので、北米やヨーロッパのお客様がMOBIへ参加している状況を踏まえると、グローバルでも自動車業界は盛り上がるだろうと感じています。 [caption id="attachment_46316" align="aligncenter" width="1246"] MOBIのスマートコンソーシアム参加メンバー(一部)[/caption] フ:日本で浸透していくか否かは分かりませんが、グローバルで見るとEthereumはものすごいスピードで開発が進んでいるので、技術自体は絶対になくならないと思っています。 世界的に見ると今後さらにユースケースが拡大していくでしょう。 まとめ インタビューの最後に今後の課題を伺いました。 ■サービスを継続するための相互運用性が必要との意見が挙がりました。 ”Ethereumを利用しているが、価格が下がる、あるいはもう少し安定してほしい。また、サービスの継続性という観点では、他のプラットフォームに容易に切り替えられるような仕組みづくり、相互運用性を増すことができれば良いと思う。” ■自動車業界におけるブロックチェーンの盛り上がりという観点からは、技術の複雑さも一つの課題とし、他業界の重要性についても述べられています。 ”自動車業界以外でもブロックチェーンが応用され始めると、我々の取り組みがより説明しやすくなります。基本的な技術・仕組みを理解していただけると、ブロックチェーンに対する抵抗感や誤解が生まれなくなると思うので、他業界でも盛り上がるといいなと思っています。” ■展示会などでシステムの説明をする機会の多いプロジェクトメンバーからは、ユーザーに提供する価値が重要であるという声も挙がりました。 “世間ではブロックチェーン技術はまだ一般的ではないので、展示会などでは仕組みの説明に終始してしまうことがほとんど。重要なのは技術ではなくその応用により提供される価値です。今後ブロックチェーンが浸透していき、真の価値にフォーカスされるような流れを作っていく必要があると思います。” 企業のサービス適用としては珍しいパブリックチェーンのEthereumを使っている点や、来年には製品のリリースが行われていくというスピード感は、国内のブロックチェーン業界がより注目されていくための大きな要素となりえます。 CryptoTimesでも今後、自動車業界の動向についてお伝えしていければと思います。 <参考> モビリティコンソーシアム「MOBI」について MOBIは非営利のスマートモビリティコンソーシアムであり、先進的な考え方を持つ企業、政府、NGOと協力して、標準化を推進し、ブロックチェーン、分散台帳、および関連技術のモバイル業界への導入を促進することで、モビリティサービスの効率化、低コスト化、グリーン化、安全化、混雑緩和の実現を目指しています。 MOBIは、コンソーシアムを拡大し、その多くの潜在的な利益を実現するために、都市、インフラプロバイダー、消費者、およびモビリティサービスの生産者の世界的なネットワークの構築に注力しています。 関連リンク アルプスアルパイン株式会社, 公式HP フリービット株式会社, 公式HP