Ramp DeFiインタビュー -ステーキングされた資産をアンロックし、流動性のある資産にする」ことを目標に-
Crypto Times 編集部
今回は、10月10日にPublic Saleを実施したRamp DeFiのCo-FounderであるLawrenceにインタビューを実施しました。RAMP DeFiは「ステーキングされた資産をアンロックし、流動性のある資産にする」ことを目標に活動するDeFiプロジェクトです。
10月10日に行われたパブリックセールではその人気の高さから5分間で3047名が実施を行ったほどです。
1) RAMP Public Sale has been completed. The response has been overwhelming.
– 3047 submissions in just 5 mins.
– probably the most difficult quiz ever.. but 561 participants cleared it.
– 165 received allocations.
– 79.3% chose to be Strong Holders.https://t.co/0SNYWGmzFl— LeverPro (@LeverProLaunch) October 10, 2020
日本ではまだ認知度の低いRAMP DeFiに関して、彼らのプロジェクトが解決しようとする問題、今後の展望などを赤裸々に語ってもらいました。
目次
参加企業説明
CRYPTO TIMES
「CRYPTO TIMES」は、ブロックチェーン・暗号通貨に関する日本向けのWEBメディア。
2018年1月末にスタートし、一次情報やブロックチェーンに関する正しい情報を発信することで、少しでも多くの人に向けて正しいブロックチェーンの知識を伝えることを目指している。
2020年2月にはリサーチレポートCT Analysisの提供も始め、今後は日本マーケットのブロックチェーンの理解の底上げに努めていく。
IOST
スケーラビリティの問題を解決し、Proof of Believabilityというコンセンサス メカニズムを採用した、スマートコントラクトを利用してDAppsを構築することのできるブロックチェーン・プラットフォームを提供するプロジェクト。
2019年2月よりメインネットがリリースし、この1年はIOSTのエコシステムの拡大のために日本は勿論、海外でも大きく活動を続けてきている。
Ramp DeFiに投資を行い、エコシステムパートナーも務める。
関連記事 : IOSTとは DApps開発のための次世代ブロックチェーンの将来性を解説 – CRYPTO TIMES
Ramp DeFi
「ステーキングされた資産をアンロックし、流動性のある資産にする」ことを目標に活動するDeFiスタートアップ。過去2年で成長したステーキングエコノミーの「資産を最大限に活用できる分配を行うのが難しい」「ステーキングされた資産の流動性が失われてしまう」という課題の解決を目指す。
ERC20ではないトークンを担保としてイーサリアム上にステーブルコイン「rUSD」を発行できるプロダクトを開発している。これにより、シームレスな流動性の供給を行う。
インタビュー
新井(CRYPTO TIMES):今回はインタビューありがとうございます。ブロックチェーンや暗号資産に関するウェブメディアCRYPTO TIMESを運営する新井です。今日は、Rampのプロジェクトについてお話を聞かせてください。
Lawrence(Ramp DeFi):ありがとうございます。私はRamp DeFiのプロジェクトリードのLawrenceです。今日は私たちのプロジェクトについてお話しできるのを楽しみにしています。
Ramp DeFiのプロジェクトについて
新井:初めに、日本市場に向けてRamp DeFiのプロジェクトを紹介してください。
Lawrence:Ramp DeFiはステーキングされたアセットのアンロックに焦点を当てています。過去数年間に、たくさんの投資家たちがイーサリアムVMと連携せず、独立している状態のブロックチェーンエコシステムへ資本を投下しています。今日(インタビューは2020年8月下旬に実施)では、220億ドル(2兆3000億円相当)の資産がロックアップされ、ステーキングされています。
しかし、ロックアップされた資産を保有している状態では、資産の有効活用はできず、生産性も下がってしまいます。そこで、私たちは投資家が資産のポートフォリオを流動性のある資産として扱えるようにします。これにより、従来のキャピタルゲインやステーキング報酬を維持したまま、流動性のある資産を用いて新たな投資の機会を生み出します。
具体的には、IOSTなどのブロックチェーン上からアセットをバリデーションコントラクトへ移し、ステーブルコインの担保として使用できるWrapped IOSTを受け取ります。このステーブルコインはラップされ、イーサリアムチェーンへ移行されるので流動性のあるUSDTやUSDCを借り入れることができます。こうして、IOSTトークンを手放すことなく、現金に変えて使用できるUSDTやUSDCなど流動性のあるステーブルコインを手に入れることができます。
私たちのプロジェクトにはRAMPトークンというものがあり、RAMPはステーキングや担保に使用するなど、プロトコル内の全ての用途に使用することができます。RAMPサプライの45%はユーザーがネットワークに参加するために確保してあります。
新井:現在、DeFiが流行ったことで、Ethereumではガスの高騰などの課題も起こっています。これらの問題もRamp DeFiのクロスチェーンソリューションで解決は可能でしょうか?
Lawrence:DeFiがイーサリアムチェーン上で活発になっているのは、流動性の高いUSDTやUSDCの存在が大きな理由であると考えています。また、Uniswapなどの主要なDeFiプロダクトがイーサリアム上に構築されているのも大きな理由です。こう言った理由で、ガスが高騰しているにもかかわらず、投資家はイーサリアムチェーン上でDeFiを使用しているのだと思います。このトレンドは、イーサリアム以外のチェーンがユーザーやその資産をエコシステムへひきつけることができれば変わるかもしれません。
Ramp DeFiの独自性と優位性
新井:現在、流行っているDeFiにおいてはプールやその流動性は非常に重要だと思っていますが、Ramp DeFiはどのように流動性を確保する予定でしょうか?
Lawrence:Ramp DeFiは他のDeFiとは違う考え方をしています。他のDeFiプロジェクトは全て、ユーザーにたくさんの資産を預けて(デポジット)もらうよう誘導し流動性を確保します。その結果、プロジェクト同士で競争が起きます。
Ramp DeFiはその反対の考えをしていて、アンロックされた価値を指標としています。私たちはステーキングされているトークンを担保としてステーブルコインを発行することで価値のアンロックを行っています。これにより、エコシステムの中の資産の流動性を高めています。私たちの活動は、DeFiエコシステムにとって強力でポジティブな原動力になると思います。
新井:他のプロジェクトがプールに資産を預けようとしている中で、アンロックされた価値を指標としておくのは面白いですね。今日、多くのプロジェクトがトークンを発行していますが、個人的には価値のないものも含まれていると思います。RAMPトークンは将来のガバナンス以外の価値があると考えていますか?
Lawrence:ユーティリティトークンのRAMPトークンの保持者は複数のメリットを享受することができます。1つ目は他のプロジェクトでも行っているガバナンスへの参加です。
2つ目はRamp DeFiのrPoolからの報酬です。Ramp DeFiにはrPoolと呼ばれるプールがあり、全ての借入や利子、そして手数料などが生み出されます。別の言い方をすると、借り入れやステーキング報酬、そして利子が全て入っているプールです。RAMPトークンの保有者は定期的に(Ramp DeFiの公式Mediumによると毎週)配当が与えられます。
最後に、私たちがファーミングパワーと呼ぶメリットがあります。RAMPトークンを用いてステーキングを行うことで、他のトークンと比べてより多くのファーミングを行うことができます。
このように、ユーティリティトークンを保持することで利益を得ることができるビジネスモデルになっています。このビジネスモデルによってユーザーがRAMPトークンを使い続け、rPoolに資産が集まり、エコシステムが拡大するという好循環を生み出すことができます。
新井:ただ、Ethereumのガスが高騰し続けたことや今後様々なプロジェクトがDeFiでも多くでてくると思います。そのため、DeFiにとって他のプロダクトとの連携は非常に重要である私は考えていますが、Rampエコシステムの拡大のために考えていることはありますか?
Lawrence:私たちが優先しているのはRamp DeFiのプロダクトを他のProof of Stakeを採用しているブロックチェーンへ拡大することです。そうすると、私たちのソリューションへのアクセスが容易になり、結果としてアンロックされる資産がさらに増加します。
また、他のプロダクトとの統合も進めていきたいと思います。DeFiエコシステムの中にあるCompoundのような他のプロダクトが私たちのプロダクトを利用できるようにすることで、他のプラットフォームからのバリュートランスファーがより統合されたものになります。
新井:因みにですが、少し思ったのはKavaの仕組みにもにているなと思いました。Ramp DeFiのプロダクトはKavaにも似た部分もあると思いますが、Kavaやその他のプロダクトとの差別化や優位性はどのようなものがありますか?
Lawrence:KavaとRamp DeFiの違いの一つは、Kavaにはステーブルコインを発行するために支払うStability feeがあることです。一方、Ramp DeFiにはそのような手数料がないので、ユーザーにとって使いやすくなっています。
また、Kavaはレンディングや借入をユースケースのように扱っている側面があります。資産に担保されたステーブルコインを発行することはできますが、米ドルに裏付けられたUSDTなどのようにフィアット通貨のように使用することができません。しかし、私たちは資産を保持している人から借入を行うことによって、ステーブルコインに市場や使い道を作っています。
Ramp DeFiのエコシステムについて
新井:DeFiは世界的に広がっていますが、実世界でももっと活用できるようになったりのような必要があると思っています。例えば、Binanceはデビットカードを発行し始めており、そこにKavaのステーブルコインをチャージできるようになったりするのではないかと考えています。Ramp DeFiは将来的に実世界におけるDeFiエコシステムの拡張は考えていますか?
Lawrence:これはユーザーに新たな市場や機会を提供できる革新的なプロダクトの開発に関わるとてもいい質問です。例えばUniswapは中央集権型の取引所が流動性を供給しなくてもトレードができるという機会をユーザーに提供したことでブームが起きています。このように、ユーザーが新たな利益を得ることができる市場や機会を作っていくことが非常に重要であると考えいますし、勿論、我々も将来的にそこに着手していかなければ行けないと考えています。
新井:トークン配布のモデルに関して、変化した点や、重要だと思う部分はありますか?
Lawrence:昔のICOモデルとDeFiプロダクトのトークン配布の大きな違いは、DeFiはユーザーの参加に注目していることだと思います。ICOではエアドロップなどの形でマーケティングが行われましたが、ユーザーが入手しても使い道がなく販売目的での購入になっていました。DeFiではトークンを獲得するために流動性を供給する必要があり、ネットワークに参加することになります。ユーザーがエコシステムのオーナーシップを得ることになり、トークンを売るのではなく保持してファーミングを行い利益を得ることができます。
こういったシステムが機関投資家や個人問わずにたくさんの人々のエコシステムへの参加を促しています。ユーザーがネットワークに参加し、トークンを得るために様々な活動を行うというのは持続性という観点からも重要であると考えています。
平田 (CRYPTO TIMES):近年、中央集権的な従来の取引所はUniswapをはじめとするDEX(分散型取引所)によって圧倒されているように感じます。こういった分散化の動きに対してどのような考えますか?
Lawrence:分散型取引所は流動性をコントロールできるので市場を独占しているのだと思います。分散型取引所では従来のオーダーブック方式ではなく流動性を用いているので、クリーンな取引が可能です。
流動性の供給者がいて持続的な流動性(continuous liquidity)を持つ分散型取引所では従来のオーダーブックは存在せず、新たな方法の取引が可能になりました。過去2年間で求められていた、新たな選択肢が誕生し、認知されています。これが分散型取引所が人気になっている理由の一つだと思います。
Ramp DeFiの運営について
太田 (IOST Japan):Ramp DeFiはシンガポールで運営されていますが、運営拠点としてシンガポールを選んだ理由やメリットを教えてください。
Lawrence:シンガポールは政府がファイナンスやテクノロジーなどの国としてイノベーションを推進しています。規制もとても明瞭かつ優しく、プロジェクトを行うにあたって規制面で苦労することなくユーザーサイドに尽力することができます。こういった側面から、シンガポールはDeFiプロジェクトを行うにあたって適した場所であると思います。
太田:プロジェクトやその計画はいつ始まったのですか?
Lawrence:プロジェクトは2019年の後半に始まりました。当初はデリバティブ商品の提供を行おうと考えていましたが、DeFiのブームが訪れる前の時代であり出資を受けるのに課題がありました。現在も資金調達は続けています。
2020年の第二四半期にはDeFiが盛り上がりを見せ、それと同時に現在のRampプロジェクトへのピボットを行いました。再度投資家の元を尋ねて出資をつのり、DeFi市場が好調だったこともあり以前よりスムーズな資金調達が行えました。
私たちが以前Medium上に記事を公開したところ、私たちに出資してくれたArrington XRP CapitalやIOSTをはじめとしたたくさんの人がプロダクトに興味を持って記事を読んでくれました。その結果たくさんの投資家が資金を出資してくれました。
太田:このプロジェクトはLawrenceさんにとってIOSTに次ぐ2つ目のプロジェクトですよね。IOSTでは様々なことを経験していると思いますが、一番難しいのはコミュニティの形成だと思います。Ramp DeFiは数週間でテレグラムやTwitterのフォロワーを獲得できましたよね?
Lawrence:IOSTはRamp DeFiを始める2年ほど前から在籍しており、テストネットやプロダクトのリリースをはじめとしたプロジェクトにとって重要な様々なことを学べたので今でも自身の基礎となっています。IOSTの経験のおかげでRamp DeFiは急激に成長することができ、現在ではテレグラムのフォロワーは4000人、Twitterでは2000人のフォロワーを獲得できました。
急激な成長の理由の一つはインフルエンサーがプロジェクトについて拡散してくれたことです。また、IOSTで積み重ねた投資家などとの繋がりもとても大きな鍵となっています。
IOSTとの違いとして、私たちはユーザーのパーティシペーションに着目しているので、エアドロップは行いません。最初にデプロイするスマートコントラクトにより、ユーザーはRampを受け取ることが可能になる予定です。それ以降はRampトークンを用いたファーミングが可能になります。
これはエアドロップよりも、USDTをデポジットすることでトークンによるファーミングを行うリクイディティファンディングに近い考え方であると思います。こういった理由で、エアドロップをマーケティングとして使う予定はありません。
Ramp DeFiの活動と今後の展望
太田:すでに行われたプライベートセールと、今度行われる予定のパブリックセール(既に10月10日にセールは終了済み)について教えていただけますか?
Lawrence:プライベートセールはとても小さなラウンドで、百万ドル(1億円相当)の資金調達を行いました。大事なのは他のブロックチェーンファンデーションへ私たちのプロジェクトを紹介してくれる戦略的なパートナーを見つけることです。全ての投資家はこういった人脈を持っていて、それがRamp DeFiの成長につながります。
こういった戦略により、投資家たちは投資限度額まで投資してくれました。投資限度額があるので、投資家は長期にわたって資金調達に協力してくれます。投資家たちはトークンに対して魅力を感じているので、パブリックセールに参加する他の参加者は不当廉売を心配する必要はありません。
もうすぐ行われるパブリックセールにより、ユーザーが私たちのトークンを保有するようになります。また、パブリックセールに合わせてプロダクトもリリースする予定で、さらにRampトークンを入手することができます。
新井:最後にRamp DeFiの将来の展望や、DeFiとクリプト市場に関するコメントをお願いします。
Lawrence(Ramp DeFi):私たちは革新的なプロジェクトが生まれているDeFiの初期段階にいると思います。革新により、これからさらに成長する余地があると考えています。
また、大事なのは革新はユーザーの課題を課題を解決することと、活動を裏付けるビジネスモデルが存在することです。現在の市場は過剰な盛り上がりのようにもみえ、いつかは修正が行われると思います。しかし、ユーザーのための課題解決やビジネスモデル、新たな機会の提供を通して産業が持続的なものへと育つ余地があると思います。
最後に
今回のインタビューでは「ステーキングされた資産をアンロックし、流動性のある資産にする」ことを目標にシンガポールで活動するRamp DeFiの活躍や今後の展望について知ることができました。
Ramp DeFiはプロダクトを通してクロスチェーンリクイディティの供給やステーキングトークンをステーブルコインに変えて実世界での使用を容易にするなど、現在のクリプト市場が抱える課題を解決するプロジェクトです。
今年8月に行ったトークンのプライベートセールではAlameda Research、ParaFi Capital、XRP Capital、IOST、Signum Capital、Ruby CapitalそしてBlockwater VCから1億円以上の資金調達を行っています。
DeFi分野は近年IOSTをはじめたくさんのファンドが投資を行い、新たなプロダクトが生まれて話題になっています。Ramp DeFiはイールドファーミングに取り組む先進的なプロジェクトであり、今後の成長に期待が集まります。