「世界のトッププレイヤーを巻き込み、日本発のブロックチェーンを世界のブロックチェーンに」Plasm Network CEO : 渡辺創太インタビュー

「世界のトッププレイヤーを巻き込み、日本発のブロックチェーンを世界のブロックチェーンに」Plasm Network CEO : 渡辺創太インタビュー

2月9日にPlasmNetworkは大手暗号資産取引所Binanceをリード投資家とする資金調達を実施しました。

今回のインタビューでは日本発のパブリックブロックチェーンであるPlasm Network(プラズムネットワーク)のCEOである渡辺創太さんへのインタビューに関して書いてあります。以下、インタビューの内容となります。

Plasm Networkとは

Plasm Networkはパブリックブロックチェーンの直面している大きな課題である相互運用性(インターオペラビリティ)とスケーラビリティ(処理性能)の解決を目指すSubstrateベースで開発された日本発のパブリックブロックチェーンです。

Plasm Networkは、Ethereum Virtual MachineをサポートしておりEthereum上にデプロイされたスマートコントラクトをPlasm Network上で使用することも可能です。

PolkadotエコシステムにおいてPlasm Networkおよびコア開発会社であるStake TechnologiesはPolkadotのテストネットに世界初となる接続に成功、Polkadotを開発するWeb3財団より世界最多の助成金を獲得、Polkadotのテストネットに世界初のスマートコントラクトをデプロイ、UC Berkeleyのアクセラレーションプログラムを卒業するなど確かな成果を上げています。

過去にはPolkadotエコシステム内で最多となる全6回の助成金をPolkadotの開発主体から獲得、トークン配布では約65億円相当のETHがスマートコントラクトにロックされるなどの実績を持っています。

Plasm Network CEO 渡辺創太氏インタビュー

–今日はよろしくお願いいたします。昨日Binanceがリード投資をPlasmに対して実施したという発表が出ましたが、こちらの反響は大きかったですか?

渡辺創太:久しぶりのインタビューありがとうございます。発表はかなり反響があり、良かったです。

大手取引所であるBinanceからの資金調達なので多くのメディアにも取り上げてもらいました。またPolkadotのコミュニティで最初の資金調達であった点も大きかったと思います。

資金調達を行った経緯

Plasm Network Founder : Sota Watanabe氏

–資金調達に向けて6ヶ月前から動いていたという話でしたが、去年Plasm Networkがメインネットになってから資金調達を行うまでの経緯を教えてください。

渡辺創太:6ヶ月かかった理由はパブリックブロックチェーンを作る会社として日本に前例がなかったからです。法律、税制、Exitまでの道のり。

チームのメンバーと全てを考慮しつつ慎重に進めました。特に税制と法律は海外と日本は大きく違い、この領域では日本は後手に回っているためどのようなスキームでやれば海外のプレーヤーと台頭に戦えるところまでいくのかの議論を専門家の方々と多くしました。その中で尽力してくれた方々には多大な感謝をしています。結果、シンガポールに法人を作りシンガポールで資金調達をしました。

振り返ると、もう少し早い時期に調達をするべきだったし、時期を早めることも可能であったと思います。

–海外拠点の会社を作ったのですね、それで6ヶ月という長い時間がかかってしまったんですね。それ以外で言うと調達の可否に関する調査に時間を要したのか、アメリカや中国との連携に時間がかかったのかどちらでしょうか。

渡辺創太:どちらにも時間がかかりました。ただ、結果論としてですがPolkadotが盛り上がりを見せたのがここ2、3ヶ月なので結果としてタイミング的によかったとも思います。

–今回の資金調達を進める上で苦労した点はありましたか。

渡辺創太:個人的には、現段階で日本においてパブリックブロックチェーンの起業家は肩身が狭いように感じます。そもそもこの領域に関わっている人が少ないので、チームメイトのような協力できる人があまりいないんです。さらに前例となる事例やベンチマークとなる企業がないので手探りになってしまいます。法制度も事例がないと変わっていかないので、与えられた仕組みの中で結果を出すのが大変でした。

–今回資金調達という面も含め、改めてブロックチェーン領域における、海外と日本の違いを感じたと思うんですが、日本と海外を比べてどう言う印象がありましたか?

渡辺創太:日本ではすでに数年間の遅れが出ていることを客観的に認識したほうがいいと思います。中国は国家戦略としてブロックチェーンを利用していて、行政や司法の分野で活用が進んでいます。アメリカでも政府が銀行に対してステーブルコインの取り扱いを許可、推奨しています。海外では政府として技術を用いてイニシアティブを生み出そうという姿勢がある一方、日本は暗号資産への懐疑的な視点など世論で動いていて明確な戦略もないように見えます。

昔は日本人によるビットコインの保有が多かったですが、今はアメリカ人による保有が多くなっています。こう言った面を見ると日本は遅れていると言わざるを得ないかもしれません。

こう言った状況下で、日本発のスタートアップが海外に勝てるということを証明したいと考えています。ブロックチェーンの中心はパブリックブロックチェーンだと思いますが、日本人でここに関わっている人はまだまだ少ないのが現状です。だからこそ自分が頑張らなければと思います。

Binanceやその他プロジェクトとPlasmの関係について

–今回のニュースで海外大手のBinanceがリード投資家となり資金調達を行ったわけですが、今までのやりとりや後のシナジーについて教えてください。

渡辺創太:Polkadotエコシステムの内部の人の紹介でお話ししています。去年の12月にBinanceがPolkadot専用のファンドを立ち上げたので、連絡出来る機会をうかがっていました。そんな中でPolkadotにBinanceとのつながりを持っている人がいたので、お話しにつながりました。

Web3 FoundationからGrantを獲得していたり、Polkadotのテストネットに最初に接続したプロジェクトであり、コミュニティメンバーが増加しているなど我々の遍歴はわかりやすいと思います。それもあってBinanceは2週間で投資を決断してくれました。しっかりと実績を積み上げれてきたことが功を奏しました。

今後のシナジーとしては、取引量で世界最大規模のBinanceにおいて私たちのトークン(PLM)が上場する可能性が高いと思います。そうなるとBinanceの擁する多数のユーザーにPLMトークンを提供できます。

また、将来PolkadotoのパラチェーンになるにはオークションのためにDOTトークンをコミュニティから私たちに預けてもらう必要があります。そこでBinanceに対して、オークションをサポートしてもらうことも話し合っています。

最後に、Binance Smart Chainとの連携に取り組んでいます。ブリッジなどに関しても作っていきたいと考えています。最近はPlasmの認知度も上がってきており、この発表によって問い合わせも増えてくると思うので、コラボレーションも狙っていきたいですね。

(※Binance Twitterから発表されたPlasmへの投資のニュース)

–我々は、先日PolkadotエコシステムのプロジェクトにおいてAMAを我々は実施したのですが、その中でAcalaもいて、Plasmの話も何度も出ていました。今後、PlasmとAcalaとでどのようなコラボレーションを行っていますか?

渡辺創太:はい。AcalaとPlasmは両方ともPolkadotにつながっていて、AcalaのaUSDやトークンをPlasm上で使えるようにしています。逆にAcalaでPLMトークンが使用できるようにもなります。イメージとしてはEthereumのERC20のような感じです。

現在開発しているUIでは、AcalaのポータルでPLMトークンが利用できます。これからクロスチェーン機能も実装していく予定です。このようにユーザーに使いやすいプロダクトになってきています。

(※TwitterはPlasm NetworkとAcalaNetworkでXCMPトランザクションがRococo Testnetで初めて実行されたニュース)

–Plasmはアプリケーションも開発しているんですね。

渡辺創太:過去のプロジェクトではアプリケーションの開発まで至らないものが多かったですね。

今はユーザーが使いやすいようにこう言ったアプリケーションの開発までやり切っているところです。将来的にはPlasmネットワークのユーザーがポータルを用いて直接デプロイができるようになったり、ステーキングやDappsへのノミネートができるようになると面白いですね。

Plasm Networkの独自の強み

–ところでPlasm NetworkではDApps開発者でも自分たちのDAppsに投票されるとブロック報酬が入る方式を採用しているとお聞きしました。

渡辺創太:はい、これが他のParachain候補のプラットフォームにはないPlasm Networkの強みだと考えています。

簡単にいうと、ユーザーはPlasm上にDappsをデプロイすることによって報酬を得ることができるようになります。一般的なプラットフォームだとガス代を払うのが負担になりますが、私たちのネットワークでは人気になればガス代もしくはそれ以上の報酬が手に入る可能性があります。

この機能はゲームチェンジャーとなりうるものであり、早く公開したいと考えています。こう言ったネットワークに関しては、臨界点のようなものがあって、そこをいち早く取ったもの、また機能を作ったものが勝つと思っています。

そのためにShidenネットワークをパラチェーンオークションの前にローンチする予定です。私たちは早くローンチすることで先にユーザーを集めていきたいです。Kusama Networkのローンチを待っていると乗り遅れる可能性がありますし、Plasmの上で作ると儲かるということがわかれば他のユーザーも同じことをしようとするはずです。

Acalaなどの通常のチームはトークンエコノミクスの影響でパラチェーンの後にしかローンチはできないと考えています。加えてPolkadotの特性上、すでに運用されているものを統合することは難しく直接Polkadotにつなげてデプロイするしかありません。

そのため、私たちは先にローンチしたものをハードフォークさせてPolkadotにデプロイします。他プロジェクトのトークンエコノミクスはコミュニティに対するトークン配布が少ないので、トークンを保持していないユーザーがデプロイしづらいという側面があります。

現状では資金調達の際にVCへはディスカウントをつけて販売するのが主流で、ローンチ後の価格は基本的に上昇するためVCはリターンを得られます。一方、通常価格で購入する必要があるユーザーにとってはこれが負担になります。そこでPlasmではLockDropによりコミュニティにトークン配布を行ってから資金調達を行っています。

Shiden Networkへの取り組みと将来のパラチェーン戦略

PLMトークンのホルダーは1:1の割合でSHIDENがもらえる

–先ほどShiden Networkのお話が上がりましたが、現在のShidenへの取り組みはどうなっていますか?

渡辺創太:Polkadotのローンチのタイミングが見えないため、ローンチを待っているとKusamaに接続されるプロジェクトが増加して先を越されてしまう可能性があります。

Polkadotのローンチ時期にPlasmが左右されるのを防ぐために、Shidenを開発しKusamaとつなげることにしました。また先にKusamaに接続しておくことによりPolkadotのオークションに勝利して接続しやすくなると考えています。

–Kusamaへ接続しようとしているプロジェクトにはトークンが一種類のものと複数のものがあると思います。ShidenもPlasmのPLMトークンとは違うShidenトークンがありますが、これらの違いや考えを教えてください。

渡辺創太:トークンが一種類だと一つのブロックチェーンしか作れないという違いがあると思います。AcalaやMoonbeamも同じ考えだと思いますが、Polkadotに最初に接続してパラチェーンとなり1番を取るためにはブロックチェーンを2つ作る必要があると考えました。

現在はテストフェーズなのでKusamaに繋いだりするためにブロックチェーンは2つ必要ですが、本格的に活動を開始する際は1つでいいと思います。そこで将来的にはShidenトークンとPlasmトークンをスワップすることでShidenを買収する可能性はあります。

–なるほど。PlasmはPolkadotで最初のパラチェーンになるのをめざしていると思います。PolkadotではParachainになるためのオークションを定期的に実施すると思います。今回はロックドロップで報酬を払いますが、2年後のオークションが実施されたときの展開はどうするのでしょうか。

渡辺創太:これは難しい部分ですが、私たちはもう一度パラチェーンオークションで勝つために3%ほどのトークンを用意してあります。また2年後にはパラチェーンの数も増えており、初回のオークションよりもコストはかからないと考えています。

長期的な戦略としてTresury機能を開発し、トランザクションの一部を蓄積させておくことでそのPLMトークンを用いてパラチェーンオークションに参加しようと思います。

今後の展開に関して

–ありがとうございます。最後に今後の展開について教えてください。

渡辺創太:世界のトッププレイヤーを巻き込んでいくことで、日本発のブロックチェーンを世界のブロックチェーンにしたいです。今回の資金調達でBinanceのバックアップが得られました。

また最近はSecretネットワークとのブリッジを作成していて、BinanceブリッジやEthereumブリッジも開発しています。こうした活動により、PlasmがPolkadotのエコシステムの中でスマートコントラクトのハブとして機能し生き残りたいと考えています。

今後も注目を浴びるような大きな発表ができると思います。世界の主要なメンバーとのネットワークによりサポートしてもらいながら今後より良い活動ができると思います。

最後に

今回はPolkadotエコシステムで初めてBinanceから資金調達を行ったPlasmネットワークに関するインタビューでした。今後の発表にも注目が集まります。

Website:https://www.plasmnet.io/


インタビュアー / 編集 : 新井
書き起こし : 鈴木

ニュース/解説記事

Enable Notifications OK No thanks