Fracton Incubation Demo Dayが東京で開催、革新的なプロジェクトが続々登場

2025/02/26・

Crypto Troll

Fracton Incubation Demo Dayが東京で開催、革新的なプロジェクトが続々登場

2月14日、Fracton Venturesが主催するインキュベーションプログラム「Fracton Incubation Cohort 3」のDemo Dayが東京都内で開催されました。このプログラムはイーサリアムエコシステムの中核である分散化に焦点を当てたものです。

2024年12月にキックオフした今回のCohort 3では、約3ヶ月間にわたり国内外の開発者・起業家9チームが参加し、専門家によるレクチャーやメンタリングを受けながらプロジェクトを磨き上げてきました。

今回の記事はDemo Dayのイベントレポートとなります。

Fracton Venturesとは

Fracton Venturesは「Protocol Studio for Ethereum」を掲げる、日本初のクリプト特化型インキュベーターです。2021年の創業以来、同年および翌2022年にインキュベーションプログラムを実施し、累計18のCryptoプロトコル/プロジェクトを育成してグローバルに送り出した実績があります。

またイーサリアムエコシステムの重要性を背景に、国内外のDAOやWeb3コミュニティとのネットワーク構築にも積極的に取り組み、2023年にはDAO TOKYOカンファレンスの開催やアジアのDAOとの連携を進めるなど、日本発のWeb3エコシステム推進に重要な役割を果たしています。

こうした実績から、本インキュベーションプログラムも国内外から高い注目を集めていました。

Demo Dayがついに開催

イベントは会場案内やオンライン参加者への説明から始まりました。その後、Fracton Ventures共同創業者である鈴木雄大氏が登壇。同社のインキュベーションプログラムを紹介しました。

鈴木氏は、Fracton Venturesを「ハードコア」な暗号資産インキュベーターと表現し、分散化、スマートコントラクト、オープンソース文化に深く根ざした独自のアプローチを強調しました。Web3という言葉が広まる前の2021年から、日本のプロジェクトやプロトコルをインキュベートし、オープンソース中心のスタートアップシーンを育成してきた実績を語りました。

多数の応募があったCohort 3では、最終的に9チーム(日本から8チーム、インドから1チーム)が選出されました。

鈴木氏はまた、イーサリアム共同創業者であるヴィタリック・ブテリン氏のブログ投稿を引用しながら、イーサリアムエコシステム全体の長期的な成長のためにもインキュベーションプログラムを提供し続ける必要があると強調しました。

過去のインキュベーションの成功例として、Web2企業からWeb3に移行しつつあるYAYやFracton Venturesの元従業員が設立したDeFiプロトコルNapier Financeが紹介されました。

スポンサー企業からのメッセージ

今回のプログラムにはSMBC日興証券、TECHFUND、そしてAWS(Amazon Web Services)がスポンサーとして参加しました。Demo Day当日は、AWS提供の会場であるAWS Startup Loft Tokyoにて最終ピッチイベントが行われ​、オープニングではスポンサー各社からWeb3スタートアップ支援への意気込みが語られました。

AWSからは「革新的な分散型アプリケーションにはスケーラブルなインフラが不可欠であり、AWSはその土台を支えることでエコシステムの成長に貢献したい」といった主旨のメッセージが送られました。また、SMBC日興証券からは「地域のデジタル化とトークンエコノミーに焦点を当てた日本独自の伝統文化とNFTを組み合わせた取り組み」が紹介されました。

両社のサポートは、イーサリアムにとどまらないWeb3エコシステムの発展に向けた産業界の関心の高さを示したものと言えるでしょう。

9つのプロジェクトが登壇

今回のFracton Incubation Cohort 3には、計9つのスタートアップ・プロジェクトが採択されました。いずれもイーサリアムをはじめとするWeb3技術を活用し、分散化技術の革新や社会課題の解決に挑む意欲的なチームでした。

Demo Day当日は各チームが制限時間10分でプロジェクトのピッチ(プレゼンテーション)を行い、ビジネスモデルや市場開拓戦略、技術的アプローチなどを競い合いました。また、各プロジェクトのプレゼンテーション後には質疑応答の時間が設けられ、参加者はプロジェクトのビジョン、技術、将来計画についてさらに深く掘り下げることができました。

プロジェクトピッチの終了後には、YAYやObol Collectiveからスペシャルコメントが提供され、さらなるWeb3エコシステムの充実へ向けた取り組みが紹介されました。

プロジェクトの概要と技術的特徴、そして業界へのインパクトの狙いは以下の通りです。

RaffleCast

Web3ソーシャルプロトコル向けのトラストレスで透明性の高い抽選ツール。クリエイターやコミュニティがオーディエンスを構築し、エンゲージメントを促進するためのコンポーザブルなソリューションを提供することで、断片化への対処や公平でオープンな環境構築を目指す。現在は設計とプロトタイピングの段階。

scoop.fun

緊急時における誤報の問題に対し、予測市場を利用して正確な報道を奨励するプロジェクト。2004年の中越地震とその後の誤報、サンフランシスコにおける誤った津波警報を例に挙げながら、市場によって推進される次世代のメディアとなることを目指すscoop.funのビジョンが概説される。

第1四半期にパブリックベータを開始し、第2四半期にバージョン1をリリースする予定。

Comoris DAO

都市部の分散型グリーンインフラの設計に焦点を当てた再生金融(ReFi)サービス。ますます不快になっている都市の生活の質を向上させることを目指し、Comorisは炭素から生物多様性への焦点を移すことや、自然保護における地域コミュニティのエンパワーメントなどの課題に対処中。

今年の目標としてNFTセールを開始してコミュニティを広く拡大することを掲げる。

KON(Open source Award受賞)

Webブラウザで動作するPWA(Progressive Web App)形式で、コミュニティ向けアプリを容易に構築および展開するためのフレームワークを開発。Konのコア機能には、認証、アプリ構成、ユーザー管理、ロール管理、メッセージ通知などを搭載しているとのこと。

現在、イベントアプリ、NFTアーティストとそのファン向けのアプリ、コミュニティ管理用のショップアプリの3つのテンプレートアプリを作成中。

byteStream

AI 駆動型の暗号投資パーソナルガイドであり、DeFiおよびNFTポートフォリオ管理のワンストップソリューション。部分的な概要を把握するためだけにソーシャルメディアアグリゲーターとニュースサイトに基づいて市場を判断しすぎていることや、データが多くのプラットフォームに分散しているためタイムリーな意思決定が困難といった課題に対処することを目的とする。

ベータ版の製品画面が共有。DeFi重視の投資家とNFT志向のトレーダーの2つのペルソナに対応しているとのこと。

NetSepio(Decentralization Award受賞)

安全でプライベートなインターネット体験を提供する分散型VPN(dVPN)ソリューション。エージェント型インターネットの構築を目指しており、企業はVPNロールアップを用いることでアプリやユーザー、従業員に安全なインターネットアクセスを提供可能に。

このプラットフォームでは、DNSファイアウォールを追加してどのようなアプリケーションがインターネットにアクセスできるのかを完全に制御することも可能。また、AIエージェントの調整レイヤーとしても機能。Libp2p、ZK証明、WireGuardを使用しておりSIONへの移行も予定しているとのこと。

Heterod0x

「Make something your friends use」をビジョンに掲げるプロダクト開発スタジオであり、消費者重視のアプローチを採用していることが特徴。様々なフィードバックを参考に製品改良をしており、優れたフィードバックを提供するユーザーにはインセンティブ与える仕組みを導入。

Toban(Positive-sum Award受賞)

スケーラブルなオープンソースコミュニティを構築する際の最大の課題として作業負荷のボトルネックを挙げ、運用分散化の必要性を強調。長期的な関与にはインセンティブが必要とし、正当な報酬を与えるために役割と貢献の視覚化を実施。

現在、3 つのアルファバージョンのデモを実施しており、グローバルなユースケースを含む5つのプロジェクトにデモを拡大する予定。第3四半期には少なくとも月額1万ドルを配布し、第4四半期にはプロトコルとしてTobanをローンチするとのこと。現在パイロットプロジェクトが進行中。

Assetify

プライベートクレジット市場に焦点を当てたプロジェクト。成長資金を提供できるのは機関のみであり企業と投資家の両方のアクセスが制限されている中、暗号資産と個人投資家の力を活用することで変革をもたらす。

AssetifyのP2Pセカンダリーマーケットは競合他社と比較して優れた流動性を提供しているだけでなく、既存のディープテック企業をターゲットにすることで安定性を優先しているとのこと。

受賞プロジェクト

全てのプレゼンテーション終了後、審査員による評価を踏まえて、「Positive-sum Award」「Open source Award」「Decentralization Award」の3つの賞が発表されました。

Positive-sum AwardにはTobanが、Open source AwardにはKonが、Decentralization AwardにはNetSepioがそれぞれ選出されました。

今回のアワード受賞結果は単なる技術競争の優劣ではなく、いかにWeb3エコシステム全体にポジティブな波及効果をもたらすかが重視されたように筆者は感じました。

Fracton Venturesは今後も同様の観点でプロジェクト支援と表彰を続け、Crypto/Web3コミュニティの発展に貢献していく方針としています。

Fracton Venturesの今後の展望

Cohort 3の成功を受けて、Fracton Venturesは早くも次回インキュベーションプログラムの準備を進めているとのことであり、「Cohort 4」は2025年3月に開始される予定です。

「Cohort 4」ではテーマを「DeFi(分散型金融)」に特化し、より金融領域に踏み込んだプロジェクト支援を行うものとされています。さらに夏には大阪で開催される万博(EXPO 2025)に合わせて、短期集中型の特別プログラム「Cohort 5 – Growth」を実施し、グローバル市場での成長支援や政府・企業とのネットワーキング機会を提供するとのことです。

筆者の感想

今回のFracton Incubation Demo Dayは、日本発のWeb3インキュベーションが持つ可能性と熱量を強く印象づけるイベントのように感じました。

イーサリアムエコシステムの未来を担うスタートアップたちが一堂に会し互いに競い高め合う姿からは、国内外のクリプトコミュニティに向けた力強いメッセージが発信されたと言えるでしょう。

今回披露されたアイデアの数々が今後どのように花開いていくのか、そして次回以降のインキュベーションでどんな新星が現れるのか今後も追いかけていきたいと思います。

Fracton Ventures各種infomation

Fracton Ventures 公式X:https://x.com/wecandaoit

Fracton Ventures公式サイト:https://fracton.ventures/

Fracton Incubation Program 2024:https://fine2024.framer.website/

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