Binance(バイナンス)のFTX買収における4つの懸念点
ユッシ
世界最大手取引所BinanceのCEOを務めるCZ氏が、FTXの完全買収に関する基本合意に署名し、FTXの流動性の枯渇に関する問題に対処することを発表しました。
This afternoon, FTX asked for our help. There is a significant liquidity crunch. To protect users, we signed a non-binding LOI, intending to fully acquire https://t.co/BGtFlCmLXB and help cover the liquidity crunch. We will be conducting a full DD in the coming days.
— CZ 🔶 Binance (@cz_binance) November 8, 2022
上記は現在、基本合意に署名した段階であり本格的な買収に関する協議は今後行われていくとしています。
本記事では、BinanceがFTXの買収を本格的に試みた場合の4つの懸念点について紹介していきます。
*本記事の内容は主観を多分に含み、特定の投資行動を推奨するものではありませんのでご留意ください
目次
BinanceのFTX買収による4つの懸念点
1、当局による規制
2、Alameda Research問題
3、投資家問題
4、サム氏とSolanaエコシステムへの信頼低下
1、当局による規制
BinanceがFTXの完全な買収を試みた場合、規制当局による監視が行われ、禁止される可能性があります。
Bloombergの報道によると、Binanceの昨年2021年の収益は少なくとも200億ドル(当時約2.3兆円)、CNBCの報道によるとFTXの2021年の収益は10.2億ドル(当時約1170億円)となっています。
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収益以外にも、FTXはBinanceには及ばないものの、取引高やその他ブランド力なども含めて世界の主要な取引所の1つです。
そんなFTXをBinanceが本格的に買収しようと試みた場合、独占禁止法(反トラスト法)に抵触するとして、何かしらの規制を受ける可能性があります。
FTXを運営するFTXトレーディング社は、カリブ海東部に位置する島からなる国家アンティグア・バーブーダで法人化され、バハマに本社を構えている企業。
しかし、米国の規制当局が国外の企業への監視を強化する事例はこれまでも確認されているため、中国系企業/取引所であるBinanceによるFTXの完全買収が当局から受け入れられるかどうかは定かではありません。
– 追記
アメリカの政府機関である米商品先物取引委員会(CFTC)が、FTXの買収を監視していると広報担当者がReutersに語っていると報じられています。
BREAKING: 🇺🇸 U.S. CFTC is monitoring Binance’s acquisition of FTX, spokesperson tells Reuters
— Bitcoin Magazine (@BitcoinMagazine) November 8, 2022
2、Alameda Research問題
BinanceがFTXを完全に買収したとしても、FTX親会社であるAlameda Researchの財政状況を改善できない可能性があります。
FTXの親会社であるAlameda Researchは、先日のCoinDeskによるリークで多くの資産をFTXが発行するFTTトークンやFTT担保で抱えていることが分かっています。
CoinDeskが報じたAlameda Researchの財務状況
【146億ドル分の資産の内訳】
– 36.6億ドルの$FTT(アンロック)
– 33.7億ドルの仮想通貨(2.92億ドルの$SOL(アンロック)、8.63億ドルの$SOL(ロック)、0.41億ドルの$SOL担保)
– 21.6億ドルの$FTT担保
– 1.34億ドルの現金と等価物
– 20億ドルの株式証券
– その他($SRM、$OXY、$MAPS、$FIDA等)
【80億ドルの負債の内訳】
– 74億ドルがローン
– 2.92億ドル相当のFTTを借入
同社CEOは「他に100億ドル以上の資産がある」と発言していますが、詳細な財務状況は明かされておらず、さらに$FTTトークンも一時-80%に及ぶ大幅な価格下落を見せているため、Binanceがカバーできない可能性もシナリオの1つとして考えられます。
3、投資家問題
短期間でBinanceがFTXを比較的安価な値段で買収し、同社が抱える全ての負債を引き受けた場合、FTXの初期ラウンド等の投資家による訴訟が起こる可能性が考えられます。
FTXはこれまで巨額の資金を調達してきており、今年9月には最大10億ドルの資金調達を計画していることがCNBCの報道により分かっています。
仮にBinanceが短期間でFTXの買収を行った場合、FTXの初期投資家から訴訟を受ける可能性が予想されます。
4、サム氏とSolanaエコシステムの信頼低下
現在時価総額11位のSolanaは、FTXを率いるサム・バンクマン・フリード氏が全面的に支援しているプロジェクトとしても知られています。
今回のBinanceの買収やFTTトークン暴落によってサム氏への信頼性が市場の中で著しく低下した場合、それがSolanaエコシステムへの不信へと繋がる恐れもあります。
さらに、昨今注目を集め500億円に近い資金調達を実施しているAptosがSolanaの競合として一部で認識されていることも、上記の流れに拍車をかける可能性があります。
まとめ
BinanceとFTXの間の取り決めは正確に明かされていないため、前述の懸念点はあくまで推察に過ぎません。
しかし、今回の一件は市場に確実に大きなインパクトをもたらしているため、今後も動向を注視する必要があるでしょう。