【市場分析】BTCと人民元の相関性はなぜ計測しにくいのか?
Yuya
中国は現在、習近平首相のブロックチェーン推進発言により「第二のブロックチェーンブーム」が到来していると言われています。
同時に、暗号資産の取引や資金調達を厳密に禁止する方針も固められており、国外から中国市民にサービスを提供する事業者の取り締まりや、専門知識のない一般人への規制告知も進められています。
しかし、国内での取引は依然行われているわけで、中国元と暗号資産(BTCやUSDT)がWeChatのグループチャットなどを通して内密的に取引されていることが知られています。
今まで以上の中国マネーがこれから暗号資産市場に流れてくる可能性がとても高いわけですが、これは市場にどのような影響を及ぼすことになるのでしょうか?
特に今回は、両者の相関性に注目してみたいと思います。
上述の通り、中国では仮想通貨の取引が取り締まられており、これからさらに厳しくなることが決まっています。CNYUSDTというペアは基本的には存在せず、CNY紐付け型のステーブルコインもあまり出来高がないのが現状です。
グループチャットを通して内密的に行われるCNY-暗号資産取引はデータがないため、直接的に資金が流れるBTC/USDTとCNY/USDTの相関関係は求めることができません。
そこで、ビットコイン/米ドル(BTC/USD)と人民元/米ドル(CNY/USD)それぞれのデイリーリターンの相関関係を求めると、以下のような結果になります。
BTC/USDとCNY/USD デイリーリターンの相関関係 (2017/1/1 ~ 2019/11/12) | ||
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期間 | 相関 | 関係性 |
全期間 | -0.02569 | ほぼ無し |
2018/1/1~ | -0.03605 | ほぼ無し |
2019/1/1~ | -0.06138 | ほぼ無し |
2017/12/04 ~ 2018/02/05 | -0.33969 | 弱い逆相関 |
2018/11/12 ~ 2018/12/10 | -0.25260 | 弱い逆相関 |
2019/03/20 ~ 2019/04/10 | 0.37160 | 弱い順相関 |
2019/04/05 ~ 2019/05/19 | -0.22102 | 弱い逆相関 |
2019/06/17 ~ 2019/07/22 | 0.06003 | ほぼ無し |
2019/10/14 ~ 2019/10/28 | -0.00827 | ほぼ無し |
相関が+1であればBTC/USDとCNY/USDのデイリーリターンは同じ方向に同じ幅だけ動き、-1であれば両者は別の方向に同じ幅だけ動きます。相関が0の場合、両者の動きには規則性がないことになります。
上の表を見るとわかる通り、両者の相関関係は局所的に±0.2~o.4となるものの、全体的にはほぼ皆無であることがわかります。
過去30日間のデイリーリターンから取った相関をグラフ化すると以下のようになり、2018年1月は局所的に-0.6にまで到達していることがわかります。
これはあくまで局所的な相関となり、全期間を対象とすると相関にはかなりバラつきがあります。
これらの分析から、BTCUSDとCNYUSDの相関関係がとても薄いことがわかります。局所的な相関も、実際は因果関係のない疑似相関である可能性が高いでしょう。
しかし、国全体がブロックチェーン技術を推していて、世界一のマイニング企業もいる中国の資金が暗号資産相場に対して大きな影響力を持っていないというのは考えにくいです。
大方がWeChatなどを通したOTC的な取引であると仮定すると、USD建てに相関がなくても、USDT建て(BTCUSDTとCNYUSDT)には相関があるかもしれません。
結局、このCNY/USDTのやり取りは水面下で行われているため、データとして計測するのは難しいということになります。
今後、中国での仮想通貨取引に対する取り締まりが強化されるにつれて、またこの状況は変わってくるかもしれません。国内のインパクトのあるニュース自体が相場にセンチメントを与える可能性も十分に考えられるので、この辺りの情報は積極的に追う必要があるでしょう。