ビットコインの暗号、AIが量子コンピューターより先に解読の可能性か|専門家が警戒
Crypto Times 編集部
ビットコインやイーサリアムを守る暗号技術は量子コンピューターより先にAIに解読される可能性が指摘されています。
量子コンピューター対策を手がけるProject Elevenの最高技術責任者(CTO)、コナー・ディーガン氏はAIが研究段階の暗号方式に対する攻撃手法をすでに発見していると説明しました。ただし、現在のビットコインやイーサリアムで実用されている暗号方式が破られた事実はないと強調しています。
両ブロックチェーンでは送金者が正当な所有者であることを証明する「電子署名」に楕円曲線暗号という技術が使われています。この仕組みでは資産を動かすための「秘密鍵」と、署名の正しさを第三者が確認するための「公開鍵」を使用します。公開鍵から秘密鍵を逆算することは現在の一般的なコンピューターでは極めて困難であり、この数学的な難しさが資産の安全性を支えています。しかし、量子コンピューターは「ショアのアルゴリズム」と呼ばれる特殊な計算手法によってこの暗号を破れることが理論上示されています。
一方、AIについては高度な数学的推論によって従来知られていなかった計算上の抜け道を発見し、量子コンピューターを使わずに秘密鍵を導き出せるようになることが懸念されています。イーサリアム財団の研究者ジャスティン・ドレイク氏もAIの進歩によって、最悪の場合は数年を待たず数カ月以内にECDSA(楕円曲線暗号を利用した電子署名方式の一種)が破られる可能性に言及しています。AIが発見した抜け道を前提に、大量のGPU(AIの計算などに使われる高性能な演算装置)を組み合わせれば、公開鍵から約1週間で秘密鍵を復元できるようになる事態を同氏は想定しています。
同氏は予防策として、公開鍵が外部に露出していない新しいアドレスへ資産を計画的に移動する「バンカーモード」の準備を提案しています。一般的なアドレスは公開鍵をハッシュ関数(データを一定の規則で変換する計算手法)で変換した値から作られており、そのアドレスから一度も送金していなければ公開鍵そのものはブロックチェーン上に露出しません。公開鍵が見えなければ、そこから秘密鍵を逆算する攻撃も成立しないという考え方です。これは暗号が破られる可能性に備えた対応策であり、現時点で緊急の資産移動が必要と判断されたわけではありません。
AIによる暗号攻撃研究で成果、量子コンピューターの脅威は2030年以降か
AIによる暗号解読はすでに研究段階で具体的な成果が出ています。
米Anthropicは7月28日、AIモデル「Claude Mythos Preview」を活用し、将来の量子コンピューターによる攻撃にも耐えられるよう設計された暗号方式「HAWK」の弱点を発見したと発表しました。約60時間の研究によって、HAWK-256に対する秘密鍵復元攻撃に必要な計算量を従来の推定値である2の64乗から2の38乗程度へ削減しました。理論上の計算負荷を約6,700万分の1に減らした計算です。研究に要したAPI費用は約10万ドルとされています。
ただし、この攻撃はHAWKの特定の設定を対象としたもので、より大きな鍵設定への攻撃は依然として実用的ではありません。またHAWKは「格子暗号」と呼ばれる系統の耐量子署名方式であり、ビットコインやイーサリアムが使う楕円曲線暗号とは別物です。既存のビットコインの暗号が突破されたことを意味するものではありません。
一方、Project Elevenの共同創業者兼CEO、アレックス・プルーデン氏は、量子コンピューターによる実用的な暗号攻撃が可能になる時期を早ければ2030年ごろ、実現する可能性が50%を超える時期を2033〜2035年ごろと予測しています。AIの進歩はさらに予測が難しく、ディーガン氏は量子コンピューターに先行して暗号の弱点が発見される可能性を警戒しています。
もっとも、こうした見方には異論もあります。米Coinbaseの暗号技術責任者イェフダ・リンデル氏は、長年使用されてきた楕円曲線暗号の安全性がAIによって損なわれたことを示す証拠は存在しないと反論しています。
対策も進んでいます。米国立標準技術研究所(NIST)は2024年、量子コンピューターへの対策として、格子状に並ぶ点に関する問題の解きにくさを利用する「格子暗号」と、ハッシュ関数を利用した新しい電子署名方式を標準化しました。ただし、格子暗号はAnthropicが弱点を突いたHAWKと同じ系統に属しており、いずれの方式も将来にわたる安全性が完全に保証されているわけではありません。Project Elevenの両幹部は特定の暗号技術に依存せず、新たな弱点が発見された際に別の暗号方式へ切り替えられる仕組みを整備する重要性を指摘しています。
ビットコインやイーサリアムで署名方式を切り替えるには、利用者個々の資産移動にとどまらず、プロトコル自体のアップグレードが必要になります。特に合意形成に時間を要するビットコインでは、脅威が現実化してから動き出したのでは間に合わないケースも想定されます。解読が「いつ」起きるかの予測以上に移行の準備をどこまで前倒しできるかが問われることになりそうです。
記事ソース:Youtube
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