罰金はなぜこんなに少ない?EOSは証券ではない?「EOS対SEC」の決着まとめ
Yuya
米証券取引委員会(SEC)は昨日、ブロックチェーンプラットフォーム「EOS」の開発・運営を手がけるBlock One社に、認可を受けずに証券を販売したとして、2400万ドルの罰金命令を下したことを発表しました。
Block Oneは、2017年6月26日から2018年6月1日の間にかけて、ICOという形でEOSのERC-20テストネットトークンを販売し、合計41億ドルを調達しました。
SECはこのトークンが証券法に基づく証券であるとして、米国で必要な登録・免除申請を行わないまま米国市民にもトークンを販売したとして、Block Oneを証券法違反の疑いで起訴しました。
今回の決着を受けBlock Oneは、今日1日にブログを更新し、SECの主張に肯定も否定しないとした上で、命令の履行をもって一切の論争を終えたと発表しました。
メインネットトークンは証券ではない?
SECが今回証券法に抵触すると判断したのは、Block OneによるERC-20テストネットトークンのICOです。
Block Oneの声明によれば、今回の一件では、このテストネットトークンを証券としてSECに登録する必要はない、という結論に至ったとされています。
これが本当にSECの意見と一致していると仮定した上で、この結論からはいくつか以下の含意が汲み取れます。
- SECが優先的に着目したのは「トークンが証券であるか」ではなくて、ICOが証券発行(セキュリティ・オファリング)に当たったこと。つまり、ハウイ・テストの一部にのみ焦点を当てていた。
- 今回の裁判のフォーカスは、あくまでICOで発行されたテストネットトークンにある。「EOSのメインネットトークンが証券かどうか」は対象ではない。
- ただ、SECの論点が商品自体(テストネットトークン)ではなく商品契約(ICO)に寄っている点、加えてこの商品を証券登録する必要がないと判断された点を踏まえると、メインネットトークンが証券にあたらない可能性は高い。
補足として、SECが4月に公開した文書では、証券とみなされない暗号資産の基準が詳しく記述されています。これでは、
- ネットワークやプラットフォームがすでに稼働済み・トークンもすぐに利用可能である
- トークンの価格上下は偶然によるものである(スペキュレーションでない)
- 該当ネットワークのユーザーのみが適量のトークンを保有・交換している
という要素をポイントに、デジタル資産がネットワークの利用のみに使用されることが重要視されています。さらに、SECは一度証券と判断したトークンを再度検討して、結果証券との判断を撤回するケースもあり得るとしています。
過去にSECは、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)は証券ではないと発表しています。公式に認定されたわけでは決してありませんが、EOSは事実上この2銘柄に続く非証券トークンと考えられるのではないでしょうか。
罰金はなぜこんなに少ない?
Block Oneが調達した41億ドルに対し、SECが命令した罰金は2400万ドルとなっています。こう見ると罰金がなぜこんなに少ないのか疑問です。
しかし、Block OneのICOはグローバルに行われていた点や、米国のIPアドレスをブロックしていた点、参加者に米国市民でないことを同意させていた点などを踏まえると、実際に参加した米国市民はそれほどの割合を占めなかったのではないかと考えられます。
「本人確認や規約に同意した参加者がいたにも関わらず罰金を課すのは酷では」という意見は最もですが、Block Oneは米国内のカンファレンスでプロモーションを行ったり、各地で広告を打ったりもしていたようです。
また、Block Oneに比較的有利な罰金命令に関し、ツイッターでは「単純に弁護士が優秀だった」という指摘も挙がっています。
まとめ: Block Oneや業界への今後の影響は?
Block Oneにとって、今回の裁判は以下のような結果となりました。
- 罰金は調達額に比べるととても小さく済んだ
- 今回を以ってSECとの論争を終えることができた
- EOSのメインネットトークンは(おそらく)証券にあたらない
ICOというトークンセール行為が証券法に抵触したことは間違いありませんが、過去に証券と判断されたトークンがプラットフォームの発展と共に(実質)非証券とみなされるケースが出てきたのは業界にとっては良いことではないでしょうか。
また、SECは今まで固執してきたハウイ・テストからもう少し視野を広げた見方をしているようにも伺えます。
しかし、同様に証券法違反で裁判の最中にいるKikが事業中止を予定するなど、過去にICOを行ったプロジェクトとSECの争いはまだまだ続きそうです。
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