L2ソリューション「StarkNet」とは?特徴や使い方を徹底解説!
airutosena
StarkWareによって開発されているStarkNetは、zkロールアップに分類されるL2ソリューションの1つです。
StarkWareは過去に企業評価80億ドルで、1億ドルを超える資金調達にも成功しています。
そんなStarkWareが開発するStarkNetは、ゼロ知識証明を活用しイーサリアムのセキュリティを維持した状態で取引の処理を可能にします。
この記事では、StarkNetについて以下の観点から解説しています。
記事のまとめ
・StarkNetはzkロールアップのL2ソリューション
・StarkNetとStarkExは異なるソリューション
・StarkNetのシェアは限定的
・ORUと比較してさまざまなメリットが見られる
・アルファ版のため注意が必要
目次
StarkNetとは? =ゼロ知識証明を活用したL2ソリューション
StarkNetは、ゼロ知識証明を利用したロールアップ(zk-Rollup)を活用したLayer2(以下、L2)ソリューションの1つです。
StarkNetの全体像を把握するにあたって、L2ソリューションと各ロールアップへの理解が不可欠です。
そのため、背景となるトピックも含めStarkNetについて、以下の観点から解説していきます。
・L2ソリューションの概要と必要性
・ロールアップの種類
・StarkNetの概要とシェア
・StarkNetとStarkExについて
StarkNetの概要を押さえていきましょう。
L2ソリューションの概要と必要性
代表的な仮想通貨であるイーサリアムの問題点として挙げられがちなのが、スケーリングです。
イーサリアムでは、さまざまな分野のプロダクトが構築されており代表的な分野にDeFiが挙げられます。
DeFiなどの普及に伴い大量に発生する取引(トランザクション)を、イーサリアムが処理しきれず、ガス代や処理速度が低下する問題が課題として認識されています。
上記の問題を解決するために、イーサリアムのブロックチェーンとは別の場所で取引を処理しようと試みているのが、L2ソリューションです。
ロールアップの種類とStarkNetの分類
L2の中でも、StarkNetはロールアップと呼ばれる種類に属します。
ロールアップは、L1とL2間におけるデータの可用性を確保している点が特徴に挙げられます。
具体的には、ロールアップではL2上で発生した取引のデータをオンチェーンでも記録・検証することが可能です。
また、ロールアップの中でも、取引の検証方法などによって大きく分けて、以下の2種類が存在しています。
- Optimistic ロールアップ
(例 Arbitrum、Optimistic Ethereum ) - zk ロールアップ
(例 zkSync、StarkNet)
StarkNetは、zkロールアップに分類されます。
StarkNetとzkロールアップの概要
StarkNetは、StarkWare(Stark Ware Industries)によって開発されているzkロールアップの1つです。
zkロールアップでは、ゼロ知識証明と呼ばれる技術を活用し、L2上で行われた全ての取引を検証・証明します。
そんなゼロ知識証明の中でも、StarkNetではSTARKという証明方法を用いています。(仕組みによる特徴は後述)
L2 BEATによると、StarkNetに預けられた資金は133万ドルとなっています。
L2全体の順位では18位となっており、大きなシェアを取れている状態ではないです。
ただし、StarkNetはアルファ版であることを考慮する必要があります。
まだまだ、利用できる機能・プロダクトなどには制限がかかっている状態で、本格的なローンチに至っているとは言えません。
今後、開発が進んでいくにつれて、徐々に利用が広がっていく可能性が高いでしょう。
StarkNetとStarkExの違い
StarkNetを開発しているStarkWareは、StarkNetの他にも「StarkEx」と呼ばれるソリューションも提供しています。
StarkNetは、誰でもプロダクトを構築可能なパーミッションレスなロールアップ。
対して、StarkExは特定のプロダクトのために提供されているソリューションです。
StarkExは、StarkNetと比較してすでに多数の実績があり、4億ドル以上のロックが行われている代表的なプロダクトに「dYdX・IMMUTABLE X・Sorare」などが挙げられます。
また、StarkExを用いて開発されたプロダクトの中には、StarkNetが分類されるzkロールアップとは異なるソリューションを利用しているプロダクトも存在しています。(代わりにValidiumを利用)
名称や利用している技術などの類似点はあるものの、StarkNetとStarkExでは全体像が異なるため注意が必要です。
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StarkNetの3つの特徴
これから、前述したようなStarkNetの概要・仕組みによって実現する特徴について、以下の観点から解説していきます。
・高い処理能力と低いガス代
・L1への引き出しの速さ
・プログラミング言語にCairoを採用
1つ1つチェックして、StarkNetの強みをチェックしていきましょう。
高い処理能力と低いガス代
他のロールアップと同様に、StarkNetはイーサリアムと比較して、高い処理能力を持ち、低いガス代で利用可能です。*ガス代は変動あり
一例として、StarkNetの記載はありませんが、以下の各ロールアップ間のガス代の比較をご覧ください。
ロールアップを用いた転送の方が、より低く押さえられていることが分かるでしょう。
StarkNetについても似たようなパフォーマンスが期待できます。
ただし、StarkNetはアルファ版であり本格的なローンチに伴って、どのようなパフォーマンスを発揮するのかは、まだまだ不透明な点があります。
今後、StarkNetの普及に伴って、各L2ソリューションとのパフォーマンスの違いには、注視していく必要があるといえるでしょう。
L1への引き出しの速さ
StarkNetに預けた資金は、数十分程度でL1に引き出すことが可能です。
現在、大きなシェアを持っているOptimistic ロールアップを利用したL2ソリューションでは、資金の引き出しまでに1週間ほどの期間が必要です。
これは、Optimistic ロールアップが取引を検証・証明する際に必要な期間となっており、利便性や資金効率の観点から好ましくありません。
一方で、StarkNetのようなzkロールアップでは、より早い時間でL1への資金の引き出しが可能です。
(ただし、流動性を用いたソリューションなどを利用することで、Optimisticロールアップでも高速な引き出しが可能なケースもあります)
プログラミング言語にCairoを採用
StarkNetでは、StarkNet上のスマートコントラクトなどの開発を行う言語として、「Cairo」と呼ばれる独自のプログラミング言語を採用しています。
StarkNetは基本的にCairoを用いて開発されており、StarkNetで開発を行いたい開発者もCairoを用います。
CairoはStarkNetのネイティブ言語ではあるものの、イーサリアムのSolidityなどをCairoへ変換するトランスパイラ(コード変換が行えるツール)も開発されています。
また、StarkNetはEVMについてもネイティブで対応していません。
StarkNetとArbitrum・zkSyncなど他のロールアップとの違い
現在、多数のL2ソリューションが登場しており、StarkNetもその中の1つです。
「StarkNetは具体的に他のL2ソリューションと何が違うのか?」と疑問を感じた方も多いでしょう。
そのため「OptimisticロールアップのArbitrum」・「zkロールアップのzkSync」と「StarkNet」の違いについて解説していきます。
StarkNetと、他のロールアップの違いについてチェックしていきましょう。
証明する「対象」が異なる:ArbitrumとStarkNet
2022年10月時点で、最も高いTVLを持っているロールアップがArbitrumです。
ArbitrumはOptimisticロールアップに分類され、StarkNetが属しているzkロールアップと、そもそもの検証・証明アプローチが大きく異なります。
両者の大きな違いは「証明する【対象】」にあります。
ArbitrumのOptimisticロールアップは「基本的に正しいブロックが生成される」という前提で設計されたロールアップです。
その上で、不正検知の仕組みとして、Optimisticロールアップでは「一定の検証期間」を設定し「期間内に不正なブロックは無いか?」という観点で検証を行います。
そのため、Optimisticロールアップでは、ブロックの検証に伴い「不正の証明(Fraud Proof)」が行われるのです。
一方で、StarkNetのようなzkロールアップでは「不正なブロックが生成される」という前提で設計されており、全てのブロックに対して「有効性の証明(Validity Proof)」を行います。
上記のような特性から、Optimistic・zkロールアップの間には、さまざまな箇所で大きな違いが見られます。
証明する「方法」が異なる:zkSyncとStarkNet
zkSyncは、5,000万ドル以上がロックされるzkロールアップのL2ソリューションです。
StarkNetとzkSyncは、同じzkロールアップのため、両者とも「有効性の証明」を行い、証明する対象に違いはありません。
そのため、使用感(引き出しまでの時間など)について似通った点が見られます。
しかし、StarkNetとzkSyncでは「証明する【方法】」が異なります。
というのも、StarkNetでは「STARK」という証明システムを用いているのに対して、zkSyncでは「SNARK」を用いています。
また、このような違いはOptimisticロールアップに分類されるソリューションの間でも見られることが多いです。
同じロールアップに分類されていたとしても、L2ソリューション間で微妙に仕様・仕組みが異なってきます。
各ロールアップのより詳細な内容について、CT Analysisの「Ethereumを飛躍的にスケールさせるロールアップの概要と動向」で解説しているので、ぜひご覧ください。
StarkNetの使い方
StarkNetの利用には、以下のようなものが必要です。
- イーサリアムサイドのウォレット
(MetaMaskなど) - StarkNetサイドのウォレット
(Argentなど) - ガス代やDeFiなどで利用する仮想通貨
また、上記の準備に加えて、利用する仮想通貨のStarkNetへのブリッジも必要です。
StarkNetへのブリッジを行うことで、StarkNetに構築されているプロダクトで仮想通貨を利用できるようになります。
StarkNetへのブリッジや、Argentなどの利用手順について、以下の記事で解説しています。
【評価額1兆円】StarkWare手掛ける注目のトークンブリッジ『StarkGate』を解説
StarkNetの注意点
最後に、StarkNetの利用に伴う注意点などについて、以下の観点から解説していきます。
・利用できるプロダクトが少ない
・アルファ版であり完全な状態ではない
StarkNetの利用前に押さえておきたいポイントをチェックしていきましょう。
まだまだ利用できるプロダクトやシェアは少ない
StarkNetは、他のL2ソリューションと比較すると、まだまだ利用できるプロダクトやシェアは限定的です。
前述したようにTVLも、他の主要なL2ソリューションと比較して多くありません。
そのため、他のロールアップのようにエコシステムが整備されているとは限らないため注意が必要です。
「アルファ版であり完全な状態ではない」
StarkNetはアルファ版であり、あらゆる箇所で開発途中の印象が否めません。
例えば、StarkNetの開発を行っているStarkWareによって提供されているStarkGateというブリッジでも、アルファ版での運用が続いています。
ブリッジやロールアップの利用にはさまざまな潜在的なリスクが存在していますが、StarkNetの利用についてはその傾向が特に強くなると言えるでしょう。
常に何らかのバグ・欠陥・変更などが見られる可能性を考慮し、StarkNetへのブリッジなどについては、限定的な使用に留めておくのがおすすめです。
まとめ
この記事では、StarkNetについてさまざまなポイントから解説しました。
StarkNetは、今後注目していきたいL2ソリューションの1つではあるものの、さまざまな観点で開発途中のソリューションです。
動向を注視しながらも、細心の注意を払った上で利用していきましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。