相互運用性プロトコル「LayerZero(レイヤーゼロ)」とは?特徴や使い方を解説

2023/06/17・

airutosena

相互運用性プロトコル「LayerZero(レイヤーゼロ)」とは?特徴や使い方を解説

LayerZero(レイヤーゼロ)は、ブロックチェーンの相互運用性を確保するプロジェクトの1つです。

これまでの相互運用性を確保する上でデメリットになっていた課題を、解決する存在として注目されています。

LayerZeroは、複数の資金調達を実施しており、直近では30億ドルの評価で1.2億ドルの資金調達にも成功しました。

この記事では、そんなLayerZeroについて以下の観点から解説しています。

この記事のまとめ

・LayerZeroは相互運用性に焦点を当てている
・さまざまな課題を解決
・トラストレスで多種多様なチェーンに展開可能
・オラクルとリレイヤーを中間に設置
・他の類似プロジェクトと比較しても利点を持つ

LayerZeroとは?=ブロックチェーン間の相互運用性に特化したプロトコル

Layer Zeroは、ブロックチェーン間の相互運用性に特化したプロトコルです。

現在、多数のブロックチェーンが乱立しており、各ブロックチェーンにさまざまなアプリケーションが構築されています。

その一方で、各ブロックチェーン間のやり取り(トークンの転送、クロスチェーン取引など)を可能にする手段は限られており、利用者サイドにもさまざまなデメリットが生じています。

そのため、さまざまな角度からの相互運用性への取り組みが存在していますが、各ソリューション・機能にはいくつかのデメリットが存在しています。

上記のような課題を解決するために、LayerZeroは開発されました。

オラクル、リレイヤー、エンドポイントといった主要な機能を用いて、ブロックチェーン間のやり取りをスムーズにします。

LayerZeroを開発するLayer Zero Labは、2023年4月にa16z cryptoなど著名な複数のVCから1.2億ドルの資金調達に成功しており、30億ドルの評価も受けています。

LayerZeroを利用した開発や、統合したプロダクトもいくつか確認でき、注目されているプロジェクトの1つになっています。

LayerZeroの特徴

これから、LayerZeroのかんたんな特徴について、以下のポイントから解説していきます。

・チェーン間のシンプルなやり取り
・各チェーンへ展開できる汎用性
・トラストレスな転送

LayerZeroの特別なポイントを押さえていきましょう。

チェーン間のシンプルな転送・取引

LayerZeroでは、ブロックチェーン間でシンプルな転送・やり取りが可能です。

ブロックチェーン間で、データやトークンの転送を行う方法はすでにいくつか存在していますが、その多くが複雑だったり、リスクがあったり、コストが掛かったりすることが多いです。

これは、各ブロックチェーン間でルールやさまざまな規格が異なることによって発生しています。

LayerZeroではオラクル、リレイヤーという2つの要素のみをブロックチェーン間の中間に置くことでシンプルな転送を可能にし、複雑性やリスク・コストの軽減などを実現します。

各チェーンへ展開できる汎用性

LayerZeroは、各チェーンに対して容易に展開できます。

LayerZeroの枠組みを利用して、各チェーンを接続するにはいくつかの機能・技術を各ブロックチェーンで開発する必要性はあるものの、さまざまなチェーンへの展開が比較的容易です。

例えば、EVM、非EVM、Ethereum系のサイドチェーンやロールアップにも展開可能です。

実際に、すでにLayer Zeroでは、以下のような多数のブロックチェーンで対応してます。

  • Ethereum
  • BNB Chain
  • Avalanche
  • Aptos
  • Polygon
  • 主要なEthereum系のロールアップ

(あくまで一例であり、この他にも多数のブロックチェーンに対応)

また、今後も多数のブロックチェーンに対応していく旨が明らかにされています。

トラストレスな転送・取引

Layer Zeroでは、トラストレスな転送・取引が可能になります。

現状、利便性やコストを重視すると、ブロックチェーン間のトラストレスな転送は難しいです。

例えば、CEX(中央集権的な取引所)を利用する場合、CEXへのトラスト(信頼)が必要になります。

オンチェーンのプラットフォーム、ソリューションを利用する場合は軽減できるものの、依然としてコストが増えたり、複数のリスクを抱えることになります。

LayerZeroにおいて、各ブロックチェーン間に存在するのはリレイヤーとオラクルのみであり、各々は独立していることで整合性が保たれています。

LayerZeroの核となる機能や仕組み

これから、Layer Zeroの特徴を実現している核となる機能・仕組みについて、以下のポイントから解説していきます。

・エンドポイント
・オラクル
・リレイヤー
・一連の流れ
・オラクル・リレイヤーンに対する懸念

LayerZeroの仕組みと、実際にトランザクションが処理されていく過程をチェックしていきましょう。

エンドポイント

LayerZeroにおけるエンドポイント(Endpoint)は、各ブロックチェーンで展開している情報の送受信や検証を行う部分です。

具体的には、後述するオラクルとリレイヤーが送信してきた情報を処理して、利用者に反映させる役割を担います。

エンドポイントが存在することで、トランザクションが有効なものであるということを各ブロックチェーンで確認でき、反映させることが可能です。

エンドポイントには、いくつかの要素がありますが、その中でもCommunicator・Validator・Networkという要素が、トランザクションを処理するまでの過程で主要なものになります。

何らかのリクエストが送信された場合、非常に簡素的に解説すると、概ね以下のような順番でエンドポイントにおいて段階的に処理されていきます。

  1. Communicator
  2. Validator
  3. Network

(上記は送信元の順番。送信先では上記の逆から段階的に処理される)

上記の過程で処理されたものが直接利用者に反映されていくため、エンドポイントは各ブロックチェーンに存在する利用者に最も近い要素です。

オラクル

Layer Zeroのオラクルは、送信元のチェーンから必要な情報の一部を読み取り、送信先のチェーンに送信する役割を担います。

具体的には、送信元エンドポイントから受け取ったデータと送信元のチェーンから読み取ったブロックヘッダーを、送信先のチェーンに送信します。

上記の過程は後述するリレイヤーとは独立して、実行されます。

オラクルはデフォルトのものを使用することで構築する必要はありませんが、独自に構築していくことも可能です。

リレイヤー

リレイヤーについても、送信元のチェーンから必要な情報を一部読み取り、送信先のチェーンに送信します。

リレイヤーは、送信元のチェーンから処理されるトランザクションのプルーフを読み取り、送信先のエンドポイントから受け取ったブロックヘッダを元に対応するプルーフを送信先に返します。

その後、受け取ったブロックヘッダとプルーフを元に、送信元から送られた情報の有効性が送信先のエンドポイントにて検証されます。

こちらも、デフォルトではLayerZeroによる提供されるリレイヤーを使用可能ですが、独自のリレイヤーを構築することが可能です。

一連の流れ

上記を踏まえた上で、Layer Zeroの全体的なトランザクションが処理されるまでの流れを解説します。

  1. 送信元のチェーンから送信したい情報が、送信元のエンドポイントに対してリクエスト
  2. 送信元のエンドポイントとチェーンがリレイヤーとオラクルに複数の情報を送信
  3. その中でも重要なブロックヘッダーはオラクルに、プルーフはリレイヤーが独立して受信
  4. オラクルから送信先エンドポイントにブロックヘッダーを送信
  5. 送信先エンドポイントからブロックヘッダーがリレイヤーへ
  6. リレイヤーは対応するブロックヘッダと情報を送信先エンドポイントへ
  7. 送信先エンドポイントが内容を検証し、送信先にて反映

LayerZeroではリレイヤーとオラクルは独立しているという前提のもと、送信先エンドポイントにて「リレイヤーとオラクル間の情報に矛盾は無い」とチェックできることで、トランザクションの有効性を確保できます。

そのため、Layer Zeroにおいては各エンドポイントにおける処理と反映、そしてリレイヤーとオラクルの独立性が守られているというのが核になります。

オラクルとリレイヤーに対する懸念

前述したとおり、LayerZeroでは、オラクルとリレイヤーの独立性が守られていることが重要です。

仮にオラクルとリレイヤーの独立性が守られていない場合、有効ではない(悪意のある)ものが処理されてしまう可能性があります。具体的には、オラクルとリレイヤーが結託・共謀することで、有効ではないものに対しても、プルーフとブロックヘッダーの2つが矛盾しないものを送信可能となってしまいます。

しかし、この場合でも、他のクロスチェーンのソリューションと比較すると、上記リスクは(前提として発生しにくいもので、仮に、不正が発生したとしても、あくまで不正が発生したリレイヤーとオラクルを利用する主体に被害は限られる可能性が高いです。

一方で、これまでのソリューションでは、中間に位置する何らかの主体に対して問題があった場合、プロダクトやソリューション全体に影響が出る可能性がありました。

これらの点を考慮すると、LayerZeroには依然としてメリットがあるといえるでしょう。

LayerZeroと他のプロジェクトとの比較

LayerZeroのように相互運用性を実現するためのソリューション、プロジェクトはいくつか存在しています。

これから、LayerZeroのホワイトペーパーで触れられているものからピックアップして、以下の3点から解説していきます。

・Thorchainなどとの比較
・Polkadotとの比較
・Cosmosとの比較

LayerZeroと他のプロジェクトの違いを押さえていきましょう。

Thorchainなどとの比較

Thorchainでは、各ブロックチェーン間の取引に各ブロックチェーンのトークンと結合したRUNEを用いります。

RUNEを用いることで、各通貨ごとに流動性のプールを作成する必要がなくなり、通貨ペアが増えていくごとに大量に必要になる流動性のプールを不要にします。

一方で、RUNEを活用するThorchainのようなソリューションでは、取引が複雑になり処理に過剰なリソースが必要です。

LayerZeroでは、前述したような技術で、中間にトークンを必要としません。

Polkadotとの比較

Polkadotでは、中心となるリレーチェーンに各パラチェーンが接続され、各パラチェーン同士の相互運用性が確保されています。

リレーチェーンが中間に存在することで、さまざまな情報のやり取りが可能になりますが、リレーチェーンを使用することで追加のコストが発生します。

LayerZeroでは、リレーチェーンのようなブロックチェーンを置く必要はなく、コストの発生を防ぐことが可能です。

Cosmosとの比較

Cosmosのエコシステムでは、IBCに対応したブロックチェーンは全て接続することが可能です。

IBCに対応したブロックチェーンであれば、相互運用性を容易に確保可能です。

その一方で、IBCに対応していない場合は、接続することはできません。(また、IBCに対応にはいくつかの条件が存在しており、ブロックチェーンの種類によっては対応へのハードルが高い)

LayerZeroでは拡張可能な余地が残されており、IBCほどのハードルはありません。

LayerZeroの使い方

LayerZeroを利用したアプリケーション、プロトコルについて気になった方もいるかも知れません。

一例として、LayerZeroを利用した代表的なプロトコルであるStargateがあります。

Stargateでは、複数のブロックチェーンを介した取引・ファーミングに対応しており、さまざまな用途で利用が可能です。

これから、そんなStargateのベーシックな機能の使い方について以下のポイントから解説していきます。

・Stargateに接続
・Stargateで転送
・Stargateで流動性の提供

Stargateの基本的な使い方をマスターしていきましょう。

Stargateに接続

  1. Stargateへアクセスし「Connect Wallet」へ
  2. ウォレットを選択し接続へ

上記の手順で、Stargateとウォレットの接続が完了します。

Stargateで転送

  1. 画面上部の「Transfer」へ
  2. トークン、ネットワーク、金額などを設定し「Transfer」へ

StargateのTransferでは、各ブロックチェーン間のトークンの1対1の交換が可能です。

取引手数料はSTGトークンの場合無料、STGではない場合は0.6%かかってきます。

また、プールの状況によってリバランス料金というものが発生することがあります。(プール内のトークンの需給バランスに応じて変化)

Stargateで流動性の提供

  1. 上部の「Pool」から任意のプールを選択
  2. 金額などを指定し、流動性の追加を行う

Stargateでは、予め設定されている各ペアの流動性の提供に伴って報酬を獲得できます。

流動性の提供を行うとLPトークンが配布され、プール内の比率に伴って発生した手数料を獲得可能です。

LPトークンを返却することで、資金を取り戻すこともできます。

まとめ

この記事では、LayerZeroについてさまざまな面から解説しました。

LayerZeroは対応するチェーンを積極的に増加させており、著名なプロトコルとの統合なども確認できます。

重要なキーワードになっている相互運用性を確保する代表的なプロジェクトなので、今後も注目していきたい存在と言えるでしょう。

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