様々な研究や商品開発などに伴うコンピューター処理を外部に受注する「クラウドコンピューティング」市場は、現在アマゾンやグーグルをリーダーとして急激な発展を続けています。

シンガポール発のPerlinは、そんなクラウドサービスを一新した「分散型クラウドコンピューティング」の開発に携わる企業として、現在大きな注目を集めています。

CRYPTO TIMESでは、今回グローバルブレインとの提携を機に来日したPerlinに電撃インタビューを行いました。

チームメンバーの紹介

左からNguyen氏、Iwasaki氏、アラタ (クリプトタイムズ)、Sun氏、Prakash氏

ー 本日はインタビューに応じていただきありがとうございます。まずは、みなさんの自己紹介をお願いします。

Dorjee Sun氏

Sun氏: 私の名前はDorjee Sunです。複数の会社の設立・売却や、カーボンクレジット系の仕事に携わってきたバックグラウンドがあります。あるタイの雑誌で環境保護のヒーローとして取り上げられたこともあります。

Perlinの前は、Republic Protocolの共同創設者や、SentimentのCOOなどにも就任しました。また、妻と私で行ってきた計20件以上のICO投資の経験を活かし、ビットコイン裁定取引のVCファンドの共同創設も行いました。

今まで色々なビジネスを行ってきましたが、これまでのプロジェクトへの熱意はPerlinのものと比べると大したことはありません。私たちはPerlinは「クラウドコンピューティング市場は分散化されるべき」という考えを基にパッションを持って活動しています。

私のPerlinでの役割はプロジェクトマネージャーです。リソースやパートナー、ビジネスプランを正しく管理する仕事ですね。この四人の中では私が一番簡単な仕事をしているのではないでしょうか(笑)

Ajay Prakash氏

Prakash氏: プロダクトマネージャーを務めているAjay Prakashです。私の仕事は、Perlinのプロダクトを人々が実際に使うように設計していくことです。

ご存知の通り、分散型ビジネス市場にはたくさんのプロダクトがあるものの、実際多くの人に使われているものは極めて少ないのが現状です。そこで私たちは、100万ユーザーを達成することを目標に活動しています。

Perlinの前は、Dorjeeと一緒にRepublic Protocolにいました。これまで7カ国以上でマーケティングマネージャーをしてきた経験もあり、フルスタックデベロッパーでもあります。

Trung Nguyen氏

Nguyen氏: マーケティングマネージャーのTrung Nguyenです。数学者・エンジニアとして、いくつかの賞も受賞してきました。自動化エンジニアリングの分野で3年ほど働き、数学の研究も一年ほどしてきました。

Kenta Iwasaki氏

Iwasaki氏:PerlinのCTOを務めているKenta Iwasakiです。6歳くらいの頃にプログラミングを始め、AIや暗号学についてたくさん研究してきました。2年ほど前にはNAVERで働いていて、AIチームのトップとして、NAVER CLOUDシステムの大半を作り上げました。

NAVERの前はフルスタックデベロッパーもやっていました。それから、大体6つほどのスタートアップに関わり、2つはすでにやめています。あとは、ハッカソンにも出ていて、20個くらいのうち17個ほどで優勝しています。EOSのハッカソンで勝った経験もあります

ー も、ものすごく豪華なチームですね…

Sun氏: スタートアップをやるときは、いつもベストな才能の持ち主を探すようにしています。香港大学の科学・テクノロジー分野で賞も獲得しているKentaのことは、彼が大学やNAVERで発表した研究文献を通して見つけました。

私たちはすぐに韓国に出向き、彼に共同創設者になるよう説得しました。クリプト界では特に若い才能が多く、私はこのような才能の持ち主を分散型ネイティブと呼んでいます。TrungやAjayも非常に若くて才能のあるメンバーです。

今日いる四人の他にも、米シカゴ大の教授や、ジョージア工科大の分散型システムのPhDもいたりします。

Perlinの概要・設立のキッカケ

ー読者も知らない方は多いと思うので、Perlinのプロジェクト内容について教えていただけますか。

Sun氏: アマゾンは先日、アマゾンウェブサービス(AWS)のクラウド事業で1600億ドルの利益を上げたことを発表しました。この市場の大きさに加え、市場の参加者がAWSやGoogle、IBMなど数企業に限られていることを考えると、このマーケットはディスラプションに適していることがわかります。

現在、世界中のスマートフォンやプレイステーション、ラップトップは、使っていないときはただアイドル状態のまま眠っています。東京中のコンピューターやスマートデバイスは夜になると、何の処理もせずただ放置されているんですよ。

そこで私たちは、Waveletを活用した暗号資産のマイクロペイメントを応用することで、こういったデバイスを利用した「分散型クラウドコンピューティング」を実現させることができると考えました。

Waveletとは?Perlinが開発した分散型台帳システム。アバランチプロトコルと呼ばれるコンセンサスメカニズムにDAGと呼ばれるデータ構造を組み込むことで、安定性やセキュリティの高さを実現している。

10年前、スマートフォンが普及したことでUberのようなサービスが実現可能になりました。同様に、Facebookなどが生み出したデジタル上の社会的信頼という概念がAirBnBなどのサービスを実現可能にしました。

こういった動向になぞらえると、Perlinが提供する分散型クラウドコンピューティングは、ブロックチェーンや分散型台帳技術に使われている暗号化技術により実現が可能になると考えています。

また、若者に研究のためのコンピューティングパワーを与えれば、もっと貴重な研究が盛んに行われるとも考えており、プロジェクト設立に至った理由の一つでもあります。私たちは、Perlinを「誰でも利用できるコンピューティングリソース」にしたいと思っています。

また、アマゾンなどが持つ既存のビジネス体系では、大きな企業がどんどん富を増やしていくだけですが、Perlinではお金が貧しい人々に行くようにしていきます。一日2ドルで暮らすインドネシアの人々が、スマートフォンや他のデバイスの処理能力を貸し出して、お金を稼ぐことができると想像してみてください。

Nguyen氏: 私たちは実際にアマゾンのスタッフとミーティングもしましたが、Perlinのようなプロジェクトが出てくるのは時間の問題だと言っていました。スマートフォンやラップトップに莫大な計算能力が眠っていることを考えると、アマゾンが現在持っているものはなんてことありません。

Iwasaki氏:Perlinの設立には技術的な動機もあります。私は初めてサトシナカモトのホワイトペーパーを読んだとき、ブロックチェーンの興味深さに惹きつけられました。一方で、ビットコインには多くの問題があることにも気づきました。

現在、DAppsを動かしていくには、スケーラビリティの面で大きな問題があります。Perlinで分散型クラウドを構築していくにあたり、その負荷に耐えられるブロックチェーンがない場合どうすればよいかを考えることとなりました。

だからこそ、Perlinというプロジェクトは、分散型クラウドコンピューティングだけではなく、企業のプロダクトなどを動かせるスケーラビリティを持ったブロックチェーンプラットフォームを開発する、という面白い研究でもあります。

Nguyen氏: それから、マイニングは分散型台帳を維持するためだけに莫大なエネルギーを使っています。Perlinでは、アバランチの改良版を使うことでマイニングを撤廃しています。

ー コンピューティングパワーは、実際に必要とされている計算をするためだけに使われるということですね。

Iwasaki氏: そのとおりです。Perlinでは、人々に必要とされている計算処理を行うことでマイニング的な行為を行うことができます。この計算処理というのは、プロダクトやサービスの開発に役立つもの、という意味です。アバランチの文献には、PoWを撤廃するために役立つ面白いアイデアがたくさんありました。

Sun氏: Waveletに関して言えば、私たちはスマートコントラクト対応かつ10万TPSを達成できるDAGベースのレッジャー(台帳)を作り上げました。私たちは、Perlin上でソフトウェアを構築したいというプロジェクトやコンサル企業ともすでに話をしています。しかし、私たちのメインゴールは分散型クラウドコンピューティングシステムの開発なので、まあ、レッジャーの開発も行っているよ、ということです。

ー なるほど。それではPerlinのレッジャーはどのようなDAppsを動かすのに適しているのでしょうか?また、他のスケーラビリティ特化型チェーンとの大きな違いは何でしょうか?

Iwasaki氏: クラウドコンピューティングの負荷に耐えられるように作っているので、基本的には何にでも使えると思います。

Perlinが10万TPSを達成できる理由は、デバイス間のコミュニケーションを削減しているからです。通常、高TPSが達成しにくい理由は、このコミュニケーションの多さにあります。

例えば、AからCにメッセージを送信する場合、AからBに送信、Bがメッセージを仲介してCに送信、Cも同様のステップを経て返信と、本来ならAからCに直接送った方が速いようなケースがたくさんあります。これをコミュニケーションの複雑性(Communication Complexity)と呼びます。

シャーディングは、もちろんビットコインよりはスケーラブルですが、未だシャード間でのやりとりがあるため、コミュニケーションの複雑さが発生してしまいます。ビットコインでは、一人が全員と会話しなければならないところを、シャーディングでは、シャードと呼ばれるグループ同士が会話をする、と言った感じでしょうか。

一方WaveletおよびPerlinコンセンサスでは、このコミュニケーションの複雑さを解消して高TPSを実現しています。

ーPerlinが採用しているDirected Acyclic Graph(DAG)について詳しく教えてください。実用例はIOTAなどではあるものの、なかなか難しい技術だと思うのですが、実際どうでしょうか?

Iwasaki氏: 言ってしまうと、ビットコインもDAGに当たります。ビットコインチェーンでは、トランザクションのつじつまが合わないチェーンがたくさん発生・存在します。つまり、たくさんのサイドチェーンと、一つのメインチェーンが存在するということです。ブロックチェーンというのは、通常のこのメインチェーンのみを指すことになります。

DAGというのは「メインチェーンと、相反するサイドチェーンを全部まとめて、一つのグラフにする」ということなんです。そういう意味合いでは、ビットコインもコンセンサスレベルではDAGと言っていいのです。

もちろん、コンセンサスや、シビル耐性の面からこの考えに疑問を抱く人は少なくありません。イーサリアムやビットコインでは、最長のチェーンがメインチェーンとして選ばれます。一方DAGは「最長チェーンだけを見るのではなく、存在する全てのチェーン間の関係性を分析してコンセンサスにより速くたどり着こう」と考えます。

シビル耐性とは?P2Pネットワークにおいて、悪意のあるユーザーが複数の偽ユーザーを作り出し、特定のユーザーの評判を操作する行為。

IOTAは集権性の高さに問題があります。IOTAには、コーディネーターと呼ばれる者が存在し、ネットワーク全体の安全性を保つ責任者となっています。これがIOTAのダメなところですね。何百万人という人がIOTA上でやり取りをしている中、コーディネーターが落ちた場合、誰もトランザクションを行うことができなくなってしまいます。

しかしIOTAの面白いところは、そのプロトコルにあります。このAvalancheを改良したWaveletでは、グラフを利用することで全ユーザーが独立しつつ、お互いを承認し合うことができます。また、ユーザーは他人に危害を加えないインセンティブがあります。

クラウドサービス市場での競走について

ー なるほど。既存のクラウドサービス市場にはアマゾンやグーグルやIBMなどの強力な競合が存在しますが、Perlinはどのようにこの場で競っていくと考えていますか?

Iwasaki氏: アマゾンやグーグルといった既存の企業からシェアを奪うつもりはありません。供給の足りていないコンピューティング市場に参入したい、とただそれだけです。現在のクラウドコンピューティング市場は、供給が足りていないためとても高価になってしまっています。

Sun氏: 例えば、Uberは安価な交通サービスを提供することで、今までタクシーを利用してこなかった消費者を取り込んでいます。つまりUberは、市場を拡大したのです。

Perlinも同様、クラウドコンピューティングサービスを最大80%ほど安く提供できます。アマゾンのような従来の方法では、大型の倉庫や空調、電力、コンピューター、従業員などが必要となるために莫大なコストがかかってしまいます。そこでPerlinでは、一日の9%ほどしか使用されていないプレイステーションの残りの91%を使おうと考えます。

Prakash氏: 私たちは、「新しいサービスは古いサービスの10倍の良さを持ってようやくユーザーを獲得できる」とする「10倍の法則」に従って物事を考えています。

私たちのプロダクトは、品質5倍で安さ2倍、としています。この2倍の安さというのは、分散型クラウドコンピューティングでは簡単に達成できるものです。

Sun氏: また、企業にはCSRというものが存在しますが、私たちはすでに、「お金持ちに利益がいくのではなく、1日2ドルで暮らすインドネシアの人々のような貧しい人たちにお金を渡そう」という考えに同意する60社以上のパートナーがいます。

私たちはすでにインド政府やインドネシアの国営テレコムとMOU(覚書)を締結しています。彼らは、工場のメンテナンスや改良にAI技術を必要とします。彼らがそのAI技術をソーシングする際、支払うお金がシアトルにすむお金持ちか地域のインドネシアの人々どちらに行き届くか選べるとしたら、インドネシアの人々を選ぶに決まっています。

Prakash氏: また、AI系企業の支出の80%はクラウドコンピューティングに使われていたりするため、経済面からみても、分散型コンピューティングには利点があります。

例えば、DOTAと呼ばれる人気ゲームで強力なボットを提供するOpenAIという会社は、AIトレーニングに月2000万ドルも費やしています。ありとあらゆるプレイヤーを倒してきたこのボットは、180年分のトレーニングを5日でこなしました。

OpenAIが機械学習を活用して開発したDota 2のボット(無人プレイヤー)は、世界大会に出場するプロプレイヤーにも勝った。

ー 同様に、分散型クラウドシステムの分野でも、既に様々なプロジェクトがありますよね。それらのプロジェクトと比べると、少し遅いスタートだとは思うのですが、他プロジェクトとはどのように競っていくのでしょうか?

Iwasaki氏: 当然、私は、様々な競合プロジェクトの文献をチェックしていますが、これらのプロジェクトのセキュリティ面には本当に大きな問題があります。

中には、やろうと思えば簡単に携帯のコンピューティングパワーをただで盗めてしまうような、とても集権性が高いものもあったりしますね。

また、暗号学には「承認可能な処理」というコンセプトがあります。これは、計算処理をアウトソーシングした時、本当に計算が行われたかどうかや、計算が正しいかどうかをどのようにしたら証明できるのか、というものです。

私たちが競合プロジェクトのペーパーをみて思ったのは、この一番大切な「承認可能な処理」に関する記述がほぼ触れられていない、というところです。

また、競合プロジェクトの大半はイーサリアムブロックチェーンを利用しています。私たちは独自のブロックチェーンを開発しなければなりませんでした。

私たちからすれば、スケーラビリティの観点からみて「いったいどうしたらイーサリアム上でこのサービスを展開できるの?」という感じです。10分間の計算能力を借りるのに、30分以上待って、なおかつ莫大な手数料を払わなければならない。これは現実性が薄いなと思います。

Prakash氏: また、ビジネス的な視点から見ても、競合はまだマーケットプレイスへの進出を果たしていません。一方私たちは、370000ペタバイトのサプライと、60以上のパートナシップをすでに抱えています。

Sun氏: AirBnBはホテルを経営しているわけではありませんが、部屋数では業界一を誇っています。同様に、我々は計算能力で業界一を目指します。

計算能力の貸し出し側は、平均して、年200~300ドルほど稼ぐことができます。毎晩使っていないデバイスをPerlinに貸し出すだけでお金を稼げるのです。

世界には1日2ドルで暮らす人々が20億人もいますが、その全員がスマートフォンを持っています。私たちは、Perlinがクリプト界で初の実用性の高いプロダクトになると信じています。

Perlinを利用する人々が、いずれは貯めたお金で国際送金や取引といった金融システムを利用できるようになると信じています。

グローバルブレインとの提携・日本へのメッセージ

ー Perlinは日本のVCであるグローバルブレインからの投資を受けているようですが、今後どのような関係で事業を進めていこうと考えているのでしょうか?

Sun氏: グローバルブレインはたくさんの企業に投資しています。私たちは、彼らの投資先の企業にPerlinで計算をソーシングしたり、Perlinのレッジャー上にソフトウェアを構築したりするように提案するようお願いしています。

それから、将来的にはソニーや任天堂などがPerlinのクラウドコンピューティング技術をビルトインにするような提携をしてくれたらいいな、とも考えています。

Kentaに関しては、日本のヴィタリック・ブテリン(イーサリアム創設者)になれるポテンシャルがあると思います。私たちの通貨が、日本で12しかないライセンス取得済み通貨の仲間に加われば、と思います。

また、私たちは、多くの投資家を巻き込むためにステーキングリワードの導入を考えています。Perlinのステーキングリワードでは、4種類の報酬を享受することができます。

一つ目は、トランザクションフィー、二つ目はスマートコントラクトのフィー、3つ目はクラウドコンピューティングのフィー、そして最後が毎年行われるミーティングへの参加権利です。

この手のステーキングシステムはとても人気があるので、投資家もたくさん集まるのではないかと考えています。

私たちの計算では、最初の一年で、クラウド市場の0.25パーセントを獲得できると考えています。もしこれが達成できた場合、トークンはとても価値の高いものになると考えています。

Iwasaki氏: 私たちがステーキングシステムを導入する理由は、バリデーターが実質フィアットでお金を稼ぐことができるからです。私たちのステーブルコインでは、価値がクラウドコンピューティングリソースに紐付けされています。この価値はコンピューティングを利用することで提供されるため、セキュリティには当たらないと考えています。

ー 最後に日本の皆さんに向けてのメッセージをお願いします。

Sun氏: 日本はクリプト・クラウドサービス共にとても大きな市場の一つです。いずれはここにオフィスも設立したい。ペルリンに興味のある日本人のプログラマーや研究者、ビジネスがいたら、ぜひ声をかけてほしいです。

Iwasaki氏: 私たちのプロダクトは全部オープンソースなので、色々な会社にぜひ利用してほしい。私たちのプロダクトが、成長を続ける分散型市場で現実性のあるソリューションとして利用されることを願っています!