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2018/05/26ペトロってどうなったの?ベネズエラの仮想通貨事情を時系列で全部解説!
Crypto Times公式ライターのYuya(@yuyayuyayayu)です。 今回は、定期的に話題にあがるベネズエラの仮想通貨事情についてまとめてみたいと思います。 ベネズエラ政府は昨年12月に石油で裏付けされた仮想通貨「ペトロ」を発表してから、技術面の発展や外交などを通して着実に世間の注目を集めています。 当記事では、同政府による仮想通貨関連の出来事を時系列で完全網羅したいと思います。 ベネズエラの仮想通貨事情・時系列 2017-12-03: 石油裏付け型仮想通貨「ペトロ」公表 昨年12月、ベネズエラ大統領Nicolás Maduro氏はペトロのローンチを会見で発表しました。 ベネズエラでは不穏な政治状況をめぐり法定通貨であるボリバルが暴落、ハイパーインフレーションに陥っています。 価格安定性を謳うペトロは新たな信頼性のある通貨として政府が導入を試みているものです。仮想通貨ではありませんが、過去に新たな通貨の導入によりインフレを脱出した国は存在します。 そんな政府の思惑とは真逆に、ペトロは国内外からその信用性を疑われています。 同通貨は石油を裏付けることによって通貨の価格安定性を図っていますが、その担保である石油と信頼性皆無のボリバルではフェアな取引が成り立たないため裏付けの意味がないと懸念されています。 加えてペトロの価格設定法や価格安定メカニズムは極めて不透明で、実際には政府の都合の良いように価格がコントロールされてしまうのではとも問題視されています。 また、この集権性が懸念される中でPoWが採用されていたことも批判の対象になっていました。しかし、以降イーサリアム、のちにNEMへとプラットフォームも転々と変えていきました。 2018-02-20: プレセールスタート 否定的な意見とは裏腹に、ペトロはプレセール初日で7億3500万ドルを売り上げたとされています。 Maduro大統領がペトロの大成功を讃える一方で、同氏を独裁者だと批判する米国はこれに危機感を覚え、経済制裁等への意向を強め始めます。 2018-03-20: 米国がペトロ購入を禁止 ペトロがロシアの支持を受け始める中、米国はいよいよ市民にペトロの購入を禁止します。これにより、ベネズエラは経済制裁を迂回して外貨を貯蓄することが難しくなりました。 さらに、独裁政治に対する経済制裁として多数のベネズエラ政府関係者のドル資産を凍結し始めます。 2018-04-29: インドにペトロでの石油購入を提案 ベネズエラはロシアに加え、さらにインドからも支持を得ようとする動きに出ます。 政府は、インドに「ペトロで購入すれば石油を30%安くする」と提案します。ペトロの開発チームは実際にインドを訪れるなどもしており、ペトロの普及に大きく力を入れている様子がわかります。 これを受け、インドの仮想通貨取引所Coinsecureはペトロを販売することを決定します。しかし、インド国内でも同通貨に対する批判は続きます。 2018-05-05: ユースバンク開設・ペトロゴールド発表 Maduro大統領は、2000万ペトロ(約12億ドル相当とされる)を元手に学生や若者向けの銀行を開設することを表明します。 反政府活動を活発に行う若年層をターゲットに、ペトロによる経済効果をいちはやく目に見える形にしようとしていることが伺えます。 しかし、同通貨の信用の低さは拭えません。この発表では、Maduro大統領は各大学にマイニングファームの開設を促すともしていますが、NEMベースのペトロにはマイニングという概念が存在しません。 また、同氏はここで新たに金を裏付けにした通貨ペトロゴールドをローンチする方針であることも明かしました。 2018-05-07: パレスチナとペトロファンド開設・取引所リスト公開 Maduro大統領はペトロの信用を上げる新たな外交策として、パレスチナと戦略提携を組み、2000万ペトロの準備金を元手に両国が共同で経営するペトロファンドを開設すると発表しました。 また同時に、ペトロが販売される16の仮想通貨取引所が正式に公開されました。 まとめ 以上がベネズエラの仮想通貨事情の時系列まとめになります。これからさらに進展があるに連れ、都度更新していければと思います。 ペトロの将来には米国、ロシア、インド、中国などの大きな経済母体からの支持・反対や、国内での反政府活動など様々なファクターが関係してくるので、今後の進展に要注目です。 ICO詐欺?救済?ベネズエラの仮想通貨「ペトロ」の概要と問題点とは - CRYPTO TIMES
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2018/05/26Consensus 2018にも登壇!Ethereum Classic(イーサリアムクラシック) / ETCの最新情報
イーサリアムクラシック(ETC)とは、Vitalik Buterin率いる現イーサリアム(ETH)の分岐元、言い換えるならイーサリアムのオリジナルチェーンです。 スマートコントラクトなどETHと同様の機能を搭載するイーサリアムクラシックは、コインデスク主催のConsensus 2018にも登壇し、コミュニティの発展やスタートアップの支援を行うと発表しました。 今回の記事では、非中央集権性・不変性・代替性といったブロックチェーンのコアバリューを最重要視するイーサリアムクラシックの活動情報をまとめたいと思います。 Ethereum Classic(イーサリアムクラシック) / ETCとは? [caption id="" align="alignnone" width="1500"] 左がイーサリアム、右がイーサリアムクラシック[/caption] 現イーサリアム(ETH)は、2016年に起こった投資ファンドへのハッキング事件(The DAO事件)をきっかけにハードフォークを行ったブロックチェーンです。 The DAO事件 The DAOとは、2016年に発足した分散型投資ファンドです。発足から間もなくイーサリアムのスマートコントラクトのシステムの脆弱性をハッカーに突かれ、時価約65億円相当のETHが不正送金される事件が起こりました。(詳しくはこちら) ハッキングを受け、イーサリアム開発者の間でハッカーの資産をハードフォークを通して凍結するかどうかが大きな議論になりました。 そこで、ハードフォークを行ったのが現イーサリアム、そして発足当初からのオリジナルのチェーンを継承しているのがイーサリアムクラシック(ETC)です。 イーサリアムクラシックは、ハッキングが起ころうと「ブロックチェーンに記録された情報は絶対に変更しない」という「非中央集権性・不変性・代替性」の理念を貫き通すプラットフォームです。 最近のETCの動き イーサリアム(ETH)とは別のブロックチェーンとはいえ、イーサリアムクラシック(ETC)もスマートコントラクトを搭載したブロックチェーンであることには変わりありません。 イーサリアム同様、ETCコミュニティでも新たなプロジェクトやスタートアップ支援プログラム等が活発に動いています。今回は、そのいくつかを紹介します。 イーサリアムクラシック・ラボ イーサリアムクラシック・ラボとは同ブロックチェーンを使用したスタートアップへの総合的支援プログラムのことです。 コインデスク主催のカンファレンス、Consensus 2018で発表された同プログラムは、スタートアップの技術・運営支援を行うもので、HCM(フォックスコングループ)などの大企業と提携しています。 運転資金の提供、技術指導、オフィスの提供、事業戦略のコンサルティング、新規事業企画の提案などといった広いサポートを受けられるとのことで、これからのプログラムの進展が期待されています。 ETCgame ETCgameとは、イーサリアムクラシック上に構築されたブックメーカー(ベッティング)サービスです。 同サービスはETCブロックチェーンを利用することで公平性・透明性が高く、かつ手数料無料のベッティングを提供するとされています。 また、ベッティングのカテゴリーも豊富で、現在はスポーツ、金融、政治、娯楽,eスポーツの5つのジャンルが存在しています。 コミュニティの発展 イーサリアムクラシックはコミュニティの発展に力を入れており、先日、日本の公式コミュニティも発足しました。 日本の公式コミュニティは更新頻度がとても高く、今後も活動情報が豊富に公表されるものと考えられます。 イーサリアムクラシック公式サイト一覧 日本語サイト 公式Twitter 公式Medium 公式Telegram 英語サイト 公式サイト1 公式サイト2 公式Twitter イーサクラシック・ラボ
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2018/05/25モナコイン、バージ、ビットコインゴールドのハッキング情報まとめ
特にメジャーなハッキング事件が起こらなかった四月・五月上旬でしたが、ここにきてモナコイン(MONA)、バージ(XVG)、ビットコインゴールド(BTG)のハッキングが次々と発覚しました。 この記事では、それぞれの通貨への攻撃の手口や被害状況、公式の対応などについてまとめたいと思います。 攻撃の手口 今回のハッキングを受けた通貨は全てProof of Workを採用した通貨で、51%攻撃と呼ばれる手口によって被害に遭いました。 Proof of Workでは、マイニングにより承認されたブロック(トランザクションの集まり)は他のネットワーク参加者全員に共有されることになっています。 同時にいくつか異なるブロックが承認されてしまった場合、様子を見て、その後により多くのブロックが繋がった方が正しいブロックのチェーンとして採用されます。 51%攻撃とは、ネットワーク全体の50%以上のマイニング能力を保持するハッカーが非公開で自分に都合の良いブロックのチェーンを作り上げ、タイミング良く公開するという手口です。 これを悪用すると、現在公開されているチェーン上で送金を行い、その後に送金を行なっていないチェーンを公開し、それが採用されることで送金をなかったことにできます(ダブルスペンディング)。 この攻撃が成功する確率は、ネットワーク全体の50%以上の処理能力を得ることによりほぼ100%成功すると言われています。これが「51%攻撃」と呼ばれる理由です。 モナコイン(MONA) 2013年に誕生した日本初の仮想通貨ですが、今月13日から15日にかけて51%攻撃を受け、約9万ドル相当の被害が生み出されたもようです。 今回の攻撃では、モナコインをLivecoinなどの取引所を通して別の通貨に両替し、非公開チェーンを公開して取引を無かったことにするという手口であったようです。 犯人は未だ特定されておらず、全ハッシュレート(マイニング能力)の約57%を保持していたと推定されています。 また、犯人は同様の手口でのハッキングを半年ほど試みていたと考えられおり、モナコインのマイニング難易度調整システムを悪用しようとしたものとみられます。 モナコイン公式は、攻撃の存在を公式に認めたのち、51%攻撃が既存のProof of Workではどうしても解決できないものであるとコメントしています。 現状ではサービス提供側で入金の承認数を上げる以外に有効な手段はありません。 PoWコインである以上は避けられない問題でもあるので、PoS等への移行も視野に入れていく必要があると考えています。 — monacoinproject (@tcejorpniocanom) May 17, 2018 バージ(XVG) 4月に2千万XVG(時価約1億2千万円相当)の不正獲得事件が起こって間もないバージですが、今月22日、システムのバグを悪用した51%攻撃の被害に遭ったもようです。 今回のハッキングは、同通貨のマイニングプロトコルの欠陥性が悪用されたもので、ブロックの順番を表すタイムスタンプと呼ばれるものが偽装されたことが原因とされています。 これにより、ハッカーは短時間で3500万XVG(約2億円相当)を不正に獲得したと推定されています。 今回のハッキングはBitcointalkのユーザーが指摘したものですが、バージ公式はこれを認めておらず、攻撃は他の原因により生じたと言及しています。 同通貨は大手アダルトサイトの支払い手段として導入されるなど実用化に力を入れていますが、今回の二度目のハッキング事件によって信頼性が大きく疑われています。 ビットコインゴールド(BTG) ビットコインのGPUハードフォークとして登場したビットコインゴールドですが、今月16日から18日にかけて51%攻撃を受け、その被害額は約39万BTG(約2億円相当)に登るとされています。 モナコインと同様、不正にコントロールされたBTGは仮想通貨取引所と犯人のものと思われるウォレットに両方に送金されたことになっているとのことです。 ビットコインゴールドのデベロッパーは、今回の不正なチェーンのサイズが最大22ブロックにも及んだことから、採用を決定するチェーンの長さを50まで延長するようにと助言しています。 まとめ 以上がモナコイン、バージ、ビットコインゴールドのハッキング事件のまとめとなります。 5月24日現時点での情報ですので、追加・変更等あれば随時更新していきたいと思います。
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2018/05/24エイベックス、子会社「エンタメコイン」設立へ – 事業目的に仮想通貨交換業も追加
エンターテイメント業界大手のエイベックスが今月24日、子会社の「エンタメコイン」を6月に設立すると発表しました。 エンタメコインは2019年からエイベックスグループ及び関連する芸能事業関連者向けにブロックチェーンを用いた決済システムを提供するとされています。 [caption id="" align="aligncenter" width="650"] IT Media Newsより[/caption] 同サービスでは、チケットやグッズの購入、ファンクラブの会員制度などの決済をブロックチェーン・プラットフォームを用いて管理していくものとみられます。 同社は電子マネーの発行及び決済システムの提供、及び仮想通貨交換業の3つを加えた新たな定款案も発表しており、6月下旬の株主総会で承認を得るとされています。 海外では、今回のエンタメコインに類似した映画・音楽業界向けのプロジェクトがすでにたくさん出てきています。 このようなプロジェクトでは、クリエイターが収益を受領したり、ファンがサービスを享受したりするプロセスをより容易にすることが追求されています。 エイベックスのような大手企業が参入することにより、このジャンルのプロジェクトはさらに競争が強まるものと考えられます。
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2018/05/24行動経済学から見る仮想通貨【第5回】- ポートフォリオ・マネジメントをめぐるバイアス
Crypto Times公式ライターのYuya(@yuyayuyayayu)です。 「行動経済学から見る仮想通貨」シリーズ第5回となる今回は、ポートフォリオ・マネジメントをめぐるバイアスについてお話したいと思います。 リスク分散に役立つポートフォリオの構築ですが、これを実践するにあたり複数の心理的な壁が立ちはだかります。 今回は、それがいったい何なのかを詳しく掘り下げて解説したいと思います。 なお、今回の記事は中長期のリターンを狙って仮想通貨を保有している人向けの内容です。 行動経済学から見る仮想通貨【第1回】 -仮想通貨を買う人とその動機- - CRYPTO TIMES 行動経済学から見る仮想通貨【第2回】- 仮想通貨ブームとバイアス- - CRYPTO TIMES 行動経済学から見る仮想通貨【第3回】- ハイマン・ミンスキーとビットコインバブル- - CRYPTO TIMES 行動経済学から見る仮想通貨【第4回】- ブロックチェーンの価値をめぐるバブル - CRYPTO TIMES ポートフォリオ・マネジメント [caption id="" align="aligncenter" width="1000"] 資金はたまご、アセットはそれを入れるカゴ。ひとつのカゴに全て入れてしまうと、万が一の時に全て失ってしまう。[/caption] ポートフォリオを構築する上で基本となってくるのがアセットの多様化(ディバーシフィケーション)です。 これは、投資資金全てを一つの銘柄やアセットクラスに費やすのではなく、多数のものに分散するというものです。 こうすることにより、一つの銘柄や市場が暴落を起こしても、他でカバーすることができるため、全体的にはリスクが軽減されます。 仮想通貨と他のアセットの相関関係をわかりやすく解説! - CRYPTO TIMES 具体的に、ポートフォリオを数学的に構築したり、インデックス投資(ETFなど)をするなどといった様々なアプローチがあります。 しかし、特に個人投資家にとって、これはわかっていても中々実践する気になれないものだと思います。また、分散していると思っていても、実はできていない場合もあるでしょう。 無意識のうちに特定のアセットを偏って購入してしまう心理にはどのような要素が関係しているのでしょうか。深くみてみましょう。 ファミリアリティ・バイアス ファミリアリティ・バイアスとは、馴染みのある銘柄やアセットクラスを無意識のうちに選り好みしてしまう傾向のことをいいます。 このバイアスを受けてしまうと、特定のアセットばかり偏って購入してしまうせいで、ポートフォリオのリスク分散がうまくいかなくなってしまうという問題があります。 例えば、以下のようなケースでは、ファミリアリティ・バイアスが生まれやすいです。 プロジェクトが日本発だ [カントリー・バイアス] または、同じ地域発だ(アジア圏内など) [ホーム・バイアス] SNSでよく見る [ハーディング] あるいは単純に、有名な企業だ [代表性・可用性ヒューリスティクス] ファミリアリティ・バイアス下では、無意識のうちにこういった馴染みのある銘柄の価格変動に関する情報を掴めているような錯覚に陥ってしまうのです。 しかし、本当に価格に関係する情報は既にリターンやリスク指標に現れています( ※1 )。 従って、中長期投資を行うときは銘柄の名前ではなく数字を見てポートフォリオを組む方が良いといえます。 (※1) 冒頭にある通り、これは中長期型の指標投資に関するもので、効率的市場仮説(EMH)という理論に基づいています。従って、ここでいう「情報」のうち、アービトラージやプライスアクション取引に関するものはリターンやリスク指標には現れていません。 投資家と「慣性の法則」 投資家には「慣性の法則」が働くと言われています。これは、一度静止した物体が静止し続けるように、一度構築したポートフォリオがそのまま触られないことを指します。 しかし、ポートフォリオは資金を一度分散すれば終わりというわけではなく、それぞれのアセットの値動きに応じて定期的に再分散(リバランス)も行わなければなりません。 確定拠出年金利用者などを対象にこの慣性の法則を検証する研究が多数行われており、「買って保有しておく」タイプの個人投資家の多くはリバランスを行わない傾向にあることがわかっています。 慣性が働く理由として、値上がりするまで待ちたい(ディスポジション効果)ですとか、単純に面倒臭い、必要知識がないなどといったものがあります。 このような要素が絡まり合うと、リスク分散をつい怠りがちになってしまいます。機関投資家であれば顧客の資金を扱うのでよりリスクに気をつけますが、個人投資家だと特に放置しがちです。 仮想通貨取引との関連 リスク分散を妨げる心理的な要素をいくつか挙げましたが、これは仮想通貨取引においてどのような関連性があるのでしょうか。 これには、ポートフォリオレベル(全資金)と、アセットクラスレベル(仮想通貨に充てる資金)で別々の解釈ができると考えています。 ポートフォリオレベルでの問題 中長期型の投資をしている人、いわゆるHodler(ホドラー)の多くに当てはまるのがそもそも仮想通貨以外に投資をしていないケースでしょう。 ある機関投資家の意見では、仮想通貨はポートフォリオの1~2%ほどが良いとされています(あくまで機関投資家向けの提案です)。 仮想通貨はリターンも非常に高いため、これをきっかけに投資を始めた人は資金の大部分を株式や債券に移すことに大きな抵抗を感じてるものと考えられます。 ファミリアリティの観点から見れば、仮想通貨市場では個人が徹底してICO精査を行うので、より多くの資金を優良ICOにつぎ込みたくなるものだと思います。 また、市場のリサーチをやり直したくないという理由で別のアセットクラスには手を出していないという投資家も多いと考えられます。 他にもFOMO(投機を見逃す恐怖)や損失を埋め合わせるために価格が上昇するまで資金を動かしたくないという考えもあるでしょう。 アセットクラスレベルでの問題 次に考えられるのが、仮に資金をポートフォリオで管理していたとしても、仮想通貨に充てる資金を少数の銘柄のみにしか投資していないケースです。 リスク分散は、アセットクラス間とアセットクラス内両方で行わなければなりません。ですから、他との割合を考慮して仮想通貨用の資金を準備したら、これもうまく分散しなければならないのです。 しかし、仮想通貨界はSNSやニュースをひときわ強く受けるため、これにつられて少数の通貨にたくさん資金をつぎ込む投資が主流になっているのではと考えられます。 もちろんですが、そもそも優良ICOなどを拾っていく投資をしている場合は話は別です。 しかし、中長期の成長を見込んだ保有もしたい場合は、まず資金の大部分を分散し、一部のみをアクティブ投資するのが安全策と考えられます。 まだ派生商品が少ないという問題はありますが、参考になるインデックスはMVISやCoinbaseなどから出ています。 また、バイナンスにある資金をトップ20に分散、自動で再配分してくれるボットなども存在します。 まとめ リターンとリスクの関係を最適化するこの方法を実践するにあたり様々な心理的な壁が立ちはだかると言うものでした。 仮想通貨投資において、リスク分散をすると言うのは特に難しいことだと思います。市場自体も生まれたてで、有望はプロジェクトもたくさん出てきているからです。 しかし、この先万が一大きな価格の適正化が起こった時のために、できるだけ資金分散を心がけるべきでしょう。 行動経済学からみる仮想通貨シリーズ: 第1回・第2回・第3回・第4回
インタビュー
2018/05/22ブロックチェーンの位置付け、現状、そして未来へ | Unlockd JC Oliver氏インタビュー
JC Oliver氏はマイクロソフトやVerizonなどといった大手IT企業での活躍経験のある方で、現在は広告リワードプラットフォームUnlockdやMoviecoin、Bankexなどに携わっています。 今回は、21日に東京・高輪で開催されたFinwise Summitにスピーカーとして登壇されたOliver氏に会場で直接インタビューをさせていただきました。 「ビジネスにおけるブロックチェーンの位置付け、現状と課題」という広いテーマでたくさんの興味深いアイデアを共有してもらいました。 「ブロックチェーン産業」は存在しない BBC、マイクロソフト、VerizonにAOLといった大手企業での経験をお持ちのOliver氏。まずはブロックチェーン系の分野に興味を持ったきっかけを聞いてみました。 ーー 本日はインタビューに応じていただきありがとうございます。まずは、どのような動機でブロックチェーン技術に関わりを持つようになったのか教えてください。 Oliver氏: 人や物のID認証をする上でブロックチェーンには大きなポテンシャルがあると思ったのがきっかけです。ブロックチェーンというのはそれ自体がプロダクトになる技術ではなくて、経理やマネジメントといったビジネスの大元を支える技術だというところに惹かれます。 今でこそブロックチェーンという技術自体がひとつの業界のようになっていますが、正確には認証システムを要するビジネスであれば産業を問わずに応用できる技術です。そういった意味で、「ブロックチェーン産業」というものは存在しないわけです。 ーー なるほど。今はブロックチェーンという名前だけで注目が集まるものですが、将来はあって当たり前になるかもしれないということですね。 Oliver氏: はい。また、「行動に応じて消費者が報酬をもらえる」という今までになかったサービスを提供できるのも良いと思います。映画製作における資金管理やファンがリワードを貰えるMoviecoinの設立に至ったのはこれが理由です。 チーム作りには技術側と産業側両方の知識が必要 ーー それでは、ブロックチェーン技術に関わりたいという人に需要のある質問をさせてください。今、この技術分野ではどのような人材が必要とされているのでしょうか? Oliver氏: 当然ですが、まず「分散型」の考え方に慣れているエンジニアですね。そして忘れてはいけないのが、産業側の知識を持つ人です。もちろん、両方ひとりでこなせるならそれも良いことです。ともかく、フロント(産業サービス側)とバック(技術側)両サイドで人材が求められています。 先ほども言ったように、ブロックチェーン技術は応用できるビジネスモデルありきですから、技術側と該当する産業側両方の人間のアイデアが必要になります。 ーー 確かに、サミットで登壇された時のプレゼンにも「技術はイノベーションの機会を作り出すが、実際にイノベーションを作り出すのは人の創造力だ。」という引用がありましたね。 Oliver氏: はい。私が作った名言です。結構気に入っています。 ブロックチェーンは見えない技術 ーー ここまでポテンシャルのあるブロックチェーンですが、この技術が本当に身近な存在になるまでにはまだ10年、20年かかると言われているのはなぜでしょうか? Oliver氏: 浸透が遅い一番の原因はブロックチェーン技術自体が見えたり体験できたりするものではないからだと思います。 例えばVRだったら「デジタル世界が360度で体験できる」というのが明快ですよね。しかしブロックチェーンというのはビジネスを効率化する認証システムですから、いくら革新的とはいえ一般の方には本当にわかりづらいものです。 ーー 確かに、デジタル通貨などに対しても実体のなさに抵抗を覚える人などもいますよね。 Oliver氏: 少し前に、イギリスの大手スーパーで牛肉と偽り馬肉が売られていたことがありました。消費者はわかりようもないのでこれは大変な問題ですよね。しかしブロックチェーンで物流を管理すれば、商品のでどころや運搬ルートが確実にわかりますから、こういった問題は解決されるわけです。 ここでVRと馬肉の話を比べると、物理的に体験できる前者の方が圧倒的に普及が早いわけです。ブロックチェーンは本当に革新的な技術ですが、目に見えないため良さが広く理解されるまでには時間がかかるということですね。 おわりに ブロックチェーン技術は、今こそトレンドの影響でひとつの産業のようになっていますが、これから世間的な認知が広まるにつれ様々な業界でビジネスの基幹となっていくものだということでした。 「馬肉の話、書いてくれよ!」などと冗談を交えつつ終始笑顔でインタビューに応じてくださったOliver氏はとても気さくな方でした。 同氏は現在、映画やグッズの購入に使えるユーティリティトークンと、映画製作者が融資に使えるセキュリティトークン両方を発行するプラットフォームMoviecoinの開発に力を入れています。
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2018/05/19新たなハード・ドルペグ通貨「USD Coin」とは?類似通貨との違いも徹底解説!
クリプト系金融ビジネス、Circleがトークン化型USドル「USD Coin」を発表しました。 今月15日にオフィシャルブログに投稿された内容によると、USD Coin(ティッカー: USDC)は米国の送金法に則った透明性の高いUSDペグ通貨で、開発にはCENTREと呼ばれるプロトコルが使用されているとのことです。 Circleは仮想通貨取引所世界的大手であるPoloniexを買収した事で注目を浴びた企業です。 今回のアナウンスでは、同社がビットコインマイニングやASICチップの開発で世界的に有名なBitmainとパートナーシップを結び、約1億ドルの出資を受けたことも発表されています。 そんな今注目のCircleが発表したUSD Coinとは一体何なのか、また、TetherやMakerDAOなどの他のステーブルコインとの違いなどを徹底解説します。 法定通貨に連動!?仮想通貨におけるペグ通貨とは - CRYPTO TIMES USD Coinとは? USD Coin(USDC)とは「1USドル=1USDC」となっている、いわばトークン化されたUSドルです。 他の一般的な仮想通貨は投機やスペキュレーションの影響でボラティリティが非常に高いですが、USDCはUSドルをペグしたものであるため、理論上はUSドルの価格変位と連動します。 また、メリットは価格安定性だけではありません。USDCと他の仮想通貨の取引ペアを作ることにより、デジタル通貨のみでフィアット↔仮想通貨間の取引が可能にもなります。 類似通貨との比較 USDCのような、価格が安定する仕組みの施された通貨をステーブルコインと呼びます。 基本的にはコイン1単位=法定通貨1単位にすることがステーブルコインの目標ですが、これを実現する代表的な方法は二つあります。 法定通貨を裏付ける方法 USD Coinや、Tetherなどがこれにあたり、日本でも三菱UFJが1コイン=1円に相当する「MUFGコイン」の開発を進めています。 「法定通貨を裏付けにした」というのは、実在する法定通貨の所有権をデジタル上に表したものということです。ですから、コイン発行に際しそれを裏付ける法定通貨が必ず存在するということです。 このような通貨をハードペグ通貨と呼びます。 アルゴリズムで価格を調整する方法 このような通貨はソフトペグ通貨と呼ばれ、コイン1単位を法定通貨1単位に近づけるインセンティブが組み込まれています。代表的ものはMakerDAOのDaiでしょう。 例えばDaiでは、「TRFM」と呼ばれるメカニズムによって、Daiの価格を1USドルに近づける事で利益が得られるようになっています。 ちなみにですが、仮想通貨のハードペグ・ソフトペグは法定通貨のそれとは全く同じ意味ではないので注意が必要です。 USD Coin Vs. Tether それでは、USD Coinは他のステーブルコインと比べてどのようなアドバンテージがあるのでしょうか。 まずは、同じハードペグのカテゴリに属するTetherと比べて見ましょう。 Circle公式によると、USDCの一番のアドバンテージはERC-20トークンであることと、米国の送金法に準じていることであるといいます。 USDCはERC-20トークンであるため、ビットコインベースのものと比べ統一性や決済速度が優れています。 イーサリウムベースのためスマートコントラクトを使用することもできます。しかし、現段階ではUSD Coinが同技術を利用したサービスを展開するかどうかは発表されていません。 ベースのブロックチェーン 信用性 USD Coin イーサリウム(ERC-20) 金融大手のバッキング Tether ビットコイン 業界大手だが、監査面で議論あり また、CircleはUSDCのコンプライアンスの良さも推しています。米国送金法に準じていることや、ゴールドマンサックスや百度など大手企業からのサポートを受けていることなどが発表されています。 ベースのブロックチェーンだけを見る限りではUSD Coinの方がより汎用性が高いと考えられます。 コンプライアンスの面は、実際のサービス開始後それを維持できるかに関わってくると考えられます。Tetherでは関係機関の監査面やセキュリティなどをめぐって問題や議論が生じています。 よって、Circleが同じようなスキャンダルを起こさずに運営できるかどうかで両者の優劣は明確になってくるでしょう。 ハードペグ通貨 Vs. ソフトペグ通貨 次に、USDCとDaiを比べてみましょう。こちらはこの2つの優劣、というよりかはハードペグとソフトペグの違いという形になります。 ソフトペグ通貨は、価格が大きくそれてしまうことがよくあります。 下のDaiのチャートでは、アービトラージが追いつかずに価格が上下しているのがわかります。 [caption id="" align="aligncenter" width="1120"] ソフトペグ通貨「Dai」のチャート。1 Dai = 1USDから大きくそれる時がある。[/caption] また、仮想通貨を担保に発行できるZen(ゼン)は「1Zen = 1円」のはずですが、昨年末には売り注文が追いつかず1Zenあたり5000円にまで跳ね上がっています。 [caption id="" align="aligncenter" width="1324"] Zaif発行のZen(ゼン)のチャート。[/caption] 対してハードペグ通貨は法定通貨と紐付けされているため、価格の変位はかなり小さいと言えます。 ですから、単純に法定通貨を仮装通貨市場上で保管したい場合は、USDCのようなハードペグの方が仮想通貨市場の相場の影響を受けにくいといえるでしょう。 それでは、なぜソフトペグ通貨が存在するのでしょうか?これはプロダクトにより意義が異なりますが、Daiであればレバレッジを掛けられる点にあるでしょう。 MakerDAOでは、イーサリウムを担保にし、Daiを経由することによってETH/USDペアにレバレッジを掛ける事ができます。 より簡潔に言えば、USドルをDaiで借りる事ができ、それをマージン運用できるという事です。 よって、USDCとDaiはそもそも競合する通貨ではない事がわかります。 まとめ USD Coinの特徴や類似通貨との違い、おわかりいただけたでしょうか。 USD Coinが今後どれくらいのスピードで開発が進むのか、また、Tetherとの信用獲得の競争は要注目です。 コンプライアンスの高さを長所として挙げるのはCircleだけに限らずどのプロジェクトでも同じです。 個人的な見解ですが、Circleにとって、今後USDCのサービス実施と共にいかに法整備・セキュリティ面での問題発生を防いでいくかがTetherに追いつくカギだと考えられます。
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2018/05/18Bitfinexが一部ユーザーに税金関連の情報を要請、各政府に共有する可能性も
仮想通貨取引所大手のBitfinexが一部のユーザーに税金関連の情報を要請するメールを送信していたことが明らかになりました。 同取引所は香港に本部を構えていますが、会社自体はタックス・ヘイブンとしても知られるイギリス領バージン諸島に登録されています。 今回の一部ユーザーへの情報要請はイギリス領バージン諸島の法律に基づいたものとされており、同社は提出された情報を該当ユーザーの国の税務局に共有する可能性もあるとしています。 [caption id="" align="aligncenter" width="596"] Bitfinexから一部ユーザーに送られたメール[/caption] 今回の情報要請の発覚を受けてツイッターでは非難の声が寄せられており、Bitfinexはこれに対し次のように返答しました。 「今回のメッセージは全ユーザーに送られたものではなく、情報公開をすべきと思われる者だけを選びました。今回のメッセージが送られていないユーザーは情報公開をする必要は今回はありません。」 このように、大半のユーザーは「今回は」情報公開をする必要がないとされています。同社は本社登録をスイスに移す計画も今年3月に発表しており、今後もKYCがさらに強化されると考えられます。 記事参考元: Bitfinex Starts Sharing Customer Tax Data with Authorities
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2018/05/18米国証券取引委員会がスキャムICOの例として偽プロジェクトを立ち上げる
ICOの適切な規制に向けて協力的な動きを見せている米国証券取引委員会(SEC)が、スキャムICOの例として偽プロジェクトを立ち上げました。 HoweyCoins(ハウイコインズ)と呼ばれる同プロジェクトは、ホテルや航空券の購入に利用できるトークンを発行するブロックチェーン・プラットフォームとされています。 旅行業界での投資チャンスをあらかさまに謳うHoweyCoinsウェブサイトでは、プロジェクトが米政府に登録されていることや、SECの規制に則っていることなどを箇条書きで書き連ねています。 さらに下にスクロールすると、購入時期が早ければ早いほど割引が付くなどと書かれています。 [caption id="" align="aligncenter" width="465"] "Buy Coins Now!"あたりにユーモアを感じます。[/caption] そしてさすがSEC、なんとホワイトペーパーまできちんと書かれています。 計8ページにわたる同文書の「結論」欄には、「HoweyCoinsのICOは絶対に逃せない」などといったFOMO(投機を見逃すことへの恐怖)を煽る文句が書かれています。 騙されると「お説教」ページに飛ばされる ここで実際にトークンの購入やメールアドレスの送信に移ろうとすると、SECの「お説教」ホームページにジャンプします。 「このプロジェクトが本物だったら、あなたは詐欺に遭っていたかもしれません」と書かれた同ページでは、HoweyCoinsがスキャムICOに見られる5つの特徴を詰め込んだプロジェクトであることが明かされています。 その「5つの特徴」は次の通りです。 1. ハイリターンが保証されている 投資には必ずリスクが伴い、「ノーリスク・ハイリターン」などといった投機は基本的には存在しません。 2. プロモーターに有名人がいる 人気歌手やアスリート、インフルエンサーにプロモートされているからといって、そのプロジェクトがしっかりしているものであるとは限りません。 [caption id="" align="aligncenter" width="486"] HoweyCoins ウェブサイトより[/caption] 3. SECの規制に基づいていると謳う SECのコメントによると、同局がプロジェクトを公式に認可・登録するなどといったことはないため、「SECに登録された」などと謳うプロジェクトには注意が必要だとのことです。 4. クレジットカード払いに対応している ほとんどのICOはビットコインやイーサリウムなどといったメジャーな仮想通貨での支払いを受け付けているため、クレジットカード払い対応を謳うプロジェクトには注意が必要です。 5. パンプアンドダンプについて言及している HoweyCoinsウェブサイトの最後では、「早期購入者が利益を挙げられるようなパンプを行う」といった内容も書かれています。 パンプアンドダンプは違法である上、価格が限界まで上昇したところで詐欺を行う側がダンプ(売払い)を行い、投資家は大きな損失を被る可能性があります。 今回の偽プロジェクトは、SECによる投資家保護のための巧妙なアプローチでした。 bitFlyerの加納社長もTwitterにて言及しているくらいです。 https://twitter.com/YuzoKano/status/996812435217502208 ブロックチェーンにある程度携わっている人にとってはなかなか笑えるお話ですが、それでも普段見落としかねないポイントがうまく説明されているのではと思います。
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2018/05/16米コインベースが機関投資家向けに新たな4つのサービスを展開
サンフランシスコ発の仮想通貨取引所大手・コインベースは今月15日、機関投資家向けに新たなサービスを展開すると発表しました。 コインベース総責任者、Adam White氏のMeidumによると、同取引所は以下の4つのサービスを新たに提供するとのことです。 Coinbase Custody Coinbase CustodyとはSECに準じた保管人・ブローカー・ディーラーによるクリプトアセットの保管・会計監査を提供するサービスです。 同サービスではすでに8つのパートナーシップを結んでおり、サインアップも可能となっています。 Coinbase Markets 同取引所はシカゴにエンジニアオフィスをオープン予定で、市場の流動性確保等にも力を入れていくとされています。 このサービスを拡張したものがCoinbase Marketsで、機関投資家向けに低遅延のプラットフォームや、データセンター賃貸(コロケーション)などのサービスを提供する予定とのことです。 Coinbase Prime Coinbase Primeは機関投資家向けの取引所インターフェースで、OTCオーダーやアルゴリズムを使用したトレーディング、市場やリサーチ等のデータが利用できるとされています。 GDAXなどのプラットフォームは個人投資家も利用できるのに対し、Coinbase Primeは厳密に機関投資家限定となっているもようです。 Coinbase Institutional Coverage Group Coinbase Institutional Coverage Groupでは機関投資家向けのマーケットオペレーションを補助するサービスとなっています。 同グループは「ニューヨーク証券取引所やモルガン・スタンレー、SECやCFTCなどの主要機関とのビジネスで培った経験」を活かすとされており、クライアントのサポートを重視するものとみられます。 市場には現在226社ほどのクリプトファンドが存在するとされており、加えてメガバンクなどの大型機関も次々に参入してきています。 昨年を筆頭にこの数は爆発的に増えており、今回のCoinbaseのサービスがこういったファンドの進出をさらに促進するものと考えられます。