行動経済学から見る仮想通貨【第5回】- ポートフォリオ・マネジメントをめぐるバイアス
   公開日 : 2018/05/24

行動経済学から見る仮想通貨【第5回】- ポートフォリオ・マネジメントをめぐるバイアス

YuyaCRYPTO TIMES公式ライター

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Crypto Times公式ライターのYuya(@yuyayuyayayu)です。

「行動経済学から見る仮想通貨」シリーズ第5回となる今回は、ポートフォリオ・マネジメントをめぐるバイアスについてお話したいと思います。

リスク分散に役立つポートフォリオの構築ですが、これを実践するにあたり複数の心理的な壁が立ちはだかります。

今回は、それがいったい何なのかを詳しく掘り下げて解説したいと思います。

なお、今回の記事は中長期のリターンを狙って仮想通貨を保有している人向けの内容です。

ポートフォリオ・マネジメント

資金はたまご、アセットはそれを入れるカゴ。ひとつのカゴに全て入れてしまうと、万が一の時に全て失ってしまう。

ポートフォリオを構築する上で基本となってくるのがアセットの多様化(ディバーシフィケーション)です。

これは、投資資金全てを一つの銘柄やアセットクラスに費やすのではなく多数のものに分散するというものです。

こうすることにより、一つの銘柄や市場が暴落を起こしても、他でカバーすることができるため、全体的にはリスクが軽減されます。

具体的に、ポートフォリオを数学的に構築したり、インデックス投資(ETFなど)をするなどといった様々なアプローチがあります。

しかし、特に個人投資家にとって、これはわかっていても中々実践する気になれないものだと思います。また、分散していると思っていても、実はできていない場合もあるでしょう。

無意識のうちに特定のアセットを偏って購入してしまう心理にはどのような要素が関係しているのでしょうか。深くみてみましょう。

ファミリアリティ・バイアス

ファミリアリティ・バイアスとは、馴染みのある銘柄やアセットクラス無意識のうちに選り好みしてしまう傾向のことをいいます。

このバイアスを受けてしまうと、特定のアセットばかり偏って購入してしまうせいで、ポートフォリオのリスク分散がうまくいかなくなってしまうという問題があります。

例えば、以下のようなケースでは、ファミリアリティ・バイアスが生まれやすいです。

  • プロジェクトが日本発だ [カントリー・バイアス]
  • または、同じ地域発だ(アジア圏内など) [ホーム・バイアス]
  • SNSでよく見る [ハーディング]
  • あるいは単純に、有名な企業だ [代表性・可用性ヒューリスティクス]

ファミリアリティ・バイアス下では、無意識のうちにこういった馴染みのある銘柄の価格変動に関する情報を掴めているような錯覚に陥ってしまうのです。

しかし、本当に価格に関係する情報は既にリターンやリスク指標に現れています( ※1 )。

従って、中長期投資を行うときは銘柄の名前ではなく数字を見てポートフォリオを組む方が良いといえます。


(※1) 冒頭にある通り、これは中長期型の指標投資に関するもので、効率的市場仮説(EMH)という理論に基づいています。従って、ここでいう「情報」のうち、アービトラージやプライスアクション取引に関するものはリターンやリスク指標には現れていません。

投資家と「慣性の法則」

投資家には「慣性の法則」が働くと言われています。これは、一度静止した物体が静止し続けるように、一度構築したポートフォリオがそのまま触られないことを指します。

しかし、ポートフォリオは資金を一度分散すれば終わりというわけではなく、それぞれのアセットの値動きに応じて定期的に再分散(リバランス)も行わなければなりません。

確定拠出年金利用者などを対象にこの慣性の法則を検証する研究が多数行われており、「買って保有しておく」タイプの個人投資家の多くはリバランスを行わない傾向にあることがわかっています。

慣性が働く理由として、値上がりするまで待ちたい(ディスポジション効果)ですとか、単純に面倒臭い、必要知識がないなどといったものがあります。

このような要素が絡まり合うと、リスク分散をつい怠りがちになってしまいます。機関投資家であれば顧客の資金を扱うのでよりリスクに気をつけますが、個人投資家だと特に放置しがちです。

仮想通貨取引との関連

リスク分散を妨げる心理的な要素をいくつか挙げましたが、これは仮想通貨取引においてどのような関連性があるのでしょうか。

これには、ポートフォリオレベル(全資金)と、アセットクラスレベル(仮想通貨に充てる資金)で別々の解釈ができると考えています。

ポートフォリオレベルでの問題

中長期型の投資をしている人、いわゆるHodler(ホドラー)の多くに当てはまるのがそもそも仮想通貨以外に投資をしていないケースでしょう。

ある機関投資家の意見では、仮想通貨はポートフォリオの1~2%ほどが良いとされています(あくまで機関投資家向けの提案です)。

仮想通貨はリターンも非常に高いため、これをきっかけに投資を始めた人は資金の大部分を株式や債券に移すことに大きな抵抗を感じてるものと考えられます。

ファミリアリティの観点から見れば、仮想通貨市場では個人が徹底してICO精査を行うので、より多くの資金を優良ICOにつぎ込みたくなるものだと思います。

また、市場のリサーチをやり直したくないという理由で別のアセットクラスには手を出していないという投資家も多いと考えられます。

他にもFOMO(投機を見逃す恐怖)損失を埋め合わせるために価格が上昇するまで資金を動かしたくないという考えもあるでしょう。

アセットクラスレベルでの問題

次に考えられるのが、仮に資金をポートフォリオで管理していたとしても、仮想通貨に充てる資金を少数の銘柄のみにしか投資していないケースです。

リスク分散は、アセットクラス間とアセットクラス内両方で行わなければなりません。ですから、他との割合を考慮して仮想通貨用の資金を準備したら、これもうまく分散しなければならないのです。

しかし、仮想通貨界はSNSやニュースをひときわ強く受けるため、これにつられて少数の通貨にたくさん資金をつぎ込む投資が主流になっているのではと考えられます。

もちろんですが、そもそも優良ICOなどを拾っていく投資をしている場合は話は別です。

しかし、中長期の成長を見込んだ保有もしたい場合は、まず資金の大部分を分散し、一部のみをアクティブ投資するのが安全策と考えられます。

まだ派生商品が少ないという問題はありますが、参考になるインデックスはMVISCoinbaseなどから出ています。

また、バイナンスにある資金をトップ20に分散、自動で再配分してくれるボットなども存在します。

まとめ

リターンとリスクの関係を最適化するこの方法を実践するにあたり様々な心理的な壁が立ちはだかると言うものでした。

仮想通貨投資において、リスク分散をすると言うのは特に難しいことだと思います。市場自体も生まれたてで、有望はプロジェクトもたくさん出てきているからです。

しかし、この先万が一大きな価格の適正化が起こった時のために、できるだけ資金分散を心がけるべきでしょう。

行動経済学からみる仮想通貨シリーズ: 第1回第2回第3回第4回

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