Wombat Exchangeはスリッページを極限まで抑えたステーブルスワップ、概要と特徴を徹底解説
Yuya
Wombat(ウォンバット)はBNBチェーン発祥のマルチチェーンステーブルスワップです。
同プロジェクトは数多く存在するステーブルスワップとの差別化として、カバレッジレシオと呼ばれる指標を組み込んだマーケットメイキングモデルを採用しています。
また、シングルアセットステーキングやUI/UXへのこだわり等、ユーザーが使いやすい設計もなされています。
こちらの記事では、Wombatの詳しい仕組みや$WOMトークンの解説、投資家情報や競合プロジェクトとの比較を紹介していきます。
目次
Wombatの公式リンクまとめ
Wombatの特徴と仕組み
Wombatは、既存のステーブルスワップが抱える資産の非効率性と、スリッページを起因としたスケーリングの悪さを解決するプロジェクトです。
加えて、今年になり危険性が再確認されているステーブルコインのペグに関するセキュリティソリューションも採用されています。
カバレッジレシオ
Wombatでは、マーケットメイキングのカーブにカバレッジレシオと呼ばれる指標を組み込んでいます。
カバレッジレシオは「資産 ÷ 債務」の式で計算され、ここでの債務は、プロトコルがデポジットをしたユーザーに対する債務のことを指します。
このマーケットメイキングモデルは、下図の緑線のような形になります。
赤点線が資産XとYの和が常に一定となる線で、実際の値がこの赤点線から外れるとスワップ時にスリッページが発生します。
図を参照すると、紫線(Uniswap)や青線(一般的なステーブルスワップ)と比べて赤線上に滞在できる範囲が広くなっていることがわかります。
上図は横軸がスワップ額、縦軸がスリッページ(%)を表したものです。
同じBNBネイティブで代表的なステーブルスワッププロジェクトであるEllipsis(オレンジ線)と比べると、Wombat(青線)はスリッページが発生する閾値がより高く、さらに同じスワップ額で発生するスリッページも比べて小さいことがわかります。
このように、Wombatはカバレッジレシオを活用したマーケットメイキングシステムでスリッページの改善を行っています。
シングルアセットステーキング
また、Wombatは自分がステークしたい通貨一種類をそのままステークできる「シングルアセットステーキング」を採用しています。
このシステムを採用することでユーザーはステーキングの際にペア両通貨を保有する必要がなくなり、ステーブルスワップ側もより安定した流動性を確保することができます。
これに上記のマーケットメイキングシステムがもたらすスケーラビリティや安定性が組み合わさることで、より効率的なイールドファーミングやレンディングが可能になります。
サブシディアリ・プール
2022年はTerraUSDの崩壊をきっかけに、アルゴリズム型ステーブルコインの安全性が疑問視されるようになりました。
そこでWombatは、USDC, USDT, DAI, BUSDの4通貨をメインのステーブルコインプールに指定し、それら以外にはサブシディアリ・プールと呼ばれる別のプールを設けています。
こうすることで、特定の通貨に起因するマーケットメイキングシステムの崩壊リスクを抑えることができる仕組みになっています。
トークン / インベスター / セキュリティ等
$WOMトークンについて
Wombatのトークンとなる$WOMは、以下の4つの役割を担っています。
- ガバナンス: WOMトークンを所有することで、プロジェクトのガバナンスに参加できる。
- 流動性インセンティブ: ユーザーは流動性プールにステーブルコインをステークすることでWOMトークンを報酬として獲得できる。
- ボーティング・エスクロー(ve): WOMトークンをロックすることで、ステーキング報酬をさらに増やすことができる。
加えて、ボーティング・エスクロートークン($veWOM)の保有者はエアドロップやホワイトリスト、早期アクセス、インキュベーションプロジェクト関連の割引などといった特典を享受することができます。
インベスター・セキュリティ情報
Wombatは上図のベンチャーキャピタルやリサーチ企業から支援を受けています。
加えて2022年Q4には独自のインキュベーションプラットフォームの設立や、周辺プロトコルとの提携などが予定されています。
なおスマートコントラクトのセキュリティの面では、WombatはPeckshield、Hacken、Zokyoの三社によるコード監査を通過したほか、Immunefiとの提携のもとバグバウンティも実施しています。
競合プロジェクトとの比較
Curveなどの代表的なステーブルスワップとWombatの機能的な違いは、具体的に以下のようにまとめることができます。
Curveなどの他のステーブルスワップ | Wombat Exchange | |
流動性プール | クローズド型 | オープン型 |
デポジット方法 | 複数トークン | シングルアセット |
スリッページ | 低い | さらに低い |
アセットのスケーラビリティ | 限定的 | 高い |
アセットの効率 | 良い | さらに良い |
ペグ崩壊に対する対策 | なし | あり |
シングルアセットステーキングで、総ステーク量にも制限がないオープン型はユーザーにとっても参入しやすい点だと考えられます。
また、カバレッジレシオを採用したマーケットメイキングは既存のものよりスリッページ耐性が高く、デポジットされたアセットがより効率的に使われるようになります。
上記で解説した通り、Ellipsis (Curve公認のBNBフォーク)などと比べると単にスリッページが発生するまでの許容額が大きいだけでなく、同じ額で発生するスリッページ自体も小さくなっています。
そして近頃重要視されているステーブルコイン等のペグ崩壊対策も、Wombatはいちはやくメインとサブシディアリにプールを分けることで対応しています。
Wombat Exchangeの使い方
最後に、Wombatの使い方を解説します。まず、ウェブアプリにアクセスすると以下のような画面が表示されます。
右上の”Connect Wallet”からBSCウォレット(近日他チェーンにも対応予定)に接続すると、スワップやプール(ステーキング)が行えるようになります。
“POOL”タブでは流動性プールへのステーキングができ、ボーティング・エスクローあり/なし時のAPRや報酬額が確認できます。
メイン画面右上、”Connect Wallet”の横のボタンからはTVLや取引高、トランザクション履歴などが確認できるアナリティクスページにアクセスできます。
さらにその横の”…”からはエアドロップ情報やドキュメンテーション、各種SNS等へアクセスできるようになっています。
まとめ
Wombatは既存のマーケットメイキングモデルに改良を加えることでスリッページ耐性とアセットの効率性を改善したステーブルスワップです。
シングルアセットステーキングによる利便性、サブシディアリプールによる安全性も同プロジェクトの大きな特徴です。
使いやすいUIや、アナリティクス、Medium、ドキュメンテーション等公式が提供する情報が多い点も良いでしょう。
Wombatは現在メインネットローンチを終えてベータ版となっており、今後さらなる機能の追加や他プロジェクトとの提携が期待されます。