2024年仮想通貨エアドロップの最新戦略|飽和時代に必要なアプローチとは

2024/05/23・

Henry

2024年仮想通貨エアドロップの最新戦略|飽和時代に必要なアプローチとは

– 筆者:@HenryWells1837

2024年、仮想通貨のエコシステムはますます成熟してきました。その中でも、昨今話題になっているトピックの一つが「エアドロップ」です。

エアドロップは、新たなトークンやプロジェクトを広めるために用いられる手法で、投資家と開発者の間で急速に普及しています。かつては参加者が少なく、恩恵を受けやすい環境でしたが、最近では参加者の増加により飽和状態になりつつあり、実際の配布金額も少なくなってきています。

上記の変化は、エアドロップ獲得戦略を再考する必要があることを意味しています。

本記事では、エアドロップを成功に導くための重要な要素を解説し、予算設定、プロジェクトの選定からウォレット管理に至るまでを解説します。

エアドロップの基本概念と進化

基本概念と歴史

エアドロップは、ブロックチェーンプロジェクトがトークン発行時に対象者へトークンを配布するマーケティング手法の一つです。

世界各国のグローバル市場でビジネス展開が求められる中、国別に異なる規制や人材確保、スピード感などの問題から、テレビCMなどの伝統的な広告戦略が常に適切とは限りません。そのため、プロジェクトとエンドユーザーの距離を縮める手段として、広告宣伝費や販管費を効果的に活用することが望ましいとされています。

特に注目されるのは、2020年9月にUniswapが実施したエアドロップです。このエアドロップは、プロジェクトへの各ユーザーの貢献を称え、プロジェクトの「持続」と「発展」に寄与する形で行われました。これは単なるマーケティング手法というより、参加者への「感謝」の表現としても大きな意味を持っていました。

今では、エアドロップを専門に市場に参加するユーザーも増え、プロジェクト側は「マーケティング費」や「コミュニティ形成費」という必要な「費用」として捉えています。

配布されるトークンには大きく分けて2つのカテゴリがあります。一つはArbitrumやOptimismのようなネットワークインフラ系のプロジェクト。もう一つはそれらのチェーン上で展開される各種Dappsが発行するトークンです。

Uniswapのエアドロップ以降、多くのプロジェクトが同様の手法を採用し、配布方法も進化してきました。特に、時間が経つにつれて、不正行為への対策やKYC(顧客確認)の要件が強化されています。エアドロップが広く受け入れられるにつれ、一部のプレイヤーやBotが不正に複数カウントを利用する事例が増え、VPN使用による規制も強化されました。最近では、ModeやEigenlayerのようなプロジェクトのエアドロップが印象に残っており、HolographのようにKYCと連携した取引所アカウントからトークンを請求する新しい方法も導入されています。

従来、仮想通貨市場への参入者の中でエアドロップを主な目的とするケースは少なかったですが、筆者の観点からは、日本でも2024年から新規プレイヤーがエアドロップを主な動機として市場に参入するようになり、今後は競争が激化し、獲得までのハードルが高まると考えられます。

主要なエアドロップ事例

ENS、DYDX、Uniswapなど、数々の著名プロジェクトがエアドロップを通じてそのコミュニティに価値を還元してきました。これらのエアドロップは、プロジェクトの初期支持者やアクティブユーザーに対する報酬として機能しています。

以下は、2020年から2024年までに実施されたエアドロップのプロジェクトの一部をまとめた表です。表はプロジェクト名、ティッカー、カテゴリ、およびチェーン情報を含んでいます。
( このデータはDuneから抽出されたもので、すべてのエアドロップを網羅しているわけではありません。)

これまでに配布されたエアドロップのリスト

✅ = ネットワークインフラ系

日付プロジェクトティッカーカテゴリチェーン
2020年9月UniswapUNIDEXEthereum
2020年12月1INCH1INCHDEX aggregatormulti-chain
2021年1月Tornado CashTORNPrivacyEthereum
2021年2月Mask NetworkMASKSocialEthereum
2021年3月InverseINVYieldEthereum
2021年4月AmpleForthAMPLOtherEthereum
2021年5月GitcoinGTCSocialEthereum
2021年6月OsmoOSMODEXCosmos
2021年6月BottoBOTTONFTEthereum
2021年9月dYdXDYDXPerpsdYdX
2021年9月NotionalNOTEYieldEthereum
2021年9月Unlock protocolUDTOtherEthereum
2021年10月JunoJUNODEXCosmos
2021年10月DappRadarRADARSocialEthereum
2021年11月Ethereum Name ServiceENSSocialEthereum
2021年11月ParaswapPSPDEX aggregatormulti-chain
2021年12月AstroportASTRODEXSolana
2022年1月X2Y2LOOKSNFTEthereum
2022年1月CoWCOWDEX aggregatormulti-chain
2022年2月HOPHOPCross-ChainEthereum
2022年3月Ape CoinAPENFTEthereum
2022年3月LooksrareLOOKSNFTEthereum
2022年4月EVMOS✅EVMOSCross-ChainCosmos
2022年5月Optimism✅OPChainOptimism
2022年6月VelodromeVELODEXOptimism
2022年10月BlurBLURNFTEthereum
2022年10月Aptos✅APTChainArbitrum
2022年11月HashflowHFTDEX aggregatorEthereum
2022年12月ZigZagZZDEXzkSync Lite
2023年3月Arbitrum✅ARBChainArbitrum
2023年3月Space IDIDSocialEthereum
2023年4月AI DogeAIDOGEMemeArbitrum
2023年6月MaverickMAVDEXEthereum/zkSync Era
2023年7月Arkam IntelligenceARKMDataEthereum
2023年8月Sei✅SEIChainSei
2023年8月ConnextNEXTDEXEthereum
2023年11月PythPYTHOracleSolana
2023年11月VertexVRTXDEXArbitrum
2023年12月JitoJTOMEVSolana
2024年1月JupiterJupDEXSolana
2024年1月AltLayerALTLRTEthereum
2024年1月Zetachain✅ZETADEX
2024年2月Dymension✅DYMDA
2024年2月Starknet✅STRKChainStarknet
2024年2月zkSync IDZKIDSocialzkSync
2024年2月ConvergenceCVGYieldconvergence
2024年3月Ether-fiETHFILRTEthereum

エアドロップを獲得するための条件

エアドロップを獲得するには、以下のような条件を満たすことが一般的です:

  1. 早期利用
  2. 流動性の供給
  3. 特定のNFTの保有
  4. 一定期間のプロジェクト利用
  5. 一定の残高の保持
  6. 特定のトークンのステーキング

シビル対策について

シビル攻撃は、ボットなどを活用して複数のアカウントでエアドロップを大量に受け取る行為です。2022年2月のHop Protocolエアドロップ以降、シビル判定が導入され、これにより配布の「公平性」が一層高まりました。しかし、少額予算での活動もシビル判定される可能性があり、慎重な動作が求められる一方で、一定の大胆さも必要です。

ウォレット管理と戦略的な利用方法

先の一覧表では、47プロジェクトに対して、以下の8プロジェクトがインフラ系のエアドロップでした。

  1. EVMOS
  2. Optimism
  3. Aptos
  4. Arbitrum
  5. Sei
  6. Zetachain
  7. Dymension
  8. Starknet

非EVM系のネットワーク系プロジェクトでは、テストネットへの参加やノードの構築、特定のトークンのステーキングを通じてエアドロップが獲得できました。一方、EVM系のプロジェクトでは、適応対象となるウォレットのEthereumや各種L2上でのトランザクション履歴やガス代の使用料も重要な要素とされました。

インフラ系のエアドロップを狙う場合には、早期段階でのプロジェクトへの「貢献」が重要です。また、EVM系のインフラプロジェクトにおいては、イーサリアムメインネットや各種L2での「活動履歴」が重視されます。

ここで重要なのは、インフラ系のエアドロップを狙うウォレットと各種dapps系のエアドロップを狙うウォレットを区別して管理することだと筆者は考えます。

ウォレット分散の利点

DeFi運用やNFTの収集において、ウォレットを目的ごとに分散することはリスクヘッジとして非常に重要です。

普段使いのウォレットと大量のBTCやETHを保管するウォレットを同じにするのは、資産紛失のリスクが高まるため非常に危険です。

BCGのようなトランザクションの頻度が高いサービスを利用する場合、ハードウェアウォレットの使用は手間がかかるため推奨されません。このような理由から、ウォレットの分散は極めて重要です。実際、インフラ系エアドロップでは、ユーザーが複数のウォレットを使い分けることが一般的です。

複数のウォレットを用いてエアドロップを獲得する行為は決して「悪」ではありません。例えば、エアドロップの対象となるプロジェクトに「流動性の供給」の条件がある場合、10,000ドルの予算を持っているならば、資産紛失のリスクを考慮してその金額を分散することが賢明です。

ウォレットの実際の分け方

エアドロップ獲得を目指すうえで、インフラ系エアドロップと各種Dappsエアドロップを狙うウォレットを明確に分けることが重要です。

インフラ系エアドロップ用ウォレット:重要な注意事項

  1. 保有残高
  2. 特定トークンのステーキング
  3. 各種チェーンのアドレスの紐づけ

保有残高について

複数アカウント対策として、保有残高に基づく足切りが一般的になっています。最低限、イーサリアムメインネットに0.5 $ETHの保有が望ましいですが、狙っている他のメインネットにも同様の保有が推奨されます。

特定トークンのステーキング

エアドロップの条件は複数あり、その中から3つまたは4つを満たすことでエアドロップされるトークン量にボーナスが加えられます。例えば、Optimismではボーナス要素が多く設定されました。以下のトークンをステーキングすることが一つの条件として数えられる可能性があります。

  1. $TIA
  2. $ATOM
  3. $AVAX
  4. $MATIC
  5. $SOL
  6. $ALT
  7. $PYTH

ステーキング数量による足切りも頻繁に行われるため、注意が必要です。

各種チェーンのアドレスの紐づけ

以下のチェーンのアドレスを適切に管理し、紐づける必要があります:

  1. EVM
  2. Cosmos ( & Osmosis etc )
  3. SUI
  4. Aptos
  5. Celestia

それぞれのアドレスがどのように連携しているかを管理することが重要です。

Dappsエアドロップ用ウォレット:重要な注意事項

  1. プロジェクトの選定
  2. 資本勝負になる場合が多い
  3. シングルDapps-シングルウォレット戦略へのシフト

プロジェクトの選定

プロジェクト選びに際しては、攻めの姿勢で臨むことが有利です。多くのプロジェクトはエアドロップでユーザーを引きつけますが、結果としてプロジェクトが持続可能でない場合、無益な投資に終わることもあります。そのため、以下の点を評価基準に加えることが重要です:

  • プロジェクトが実際に資金調達をしているか。
  • オリジナリティーがあり、ただの模倣ではないか。
  • 収益モデルが確立しているか。
  • 展開予定のブロックチェーンが適切か。
  • プロジェクトの主要メンバーの背景。
  • マーケティングが過度でないか、特にKOLによる影響は適切か。
  • コミュニティの雰囲気が健全か。
  • プロジェクトが創造的で持続可能か。
  • 開発期間が適切か。
  • プロジェクトが支持されているコミュニティや国。
  • トークンの取引所上場や市場での流動性確保に関わる費用と戦略。

これはあまり知られていない事実かもしれませんが、トークンを特定の大手取引所に上場させるためには、一般に想像される以上に高額な費用がかかります。さらに、トークンの流動性を維持するためにマーケットメイカーのサポートを利用する場合も、同様に大きな費用が必要です。

そのため、Gitcoin Grantから資金を集め、Twitterで支援を受けていると公言する小規模プロジェクトであっても、トークンの発行から取引所への上場に至る過程を考慮すると、エアドロップの期待値は必ずしも高くはありません。これは特に、エアドロップを目的とした投資選定において考慮すべき点です。しかし、これはあくまで一般的な見方であり、中にはユニコーン級の成功を収めるプロジェクトも存在します。

あくまでも「エアドロップ獲得のための選定」であるということを忘れないでください。

資本力勝負になる場合が多い

最近では、Eigenlayerのようなリステーキング系のエアドロップが多いです。

こういったプロジェクトは参加者にトークンボーナスを配布することもありますが、最終的には「資本勝負」になることが多いです。

例えばこちらのウォレットアドレスは4回のトランザクションで以下のエアドロップを獲得しました。
https://debank.com/profile/0x44086d5d2e3b6a7ca48133ef2def4043c03b7aba)

  1. 6,667 $ALT : 約32万円
  2. 11,129.9491 $EIGEN : 約1200万円
    *為替相場は執筆時のレート / $EIGENはWhalemarketより $7で設定
    *投資額:約4500万円 / 期間:拘束期間約3ヶ月及び7ヶ月

トランザクション履歴は非常に美しく、文句のつけようがない成果です。

しかし、もし今年からエアドロップを獲得を目指すユーザーは、中々このような真似をすることは難しいのではないでしょうか。

エアドロップ獲得において、このようなプレイヤーも常にいることを念頭に置いた上で、そのプロジェクトが資本勝負になるかどうかも重要な判断基準です。

シングルDapps – シングルウォレット戦略へのシフト

この戦略は、特定のDappsに特化したウォレットを運用することで、エアドロップの効率を最大化します。プロジェクトの持続性や将来性を考慮した上で、一つのDappsに焦点を当てたウォレット管理が推奨されます。

Celestiaなどのモジュラー系ブロックチェーンの台頭により「1 dapps = 1 chain」という考えが広がってきました。
また、昨今のKYC済みの取引所との紐づけなどを踏まえると、過去のアクティビティ履歴を重視しないインフラ系以外のプロジェクトのエアドロップを狙うのであれば、複数のウォレットに分散させるのではなく、そのエアドロップ獲得に特化した専用ウォレットを都度作成する方が成果が最大化するかもしれません。

もちろん、プロジェクトによっては配布上限を設けているプロジェクトもありますので、どこにウェイトを置くかによって複数のウォレットを活用するか、単体で一つの使い捨てウォレットをするのか変わります。

「予算」はいくらあれば良いのか

エアドロップ市場の現状を踏まえると、足切りや資本勝負になる部分を考慮して、安全を期すためには約8,000米ドル(日本円で約120万円)の予算が適切と言えるでしょう。

かつては、10万円の投資で20万円から30万円のリターンを得ることも可能でしたが、エアドロップ市場が成熟し競争が激化したため、現在ではそれほど大きな期待はできなくなっています。

まとめ – エアドロップ戦略は「選択」と「集中」が重要なフェーズに突入

これまでに見てきた事例を踏まえ、ウォレットの明確な区別、プロジェクトの選定、そして適切な予算設定の重要性について説明しました。

エアドロップを獲得する難易度は日増しに高まっており、簡単にリターンを得られると宣伝する声がありますが、その実際は決して容易ではありません。プロジェクトとの駆け引きや日々のタスクが課せられることもあり、個人の状況や相性によって結果は大きく異なることがあります。

そのため、余裕資金を用いて日常生活に負担をかけずにエアドロップ獲得に向けた活動に取り組むことが最も賢明です。

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