イーサリアムのPoS移行:マージの概要とその理由を理解する

2023/02/11・

noob botter

イーサリアムのPoS移行:マージの概要とその理由を理解する

本記事は、@lingchenjaneliu氏がステーキング市場の展望、主要なアクターやトッププレーヤー、プルーフ・オブ・ステークの最新開発について説明した内容を本人の許可を得て翻訳した解説シリーズの第1弾です。

・第2部:「イーサリアムのノードマネジメントサービス:3つの選択肢とその利点・欠点とは
・第3部「イーサリアムステーキングサービスの種類と最新動向 | 業界のトレンドを知る

彼女の他のコンテンツについては、SubstackのニュースレターCrypto Observeを購読するか、Web3edgeニュースレターを購読してください。

現在のイーサリアムのサービス状況を俯瞰することができます。

マージ(Merge)とは?

マージは、イーサリアムネットワークの歴史において最も重要なイベントです。2015年にイーサリアムが立ち上げられたとき、イーサリアムの目標は、ビットコインとその派生通貨で使われていた当時の標準的なプルーフ・オブ・ワークスタイルのセキュリティに代わり、斬新なプルーフ・オブ・ステークコンセンサスプロトコルによってネットワークを保護することでした。しかし、プルーフ・オブ・ステークは新しいコンセプトであったため、イーサリアムはプルーフ・オブ・ワークで立ち上げられ、問題が解決されたと確信した後にプルーフ・オブ・ステークに移行することを選択したのです。

プルーフ・オブ・ステークのチェーンは、一般公開の前に、スムーズに動作するよう、別のビーコン・チェーンとして立ち上げられました。ビーコンチェーンがプルーフ・オブ・ワークチェーンと統合され、プルーフ・オブ・ステークへの移行が完了した時に、マージとなります。これはイーサリアムのメインネットを停止させることなく達成されました。マージ後のイーサリアムには、データ及び実行レイヤーと、コンセンサスレイヤーの2つが存在します。

データ及び実行レイヤー (Data and Execution Layer)

データ及び実行レイヤーは、ネットワークで送信される新しいトランザクションを取り上げ、EVM(Ethereum Virtual Machine:イーサリアムヴァーチャルマシン)で実行し、データベースと現在のすべてのイーサリアムデータアーカイブの最新の状態を保持します。

コンセンサスレイヤー (Consensus Layer)

コンセンサスレイヤーは、プルーフ・オブ・ステークコンセンサスアルゴリズムを実装し、実行クライアントからの検証済みデータに基づいてネットワークが合意を達成することを可能にします。

図4:マージの説明(PoWからPoSへの移行について)

マージの背景

2022年9月15日、イーサリアムネットワークのマージ(Merge)が行われ、これはETHのアセットの基本原理を変化させました。現在、ETHの長期保有は、以下の理由により、投資家にとってさらに魅力的な選択肢となっています。

ETHの発行量の減少

マージの最も目に見えるオンチェーンでの影響は、ETHの発行率の減少です。イーサリアムのプルーフ・オブ・ステークへのアップデートにより、ネットワークはブロックごとに発行される新しいETHの量を劇的に減少させました。長期的には、ネットワークアップグレードEIP-1559で導入されたバーンメカニズムにより、イーサリアムのデフレ化、つまりトークン供給量が時間とともに減少する可能性があります。

Stake(ステーク)へのインセンティブの増加

EIP-1559を伴うマージの後、イーサリアムはビーコンチェーンでは得られなかったトランザクションの手数料(ガス料金のチップ)から収益を得ることができるようになりました。この収益は、ETHをステークしたい強いインセンティブを持つステーカーとプロバイダーとなる投資家を増やすきっかけになります。

ステークされたETHは流通しなく(売られなく)なり、ETHの価格に対する強いサポートを生み出します。

図1:ETH保有者の分類を波で表示 ※出典:Coin Metrics

図1から、マージ後に長期ETH保有者が増えていることがわかります。これは、保有者が長期的には発行枚数の減少とステーキング需要の増加により資産価格が上昇するという期待を持っているためだと考えられます。

マージ後、投資家のステーキング需要は、イーサリアムのステーキングエコノミー全体の利益を着実に増やしています。

そのため、ステーキングエコノミーを支えるサービスやインフラを精査する必要性と価値があります。

図2:リアルタイムでETHの発行及びバーン量の可視化をしているダッシュボード ※画像元:Ultrasound.money (2022年12月)

図3プルーフ・オブ・ワークでのETH発行と燃焼をシミュレーションしたダッシュボード(右上の「Simulate PoW」ボタンをクリックしている) ※出典:Ultrasound.money(2022年12月)

図2と図3のETH発行量と供給量の数字を比較すると、マージが起こらなかった場合、これらの数字がどうなるかが分かります。これによって、ETHの発行と供給の伸びに対するマージの影響を視覚化することができます。マージ後、ETHの供給の伸びはほぼ横ばいですが、もしマージが起こっていなければ、シミュレーション上の供給の伸びは+3.5%だったはずです。

何故、プルーフ・オブ・ステークへ移行するのか?

イーサリアムのプルーフ・オブ・ワークチェーンはうまく機能していたのに、なぜわざわざマージをして、プルーフ・オブ・ステークに移行するのでしょうか? プルーフ・オブ・ワークは信頼性が高く確実ですが、デメリットもあります。ひとつはエネルギー消費です。これは「マイナー」とも呼ばれるバリデーターが、次のトランザクションの一群を検証するために暗号式を解くレースを行うことで、ネットワークを安全にするものです。そのレースに勝てば、その努力に見合った報酬がネイティブネットワークトークンで支払われるのです。

最先端のハードウェアを持っていなければ、計算競争に勝てる可能性は極めて低く、マイニング活動全体は、誰が最も多くの計算能力を所有しているかによって検証作業が決まるわけではないプルーフ・オブ・ステークネットワークでの検証に比べ、無駄な電力を使うことになるのです。

これがマージの重要な点です。イーサリアムがプルーフ・オブ・ワークからプルーフ・オブ・ステークに切り替わることで、エネルギー使用量は最大で99.98%減少すると推測されています。大規模なマイニング作業は必要なくなります。きちんとした性能の良いノートパソコンがあれば、誰であってもステーキングバリデーターを実行出来るのです。また、計算集約型の問題を解決するために競争するわけではないので、ネットワークに貢献するために異常に高いエネルギー量を必要とすることもありません。検証用ノードを実行するコンピュータは、通常の使用におけるエネルギーよりも遥かに多いエネルギーを使用することはないでしょう。

関連:イーサリアム「マージ」でエネルギー消費量が大幅減少 | 実施後-99%に

本シリーズ第一部は以上となります。

公開予定の第2部では、ステーキングエコノミーの全貌を紹介するため「イーサリアムのノードマネジメントサービス」に焦点を当てて解説した記事をお届けします。

・第2部:「イーサリアムのノードマネジメントサービス:3つの選択肢とその利点・欠点とは
・第3部「イーサリアムステーキングサービスの種類と最新動向 | 業界のトレンドを知る

ニュース/解説記事

Enable Notifications OK No thanks