今回は、7月21日に東京大学伊藤謝恩ホールにて開催された、HashHub Conference 2018に関するレポートです。

本イベントはHashhabとbitpressの共同主催であり、暗号通貨の今とこれからについて、国内の暗号通貨・ブロックチェーンの最前線にいる方々が登壇しました。

当日は、12時から17時までの5時間の中で、現在のトレンドや暗号通貨の規制について、また技術面についてなど様々なジャンルの話がありましたが、今回の記事では、その中でも筆者が一番印象に残った、暗号通貨、ブロックチェーンの限界とその先というパネルディスカッションについて書いていきます。

アカデミックで中立な立場からのパネリスト

今回のパネルディスカッションでは、

  • 岩村 充氏(早稲田大学大学院 経営管理研究科 教授)
  • 斉藤 賢爾氏(慶應義塾大学SFC研究所 上席所員)

のお二方がパネリストとして登場し、アカデミックな立場から中立な意見をお聞きすることができました。

また、モデレーターはHashHub CEOの東 晃慈さんでした。

暗号通貨、ブロックチェーンの限界とその先について

今回のパネルディスカッションは、ブロックチェーン全般に対して批判的に見ることが多い岩村先生、斎藤先生がビットコインやパプリックチェーンの問題点に関して語るところから始まりました。

ビットコインとパプリックチェーンの問題点

斎藤先生: ビットコインの問題点は5つ

まず、慶應SFC研究所の斎藤先生は、ビットコインブロックチェーンに基づいている設計の問題点は

  • 実時間性
  • 秘匿性
  • スケーラビリティ
  • 技術のガバナンス
  • インセンティブの不整合性

と語りました。

岩村先生: 2つの理由から、ビットコインは出来が悪い

岩村先生は、ビットコインが法定通貨を置き換えるという話についてどう思いますか?という質問に対し、出来が悪いと主張しました。

岩村先生によると、ビットコインの出来が悪い点は2つあり、1つは、価格が安定しないこと。もう1つは、多くのエネルギーを使ってあの程度のトランザクションを動かしているのが無駄であるということでした。

また、岩村先生は、ビットコインはバブルですらないと主張しました。理由として、バブルは合理的な価格が存在しており、それに対してズレた価格がつくことで引き起こされるが、ビットコインは0から無限大まであらゆる価格が合理的であり価格が安定しないと述べました。

イーサリアムについてのお二方の見解

これまでの話では、ビットコインとビットコインブロックチェーンが法定通貨に置き換わることはないだろうという意見で一致していましたが、イーサリアム等の、そもそも法定通貨の置き換えが目的じゃないパプリックブロックチェーンについての意見も聞くことができました。

斎藤先生: 野心的だが実験的

斎藤先生はイーサリアムに対し、とても野心的なプロジェクトだが、どうしても実験的になってしまう。本人たちも実験と言っているが、既に大きなお金が乗ってしまっているのが不幸であると述べました。

また、イーサリアムでであれば価格の安定性はイーサリアム自体にはそこまで重要ではないとも述べていました。

岩村先生: お金以外のものも載せてしまっているのが問題

岩村先生は、ネットワーク分断の観点から、イーサリアムの問題点について主張していました。

ビットコインはただのお金なので、ネットワーク分断についてそんなに深刻に考えなくていい。価値だと思えば、分岐するリスクを確率として織り込むことができる。例えば私達が普段使うお金の中にも偽札が入っているが、みんな気にせず使っている。

ところがイーサリアムは、お金以外のもの(記録など)を載せてしまっている。記録を重視すると、ネットワーク分断は矛盾した歴史が2つ存在することを意味するので、大問題である。そのことをそこまで重要に考えていないように思える。だからChildish(子供っぽい)であると述べました。

ブロックチェーンが合理的理由の元に破壊される可能性

お金以外のものが乗っているイーサリアムブロックチェーンは合理的な理由で破壊されるの恐れがある、とお二方は主張しました。

斎藤先生: 合理的な51%攻撃

斎藤先生は、ブロックチェーンを破壊することはネイティブトークン総額を払うことで可能であり、マイニングするタイプのチェーンは、マイニングコストとトークン総額が均衡していると述べました。

そのため、イーサリアムブロックチェーンの場合、ブロックチェーン上に乗っているものがイーサリアムの総額を超えるというのは、マイニングコストよりも大きな借金をしていることを意味し、攻撃のためのコストを払うことが合理的になり、51%攻撃を引き起こす恐れがあるようです。

岩村先生: 秘密鍵が自主的に公開されることへの懸念

岩村先生は、イーサリアム上で1000万の借金したときを例として、それを取り消そうという攻撃をすることが合理的になってしまう、と述べました。

秘密鍵は財産を保持するために隠すことが当たり前ではあるが、例えばイーサリアム上で1000万の借金をして債務超過になった場合、秘密鍵を隠す必要はなくなり、秘密鍵はこれですよと、ネット上の掲示板等に書けてしまう

そうすると、本当にその人が借金した、正しい負担なのかそうでないのか分からなくなると主張しました。

まとめ

今回のパネルディスカッションは、基本的には暗号通貨とブロックチェーンに対して、懐疑的な意見が多かったように思えます。

しかし最後には、パブリックチェーンと言うかは別として、ある程度は自分が持っている情報を開示して、パブリックでアクセスできる状態には持っていって、一定時間ごとにハッシュを開示する、お互いに引用しあう、そいう言ったものはできてくるだろうなと思う。

と締めくくり、これからの技術発展に期待をしている姿勢を見せました。

sota
ブロックチェーンでできることとできないことを理解し、冷静に見ることが大事ですね。