IOST(アイオーエスティー)は、スケーラビリティ(処理速度)と非集権性を両立したパブリックなブロックチェーンです。
同プロジェクトには、シャーディングや独自のコンセンサスメカニズムなどの革新的な技術が盛り込まれています。
こちらのページでは、このIOSTのプロジェクト概要を紹介し、技術的な仕組みを解説するとともに、他の主要なブロックチェーンとの比較もまとめています。
目次
IOST(アイオーエスティー)とは?概要を紹介
IOSTの概要
通貨名/ティッカー | IOST(アイオーエスティー) / $IOST |
---|---|
共同創設者 | Terrence Wang, Jimmy Zhong, Ray Xiao |
主な提携先 | Huobiなど計20社 |
時価総額 | 約1.9億ドル・58位 (2018年7月現在) |
特徴 | スケーラビリティと非集権性の両立 |
公式リンク | Webサイト |
Telegram | |
Medium | |
Bitcointalk | |
Github |
IOSTの特徴
IOSTは、イーサリアムやEOSのような、スマートコントラクトを利用してDAppsを構築することのできるブロックチェーン・プラットフォームです。
ここからは、そんなIOSTのネットワークを支えるシャーディング技術やコンセンサスメカニズム、またその他の特殊な技術について詳しく解説します。
スケーラビリティ問題を解決するシャーディング技術
既存のブロックチェーンでは、スケーラビリティ(ネットワークの処理能力)の低さが問題となっています。
これは、トランザクションを記録するブロックのサイズ上限や生成時間などに起因するもので、様々なプロジェクトがこの問題の実用的な解決策に取り組んでいます。
IOSTが実装している解決策はEfficient Distributed Sharding (効率分散型シャーディング)と呼ばれるものです。
- Efficient Distributed Shardingとは?
- ネットワーク全体をシャードと呼ばれるグループに分割し、作業を並行させることで処理速度を向上させる技術です。
シャードひとつひとつがブロックチェーンで、それぞれのシャードでブロックを生成している、と考えるとわかりやすいでしょう。
もちろん、このシャード全てを包括したものがIOSTネットワークであるため、シャード間のトランザクションをセキュアに行える仕組み(Atomix、TransEpochなど)も整っています。
非集権性を確保するコンセンサスメカニズム・PoB
IOSTのもうひとつの魅力は、Proof of Believability、通称PoBという、ネットワークの非集権性を確保するコンセンサスメカニズムを利用していることです。
現在メジャーなProof of Work (PoW)プロトコルは、電力消費量が多く、また、マイニング能力の高い(専用の機器を大量所持する)者がブロック生成権(=報酬の獲得)を得やすい仕組みになっています。
また、ネットワークを大きく支配できるほどのマイニング能力を保有しているマイナーが不正なブロックの生成を行うなどといった問題(51%問題)が発生しています。
一方で、ブロック生成権を特定のユーザーに投票で与えるDelegated Proof of Stake (DPoS)のようなプロトコルも存在します。
しかし、このコンセンサスメカニズムも、特定のノードがマスターノード(ブロックの生成を行う者)になり続けることなどがあり、分散型台帳の魅力であるネットワークの非集権性が失われてしまうことが懸念されています。
この問題を解決するために、IOSTのPoBでは、SERVIと呼ばれるネットワークへの貢献度を導入しています。
ノードはトランザクションの承認やスマートコントラクトの実行などを行うことでSERVIを獲得することができ、この貢献度が高ければ高いほどブロック生成権(さらに報酬の高い処理)を行える確率が高くなります。
ブロック承認権を得たノードは一度だけブロックを生成することができ、この作業が終わるとこのノードが保有していたSERVIは全て消滅し、また貢献度の積み上げ段階に戻ります。
こうすることで、PoB下では特定のノードがブロック生成をし続けることができないよう(=非集権的)な状態を保つことができます。
- ブロック生成権は誰が得られる?
- PoW: 一番早く計算をしたノード。コンピューター能力の高いもの勝ち。
- DPoS: 投票で選ばれたマスターノード。ただし同じ人が選ばれ続ける可能性がある。
- PoB: ネットワーク貢献度の高いノード。一度ブロックを生成したら貢献度積み上げ段階に戻る。
ノード参加のハードルを下げるマイクロステート・ブロック技術
パブリックブロックチェーンでは、誰でもネットワーク維持作業(ノードになる)を行うことができます。
しかし、ノードになる際に過去のブロックのデータを保存しなければならないため、ストレージを圧迫してまう問題が発生しています。
例えば、ビットコインでは、ノードになる際には一番初めに生成されたブロックから最新のものまで全て保存しなければなりません。
そこでIOSTでは、特定のブロックをマイクロステート・ブロックと呼ばれるチェックポイントに設定しています。
- わかりやすい例えは…?
- YouTubeなどの動画ストリーミングサービスを考えるとイメージがつきやすいでしょう。これらのサービスで動画を途中から再生すると、再生ポイント以降のデータだけがロードされます。
同様に、IOSTのノードはこのチェックポイントとなるブロックから最新のブロックまでを保存していればよいということになります。
IOSTではこのマイクロステート・ブロック技術を使用することで、ノードのストレージを80%ほど節約できるとしています。
IOSTと競合プロジェクトの比較
ここでは、IOSTと競合プロジェクトの類似点や相違点を比較したいと思います。
今回は、比較対象として、IOSTと同様にシャーディング技術を実装しているQuarkChainとZilliqa、そしてスケーラビリティや集権性の観点からEthereumとEOSを取り上げたいと思います。
【QKC・ZIL】シャーディングが特徴のプロジェクト
プロジェクト名 | TPS | コンセンサスメカニズム | シャーディングの種類 |
---|---|---|---|
IOST | 100,000 | PoB | EDS |
QuarkChain | 100,000 | PoW* | 2層構造 |
Zilliqa | 2,800 | PBFTベース | トランザクション分割型 |
*TPS = Transaction per second | 秒間あたりのトランザクション処理数。ネットワークのスケーラビリティを表す。
QuarkChain
IOSTとQuarkChainは、TPSは同等となっています。また、シャーディングの仕組みも似通ったものになっています。
IOSTでは、DPoSをさらに非集権的に改良したPoBが使われているのに対し、QuarkChainではノードがコンピューターの能力に応じて異なった作業を行える特殊なPoWを使用しています。
QuarkChainのPoWには25%問題と呼ばれる不正なブロック生成への懸念が浮上しています。
一方で、QuarkChainはイーサリアムの仮想マシンと互換性があるため、IOSTと比べてイーサリアムとの親和性がより高いと言えます。
Zilliqa
IOSTとZilliqaは、TPSの点ではIOSTのほうが圧倒的に処理能力は高いと言えるでしょう。
IOSTでは、それぞれのシャードがブロックチェーンの役割を果たし、ノードはそれぞれ配属されたシャードでネットワーク維持作業を行います。
対して、Zilliqaではトランザクションを分割してそれぞれのノードに処理させるというタイプのシャーディングを実装しており、名前は同じでも仕組みは全く異なっていると言えます。
Zilliqaは、PBFTと呼ばれるコンセンサスプロトコルをベースにしたもので、スケーラビリティよりも非集権性やセキュリティと言った点にフォーカスを置いたものであると言えるでしょう。
【ETH・EOS】プラットフォーム系プロジェクト
プロジェクト名 | TPS | コンセンサスメカニズム | 非集権性 |
---|---|---|---|
IOST | 100,000 | PoB | ○ |
Ethereum | 15 | PoW* | △ |
EOS | ? | DPoS | △ |
Ethereum
IOSTはイーサリアムと比べ、TPSが格段に高いと言えます。
イーサリアムは現在PoWを使用していますが、今後PoSに移行することが検討されています。
仮にイーサリアムがオリジナルのPoS(DPoSなどではない)を実装した場合、IOSTのほうが安全かつ非集権的と言えるでしょう。
これはなぜかというと、従来のPoSには悪意のあるノードにペナルティを与える仕組みがないことNothing-at-stake Problem)や、単純にトークンを大量に保有している者がブロックを生成できる(お金持ちがよりお金持ちになれる)などといった問題があるためです。
一方PoBでは、不正行為を試みたノードのIOSTトークンおよびSERVI(貢献度)は強制的に没収されます。また、PoB解説の項目の通り、同じノードがブロック生成をし続けられないようになっています。
EOS
EOSでは、マスターノード(ブロック生成者)を投票で決めるDPoSというプロトコルを使用しています。
しかし、同プロジェクトでは、マスターノードを選ぶ投票権がトークンを大量に保有する一部によって寡占されていることが集権性が高いと問題視されています。
一方、IOSTのPoBには投票という概念はなく、トランザクション処理やスマートコントラクト実行で得られる貢献度に応じてブロック生成権を得ることができます。
こういった点では、IOSTはEOSよりも非集権性が高いと言えるでしょう。
IOSTの開発・活動状況
ここでは、IOSTのプロダクト開発状況や、コミュニティ発展活動の進捗などについて紹介します。
プロダクト開発状況について
先日まで公開されていたロードマップでは、メインネットローンチは2019年の第3四半期とされていましたが、開発は予定より早く進んでおり、メインネットの始動は2019年第1四半期にも行われるとされています。
また、DAppsのプロダクトの開発も順調に進んでいるとされており、現在チームではCrypto Heroesと呼ばれるゲームの制作にも着手しているとのことです。
2019年8月21日追記: IOSTのメインネットv1.oは、19年2月25日に実装されました。
コミュニティ活動状況について
IOSTでは、単純なプロダクトの宣伝ではなく、自分がいったい何に投資しているのかというのをわかってもらいたい、という思いから、ブロックチェーン技術に対する理解を深める教育活動に取り組んでいます。
日本でも、関東だけではなく、地方都市を含めてのイベントや開発者向けのハンズオンなどが実施されており、盛んなコミュニティ発展活動が行われています。
IOST、川崎市とNEDOの起業支援拠点 K-NIC で、初「ブロックチェーン ・スタート」イベントを開催 – CRYPTO TIMES
IOST主催ブロックチェーン1DAY教育プログラム at 山口大学工学部 – CRYPTO TIMES
ノード投票制度の制定・実施

IOST Producer Vote
2019年2月25日のメインネット始動に際し、IOSTはSERVIノードの選挙も行われています。
IOSTのノード制度は競合のEOSと比較され、ブロック生成者数に上限がない点や運営コスト(年間約10,000ドル)、獲得票数に応じてノード報酬が増えるシステムなどが注目されました。
SERVIノードへの立候補は、要件を満たせば誰でもできるようになっています。CRYPTO TIMESもSERVIノードの運営を行なっています。
CRYPTO TIMES SERVIノード情報ページ – IOSTABC
ノード制度については以下の記事で解説しています。
IOSTのノード申請・投票ルールや申請方法や報酬システムまで徹底解説!- CRYPTO TIMES
Chrome用ウォレットのリリース・ステーブルコインの発行
2019年3月には、Google Chromeのブラウザ拡張機能を利用したIOSTウォレット「iWallet」が公開されました。
iWalletを用いたiRAM、iGASの利用方法、及び投票報酬の受け取り方は以下の記事で解説しています。
IOSTがChrome用ウォレット『iWallet』を公開! – CRYPTO TIMES
また、その翌月にはエコシステムパートナーのRate3が、USDCやTUSD、その他ERC-20ステーブルコインとスワップできるステーブルコイン「iUSD」もリリースされました。
IOSTがステーブルコインであるiUSDを今月中にローンチ – CRYPTO TIMES
秘密兵器「OASIS」とOnBlockのローンチ
2019年4月に入り、IOSTのJimmy Zhong CEOはエコシステムへのユーザー流入拡大を目指す秘密兵器プロジェクト「OASIS」のローンチを発表しました。
【OASISのゴール】
- アカウントの登録や秘密鍵の保管を不要に
- リソースの消費を除去
- 公正・透明かつ書き換え不可能なトランザクション
- ゲームの検証可能な公平性
- 容易でスムーズなDAppsの移動
IOSTの秘密兵器『OASIS』がまもなくリリース – CRYPTO TIMES
秘密兵器第一弾として登場したのは、電話番号のみでIOSTの分散型アプリケーション(Dapps)を利用できるプラットフォーム「OnBlock」です。
現状、OASISではIOSTのDAppsの利用だけでなく、独自の取引所もローンチしておりIOSTやIRC−20のトークンなどの取引も行うことができます。
IOSTの秘密兵器OASISによる最初のプロダクト『OnBlock』が4月28日にローンチ – CRYPTO TIMES
IOSTのインキュベーションプロジェクト「EMOGI Network」がHuobiでIEOを実施
エコシステム拡大に取り組むIOSTはプロジェクトのインキュベーションも行なっており、そのうちのひとつである「Berm Protocol」は2019年8月に新ネットワーク「EMOGI Network」を発表しました。
Berm ProtocolおよびEMOGI Networkについては以下の記事で解説しています。
IOSTのインキュベーションプロジェクト「Berm Protocol」の新ネットワーク「EMOGI」とは? – CRYPTO TIMES
EMOGI NetworkのEMOGIトークン($LOL)は以降Huobiが展開するIEOプラットフォーム「Huobi Prime」でトークンセールを行い、その後Huobi GlobalとOnBlockに上場しました。
IOSTがインキュベーションを手がけるEMOGI Token ($LOL)がHuobiとOnBlockに上場 – CRYPTO TIMES
IOSTの主な取り扱い取引所まとめ
- 取扱取引所一覧
- Binance、Huobi、Bitfinexなど計20社
IOSTは中国系を中心にメジャーな取引所で取り扱われています。
USDTペアで取引量が一番多いのはHuobi、BTCペアではBinanceとなっています。
スケーラビリティと非集権性を両立するIOSTまとめ
IOSTはシャーディング技術を用いてスケーラビリティを改善し、なおかつPoBプロトコルでネットワークの非集権性を確保するプラットフォームです。
シャード間での安全なやり取りや、ノードのストレージ問題解決にも力を入れている同プロジェクトが、今後様々なDAppsを排出する基盤になり得る可能性はとても高いです。
また、日本を含めた各国に置いて、ブロックチェーン教育活動を行っているという点も良いでしょう。
CRYPTO TIMESでは、過去にCo-Founder メンバーに対してのインタビューも実施をしています。
2018年6月のインタビューでは、IOSTで最高マーケティング責任者(CMO)を務めるSamantha Wang氏に、当初開発最中のプラットフォームについて、2018年7月のインタビューでは、最高技術責任者(CTO)を務めるTerrance Wang氏に、IOSTの技術的な魅力に関して、そして、メインネットリリースを控えた2019年2月のインタビューでは、最高経営責任者(CEO)のJimmy Zhong氏に、IOSTメインネットや以降のエコシステム拡大戦略について語っていただいています。
今後のIOSTのエコシステムの拡大も含め、要注目のプロジェクトとなっています。
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